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1.  2001年宇宙の旅 《ネタバレ》 
人類の叡知を遥かに越えた未知の高度知的生命体がある。「神」に近いが、「神」では誤解を招くのでXと仮称する。Xは400万年以上前に地球に飛来し、第1モノリスを設置。Xが地球に生命の芽を植えつけたのかは不明。BC400万年に原人が第1モノリスを発見し、触れた。これでモノリスが原人の意識に作用し、原人は知的進化を遂げ、道具を使うようになる。道具の象徴である骨を投げると瞬時に宇宙船に変貌する。Xにとって数百万年は一瞬のこと。月で第2モノリスを発見。人が触れると(太陽に触れると)木星に信号を発した。第2モノリスは、人類が月に到達するレベルにまで進化したことを第3モノリスに知らせる発信機。木星探査の宇宙船が木星に近づく。探査目的はモノリスだが、添乗員には秘密。パニックを恐れたためだ。探査目的の秘密と、添乗員の命令に従うことは相反するので、宇宙船を制御する万能コンピュータHALは矛盾を抱えた。故に異常をきたし、エラーを起こす。添乗員が自分の抹殺を企んでいるのを知ると、逆に彼らを抹殺しようとする。ボウマンはただ一人生き残り、HALの切り離しに成功。そのとき本当の探査目的を知る。宇宙船が第3モノリスに近づくとスターゲイトが開き、異次元空間(他銀河)に移動、ボウマンは肉体を離れ、意識だけの状態に。そこでは時間軸がゆがみ、高齢の自分、死の直前の自分もいた。来世では宇宙を漂う赤ん坊に。人類は新たなる進化の段階を迎え、肉体を持たず、意識だけの知的存在に。それの象徴としてスターチャイルドが映し出される。HALの反乱は、万能を誇る人類の叡知もいまだ不完全であることの象徴。だから進化しなければならないのだ。この映画の最大の特徴は、神に近い知的生命体が人類を産み、進化させているという概念の提示。これは衝撃的。鑑賞後そら恐ろしいほどの畏敬の念に打たれるのは、それが同時に神の存在も身近に感じさせるからだ。会話や解説は極力廃し、映像と音により無意識に直接働きかける斬新な手法。数百万年単位で繰り広げられる、人類の誕生と進化の壮大な物語。美しいデザインと高い芸術性。宇宙船が子宮なら、HALは母。母を越えて、新しい人類の誕生。象徴性に富む内容。Xの概念が、実際の人類の意識の進化に貢献しているように思える。今もなお観る者に衝撃を与え続ける。映画を越えた映画、傑作中の傑作。最大の賛辞を込めて言おう。この映画がモノリスそのものなのだ!
[DVD(字幕)] 10点(2009-09-24 09:00:15)(笑:2票) (良:8票)
2.  グラン・トリノ 《ネタバレ》 
コワルスキーの設定はよかった。愛する妻に死なれた頑固老人。頑固すぎて息子や孫からは愛されていない。神父にも毒舌を吐く。朝鮮戦争で殺人をしたことが心の重荷になっている。血を吐き、残り少ない人生。こんな老人が、隣に引っ越してきたアジア系(モン族)の子供たちを交流することで人間味を取り戻してゆく。子供(タオ)も老人を師として仰ぎ、成長してゆく。この辺りの描写はうまいです。ユーモアも効いています。だめなのは、悪人たちの設定が安易すぎること。タオやスーと親戚なのだから、強姦はしないでしょ。強姦されて、顔がボコボコにされているのも不自然に感じました。(強姦シーンを映さなかった良識は認めます)このような場合、警察に連絡して逮捕すればいいですね。家に自動小銃を打ち込んでますし。立派な殺人未遂です。そもそもコワルスキーが太った不良を殴ったのに激怒したわけですから、コワルスキーを襲うはずです。どうして隣家を襲ったのか、不思議でなりません。コワルスキーはわざと丸腰で乗り込み、自分を撃たせますが、それが本当の解決でしょうか。命を粗末にしているとしか思えません。余命いくばくもないから、許されることでもないでしょう。英雄行為には見えませんでした。死んでも家族には愛されないままというのもまずいです。タオに車をあげましたが、別の不良グループに脅し取られるのが落ちです。またヘタレのタオが、強引なまでに復讐殺人しようと主張するようになるのも違和感がありました。別キャラになってしまっています。ところで、コワルスキーが銃を突きつけたのはモン族不良グループではなく、黒人グループでした。ですからラストのライターを取り出すシーンの伏線にはなっていません。この黒人グループをそのまま悪役にすればよかったのに。細かいことですが、タオはどうやってコワルスキーの車を盗もうとしていたのでしょうか?キーなしで発車させる方法を知っていたとは思えませんが。途中までよかったのに残念です。相手を殺すか、自分が死ぬかしか解決がないはずがありません。たかが不良グループのために命を犠牲にすることはないでしょう。
[映画館(字幕)] 5点(2009-06-30 23:05:12)(良:5票)
3.  プレデターズ(2010) 《ネタバレ》 
そこそこ楽しめましたが、ダメなところを挙げたいと思います。 【メンバーが弱い】地球で選りすぐりのメンバーが集められた筈が、選定に手違いがあったようです。 ロシア兵は近距離から密かに二人に向けて銃を発射しますが一発も当たりません。M134ミニガンで毎分6000発も発射できる優れものですが、絶望的な射撃ベタです。傭兵諜報部員、女兵士、メキシコマフィア、ヤクザは武装していますが、他の二人は持っていない。ヤクザは刀の達人なのに所有してない。仲が悪いのもいただけない。喧嘩したり、仲間を囮にしたり、見捨てたり。挙句の果てに医者が女兵士を襲う。そんなところを見せてどうする。皆Pとの戦闘を期待しているのに。せめて見た目を強そうにしましょう。ちなみにプレデター(P)は、医者が殺人鬼だとどうやって知ったのか?探偵でも雇ったんでしょうか。 【ノーランド】 10年も生き延びたのに太っている!Pの戦闘服や銃器を所有、経験も豊富、基地らしき所もある。