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K&Kさんの口コミ一覧[この方をお気に入り登録する

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281.  風と共に去りぬ 《ネタバレ》 
“Gone with the Wind”『行ってしまう』を『去りぬ』とするところに、当時の人のセンスを感じます。 タイトルの『風』って何でしょうね?自然に発生するもの。人に変化をもたらすもの。恋愛。家族。結婚。離婚。死別。戦争。発展。時代…どの時代でも変わらないもの。あぁ『川の流れのように』の『川』と同じような使われ方かな?日本人にも根付いた考え方で、とても共感しやすい発想ですよね。  2:30もの序曲から始まる、雄大、壮大なタイトルと激動の時代。時代の流れに翻弄される登場人物たち。雑草のようにたくましく生き抜く主人公。世界大戦が始まる年に創られ、日本では戦後復興後に公開された本作は、戦中戦後を生き抜いた人たちに多くの共感を持って受け入れられたことでしょう。 そして美しく奥行きのあるカラー映像。今観ても美しさを損なわない完璧な構図。テレビCMなんて無い時代、ポスターと広告の数点の写真、せいぜい観た人の感想しか情報が無い中、まるで“動く絵画”のような映像を劇場の大画面で観せられるんだから、観るものの度肝を抜いたことは容易に想像出来ます。 激動の時代と一人の女性の半生。まるでNHKの大河ドラマと連続テレビ小説をミックスさせたような物語。大河も朝ドラも共に'60年代から始まっているけど、この映画の影響ってかなり大きかったんじゃないかな?  映像の美しさは文句なし。キング・オブ・カラー映画とも言える本作。私は公開から60年近く経って観た訳だけど、まず想像と全然違ったスカーレットの人物像に驚いた。何とまぁワガママで自分本意な女だろう?これじゃ朝ドラの主人公としては大不評だろう。 そして南北戦争を題材にしているのに、戦闘シーンはほぼ皆無。せっかくのスケールの大きさも、後方の負傷兵と焼けた街ばかりが目に入る。これじゃ大河としてパッとしない。今なら映像美だけの映画扱いされそうだけど、それでも、ウケた。 スカーレットの生き様に共感した、当時の女性の支持が大きかったんだと思われます。  ウーマン・リブが叫ばれるちょっと前の時代。映画の中ではもっとずっと昔の時代。誰と結婚しても好きな男のことだけを考え、子供が生まれても“オンナ”を捨てなかった女。このオンナ像は当時の女性たちに、センセーショナルに受け入れられたことでしょう。 天使のようなメラニーを男社会の世の理想とするなら、自由奔放なスカーレットは当時の声なきオンナたちの理想。 有名なポスター観てください。レットがスカーレットを抱いた構図。『美しい女を捻じ伏せるハンサムな男のラブロマンス』に見える。たくましいレットと、か細いスカーレットの肩幅の違いを強調しつつ、最後の最後まで振り回されるのはレットの方。 男社会の中『主人公には共感できないけど、映像は凄い大作映画』を隠れ蓑に、世の女性たちは、声を出さず、したたかにこの映画を支持し、自分の中のスカーレット(=オンナ)を育んでいったに違いない。
[DVD(字幕)] 8点(2023-11-03 11:46:02)
282.  男はつらいよ 寅次郎春の夢 《ネタバレ》 
シリーズ24作目。オープニングが寅さんにしては珍しい、太ももムチムチの健康的なお色気路線。 公開時の決まっている長期シリーズなので、想像通り色々試行錯誤、マンネリ打破、五里霧中(?)な中で、日米対決を持ち込むのも頷ける。シリーズ初のガイジン絡みの作品…と言われたら、マドンナが青いお目々の金髪さん。ってのを思い浮かべそうだけど、茶色の一張羅スーツに大きなトランク。アメリカ版フーテンの寅みたいなオジさんが出てきた。  ぶどうの一件は良いとして、タイガーからの一悶着はちょっと強引だなぁ。マドンナは香川京子。50歳近い寅次郎にとって、娘の林寛子の年齢の女性は、ハナっからマドンナ候補から除外される様になったのかな。どちらにしても2人ともマドンナとしての印象は薄い。大工の棟梁との一悶着は面白かった。  本作は寅とマドンナの話はサブ扱いで『さくらに恋するマイコさん』の話…というか、『さくらに告白するマイコさん』の話。と言うべきかも。一作目以来のマドンナ=さくら回。 大空小百合、準レギュラー格では、もう登よりも多く出てるんんじゃないかな?(※岡本茉莉は登を超える回数出てるけど、小百合はまだそこまで)。蝶々夫人の倍賞千恵子“本気の熱唱”がとても凄い。伸びのある歌声は流石の一言。 言葉の通じない日本でつらい営業周りの毎日。とらやの面々に優しくされ、ついついさくらにそんな感情を抱いてしまったんじゃないかなぁ。マイケル、さくらへの気持ちはどこまで本心だったのか。 マイケルの「I Love You」の回答として、片言英語しか喋れないさくらが、突然の告白に驚きつつも、精一杯マイコさんの気持を考えて「This Is Impossible」と伝える気遣いが温かい。
[CS・衛星(邦画)] 5点(2023-10-29 23:40:02)
283.  風立ちぬ(1976) 《ネタバレ》 
