361. 九龍の眼/クーロンズ・アイ
《ネタバレ》 “警察故事 續集”『警察物語 続編』。え待って九龍は?九龍城が舞台でないの?これ?最後まで九龍城砦いつ出てくるんだろう?って期待してしまったよ。前作の『国際警察』ってタイトルのいい加減さはwikiで見たけど、これもかい。エンディングの歌が『英雄故事』だったので、今回観たのは日本公開版だった模様。 出る車出る車ほぼ三菱の自動車。警察も悪党も一般人も、トラックもワゴンもセダンもハッチバックも三菱とことん感謝祭。メインスポンサーだからだけど、当時の香港にきらめくシチズン、富士フィルムのネオン。キヤノンのカメラ、ソニーのオーディオ。日本企業が元気で、良いものをどんどん取り入れる香港の元気さが溢れてます。いまのスマホの時代に、地球の裏側のニュースを即時に知ることよりも、日本製品があふれる当時の映像の方が、世界との距離が近くに感じられる気がします。 前作の直後から始まるストーリーで、チェン(チャン?)と警部と署長のやり取りが面白く、それぞれの立場で部下や上司を動かす工夫とかが、上手いなぁって思う。警部の「私が居なければ署長はあまり怒らない」とか、実際会社でもそういう場面ありますもんね。『私は死んでも市民を守る覚悟です』の3連打なんて最高です。この警察署の物語をず~~っと見ていたい気持ちになりました。あ、みんなで一面ピンクの文字だけ新聞読んでるの、なんか変。 ストーリーは、中盤からの路線変更の大手術の影響がモロに出ていて消化不良。もともと、この頃のジャッキー映画にストーリーを期待してはいけないんだけど、やっぱり“撮りたいスタントシーンありき”で、それらを繋げ合わせた感を強く感じます。ポリス・ストーリーなのに。ジャッキーが特別班(一見ゴロツキだけど…?)のリーダーになるけど、彼らの目立った活躍は取り調べで女性3人が大暴れするところくらいで、あれだけ人数出したのに活かしきれてないかな。 前作に引き続き、出るたびに痛めつけられるメイ。爆竹投げられたりバイクで車に突っ込んだりと、今回も酷い目にあってるけど、映画的に一番酷いのは水鉄砲をチェンが避けて自分に掛かるシーン。あれ銃だったらチェンのかわりにメイ死んでるし。 ジャッキー映画ではNGシーンはお約束だけど、マギー・チャンの流血はドン引きしてしまう。う~ん…彼女が無事生きてたってだけで、ビックモローの事故並みにショッキングな映像でした~~~ホンチ!! [インターネット(字幕)] 6点(2023-06-03 14:05:10) |
362. ゼロの焦点(2009)
《ネタバレ》 よく創られた映画でした。'57年頃の東京の夜景や金沢の街といった、在りし日の風景を自然に再現していました。こういう、地味だけど印象深いシーンにお金を掛けている邦画って、近年あまり無いと思うので、なんか嬉しかったですね。 原作も前作も観ていないので、ピンとこない部分も多かったとは思うけど、そうかこの作品から2時間サスペンスの“崖の上のラスト”が産まれたのか!と思うと、本作でもそれは再現してほしかったような気がします。崖の上のアレはあまりにもベタだから…って考えたんでしょうかね? あれだけの荷物と本の山から偶然2枚の写真を見つける。夜に10m以上離れた先にいる人物の背中を見て宗太郎だと解る。数言の英会話を聞いただけで久子がパンパンだと見破る。あの日のキャラメルの箱がカサコソと…サスペンスの主人公らしいっちゃらしいんだけど、割と重めな映像の割に、禎子の行く先々が事件の真相に向かってピンポイント過ぎて、どこか漫画のよう。それなら崖の上のラストも是非!なんだけどね。 ゼロの焦点というタイトル。“ゼロ=無かったこと”に焦点が当てられる。という意味でしょうか。昔パンパンだった過去を消し去り、社長夫人として生まれ変わった生活をする佐知子。佐知子と同じく過去を消し去って生まれ変わろうとした憲一。「イチからやり直そう」という言葉があるけど、イチではなく過去をゼロにしなければいけない佐知子によって、悲しい殺人が引き起こされる。 佐知子の罪を全てを被る儀作。佐知子にとって単に社会的地位だけでなく、儀作の優しさも、いまを捨てられない要因なのかもしれない。 そもそも憲一が久子と生きていく道を選んでいれば、誰も死ぬことはなかったのかな。自殺に見せかけてまで身ごもった久子を捨てて、旧友の佐知子に名前を伏せて押し付けるなんて、憲一の過去の消し方の雑さが気になりました。 [CS・衛星(邦画)] 6点(2023-06-01 23:47:27) |
363. 座頭市血煙り街道