さあこれでPと戦える準備が整った、二回戦戦闘開始、と思ったら、あれれ、焚火で皆を窒息死させようとしている。寝てるところを撃てばいいじゃん。結局皆に逃げられるは、Pには気付かれるはで、ジ・エント。とほほ。 【人間ドラマ】戦闘がメインですが、人間が描けてないと空疎なものになります。人物に感情移入させてこそ戦闘シーンが生きるというもの。ところがリーダーである傭兵は自分だけ助かればよい派。ラストでも人間がパラシュートで降りてきてるのに背を向けますね。レイプ犯は戻れたらレイプしたいと言い出す。ヤクザは無言。医者は殺人鬼で女を襲う。話を面白くしようとして個性的なキャラにするのはよいが、それだけではだめ。仲が悪くても危機を乗り越えならが、徐々に友情が育まれていくことを描くことによって感情移入できる。どうでもいいと思ってみるのと、助かって欲しいと思ってみるのとでは天の地の差がある。ここが映画に惹き付けるコツ。ロシア兵がわが子の写真を見せたように、各人に感情移入できるような挿話をもたせるべきだった。 【戦闘】さすがは軍事のプロと思わせる作戦がない。人間は圧倒的に弱いので、捕虜Pと組んで共同戦線を張ればよかったのに。武器もPのものを利用して、そうすれば対等になって面白くなった。 【疑問】太陽が全然動いてない、なんて言ってるのに夜になってる。
[地上波(吹替)] 6点(2011-09-22 21:47:28)(笑:1票) (良:3票)
4.  ハッピーフライト(2008) 《ネタバレ》 
CAが仕事を通じて成長する物語かと思っていたが、航空の仕事の紹介だった。全体を通じて仕事上のミスが多すぎ。あの頼りない操縦士が機長に昇格できたはずがない。CAもケーキをだめにしたり、お客さんに頼まれたことをこなせなかったり、怒らせたり。客をなだめるのにクーポン券を渡すのは疑問。今時「機長を出せ」とか、「行き先を変えろ」と騒ぐ客がいるだろうか?故障の原因はバードストライク。バードパトロールはニセ記者に気を取られていたとはいえ職務怠慢。仕事と取材は分けようよ。この人最後まで反省なし。最悪は航空マニアに指摘されるまで鳥が原因と気づかなかったこと。鳥で簡単にエアデータコンピュータが故障するとは、なんとも脆弱。操縦士はバードストライクを目撃しているのだから、直ちにシステムチェックすべき。また故障がわかるまで時間がかかりすぎる。速度を計測する気筒管の破損に気づかないなんて。故障個所はすぐに表示されるべき。速度データが取れないのに何故気づかない。残った気筒管はヒーター故障で氷って使えない。低空飛行すれば氷は解けるが、何故か燃料計算を始める。ハワイまでの飛行時間は約7時間、2時間半しか飛んでないので少し低空飛行しても引き返せるのは明白。それにスピードは管制側である程度把握できる筈。管制塔では落雷で、ほとんどの端末が使用不可に。落雷対策って基本なんですが。整備士は工具が足りないのは一目瞭然なのに工具箱を戻してしまう。整備も完全でなく、不完全なまま飛ぶ。出発ぎりぎりまで整備する体制がおかしい。整備優先のスケジュールにすべき。台風圏内に着陸させるのは論外。名古屋に行け。物語の構成上、最後にミズをカバーして、成長してゆく人間模様を描くのがセオリー。だがほとんどのミスがカバーできていない。ケーキを作ったくらいか。綾瀬と吹石はミスを取り戻せていない。飛行機も引き返してしまった。これでは感動できない。コメディなので、不時着に失敗するかもしれないというサスペンスもない。新婚旅行のバカップルやヅラネタはチープ。 笑えないのは乗客の命がかかっているから。大事故になりかねない飛行機トラブルをコメディにする設定に無理がある。ジャズやシンクロのような趣味なら笑える。完全にアンハッピーフライト。
[DVD(邦画)] 5点(2010-05-12 10:08:58)(良:4票)
5.  下妻物語 《ネタバレ》 
とても勢いのある作品。前半は漫画チック、後半は劇画調。発色のよいフィルムを使って、ポップ調に統一している。B級コメディ路線狙いが見事に成功。お馬鹿映画に見えるが、内容は深い。「星の王子様」と同じテーマ。桃子は、不幸な家庭環境が影響し、現実を拒絶している。牛の糞のある田舎町を受け入れず、18世紀のロココの時代に生きる空想ばかりを抱く。生きがいは、ロリータファッション。服が心の鎧となっている。現実を生きていないため、常に孤独で、友達もいない。感情も停止させているので、孤独さえも感じない。重症である。そこへレディースのイチゴ登場。彼女は過保護すぎた家庭環境のせいでいじめに遭い、それから抜け出すためにレディースに入った。一皮剥けたのである。イチゴは自分をぶつけてくる。好きな服には感心し、先輩のために刺繍を入れたいと願い、バイトもするし、将来の設計もあり、失恋もする。現実に生きて、悩み、もがいているのだ。二人に共通なのは孤独。桃子は離れようとするが、特殊能力が友情のきっかけに。パチンコである。ここはご都合主義だが、もう一つの特殊能力、刺繍に目覚めてから桃子は変わる。イチゴのために刺繍をしたいと願うのだ。初めて自分から他人との関わりを願ったのだ。それはイチゴの「他人のために何かしたい」という無垢な心が伝わったから。そして服の会社から刺繍の依頼。初めて社会との接点ができたのだ。他者から必要とされることで、不安を覚えならがも自我に目覚めてゆく。不安は刺繍するときに出る汗で表現されています。そんな桃子に感応して、自己中心的だった社長も仕事より友情を選べといってくれます。途中で事故に遭うが、このとき桃子は生まれて初めて「生きたい」と心から願った。イチゴを助けるために。神に願いは届き、再び立って歩き出す。再生した桃子だ。あとは怒涛の展開。心の鎧であった服は泥にまみれる。生きるとは泥にまみれること。啖呵は初めての感情の発露。関西弁が出たのは、不幸な子供時代を受け入れたということ。ウソがすらすら出たのは、現実で生きるための直感と知恵が備わり始めたということ。現実逃避の少女が、友情をきっかけに現実を受け入れ、真の自分らしさとは何かを探し始めるというテーマに貫かれています。スカッとする映画です。最初に事故のシーンを出して驚かすのもうまい。女優二人の体当たりの演技も光ります。