百恵ちゃんと三浦友和の共演4作目。前作『絶唱』と同じく、死に別れる運命の若い男女の物語。 原作小説からのアレンジとしては達郎も徴兵されて戦争に行くというところ。お互いに相手を思いながら、自分の死についても向き合うという環境だけど、この設定が上手に活かされたかどうか。 出征のとき、電話で節子の父に、周りに聞こえないよう受話器を抑えて、生きて帰ることを約束する達郎。一方で節子の訃報を聞き逃した達郎への優しい嘘。当時は戦場には死にに行くもの。たった今、娘を亡くし、婿になるはずの達郎も、帰るあてのない戦場に行く父の辛さ。  このタイトルから、どうしても宮崎駿の映画と比較したくなってしまうけど、観たの公開時だったから、忘れてること多いしなぁ。改めて観てからにしよう。でもどちらも太平洋戦争期に時代設定をアレンジしているね。  百恵ちゃんと言えば『赤いシリーズ』の印象が強く、本作も結核という病が2人を引き裂くところなんか、想像したまんまだ。 不治の病モノは当時の流行りだったかもしれないけど、日本の文学をアイドル主演で映画化し、若者にはとっつきにくい文化を、親しみやすく継承する試みとしてはアリだとも思う。
[CS・衛星(邦画)] 4点(2023-10-24 01:14:04)
284.  男はつらいよ 翔んでる寅次郎 《ネタバレ》 
シリーズ23作目。マドンナが桃井かおりと来たら、どうしてもハンカチを連想してしまうし、2作前の武田鉄矢が出た『寅次郎わが道をゆく』を連想してしまう。もうね、1作挟んで武田→桃井ってキャストだけ決まってて創ったような、ゲスト人気でお客さん呼ぼうって、何とも安易な考えで創ったんじゃないか?って不安がよぎる。  当たらずとも遠からず。舞台は北海道。桃井演じるひとみが人生を見つめ直す一人旅。やすやすと男の車に乗ってしまい、襲われる始末。助けに入るのは健さんでなく寅さん。ここまでするなら、いっそ寅とひとみの北海道から柴又までのロードムービーで一本創ってしまうのも、セルフパロディで面白かったかも?そうするととらや一家がほとんど出てこなくなるけど。 ウエディングドレスで結婚式を飛び出して…画的なインパクトは凄いけど、それだけで終わってしまったような。 布施明もマドンナの相手役としてはどっちつかずな使い方で、何が良くてひとみと結婚したのか、何が良くなくてひとみは飛び出したのか、パンクな若者の行動を、浪花節な寅さんワールドがとりあえず相性は別にして包みこんでしまった感じ。 『布施明だし、歌でも歌うんだろうか?』と思ったら、思ったとおり歌ってたわ。観客の期待するものを観せるのも映画かもしれないけど、そのまんま過ぎる気がしたわ。  いつになく穏やかな寅の帰省は良かった。でもせっかく良い感じの家族団らんをぶち壊す満男の三重丸の作文は、なんか無理やりトラブルをねじ込んできた印象。源を折檻する御前様もちょっと違和感。 タコ社長のお見合い話は面白かったけど…あと当時の丸駒温泉は観られて良かったけど…シリーズ50作もあれば、こういう回もあるんでしょう。
[CS・衛星(邦画)] 4点(2023-10-24 00:23:27)
285.  カサブランカ 《ネタバレ》 
“Casablanca”邦題まま。モロッコの大都市。当時はフランス領で、戦時中は仏が独に占領されたため、ヴィシー政権下。 学生時代、ハンフリー・ボガート(ボギー)って名前だけは結構知られていて、映画観たこともないのに、渋くてかっこいい男の代表みたい扱いだったわ。 名台詞『そんな昔のこと覚えていない』『そんな先のことは分からない』、そして『君の瞳に乾杯』は、40年以上経った日本の高校生でも知ってました。もちろん映画から直接でなく、バラエティ番組や漫画からとかだけど、それでも凄い浸透具合。 初見は割と最近。バーグマンとボガードではかなり年齢差を感じてしまったけど、ボギー当時まだ42歳か、あの渋さで私より年下か…  さて劇中4回も出てくる『君の瞳に乾杯』(※私が観たDVDでは1回めは『謎の美女に乾杯だ』だった)。“Here's looking at you, kid.”は「君のような可愛い子を見つめることが出来ることに(乾杯!)」みたいなセリフですね。つまり『君に逢えた(これから先の)俺は、なんて幸せなんだろう』って意味だと思いました。1度めは出会った時。2度めはパリを旅立ち結婚しようとした時。ともに回想シーンです。 3度めは現代のカサブランカで、ラズロとの間で揺れ動くイルザに言うセリフ。自分のもとに戻ってきたイルザに言うので、復縁の意味にとれますが、リックの表情を観ていると、前2回のように笑顔はありません。自分が今後どうするべきか、頭では解っていたんだと思います。 そして4度め、別れのシーン。パリの思い出を胸に生きていく事を決めたリック。イルザの居ないカサブランカで、ずっと時が止まっていたリックが、いよいよ、この狂った世界で自分がするべき事の為に立ち上がります。 “As Time Goes By”『時が経っても』イルザに逢えた幸せは失われない。という考えに至ったんでしょうね。  プロパガンダ映画として、自分の国土を守るためとか、直接的な利益が手に入らないながら、ヨーロッパでの戦争に参加するアメリカの立場として、正義という名の美学のための参戦というのが、イングリッドの次回作『誰がために鐘は鳴る』と被る部分だわ。 ドイツ軍人の合唱「ラインの守り」を打ち消すフランス人たちの「ラ・マルセイエーズ」の大合唱。シンプルながら自国を思う気持ちを高揚させる。
[DVD(字幕)] 7点(2023-10-23 23:50:03)
286.  ガス燈(1944) 《ネタバレ》 