《ネタバレ》 シリーズ17作目。しかし5年で17作って、当時の日本映画のハイペースさに驚くばかり。 座頭市観るのは2作目だけど、劇中突然歌い出したのには驚いた。シリーズを重ねるうちにそういう映画になってたのか? 歌は花のさだめ(2番)。歌うは中尾ミエでございます。本作公開が12月、レコードが年明け1月に出ていたようで、何かコラボだったんでしょうかね? 歌には驚きましたが、市のキャラクターは安定して魅力的。前観たのでは「メクラ」「ドメクラ」とイイように言われていたけど、ゲスト俳優からは「目の不自由な人」「おメクラさん」と、ちょっぴり配慮が見られた。 本作は小さな子供とのふたり旅。これがまた結構な悪ガキなもんだから、市相手に悪戯を仕掛けるんだけど、石ころの頃にはお互いに悪戯合戦になっていって可愛らしい。母・おみねの似顔絵を市が庄吉に見せるシーン。良太は悪戯のつもりで市を描いたんだろうけど、使われ方が上手くホロリと来る。 権造一味との殺陣の華麗さは見事。シリーズも回を重ねると、目新しさを出すのも大変だろうなぁ。 実力伯仲の赤塚との真剣勝負。市が庄吉を守るために刀を投げてしまう。他人の親子を救うために無防備で立ちふさがる市が格好いいし、対する赤塚が自身の負けを認めるのも格好いい。 [インターネット(邦画)] 6点(2023-05-31 23:30:32) |
364. レイダース/失われたアーク《聖櫃》
《ネタバレ》 “Raiders of the Lost Ark”『失われた聖なる櫃の略奪者たち』かな?古風に表現すれば『聖櫃泥棒』とかになるかと。私のDVDセットでは『インディ・ジョーンズ/レイダース 失われた…』とシリーズ化を前面に出していました。 兄「来週金曜ロードショーでレイダースやるぞ」私「なにそれ?面白いの?」兄「面白いぞ」姉「ふぅ~ん、レイダースやるんだ~」私だけ知らない映画らしい。映画に興味の薄い姉さえ知っているのがなんか悔しい。悔しいからそれ以上食いつくのを止めたっけ。'85年秋のことでした。 いよいよ金曜日。この音楽。この主人公…え?これって去年すごい流行ってた“インディ・ジョーンズ”じゃないの??新春かくし芸の“インディ・ジューンズ”の元ネタの映画じゃないの?まさかレイダースとやらがインディ・ジョーンズとは思ってなかったから、凄い得した気分♪ 背中にびっしりの蜘蛛に驚き、ミイラ化した死体に驚き、トラップにイチイチ驚き、黄金像と砂袋にガイドの男と同じ気持ちになり…飛行機で脱出するまでで、もう映画一本分の満足感。噂に違わない名作でした。 凄く頼りになるのに蛇が怖い。二枚目なのにマリオンに思いっきり殴られる。剣を振り回す悪党を銃で倒す。こんな主人公観たこと無い。こりゃ人気出るわ。 更に敵が謎の組織とかでなくナチス。当時はナバロンの嵐とか第二次大戦の戦争映画が割とテレビで流れてたから、ナチス・ドイツって身近な存在で、しかも歴史上実在した悪の組織だったのね。初めて観る全翼の輸送機(オリジナルらしい)。よく現存してるなって関心したUボート。空に海にとナチスの謎だらけの秘密装備がどんどん出てきて素晴らしい。 ジャングルや砂漠を舞台とした冒険映画の中に、戦争映画の悪者が出てくるんだから、ジャンルの違う映画2本一緒に楽しめてる感覚になってました。 世界を股にかけたインディの冒険。まだ終わらない、まだまだ終わらないクライマックスの連続。最後は悪党まとめてドーン!!…悪党の最後とは言え、まだお子ちゃまの私にはショックだったわ。「絶対目を開けるな!」うんインディの言う通りだったわ。 あれだけ奪い奪われしたアークのその後も洒落が効いてて、本当に本当に素晴らしい映画でした。 もう“映画”というより“体験”でしたね。翌日の学校で、友だちにレイダースの素晴らしさを延々と喋ってました。まだウチにはビデオなんてなかったから、近所のスーパーのレコード店で、レイダースのビデオ予告をエンドレスで流してたので、急いで友だち連れてきてず~~~っと観てました。友だちが帰っても私だけず~~~っと観てたから、店主に時代劇物に変えられました。 当時映画に革命を起こしたスピルバーグとルーカスの夢のタッグ。一番驚くのは、これだけの密度の映画が、たった115分の上映時間に収まってる事ですね。 [地上波(吹替)] 10点(2023-05-28 22:57:04)(良:1票) |
365. ルパン三世 カリオストロの城