[DVD(邦画)] 9点(2009-04-19 07:50:27)(良:4票)
6.  硫黄島からの手紙 《ネタバレ》 
憲兵は軍隊の警察で民事不介入。パン屋のパンを押収したり、街中で犬を射殺したりしません。パン屋が商売道具の釜を金属供出することもありません。国旗は夜は家にしまいます。しまわない方が非国民。赤紙の特別送達人に愛国婦人会がついてくることはありません。小銃をライフルとは言いません。兵士の懲罰で鞭打ちは無いでしょう。時代考証が甘いですな。硫黄島の戦いといえばいろいろと期待します。まず18キロの坑道。40~50度の地熱と硫黄ガスに阻まれて大変困難な作業でした。米兵上陸前島の形状が変ったとまで言われる大準備砲撃。油断して上陸した米兵を待っていた地獄の日本軍の集中攻撃。すり鉢山の攻防戦。爆弾抱えて戦車に突っ込む。玉砕を許さぬ籠城作戦がひと月に渡る。水はドラム缶に貯めた雨水(ぼうふらが湧く)。一日コップ一杯の配給、あとは夜露でしのぐ。食料は椰子の木の幹やアメリカ兵の残飯(大変なごちそう)。自決を主張する負傷兵達を何日も徹夜で説得して投降させた野口巌軍医。食料増産のために連れてこられた少年兵。全部カットされてました!日本の死者2万人、米の死傷者27000人の大激戦だったのにスケールダウン。一方的に日本がやられ、米兵は悪人ばかり。広すぎる洞窟と坑道にあぜん。初期段階での自決シーンに違和感あり。あれじゃ単なる馬鹿。島の戦略上の重要性は小学生でも認識していたので、「こんな島くれてやればいい」発言は無い。西が捕虜の手当てをしたのは史実。ラジオの子供の合唱も史実(歌う子供達を出せばよかったのに)。最後西郷がスコップもって飛び出してきたのには苦笑。栗林の拳銃を米兵が所持しているのを見て逆上するが、それって自分がそこに放置したんだよね。獅童はどうしてずっとあそこで寝ていたの?自分で戦車に近づかないとだめでしょ。戦車壕で待機するのが正解。飢え、汗、ひげ、疲労、不潔さ、死に対する恐怖などが希薄。ひたすら栗林と西を賛美する内容だが、知将栗林の頭脳的戦略はきちんと描かれていない。CGはしょぼかった。ちなみに硫黄島の飛行場はB-29ではなく、長距離護衛戦闘機P-51の基地として使用された。
[DVD(邦画)] 4点(2009-05-09 01:30:11)(良:4票)
7.  ナイル殺人事件(1978) 《ネタバレ》 
良かったのは、エジプト観光気分を満喫できた点。気になったのは、エジプト人に対するリスペクトが無い点。エジプトでは上映不可だろう。◆終始一貫のんびりムード。遊覧船の乗客ほぼ全員に犯行動機があるというのに。殺人が起きて誰も警戒しない、鍵もかけないし、部屋に閉じこもらない。その割に死体がゴロゴロ。アンバランスだね。◆捜査は至って楽。なにせ犯人が、わずか数名の乗客の中にいるのだから。とりあえず容疑者の手を観察し、匂いを嗅いで、硝煙反応を確認すれば良いね。◆この手の作品の良し悪しは、犯行計画が見事かどうか。サイモンは妻を殺したいのなら、事故にみせかけてピラミッドから突き落すとか、コブラ使うとか、いくらでも機会はあった。わざわざ元恋人ジャッキーと手の込んだ芝居をする必然性が無い。彼女がサイモンをフェイクで撃ったとき、目撃者一人の他に駆け付けたのが一人だけだったから成功したが、他の人も駆け付ければ計画は破綻。それが医者だったら負傷して無い事がばれるし、妻ルイーズが来ればどうするつもりだったのか。妻は寝ていて射殺されたけど、ついさっきまでカードしてたよね。起きて他へ行っていたらどうする?そもそも撃った弾が足元の床にめり込んでいるんだから、ばればれ。その場はごまかせても現場検証で確実に発見される。空砲を使いなさい!そして妻射殺の際の爆音に誰も気づかないのはどうして?このとき誰かが駆け付ければ計画は破綻。目撃されるだろうし、少なくともサイモンは自傷する機会を失う。◆拳銃だが、ジャッキーが床に捨てたのに、みんなが現場に戻って来たら無くなっていた。その拳銃が殺人に使用されたわけだが、現場に残っていたのはサイモンだけなのだから、彼が知らないはずが無い。第三者が持ち出せた可能性はあるが、誰も拳銃のことに言及しないのが不思議。凶器が床に落ちたのに、拾おうともしない。◆目撃した小間使いは犯人にお金を要求して刺殺。でも紙幣の破片が指に残ることは無い。死後硬直して無いのだから。◆目撃した女流小説家は2メートルくらいの距離で射殺されたんだから、逃げる姿くらいは目撃できたでしょ。◆即死なのにダイイング・メッセージ。肩掛けにハンカチと拳銃を包んで捨てればいいのに、わざわざ灰皿を重しに使用。真珠を盗んでも返したらおとがめ無し。母親を殺された翌日に婚約。睡眠薬を飲まされ、毒蛇を部屋に放たれる愚鈍な名探偵。
[DVD(字幕)] 6点(2011-01-08 17:14:05)(良:3票)
8.  男と女(1966) 《ネタバレ》 
低予算で作られた映画。片乗せカメラしかなかったので、揺れ動く映像に。カラーフィルム代が無かったので室内を中心に半分はモノクロに。撮り直しできなかったので、カメラにゴミが付着したまま。こういった状況を逆手に取り、斬新な”映画詩”が出来上がった。流麗な音楽、顔と手のアップの多用、不安を煽る下からのアングル、ガラス越しのカット、他愛もない会話、どれも研ぎ澄まされたように感覚的だ。全てが主人公二人の感情のゆれ動きを表現している。共に子持ちで、若く無い二人。子供が同じ寄宿学校で、配偶者を亡くしたという共通点が親密さを深める。男は初対面で女に恋をする。男は亡き妻に関しては心の整理ができており、恋人もいる。浮気者であるが、うぶなところもある。女は夫の思い出の中に生きている。突然現れた男に心が大きく揺れる。夫はスタントマンという危険な職業で、スタント中に事故死。男もレーサーという危険な職業。