“Gaslight”邦題まま。ガス灯の街灯は国内でも限られた場所でしか見られないけど、もっと灯がゆらゆらしてるもんだと思っていたわ。 また、相手を自分の思うままに操るために、相手の記憶や正気に疑いをもたせるような、些細な嫌がらせをする心理的虐待を、“Gaslighting”『ガスライティング』と言うそうな。この作品と、元になった同名の演劇から、'70年代に生まれた言葉だそう。公開当時はこの心理的虐待を、なんて呼んでたのかな?  映画ではポーラ側の視点となるけど、ブローチ紛失や手紙の行方など、グレゴリーのやってることが、かなりえげつない。客人を追い返し、落ち込ませ、急に外出しようと言い不安にさせ、サプライズだとホッとさせ、大喜びのところを絵が無くなったと叩き落とす。今で言う“モラハラ”だ。更に追い打ちを掛けるように家政婦に確認。この時代にここまでネチネチした“モラハラ”を題材にした映画(演劇)を創る懐の深さが凄い。  一方でグレゴリーの目的が宝石強盗(泥棒?)で、それを成すための執拗な『ガスライティング』だった。というのがこの物語の顛末だけど、アリスの姪と結婚して、宝石のある家に住むことも出来たなら、ポーラに対し、そこまで回りくどい嫌がらせをする必要があったのか疑問。消えた手紙と、元から無かった手袋の片方。出来過ぎにも思えるけど、一本のサスペンスとして上手に伏線を回収出来ていた。 ただもちろん、この映画の見どころはサスペンスの結末(オチ)ではなく、徐々に精神的に追い込まれ、弱っていくイングリッドを愛でる映画…なんて少々悪趣味な気もするけど、そっちだと思う。 最後助けを求めるグレゴリーに、立場が逆転したポーラが突然まくしたてる展開にはビックリ。「おやまぁ!」って感じ。 印象深い顔つきのナンシーが、若きジェシカおばさんだったのにも驚き。
[DVD(字幕)] 6点(2023-10-23 22:42:11)
287.  ガール・ネクスト・ドア 《ネタバレ》 
“The Girl Next Door”『隣の家の女の子』。“24 -TWENTY FOUR-”のキム・バウアーの子が主演と聞いたら観たくなる気持ちも解る日本劇場未公開作品。 モテない主人公の隣にスゲー可愛い子が引っ越してきた!でもってやることが破天荒!って、かなりありがちなスタート。それは良いとして、ダニエルがマシューを好きになる理由がイマイチよく解らない。個人的にはここをもっと、納得出来る理由を用意してほしかった。  実はAV女優!?良いね、マシューの価値観を根底からひっくり返す展開は面白いと思う。でもだからって即モーテルは生徒会長マシュー君の決断としては短絡的だし、過去を忘れてマシューと向き合おうとしてたダニエルったって、そもそもマシューの何に惹かれたのかが解らなくて… どう観ても悪者なケリー登場。物語はどんどん進んでいきます。もう“Next Door”である必要も無くなってます。何でしょう、CMで興味を持って観だしたドラマが、実は全然思ってたのとは違うくて、毎週どっちに向かって進んでるんだか、よく解らなくなるドラマを、ダイジェストで観てる感覚です。  マシューとダニエルの恋の行方より、ドラッグでヘロヘロ状態のスピーチと、盗まれた25,000ドルをどう穴埋めするかの話が中心になってしまい、ますますマシューの何に惹かれたのかが解らなくなります。これ設定が幼馴染なら解るよ?昔から隣りに住んでたとか。でもダニエルのセンセーショナルな登場と、急激な恋愛関係の割に、後半“友情の3脚関係”に持っていくのは、ちょっと強引な方向転換な気がしました。だからリムジンで二人が初めて結ばれても、どうにも気持ちは盛り上がりませんでした。  エリシャ・カスバートは“24”のキム役をやる前『こどもおもしろメカニック』って教育番組のレポーターをしてたそうです。 そんなキャリアの彼女が“性教育”ビデオを作る映画に出るなんて、ちょっと面白そうだけど、彼女ビデオには出てないんだよな…
[DVD(字幕)] 4点(2023-10-16 23:59:47)
288.  男はつらいよ 噂の寅次郎 《ネタバレ》 
シリーズ22作目。寅がとらや以外の場所で家族と久しぶりの再会をするのは、今回が初じゃないだろうか? バスの中で博の父と再会するのも、いくら何でも偶然が過ぎる気がするけど、まぁマドンナ(&登)とは結構あるパターン。 今昔物語で自分の人生について考え込んでしまう寅が可愛い。人に聞いた良い話が寅が話すと別な話になるのが面白い。今回は怪談話か。思いっきり聞き入ってしまった。さくらの「あら虚無僧」で吹き出したわ。 仮病の寅が救急車で運ばれる。臨場感ある俯瞰図と困ってキョロキョロする寅がまたヒット。今回笑いのツボが私に合ってる。  大原麗子はCMなどで観るイメージ通りの大原麗子。まさに可愛い大人の女性。なのに男はつらいよの世界観から浮くことなく上手く馴染んでる。 お弁当食べて「あは…見ないで!」の色っぽさ。三角巾を結べず「寅さんあたし泣きそぉ…」のエロさ。帰ろうとして立ち上がりおばちゃん(!)に抱きしめられる躰の細さ。ぱっと見何でもないシーンなのに、これだけ伝わりやすい色気を感じさせる女優さんは他に居ないんじゃないだろうか?  ついでと言っちゃアレだけど泉ピン子も当時(渡鬼以前)のイメージ通りのピン子だったわ。最初だけ登場かと思ったら、また美味しいところで出してくる。 「離婚、離れる、切れる、別れる。この手の言葉は一切使わない…」このパターンも久しぶりな気がする。シリーズ初期を彷彿とさせる丁寧な出来。マンネリも適当に創れば適当な出来になるし、しっかり創ればしっかり面白くなるんだな。 久しぶりの飃一郎。博の家で居心地悪そうな空気なのに、寅が来ると知るとパァッと明るくなるのが可愛い。 添田の後を追うよう早苗を諭し「(話は)明日聞くよ」と言いつつ旅に出る寅の不器用な優しさがとても沁みる。寅さんスタンダードな作品にして、寅さんの魅力がギュッと詰まった作品。