夫と男が重なる。事故続出のレース展開に、どれだけ男のことを案じただろうか。男が完走したと聞いて、思わず「愛している」と早まった告白電報を出してしまう。男は有頂天になり、車を飛ばして女の元へ。恋の手管をあれこれ思案しながら運転する楽しさ。昂ぶる心を抑えきれず、いざベッドイン。だが女の心に火はつかない。まだ夫の影を引きずっているのだ。頂点から失意のどん底へ。電車で帰る女。急ぎ過ぎたのか?反省する男。そうではない。女が自分を愛しているのは確実だ。大いなる愛で女を受け容れ、女が過去と決別するのを気長に待とう。男は車を飛ばし、駅で待ち伏せ。男を見た女は満面の笑みを浮かべて、その胸に飛び込んでゆく。危機を乗り越えた二人。愛は人間より強いのだ。男と女は理由なく魅かれ合う。たとえ自分が傷つくことがわかっていても。それがこの映画の主題だろう。それを言葉ではなく、音楽と映像で描く。雨降りのお花畑のような、明るいアンニュイの漂う恋愛詩。それまで誰も試みたことがない野心作だ。今後二人はどうなるか?男がレーサーを辞めるまで女の葛藤は続くと思います。あと夫が歌うところだけミュージカル仕立てだったのが気になりました。
[DVD(字幕)] 8点(2009-09-29 09:00:26)(良:3票)
9.  007/カジノ・ロワイヤル(2006) 《ネタバレ》 
今までの007シリーズとは別のシリーズになっています。おしゃれなスパイ映画ではなく、アクションを中心としてハードボイルドです。ヴァイオレンス(残虐殺害シーンや拷問)は無いほうがいいと思いますが、”新生ボンド”の意味を込めてあえて挿入したのでしょう。(それならMの年老いた役者を変えるべきと強く思いましたが)カメラワークは、心憎いまでに、細かいところまで行き届いており飽きさせません。スパイ映画特有の裏切り、どんでん返し、恋愛も当然盛り込まれています。冒頭の超絶追跡シーンは映画史上に残るでしょうか。あそこまで高所に行った例を知りません。アイデアの勝利ですね。空港シーンもそこそこの出来です。しかしカジノの長いシーンはいただけません。勝負は一度でつけましょう。毒をもったり、ナイフで殺そうとしたりはご法度です。ここは頭で勝負するシーンです。敵の中ボス(ル・シッフル)が雇い主にボコボコにやられるシーンは不要です。あれで「あ、こいつは弱いんだな」とわかり、緊張感が失われます。そもそも中ボスがテロに失敗した損(株の損)をカジノで取り返すというのもよいアイデアとは思えませんね。もっと悪いことを企みましょうよ。またボンドの正体が最初からばれているという設定もマイナスです。正体がばれるかもしれないというサスペンス感が失われるからです。ヴェスパーですが、お化粧が濃すぎるような…。それはさておき、最後は「ボンドを助けるために命を犠牲にした」としたいようですが、そうはなっていないと思います。恋人がいましたし。でも自ら死を選らんだようにも見えましたね。ヴェスパーが裏切っていたのなら、ボンドを拷問する必要もないはずですが。銀行でお降ろしたお金の入ったカバンをもっていきますが、1億数千万ドルもの大金が1銀行で降ろせるわけがありませんし、カバン1つに入るわけもありません。また降ろす必要はなく、別口座に振り込めばいいですね。最後、ボンドがいきなりミスターホワイトを撃ちますが、相手が悪者であると確認しなくていいんでしょうか?いろいろ書きましたが、質の高い映画であることに間違いありません。新生ボンドにドライバティーで乾杯!
[DVD(吹替)] 8点(2009-04-04 15:20:35)(良:3票)
10.  キング・コング(1933) 《ネタバレ》 
無駄のない構成に感服。まずスカル島に到着するまでの序章がテンポよい。ジャングル映画監督の特異な性格が示され、運よく不遇の美女タレントがスカウトされ、恋を知らなかった荒くれ船員が美女と恋に落ちる。次に原住民との遭遇⇒美女が原住民にさらわれる⇒コングが美女を連れ去る⇒美女奪回のため島の奥地へ⇒恐竜との遭遇⇒コングと恐竜達との壮絶バトル展開⇒美女奪還⇒コング捕獲と休む暇がない。ここで終わっても冒険物語は成立する。当時流行していたジャングルもの、南洋ものと呼ばれる小説や映画の多くがそうだった。本作は、このあとコングをニューヨークに連れていくことで名作となりえた。「コングを見世物にして金儲けする」という人間の欲望、これを描くのにニューヨークはぴったりの街である。自然との調和を忘れ、欲望に溺れ、堕落した人間達に、神の使いであるコングが天罰を加える。経済発展を謳歌していた米国で世界恐慌が発生した直後の制作で、コングは当時の人が無意識に持っていた罪意識の象徴として映ったのに違いない。これが現在にも通じることで、今でも色褪せない理由の一つがここにあると思う。美女を取り戻したコングは高層ビルの天辺に避難する。だがそこに安住の地はない。文明の利器である飛行機と機関銃が襲い掛かる。スカル島では怖いものなしだったコングもこれには勝てず、墜落死する。人間を襲った罪として、今度はコングが罰せられたのだ。欲望とそれを律する心のせめぎあいを見事に表現している。もう一つの主題は恋愛という不思議さ。いくらコングが美女を愛しても、その愛が報われることはない。コングは美女の守護者であると同時に永遠の失恋者。美女に恋しても相手は振り向いてもくれない経験を持つ男性は多い筈で、身につまされる。野獣のコング相手に感情移入できる所以だ。失恋男の哀れさが憐みを誘う。美女に惚れなければこのような悲劇は起きなかった。「飛行機ではない、美女が野獣を仕留めたのだ」の詞は的を得ている。副題の「the eighth wonder of the world」はコングであり、恋愛である。鑑賞後冒頭の諺がしみじみと想起された。「預言者曰く。見よ、野獣は美女の顔を見て、殺そうとして伸ばした腕を止めた。その日以来野獣は死んだも同然となった」野獣でさえもこうだ。どんな人間でも美を愛でる優しさ、人間らしさを持つ。コングよ安らかに眠れ!
[DVD(字幕)] 10点(2012-07-01 01:27:53)(良:3票)
11.  アンストッパブル 《ネタバレ》 
ちょっとした手違いから、39両編成もの貨車列車が暴走を始めてしまった。止めなければならないが、会社が手を尽くしても止めることができない。このままでは大きな被害がでるという危急存亡のときに、機関士と車掌の英雄的行為により止めることに成功する。表面的にはそういう内容だ。だがこの映画は、暴走列車をただ止めるだけの単純な痛快アクションではないと思う。それだけで精神の高揚や感動は得られないからだ。どうして感動するのか?それはどうして主人公二人は、敢えて自らの生命の危険を冒してまで、暴走列車を止めようとしたのか、という問いに集約される。その答えは「人の命を救いたい」という本能に基因するものだろう。特別な人間でない、ただの鉄道職員が、ある日英雄になるのはそのためだ。特に救う命が自分の家族であったり、大勢であれば自らの死も厭わないと考える。これが人間の本質だと思うし、思いたい。この素朴な生命尊重の倫理が、観客の根底に備わっているので感動するのではないか。勿論、ベテラン機関士の会社への意地や若手車掌の家族を守りたいというドラマ部分での感動の底上げもある。加えて、危機感を煽るために、暴走貨物には可燃燃料と有毒化学物質が大量に積載されており、脱線必至な町郊外の急カーブ地点付近には石油コンビナートがあり、もし脱線すれば大変な被害が予想されるという過剰設定もある。しかしそれらを省いたとしても、感動の本質は変わらないと思う。観客は無意識に、暴走列車の圧倒的な重量感、疾走感に、命の危うさ、大切さを感じ取っているのではないだろうか。轟音が心臓の音、疾走する姿が生命の躍動に見えてくる。そしてもし事故が起ったら死ぬであろう大勢の人のことを想像してしまう。だから、つい手に汗を握って観入ってしまうのだ。こう考えると、この映画は、やはり単なる暴走列車映画ではなく、人間の本能、本質に訴えかける人間賛歌の映画だと思えてくる。◆余談だが、列車の脱線は簡単にできる。アラビアのロレンスよろしく、ダイナマイトで線路を爆破すればよいし、そんな大げさでなくても、松川事件のように犬釘を抜いて、ボルトを緩めるだけで脱線転覆する。脱線装置という効果あいまいなものに頼る必要なないと思った。監督の冥福を祈ります。 
[DVD(字幕)] 9点(2012-09-09 20:01:08)(良:3票)
12.  明日に向って撃て! 《ネタバレ》 
切ない映画である。ブッチとキッドは男の子なら誰でも漠然とあこがれる夢を具現したような存在。「幸福な子供時代」の象徴といえる。アウトローの集まる古き良き西部に住み、銃を華々しく撃ち放し、列車強盗や銀行強盗で大金を掴み、気の合う友達を持ち、女性にはモテまくり、長旅をし、ときに国外にも逃亡する。自由気ままに生きるとはこういうことだろう。だがいつまでも子供ではいられない。いつかは夢から覚めて、大人にならなければならない。決して顔を見せない追っ手が大人の象徴。逃げても逃げても追ってくる。追っ手は自分の内面の影でもあり、いつかは向き合って対決しなければならない相手。ラストで追っ手に向かって銃を撃ちつつ飛び出すのは、子供から脱却して大人になることの象徴、通過儀礼だ。誰もいつかは子供時代とは永遠にさよならしなければならない。映画は、その瞬間を鮮明に切り取った。ブッチは初めて人を殺したとき、夢の終りが近いのを悟った。それでもブッチは「次はオーストラリア」などと夢を語る。何度見ても心がひりひりする。過去を表す手法としてセピア色が随所で効果的に用いられている。一方未来は自転車として登場する。馬や馬車は最早時代遅れ。旅立つシーンで、ブッチが自転車を捨てる。自転車はよろよろと倒れ、車輪が空転するのをカメラが追う。二人の未来を暗示した見事な手法だ。二人は死んで、子供の夢も滅びた。だが、滅んだのはそれだけではないだろう。子供が自由に夢を見ることのできる社会そのものが滅んだのだ。映画の製作された時代の社会の現実は、ベトナム戦争、黒人差別、学生運動、麻薬の氾濫、ヒッピー運動、価値観の多様化、親子の断絶など、混乱を極めていた。もう子供が、子供らしい夢を見ていられる社会ではない。なんと嘆かわしいことか!映画の意図はそこにあると思う。キッズの登場シーンはずっとキッズのアップが続く。朝日を浴びて自転車に乗る二人の美しいシーン。写真だけで描かれるボリビアへの逃亡の旅。音楽と映像だけの銀行強盗シーン。印象に残る場面はいくつもあり、映画の技法の宝庫でもある。この映画を単にあまり賢くない悪党の逃亡劇として見ると面白みにかけるだろう。憎めない二人に乾杯。女性の心理が描けてないのが残念。
[DVD(字幕)] 9点(2009-09-19 02:45:58)(良:3票)
13.  K-20 怪人二十面相・伝 《ネタバレ》 
監督は歴史オンチですね。『帝国陸海軍は12月8日未明西太平洋にてアメリカ、イギリス軍との平和条約の締結に合意せり。これにより第二次世界大戦は回避されました』①「西太平洋にて」がありえない。②「アメリカ、イギリス軍」ではなく、「アメリカ、イギリス」。軍ではなく国家と条約を締結する。③第二次世界大戦は1939年9月1日のドイツ軍によるポーランド侵攻とともすでに始まっている。「大東亜戦争は回避されました」が正解。 ◆邦画アクションものとしては高水準の方です。お嬢様の醸し出す笑いの部分はよかったと思います。お嬢様の意外な活躍ぶりも嬉しいサプライズでした。身分違いの恋をもってきたのは正解です。お嬢様の日頃の豪華な生活ぶりをもっと描いていたら、長屋や浮浪児とのギャップがもっとできて、深みがでたと思います。 ◆「二十面相の正体があれ」は無いでしょう。