[CS・衛星(邦画)] 7点(2023-10-16 22:55:31)(良:1票)
289.  A.I. 《ネタバレ》 
“Artificial Intelligence”『人工知能』。今さらだけどそのまんまだったんだ。 スピルバーグの代表作“E.T.”を彷彿とさせるタイトルから、相当な意気込みで制作された作品だったんじゃないだろうか? キューブリック原案の作品とのことで、もしキューブリックが監督していたなら、ブルー・フェアリーに祈るデイビッドのその後がバッサリ無かったんじゃないか?とも言われているけど、もしかしたら常人には理解不能な2000年後が描写されて、頭ん中“???”状態のエンディングになってたかも? でもスピルバーグだから、常人が納得できる『めでたし、めでたし』なエンディングを用意出来たようにも思える。  食事中急にツボに入って大笑い。モニカをママと呼び方を変えたのに、ヘンリー(父)はヘンリーのまま。自分じゃ靴紐も結べない子供。純粋に母の愛情を求めるデイビッドって、もう人間の子供じゃないですか。ちなみに私は劇場で観た時、テディが髪の毛を一房出した時、ボロ泣きしてしまいました。 髪の毛に残るモニカ記憶は、まだデイビッドに危険を感じる前の記憶。だからモニカはデイビッドに無条件に優しかったんだと思う。  神が人間を造ったように、人間がロボットを造った。 未来のロボット(スペシャリストだって)は人間を観たことがなく、かつて人間と接していた最後のロボット=デイビッドを通して、初めて人間を観る。 人類はとっくに滅んでいるけど、クローン技術で人間を作り出すことは出来るけど、彼らスペシャリストにとっては、クローンよりデイビッドの記憶こそが、貴重な人類最後の足跡だったんだろう。 スピルバーグ作品だけに、クローンのT・レックスよりヴェロキラプトルの鉤爪の化石のほうに価値を感じる博士のよう。 クローンのモニカを眠らせ、デイビッドも人間として眠り、ここで人類の歴史が終わる。 この映画がどこか物悲しい最後なのは、この先、ロボット達からは何も産まれないからかもしれない。
[映画館(字幕)] 7点(2023-10-16 21:59:50)
290.  駅馬車(1939) 《ネタバレ》 
“Stagecoach”邦題まま。中学生の頃、退職する映画好きの先生が最後の授業で紹介してくれた映画。 先生が子供の頃は、映画館で一本の映画をず~~っと、それこそセリフ覚えるくらい何回も観てたんだって。入替制のない時代の話。劇場出たら再入場できないし、中で食べ物買うと高いから、おにぎり持参で朝から晩までぶっ通しで観てたんだって。私も当時、せっかく観るならと最低2周はしてたけど、昔の人は気合入ってんな~って思ったっけ。 45分の授業だから、ビデオで観せてもらえたのはインディアンとのチェイス・シーンのみ。先生はこのシーンを始めて観た時の衝撃を熱心に話してました。 当時の目で観ると、古典的な西部劇映画だなぁ。程度の感想だったけど、先生には50年経っても色褪せない作品なんだろうなぁ、って。今にして思うと、先生の駅馬車は私にとってマッドマックス2なんだろうね。今の子の目にどう映ろうと、自分が子供の頃に観た映画の興奮って、何年たっても色褪せないものだわ。  最近になって初めてきちんと観たけど、まぁ面白い。アクションは後半に集約されているんだけど、静かな前半でそれぞれの人物の背景がきちんと書き分けられていて、すごく解りやすくて、みんな魅力的。99分の映画(あれ?私のDVDは95分だぞ??)で、主要人物9人も出してるのに、詰め込み過ぎにも駆け足にも感じさせないのは上手い。 エンド・クレジットを観るとジョン・ウェインよりクレア・トレヴァーが先なんだな。  ローズバーグに進むか引きかえすかの投票は、自分も参加してる気持ちで考えてたし、飲んだくれの先生が子供を取り上げたところなんて『頼むぞ先生』って思えた。赤ん坊にリトル・コヨーテと(勝手に)名付け、まるで家族が増えたかのような喜びようも凄く共感。 チェイス・シーンで最初に“いい人”ピーコックが討たれる突然の展開感も上手い。馬車馬に轢かれるインディアン、先頭馬に飛び移るスタントは確かに迫力がある。謎の紳士ハットフィールドのモヤモヤを遺言一言で解決。 キチッと描ききったチェイス・シーンに対し、たった3発の弾で挑むリンゴの最後の決闘は映像で観せず音だけのハラハラ演出。そして最後、荒野へと掛け出す馬車のスカッと爽快感が素晴らしい。 こんな古い映画なのに、娯楽映画として完成されている。歴史的価値ではなく、1本の娯楽映画として評価したい。
[DVD(字幕)] 9点(2023-10-15 09:56:26)(良:1票)
291.  男はつらいよ 寅次郎わが道をゆく 《ネタバレ》 