胡散臭い探偵なので途中から薄々気がつきましたけど、いくらなんでもやり過ぎです。挙句の果てに超兵器がでてきて、紳士怪盗二十面相がテロリストになってしまってますね。乱歩の原作世界をぶち壊しており、乱歩ファンとしてはこの映画に与することはできません。これが最大の失敗でしょう。リスペクトが足りません。又この手のものは爽やかに終わらなければカタルシスを得ることができません。超高層ビルを破壊するなんて間違いもいいとこ。アクションや派手な爆破シーンより、知恵の部分で見せ場を作ってほしかったですね ◆身分社会、格差社会で、職業の変更は認められず、恋愛の自由もないという世界観が生かされていなかった。「諦めないで新しい社会を作っていくんだぞ」と子供を諭していた南部博士はどこへ?サーカスの他の仲間はどこへ。彼らが主人公をサポートするどろぼう役をやればよかったのだ。結局二代目二十面相は何をしたいのか?お金持ちから金目のものを盗んで現金化して、浮浪児にプレゼント? ◆サーカスで死体が鳩に変わる場面、橋ごと移動する場面、手を抜かないで見せてほしかったです。
[DVD(邦画)] 6点(2011-09-16 23:54:34)(笑:1票) (良:2票)
14.  アイアンマン 《ネタバレ》 
荒唐無稽なヒーローものはかっこよさがすべて。そういう意味では合格点。この監督は見せるべきところを心得ていますね。天才エンジニアが敵に捕らえられて、洞窟の中で二人でトンカチやりながらアイアンマンを完成させるのはいくらなんでも不可能でしょう。設備がないのに核融合のリアクターの小型化にも成功しているわけですし。監視している敵が気づかないわけないですよね。(まあ、原作がそうなっているのでしょうね)その野暮ったいデザインに脱力、続けて鑑賞する気を失ったほどです。しかし、それも洗練されたデザインのものが完成してから一変しました。完成へのプロセスを丁寧に紹介しているのに好印象。イラクで敵兵をあっさり倒すシーンなどよかったです。最大の敵が身内にいたわけですが、これもありがちですね。(秘書による機密書類のダウンロードシーンは、他の映画で何度見たことか)あの年寄りが中に入っていると思うと萎えます。もっと精悍な人物にすべきでしょう。最後、敵を倒すために核融合施設を爆発させるのはむちゃすぎます。アイアンマンの知恵と装備で倒さなきゃだめですね。 しかし、主人公が酒、博打、女好きで、疲れた顔しているという設定はどうなんでしょうかね。秘書との恋愛も中途半端のままですし。(秘書はスタークの遊ぶ女の世話もしているので、真の恋愛に発展しずらいですね) 昔の「ロボコップ」を思い出しました。最後にブラック・サバスの「アイアン・マン」が流れたときには苦笑するしかありませんでした。確信犯ですね。
[DVD(字幕)] 7点(2009-03-10 09:45:23)(良:3票)
15.  大魔神逆襲 《ネタバレ》 
不出来である。脚本の荒さ、甘さが目立つ。戦国時代の殿様が地獄谷の硫黄を採掘して火薬を作り、武器弾薬を準備して隣国を平らげようと野心を抱く。それはいいがどうして隣国の樵達を拘引して、強制労働させる必要があるのか?総労働者数はたいして数でもなく、自国の民を徴用すれば済む話である。それもたった数日働かせるだけである。それに十数人もの人を拉致すれば、すぐにばれてしまうではないか?又樵に間道を問い質したりするが、自国の樵に聞けば済むと思う。更に言えば、雪の季節に他国に攻め入るのは無謀である。◆子供達が捕まった親族を助けるために独断で出かけるが、どうやって助けるつもりなのか?そこを描いてないので、稚戯で無謀な試みにしか見えない。生命にかかわるほどの危険な冒険な筈だが、画面からそれは伝わってこない。子供たちのこなれていない演技が鼻に付くだけだ。きれいな標準語を話すのも気になる。◆埴輪神像が怒って荒ぶる神に変身するが、さて何に対して怒っているのか?雑兵が神の使いである鷹を殺したからか?それなら雑兵だけを殺せばよいし、雑兵は既に鷹と刺し違えている。殿様が樵を拉致して強制労働させていることに怒っているのだろうが、この殿様だけが特別悪いわけではなく、人間のやる行為としては普通であり、神には関わりが無い筈である。少年が身を捧げたからその願いを受け入れたのだろうが、その前に鷹が少年を助けている。どうして?神域を荒らす者は神の罰を受ける設定の筈なのに。また殿様らに神像を傷つけられた事実もなく、はなはだ不自然である。少年の自己犠牲の精神が尊いといっても、過去のシリーズと比較して、神を動かすほどではないと思える。荒ぶる神だからこそ恐怖を感じるのであり、勧善懲悪の神なら凡庸で水戸黄門と変わらない。◆さて肝心のスペクタクル、大魔神対武士の戦闘だが、武士が弱すぎて話にならない。人数が少ないし、戦略も無きに等しい。あの近距離で大砲が一発も当らないのはどうしたわけか?◆以上のような理由で魔神が怖くないし、魔神が殿様を退治してもすっきりしないのだ。営業的に赤字で、続く予定だったシリーズを終了させたのも納得できる。
[DVD(邦画)] 5点(2011-11-14 04:53:06)(良:3票)
16.  薔薇の名前 《ネタバレ》 
時代考証を重ねて忠誠を忠実に再現しているのは好感が持てる。だがわざわざ欧州中の醜い顔の役者を集める必要があったか疑問だ。特殊メイクはなしという。まるで動物園のようで、悪趣味としかいいようがない。中世のキリスト教に恨みがあるのだろう。ヒロイン?の女性もしかり。がさつで下品で汚く撮っている。性愛場面は醜悪だ。あの場面はラストの題名の意味を明かす重要なパートにつながる甘美な想い出でなければならない。青い体験描写として失敗。そもそも女はどうして少年修道士を強姦したのか?その背景が描けていない。食料を求めて侵入した筈だが。◆ミステリーとして弱い。黙示録の予言通りに殺人が進む、というのはフェイクで終わってみればただの偶然。何のために血を貯める大壺があるのか疑問だ。まぎらわしく風呂で溺死するなと言いたい。最初のは殺人ではなく飛び降り自殺。理由は禁書を見せてもらう見返りの男色行為を恥じたから。納得ずくの筈だし、自殺は重い罪なのだが。しかも嵐の夜に塔から飛び降りるというややこしい死に方。◆犯人は盲目の長老で、禁書に毒を塗っておいただけ。それを二人が盗み見して死んだ。盲目なのにどうやって秘密の迷宮図書館に独りで出入りできるのか疑問です。また何しに図書館に行くのか?また禁書は焚書にすれば済むわけで、どうして収蔵しておくのか?理由がさっぱりわからない。笑うことが罪だというオチに笑ってしまう。◆事件を裁くべくやってきた異端審問官だが、一目みてどういう人物が分るので意外性がない。暗愚で、杓子定規。主人公との対決も肩透かし。この人物は民衆に崖から馬車ごと突き落とされるが、そんなに悪人だろうか?民衆がこの人物をどれだけ知っていたというのか?自らの信念に則って異端審問しただけだ。一方的に悪者にされる理由もないだろう。女には火をつけなかったのだし。修道院が火事なったら逃げだしたのも腑に落ちない。◆主人公はどうやってあの炎の中から脱出できたのか?あんなに諦め顔だったのに。知恵を絞り秘密の抜け穴を見つけ出すのが筋だと思うが、何も描かれていない。又修道院長や長老の姿が見えないのはどういうわけだろうか?主人公が真実を説明し、修道院長らが感謝したり謝ったりする場面があって当然ではないか?◆欧州と日本ではヒットしたがアメリカでは酷評で終わった。理由は上記に説明した通り、話がすっきりしないからだろう。
[DVD(字幕)] 6点(2011-09-12 15:15:38)(笑:1票) (良:2票)
17.  ゲッタウェイ(1972) 《ネタバレ》 
犯罪ロード・ムービーの形を借りているが、本質的には、妻が不貞で夫婦中に亀裂の入った夫婦が、再び絆を取り戻してゆく話。妻が不貞を働いたのは、裏取引で夫を刑務所から出すための方便。頭では理解できるが、心では消化できずに妻を愛しているが許せない夫の感情の揺れが主題。カットバックを多用した刑務所での息苦しいまでの抑圧された場面、刑務所を出て、あまりの自由さにとまどい、自分を取り戻すまでの場面が丁寧に描かれるのもそのため。逃走の緊張と夫婦間の緊張の相乗効果が、映画を魅力的にしている。ゴミ収集車に閉じ込められるというアイデアは秀逸。二人は自分たちをゴミのようにしか感じられないところまで転落したが、落ちるところまで落ちたことで今度は上昇に転じる。汚れたことで心の虚飾が払われ、歩み寄ることができたのだ。妻の傷を気遣う夫の姿はけなげだ。「傷は浅い、跡は残らない」は夫婦の絆の傷のことでもある。映画の常道をわざとはずした意表を突く展開には目を見張る。監督は「人生はささいないこと、小さな偶然によって大きく影響される」という人生観の持ち主に違いない。コイン・ロッカー詐欺師が札束を一つ胸ポケットに入れたことから、巡り巡ってドクの人相が警察に知れる。カー・ラジオが故障したことから、ラジオ店の主人に素性を見破られ、警察がやってくる。また観客を驚かすことが多い。最たるものが悪者に脅されて同道を余儀なくされた獣医の妻が夫を裏切り、悪者に寝返るところ。大した意味はないのに、ドク夫婦のパロディのようにつきまとい並列展開する意外さ。獣医は耐えきれず自死するが、おばか妻はそれを歯牙にもかけない。悪者もドクに撃たれた時、とどめまで刺されているので誰もが死んだと思ったが、生きていた。防弾チョッキを着ないと思わせた伏線が効いているのだ。この男がボスに連絡すると思いきや単独でドクを追う。ドクもドクで、どこにでも逃げればよいのに、律義に計画通りにエルパソという国境の町に向かう。案の定そこには敵の手下が待っている。最後のシーンも面白い。「一万ドルで車を売れ」「二万にしてくれ」「三万でどう」この掛け合いで夫婦の仲が完全に修復されたことがわかる。男はひょんなことで三万ドルを手に入れた。こんな事があるから人生は面白いし、いつでもやり直せる。監督のそんな声が聞こえてきそうだ。
[DVD(字幕)] 8点(2012-07-01 07:49:12)(良:3票)
18.  ウォーリー 《ネタバレ》 
高層ビルのように積み上げた圧縮ゴミの山の数々、これだけでウォーリーの700年の孤独が伝わってきますね。植物とゴキブリを発見しますが、それだけでは心が満たされません。ビデオを見ることによって感情を覚えました。ミュージカルは「ハロー・ドーリー!」。田舎町から出ることのなかった貧しい青年が、都会に出てお金持ちのふりをして、女性に求愛します。ウソがばれ、青年は別れようとしますが、女性は「そんなこと最初からわかっていたわ」と手をつなぎ、愛を受け止めます。これを知っていて観ると鳥肌ものです。もう一つの重要なモチーフは人類の進化を扱った「2001年宇宙の旅」。同じ音楽を使い、コンピュータが反乱するという筋書きで明らかですね。靴と植物が「モノリス」です。靴はエンドロールで判明しますが、ゴッホの初期の絵で、労働者の象徴として描かれたもの。未来人は一生座ったままで生活するので、立つことも難しいし、靴を知りません。船長が壮大な音楽と共に立ち上がる場面は、人類の更なる進化の象徴。すなわち原点に戻り、地球を再生させるために歩き出すことを表しています。わかりにくかったは、修理ロボット達のふるまいです。ウォーリーが誤射して修理室の電源が切れました。これで修理ロボット達は自由になったのです。メインコンピュータ「オート」からの開放であり、その後の展開を予見させます。それでウォーリーを持ち上げて大騒ぎ。最後は頼もしい味方になります。特にモー、グッジョブです。けなげに働くロボット達の姿は心なごみますね。排出口からの生還は「エイリアン2」のオマージュ。だから声優にシガニー・ウィーバーを使っています。遊び心たっぷりです。子供の世話もロボットがする社会。船が傾く場面で、落ちてくる子供たちをジョンとその恋人が守る場面がありました。とても印象的です。ウォーリーの記憶が戻る場面ですが、あれはイブの愛情がそうさせたわけです。元々、ウォーリーの感情によってイブにも感情が生まれました。イブの電流によってウォーリーがぽうっとなるシーンがありますね。あれが感情であり、伏線となっています。子供達には深読みができないので、ちょっと退屈するかもしれません。大人になって観返したら、きっと感動するでしょう。