シリーズ21作目。遂にUFOやっちゃったよおい。スター・ウォーズに未知との遭遇(あと猿の惑星も入ってたな)の時代。劇中2回も出てきたけどピンク・レディーのUFOが流行ってたとき。ウチにもシングルレコードあったわ。良くも悪くも悪ふざけ全開。寅さんの帽子型UFOと来た。テレビの砂嵐と臨時ニュース観て、インデペンデンス・デイがこの時代のプロットで創られてたことを地味に再認識。  前作から続き、当時の人気タレントをゲストに迎え、寅さんワールドで惚れた腫れたする本作。初期作品とは明らかに作風が変わってきたことを実感する。 武田鉄矢が出てくると、なんか寅さんって感じがしなくなる不思議。キャラが黄色いハンカチの欽也のまんま。そりゃ面白いけど、映画のアイデアとしては安直かなぁ。この留吉がほぼほぼ本筋に絡んでこない。隅っこで何かチョロチョロしてるなぁって感じ。 マドンナの奈々子がさくらの同級生。1作目でさくらが寅の事を覚えてなかったのに、奈々子が寅を覚えてたって設定。過去作のマドンナの名前を列挙するくらいしっかり尊重してる作品だけに、もう少し矛盾なく出来ただろうに…と思ってしまう。 そして奈々子もとらやにやって来て、急に泣き出したりと住人お構いなしにぶちまけて、もうこんな時間!と勝手にさっさと帰ってしまう。この落ち着きのないマドンナ設定、コレで正解だったんだろうか。雨の中のキスにも違和感。  松竹歌劇団…というものがあったのか。歌劇団って宝塚歌劇団だけじゃなかったんだ。SKDが帝国華撃団(サクラ大戦)のモトネタだったのか。勉強になるわ。 歌劇のシーンが結構長い。寅と留吉が歌劇をじーっと観てるシーンが続くのは、シリーズ的にはちょっと違和感を感じてしまう。映画の中で歌劇の魅力を伝えようって意図だろう。劇団員なんかも本物の歌劇スターなんだろう。坂東鶴八郎一座とは華やかさが違う。 ただ、SKDの魅力。木の実ナナのワイルドさ。武田鉄矢の勢い。それらを“男はつらいよ”で受け入れる。そのミキシングが、どうにも上手く絡まってるようには思えない。それぞれがそれぞれで、散らかったまま一つの作品にしてしまったかのよう。 ただ一番残念だったのは、タコ社長の「なにか面白ぇことないかなぁ、寅さんまだフラレねぇかなぁ」のセリフ。梅太郎、腹ん中でそんな腹黒いこと楽しみに思ってたのか?うっかり者だけど良い人だと思っていたのに…
[CS・衛星(邦画)] 4点(2023-10-10 23:08:06)
292.  8 Mile 《ネタバレ》 
“8 Mile”デトロイト市の都市部と郊外を分ける通りの名前で、黒人の多い貧困層の内側と、白人の多い富裕層の外側とに別けられる。…札幌だと新道かな。 で、主人公ジミーは内側に住む白人。いわゆるホワイト・トラッシュです。そりゃ自然とラップも身に付くでしょう。白人からは見下され、黒人からはハンパもの扱いされる。男の世界で生きていく女みたいなモン。  「B・ラビット凄いね!(でも白人でしょ)」みたく、どんなに才能があっても、どこかで“認めてもらえない”空気があるんでしょう。SDGsの無い世界だから、MCバトルでも白人なのをガンガン責められる。そんな埋められないルーツを覆したエミネムって、やっぱ凄い。 ロックが下火になってた時代、エミネムのヒップホップは売れまくってた。けど保守的な評論家は彼のアルバムを認めなかった。「エミネムまたチャートインしてるよ!(でもラップでしょ)」みたく。  “Lose yourself ”『のめりこめ』。エミネムの自伝とも言われる本作で、如何にして彼がラップの世界で認められたかが描かれる。彼の伝説の序章。あの最後のバトルに勝って、全てを掴んだわけじゃない。あのバトルで終わったわけでなく、家族の問題も仕事も恋愛も、何も解決しないまま、これから始まっていく感じが堪らない。 あのバトルから始まり、貧困層に認められてアルバムが売れ、富裕層も興味を持ち、この映画で世界が注目し、遂には保守層も認めてロックの殿堂入りしたのは2022年の話。
[DVD(字幕)] 6点(2023-10-06 20:41:02)
293.  ヱヴァンゲリヲン新劇場版:Q 《ネタバレ》 
いきなり14年後だと?ミサトが何でシンジに冷たいかわからない。アスカがいきなり殴り掛かる意味がわからない。レイが敵っぽいのも敵がネルフなのも意味不明。シンジがレイを助ける決断が、人類にとって裏目に出たのは、何となくわかる。 だけど、どこかでそれを説明しないと。シンジも私たちも置いてけぼり状態。  少なくとも私は、破の次回予告で観せたような“その後”が観たかった。意味不明で消化不良な終わり方をした『THE END OF EVANGELION』。制作者側も“失敗作”と思ったからこその、リビルドだったろうに、どうして“その後”を丁寧に創らずに、14年も時代をスッ飛ばした?? 14年前と言や旧作のセカンド・インパクトからエヴァ1話までの時間が経過している。観たいと思った“その後”の話は、もう“前の時代の話”ってくらいの時間が経過している。こんなのって、あるかい?  オーバースペックな空飛ぶ巨大戦艦。今までは使徒という謎の敵に、通常兵器の延長線で戦いを挑む人類。エヴァだけがオーバースペックな存在だったのに。 ごちゃっと増えた新キャラたち。トウジの妹は良いとして、エヴァの名のあるサブキャラって、闇雲に増やさないと思ってたのに。 ネルフVSヴィレ。他の人類どうなった?本作観る限り全滅してるんだろうな…カシウスの槍?なにそれ?いろいろ、大丈夫ですか? この土壇場に、どうして今までやらなかった新しいことを、いっぺんに詰め込んできた?新劇ってリメイクでなくリビルドなんだよね?あともう1作で終わらすんだよね?なんかもう数作追加しそうな雰囲気が感じられて、そんな商売っ気を勝手に読み取ってうんざりしたわ。  レイの別人設定にも、カヲルとシンジの仲の良さにも、壮絶っぽい最終決戦にも、カヲルの死にも何の驚きもなかったわ。まさに『14年前に観たかったこと、14年前に終わってたであろうこと』を、今さら観せられてる気分。リビルドでどう持ってくるかに興味があったのに、放り投げられた気分。 続編に当たる『:||』 が、割とすぐに公開されていれば、本作の印象も大分変わっただろうけど、9年後だもんな。長いよ。 あまりに説明不足で、どれだけ凄い映像を観せられても気持ちが乗らないまま最後まで来てしまった。本作で良かったところと言えば、最後3人が揃って歩いていくところ。ここでやっと前作からの空白が埋まった気分。じゃあ、ここまでの約90分、何を観せられてたんだろう?って気持ち。