[DVD(字幕)] 9点(2009-04-17 22:03:27)(良:3票)
19.  生きる 《ネタバレ》 
脚本にブレがある。本筋はこうだ。己を殺して役所勤めに埋没し、本来の生き生きとした人生を送ってこなかった男が、癌宣告を受けて苦悩、煩悶し、その艱難辛苦の果てにようやく自分のやりたいこと、生き甲斐を発見する。人生を新しく生き始めた男は、市民のための公園づくりに奔走し、幾多の困難、障害を乗り越え、遂にこれを成し遂げ、 最後は幸福感に包まれながら、竣工した公園で寿命を全うする。脚本はこれに加えて、男のささやかな功績を横取りする上司の醜さ、上役の前では意見を言えない小役人ぶり、酒を飲まなければ本心が言えない小市民ぶり、非効率的な役所仕事に対する批判を展開する。全て蛇足であり、不要。それは男にとって無意味だから。男が役所批判をしたり、名誉を欲しているわけではないのは明白。男が余命をかけて完成させたものがささやかな公園であったといういうのは泣かせる。◆構成上の欠点がまだある。最大のものは再生役の女性が途中から出てこなくなる事。若さと無邪気さで、男を”再生”させた女性が男の死に水をとるという構成が自然だろう。ラストに親族にとって謎であった女性の正体が知れ、女が男が自らの癌を知っていたこと、最後は幸福に死んだことを語る展開にすれば、感動が数倍増すこと請合いだ。重要な役割をする女性が途中で消えるのは理解に苦しむ。ポスターでは公園で男と女性がブランコに乗っている。監督はわかっていた筈なのだ。男に遊びを教えるメフィストフェレス役で良い味を出していた無頼派作家も消えるには惜しいキャラだ。男が物語半ばで死んだり、男に同情する若い同僚が葬式シーンからしか登場しなかったり、物語がブツ切れてしまっている。又女性の正体が不明のまま終わるのは、男にとっても家族にとっても不幸、観客にとっては未消化。◆高踏的なナレーションは不要。「この男は生きていない」などと、説明されても困る。その内容を見せるのが映画の筈。演出意図や理屈を説明するような科白が混ざっているのも減点対象。ごく自然な言葉、態度、出来事で観客に分らせるのが良い映画。 この映画は少し頭でっかち。◆役所に対する偏見が強い。「何もしないことが仕事」「1時間で出来る仕事を1日かけてやる」などは言い過ぎ。◆演出は冴えわたり、映像マジックも垣間見れるだけに惜しい。
[DVD(邦画)] 8点(2011-07-24 05:55:11)(良:3票)
20.  時をかける少女(2006) 《ネタバレ》 
【タイムリープ(TL)】設定は女子高生が後ろ向きに倒れて過去に戻る映画「タイムリープ」に酷似。胡桃でチャージ、腕に度数表示、記憶は保持。他人がTLした場合、度数はそれに応じて戻り、記憶は失う。真琴が事故で偶然にTLしたのが最初。跳躍で実行。どの過去に戻るかは跳躍距離による。胡桃は未来から千昭が持ってきた。千昭は度数ゼロでも時を止める能力も持つ。未来へも行ける。TLすると「自分の得」が「他人の損」となり反映。真琴の事故が、功介と後輩の事故へ転換するなど。【千昭】この時代でしか存在しない絵を見るためにきた。「川が地面に流れているのを初めて見た」「こんなに人が沢山いる所を初めて見た」「この時代好きだよ、野球もあるし」荒廃した未来を暗示。過去の住人にTLの存在を知らせた罪で姿を消す。【おば】TLを容認。経験あるという。絵を修復。彼女の写真の隣にラベンダー。原作の主人公芳山和子であることを暗示。【恋愛】千昭が真琴に告白。真琴は戸惑ってTL。千昭を避けるが、千昭が友梨と付き合うと、千昭のことを好きだったことを知る。最後のTL後、再告白を期待するが期待外れ。未来での再会を約束。【感想】先ず背景画が美しいのに感心。二度と戻ることの出来ない青春の一頁。過去に戻る力を手に入れても、結局過去は取り戻せない。恋愛に無垢な女子高生真琴のオバカぶりはとても面白い。走りっぷり、泣きっぷりが弾けていた。人の心を踏みにじることはもうしないと決意するも「お前TLしてるだろ」と言われ思わずTL、結果度数ゼロ。プラスされたTLを千昭のために使ったのは偉い。絵は何百年も昔の大戦争と飢饉の時代、世界が終ろうとしていた時代の菩薩像。絵を見るためだけに危険を冒してやってきたロマンティストとガラの悪い茶髪少年の間にギャップがある。彼が去ると、級友からぼろくそに噂されていた。千昭は未来に戻れなくなる犠牲を払って功介達の命を救ったが、代わりに誰かが事故に遭う筈。千昭は「未来で待ってる」というが、違う時代の人とは会えない。真琴は「やりたいことが見つかった、それは秘密」と話すが、何か?再会を早めることだとして、何をする?それとも絵を未来に伝えるとか、荒廃しない未来を作ることか。尚遮断機に自転車が突っ込んでもスルーして飛びません。ブレークが効かないのだから。いじめられっ子の最終形を見たかった。 
[DVD(邦画)] 7点(2010-06-20 19:05:32)(笑:1票) (良:1票)

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