[地上波(邦画)] 3点(2023-10-04 23:03:35)
294.  イン・ハー・シューズ 《ネタバレ》 
“In Her Shoes”『彼女の立場』。劇中のヒールの印象的な使い方とタイトルがマッチしてます。 余談だけど、PCでみんシネの◆検索ウィンドウ◆の検索欄を見ると、何故か『イン・ハー・シューズ』がデフォで入ってます。なんでだろ?私だけ? 『メリーに首ったけ』みたいなコメディだと思って観たから、案外真面目な内容に結構衝撃を受けました。  ふらふらとその日暮らしの遊び人マギーと、生活の安定と引き換えに弾けた生き方ができない堅ぶつローズの姉妹。 一見マギーのほうが楽しくて幸せそうに思えたけど、たった1日飼っただけの犬“ハニーバン”の思い出が忘れられないところから、空っぽのまま成長したんだろう。テレビの2次審査でセリフが読めなくて追い込まれるときの辛そうな表情が妙にリアル。 ローズのような安定生活“だけ”の人。上司ジムの気まぐれに利用される“だけ”の人生。シカゴにサイモンと行かせる時点で脈ナシなんだけど、そんな薄い縁にすがるほど追い込まれてるローズ。  二人がケンカ別れして、離れ離れになる。意気投合して2人の心が繋がっている時は1つのカメラにツーショットで収まり、言い争いをする時はそれぞれワンショットでギスギスした空気を演出するなど、結構計算された映画です。 姉妹の関係から今後の生き方まで、自分の力で人生を変えていく物語ですよね。お互いに新しい生き方を始めると、今まで意識していなかった“彼女の立場”が徐々に入り込んでくる。弁護士事務所を辞めて活き活きとその日暮らしを始めるローズに、“元気なシニアの施設”で得意分野をビジネスに変えていくマギー。何かどっちも『今までより良い』生き方に思えます。 アノ階段を犬と一緒に駆け上がるローズ。教授との読書で、詩の意味を理解したときのマギー。人生が変わる爽快感が伝わってきます。  もう一人の重要人物、祖母のエラ。幼いときに母親を亡くしている二人にとって、本当の母親代わりとなる人物。そして娘にしてしまった仕打ちをずっと後悔して生きてきた過去。自分の娘がどんな最後を迎えたのか。孫の口から語られる真実。ここに来てようやく理解できた娘婿の感情。 年老いた老婆だって人生を再構築する事ができる。壊れたまま終わるはずだった、娘婿マイケルとの再会。地味だけど良い演出でした。
[DVD(字幕)] 8点(2023-10-02 22:07:01)
295.  男はつらいよ 寅次郎頑張れ! 《ネタバレ》 
シリーズ20作目。この時期の作品にしては、タイトルが投げやりな気が…何だい?『頑張れ!』って。思うにシナリオが決まりきらず、どうとでも捉えられるようなタイトルにして、見切り発車をしたんじゃなかろうか? そう考えると本作は当時大人気・中村雅俊に、駆け出しの有望株・大竹しのぶの恋愛者で行こう!そこだけは決まってたんだろうかね?ね。  さて、今回の夢は、悪夢だ。金持ちになったおばちゃんの雰囲気の変わりっぷりが面白い。 消えた人がふと出てくると嬉しさを感じてしまう。今回は轟巡査が16作目以来の登場。押し売り容疑に猿の逃走に、警官が活躍する回だから登場したのかな? 寅のワット君へのコーチングは見事。デートの情景が目に浮かぶよう。どうしてコレを自分のときには活かせないのか。ワット君、デートでアドバイス通り邦画を観てるけど、なんて作品だろう?かなり気合の入ったホラー映画。 とらや大爆発は…なんて言って良いのか…寅さんにこういうドリフっぽい笑いは求めてないんだけど、まぁ、色々マンネリ打破で迷走してる時期なんだろうね。マドンナが物語半分くらい進んでから出てくるのも風変わり。 完全に若い二人の恋模様がメインだもの。前作の殿様と鞠子さんに続いて、寅の恋が添え物。  歯の裏に付いた栗の渋皮を取ろうとするタコ社長と、それを無言で見守るとらやの面々がなんか思いっきりツボでした。タコ社長可愛い。 「うわぁあっ活きてる~!!」伊勢海老を見て驚くさくら。寅さん史上、一番の大声を出してた気がします。コッチも可愛い。
[CS・衛星(邦画)] 5点(2023-10-02 21:33:49)
296.  宇宙戦争(2005) 《ネタバレ》 
“War of the Worlds”『世界(同士)の戦争』。地球世界VS火星世界の戦争。みたいな意味のようです。火星人が地球に攻めてくる古典SFをベースとした、1953年の同名映画のリメイク作品ってポジションです。 久しぶりのスピルバーグ版宇宙人映画だけど戦争描写は息が詰まるほどリアルで迫力があるので、この大昔のシナリオがどのように現代ナイズされるのか、結構ワクワクしていました。でも当時、なんかイマイチ不完全燃焼だったって評価が多かった気がする。  日常世界に現れたトライポッドの恐怖と迫力は見事でした。恐怖の中、どこからともなく人々が集まり、アテにならない噂話を広めていく様子は、突然災害に巻き込まれた不安感の表現としてリアルで見事。一方で炎の中からメラメラと迫りくるトライポッドの巨体表現はSF映画の真骨頂。流石スピルバーグです。 灰になって弾け飛ぶ人。川を流れる大量の死体。住宅街に墜落しているジャンボジェット機。炎を吹いて走っていく電車。火だるまで引き返してくる軍用車両。単純な爆発で終わりでなく、奴らに何をされてこうなってるのか?って考え込んでしまう被害状況がスピルバーグらしい。 高速を激走するフェリエ一家の車をグルグル取り巻くカメラワーク。日本のアニメのように、ダコタの見開いた大っきい目から引いていくカメラなんか、結構印象に残るけど、一番は窓に張り付くピーナッツバターパン。  本作初見以降に'53年版も観てる。内容ほぼ忘れてるけど。確か大筋はほぼ変わりないんだけど、リメイクで家族の物語を入れてきたのが大きな変化だったかな。主人公たちは一般的なアメリカ市民になってる。だけど何だろう、なんかスッキリしない。 現代ナイズされた映像に対し、ストーリーが古いままだからだろうか?あれだけ高度な宇宙人(火星人とは言われてないんだよな)が、'53年版同様、細菌でアッサリ全滅するからだろうか?  ①期待した展開にならない。ダメ親父のレイは最初巨大なクレーンを操縦している。これ観て真っ先に『レイがこんな巨大クレーンを操作して、トライポッド倒すんじゃないかな?』なんて思ったけど、全然そんな風にはならず。 ②宇宙人の攻撃に一貫性がない。見境なしに灰にしたかと思えば、丁寧に捕獲して血吸ったり、トライポッドの中に飲み込んだり。じゃあ川を流れてた着衣無傷の大量の死体は何だったの? ③動かないハズの車。奪い合いになるほど貴重な動く車なのに、フェリーには大量に動きそうな車が積んである謎。ってかそもそもフェリーはどうして動けるんだ?軍のジープやヘリも普通に動いてる。戦闘機も飛んでる。コイル交換したからか?でも墜落したジャンボジェットはそもそもどうやって飛んでたんだ? ④無敵のトライポッド手榴弾で大爆発。主人公らしい大活躍!なのに、特に持ち上げることなく淡々と流された感じ。その後勝手に倒れてたり軍の反撃で倒されるトライポッド。いまいち盛り上がらない気が… ⑤冗長な小屋の話。'53年のやつにも同じようなのがあったと思うけど、小屋の一件が無駄に長い。CG技術でスケールの大きな話に生まれ変わったのに、急にレトロなホラー映画みたいになってしまう。リメイクで再現する必要があったのか謎。 ⑥家族揃って無事再会すればハッピーエンド?先に帰ってるロビー。どこでレイを追い抜いたんだ?でも服がボロボロだから戻ってきたばっかりなのかな…あんま興味湧かないけど。家族の物語にしたのに、子供たちは奥さん引き取るし、再婚相手が無事で居るから、子供たちとの絆が深まったところで、この先どう持っていくのか?ってところで終わった。 宇宙戦争の現代版リメイクと言うなら、細菌をコンピューターウイルスに作り替えた、インデペンデンス・デイの方がよっぽど弾けてたかな。
[DVD(字幕)] 4点(2023-10-01 23:09:51)
297.  男はつらいよ 寅次郎と殿様 《ネタバレ》 
シリーズ19作目。しかし思い切ったタイトルだ。『寅次郎とお殿様』『殿様と寅次郎』『寅次郎と殿様』さぁどれが一番座りが良い? 冒頭の鞍馬天狗。殿様がかつての鞍馬天狗の名俳優。というのは観終わってから知ったこと。山田監督の映画愛ですねぇ。モモヒキの下りがちょっとツボ。 ピアノ事件を彷彿とさせる鯉のぼり騒動。急いで鯉のぼりをしまう博の勢いと、怒らずに踏みとどまる寅にホッとしたところ、犬のトラ騒動で追い打ち。博が引き金弾いてしまうのが面白い。けど、この犬のトラ、もう出てこないのね?次作からならともかく、本作前半しか出てこないとか、一発屋にしても短命な… 後半のフルーツ盛り合わせも、いつ寅が気が付いて怒り出すかハラハラものだが、爆発させない不発演出。ある意味意外性狙い?  殿様だから、もっともっと漫画チックな展開(殿様コスプレとか)かと思ったけど、そこは踏みとどまったかな。冒頭の夢がこの映画の遊び部分だから、本編はあまり脱線してほしくないって気持ちがある。吉田を斬ろうとする場面。寅が押さえつけても刀を引っ込めない(当たると危ない)ところから、あれ竹光なんだろうな。殿が怒って吉田が逃げる。そんな遊びを2人でしょっちゅうやってるんだろうね。「宮仕えは辛いねぇ」  「鮎の塩焼き600円?美味くも何ともないしあんなの」名物なのにそこまで言う。時代だなぁ。 本作はマドンナとの旅先での絡みが旅館の挨拶だけと薄い。その為か寅との恋愛模様も薄い。どちらかと言えば鞠子は殿様にとってのマドンナだ。 さほど付き合いのない同士の寅と鞠子をくっつけようなんて、殿様の世界観の狭さが見て取れる。それは寅が東京から来たというだけで「鞠子という女を知らんかね?」なんていうくらい。さくらの電話に、ただ「はい!はい!」と答えるのが精一杯の殿様がどこか悲しい。
[CS・衛星(邦画)] 5点(2023-09-29 22:27:56)
298.  愛しのローズマリー 《ネタバレ》 
“Shallow Hal”『薄っぺらい(=うわべだけの)ハル』。太った子が薄っぺらに見える。…なんて意味はないだろうけど。 ハルにとって初見の人“だけ”内面の美醜が外観に反映されるって設定が面白い。初めて会う社長夫人はスマートだから、ローズマリーは父親似だと思ったわ。催眠術を解かれてからの婦人はぽっちゃりしてて、あぁこの婦人の内面の綺麗さが遺伝したんだな(父親からは頭の良さを)。そして両親の遺伝子と、たぶん止める者の居ないハイカロリーな食生活(家政婦ヘルガさんも同じような体型)が、ローズマリーをあの体型にしてしまったんだろう。  恐らく催眠術中、内面がきれいな美女は美女のまま。内面が汚いブスはブスのまま。なんでしょうね?たぶん。 小児病棟の件。大人の女性と違い、少女は催眠術で美人にもブスにもならず(病棟には小太りの子も居たね)、ただ火傷が消えただけ。 前回と同じく接しようとするハル。少女の真実に驚きながらも、まっすぐ少女の目を見て話すハルに、何度観ても涙が出てきます。  ハルは心から美女だけを狙っていたわけではなく、父親の遺言『美女をモノにしろ』が強い暗示になっていたんだろうね。催眠術に掛かったハルにはローズマリーが『とびきりの美女』に見えていた。正直この段階で、内面の美しさは二の次だったようにも思う。彼女と一緒に居て楽しい。それだけだと。 催眠術が解かれた際に、『美女をモノにする』という父親からの呪縛も一緒に解けてたんでしょう。外見とか内面とかでなく“ただ愛する人とずっと一緒にいたい”という事に気がつく、良い終わり方でした。  表向きは太った女性がハルにだけ美人に見える、そのギャップを楽しむ単純なコメディ作品。この作品はほんの22年前なんだけど、最近は人の見た目を表立ってネタにするのがタブーな時代になってきた気がします。今はブスとかデブとか言うことに厳しい時代。美人とかカワイイとかは当時とほぼ一緒なのに。当時と今と、どっちが息苦しい時代なのか、ふと考えてしまいます。
[ビデオ(字幕)] 7点(2023-09-27 21:48:14)
299.  イミテーション・ゲーム/エニグマと天才数学者の秘密 《ネタバレ》 
“The Imitation Game”『模倣ゲーム』。コンピューターに人間らしい回答をさせて、人間臭さの精度を見るテスト。って解釈かな?それで良いのかな?まぁまとにかく、主人公アランが嫌なヤツとして確立していて、この人を主人公にして感情移入できるのかなって不安になる出だし。 ギスギスしたチームにジョーンが加入、まさに人間関係の潤滑油。研究とは無関係な場所からヒントを得て(よくある展開といえばその通りだけど)の、困難を乗り越えての解析装置完成は、どんよりした空気が吹っ飛ぶカタルシスを感じました。 …まさかここからが真のドラマの始まりだったとは。  大局的な勝利のために助けられる味方を見殺しにする。神の目を持ちながら感情に流されず、必要最低限の情報利用に留まることは、どれだけ心身が疲労することだろうか。信頼できる仲間がスパイ。ナチスはいま戦っている敵だけど、将来はコミュニズムとも戦う時代が来る。敵にバレちゃ不味い機密情報を仮想敵のスパイが共同制作している。あぁこれこそ、タイトルの『イミテーション・ゲーム』だな。  可能性だけど、どこかの戦闘で暗号機と暗号解読員が奪取されて、ドイツ軍が“送った暗号が筒抜けになった可能性”を考えて、アランたちとは無関係に、新エニグマを開発する可能性もあっただろう。もしくはエニグマ解読を大々的に活用したとして、ドイツが次なる暗号機を、すぐに作ることが出来ただろうか?伸び切った各戦線に暗号機を配備して、誤用・誤解釈なく運用できただろうか? アランは青酸カリ入りのリンゴをかじって死んだそうな。彼の死から30年後にかじられたリンゴがトレードマークの『マッキントッシュ』が世に登場する。
[インターネット(字幕)] 7点(2023-09-25 01:26:33)
300.  男はつらいよ 寅次郎純情詩集 《ネタバレ》 
シリーズ18作目。前作のジョーズ同様、寅やさくらがカサブランカをボカすことなく演じてます。 旅の一座・坂東鶴八郎一家と会うのは8作目以来。大空小百合も大人になったなぁ~なんて思ってたけど、岡本茉利は前作・前々作にも別役で出てたのね。 評判の悪い寅の無銭飲食。私は最初から払えない気満々の余裕の寅に思わず笑ってしまった。そして家庭訪問の一件では、寅が一方的に悪いわって思ったわ。でも自宅アパートでなくとらやを使ってしまった博もダメだわ。 浦辺粂子のばあやが懐かしい。ちゃんと十字架ぶら下げてるのが可愛い。  マドンナが柳生先生と思わせておいて、実はそのお母さんというのは中々の変化球。 男はつらいよで劇中のキーパーソンが死ぬというのは、2作目の散歩先生以来かな。しかも今回はマドンナ。でも予め「余命僅か」なのを知らせ、雅子とさくらだけ重たい部分を背負ったカタチ。柳生家ととらや一家が揃っての夕食。両家のお祈りの長さ合戦とかシリーズらしい明るい空気と、綾の仕事話でワイワイ盛り上がるとらや一家と対象的な2人の表情が何とも辛そう。 極め付きはイモの煮っころがしを作るさくら。寅に急かされるけど、悲しみを堪えて煮物の準備をするさくらの優しさが伝わる。  柴又の駅でさくらに『花屋』の話をする寅。こういう話はとらやでみんなにでなく、さくらにだけ伝えるのが寅らしい。今さら言っても仕方のないこと。もう済んでしまったことだけど、血の繋がったさくらにだけは知っておいてほしい。そんな気持ちから出た言葉。柳生家のお嬢様の悲しい運命を背負わされたさくらが、寅の言葉でどれだけ肩の荷が降りたことか。 そして雅子が務める新潟へ。雪深い新潟には寅の仕事はないだろう。それでも来てくれる寅。退院してからの綾は、寅と過ごせて幸せだったに違いない。
[CS・衛星(邦画)] 5点(2023-09-25 00:39:57)
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