《ネタバレ》 私の世代のルパンはピンクジャケットでしょうか。でも全然観てなくて、夕方の再放送の赤ジャケが一番馴染みがありました。 夏休みとかの午前中に放送されていた、もっと古いルパンが緑ジャケですね。チャーリー・コーセイの歌が格好良く(子供には可笑しかったけど)、インパクトが有りましたね。 ルパンのTVアニメは当初、ハードボイルドな怪盗&殺し屋という大人向けの作風でしたが、あまりの低視聴率から監督が自主降板。テコ入れで参加させられたのが宮崎監督。大人向けに完成しているルパンというキャラを、視聴率のために子供向けに軌道修正して創り変えられたそうです。健闘及ばず、緑ジャケのルパンは23話で番組打ち切りという結末を迎えました。 再放送で人気が出たルパン。本作公開当時、テレビでは赤ジャケのルパンが放送されていました。赤ジャケのルパンは155話もの長寿番組となり、以降映画やTVスペシャルでは、赤ジャケがルパンの代名詞となっています。 では何故、カリオストロでは緑ジャケに逆戻りしてたのか?宮崎監督はおそらく、自分が育てた(産んだわけではない)不遇な緑ジャケ・ルパンの、最後の大冒険・引退の物語として、本作を創ったんじゃないでしょうか?そうであれば、本作の優しいルパンが、モンキー・パンチ氏の創ったアダルトなルパンとも、コミカルな赤ジャケとも違うことが観えてきます。 最初のカジノでルパン一味は「ざっと50億」もの大金を手に入れます。モナコだから円ではなくフランかな?'79年あたりは1フラン=50円~60円。これはもう一生遊んで暮らせるお金です。泥棒稼業の“退職金”としては充分な金額だったハズ。 だけどルパンは偽札だからって捨ててしまいます。自分たちの“退職金”が偽札だったなんて恰好悪いコトが出来なかったんでしょう。 「次元、次の仕事は決まったぜ!!」カリオストロ公国のゴート札。ここを攻略したって偽札しか手に入らないはず。尻尾を巻いて逃げ出した、駆け出しのチンピラ時代の精算なのか。思い残しを無くすことが、今のルパンが考える“仕事”なのかもしれません。そう考えると、たまたま出会った少女を悪い奴から助ける事も、今のルパンには立派な“仕事”なんでしょう。 派手なベンツから安い大衆車フィアットに乗り換え、100円ライターを使ってシケモクを吸い、カップうどんを食べる。そして何より不二子を“追わなくなった”ルパン。不二子とは実に1年ぶりの再会。 豪勢なもの、精巧な偽札、不二子との縮まることのない男女の関係さえ、今のルパンには宝物では無くなっていたのかもしれません。 カリオストロのダム湖の秘密を暴き、無垢なお姫様と一緒に暮らす未来も掴めたのに、彼女を抱きしめることなく立ち去るルパン。 「ヤツはとんでもないものを盗んでいきました。あなたの心です」ルパン三世の長い歴史の中で、クラリスの心ほど価値のあるものがあっただろうか? 「おめえ、残っててもいいんだぜ?」返事をしないルパンが、不二子の収穫、偽札の原盤を見て元気を振り絞る。そして追いかけっこはいつまでも続く… 宮崎監督が育てた緑ジャケットのルパン三世は、宮崎監督の考える最も価値のあるものを盗んだからこそ、このカリオストロの城が最終回なんです。 [地上波(邦画)] 10点(2023-05-27 01:23:31)(良:1票) |
366. 男はつらいよ
《ネタバレ》 寅さんはテレビドラマの最後にハブに噛まれて死んでしまった。って、バラエティ番組で観た記憶がある。そんな主人公が銀幕に蘇り、ギネスに載る長寿シリーズ化するとは、当時のスタッフたちも、ファンたちも、思っても見なかったことだろう。 本作はまだ長期シリーズ化は考えていなかったため、一本完結のまとまりの良さを感じる。…といっても、シリーズの各作品の関連性・連続性なんて、殆ど感じない作品だけど。寅さんは私も、数作品程度は摘んで観てみたことはあるけど、全話CSで放送されるこの機会に、通して観てみようと思い立った次第です。さぁ最後まで完走できるかな? 1作目にして寅さんの基本設定が全部入ってるように思う。寅が帰ってくる。トラブル起こして出ていく。マドンナに恋して気分良く戻ってくる。フラれる。出ていく。更に柴又のレギュラーキャラは、本作で殆ど全員出てくるんじゃないかな?まさか1作目からさくらが結婚して、満男まで産まれるとは思わなかった。このまんま50作突っ走ったのか。やっぱりすごい作品だわ。 1作目は他作品と違って、寅が20年ぶりに柴又に帰ってくる。寅さんと言えば『生まれも育ちも東京葛飾柴又』…って本人言ってたけど、14歳で出ていって以来の帰省だろうから、地方の方が長くなってるぞ? さくらが凄く可愛い。私が観たのは'80年代以降のシリーズだったから、本作の若くて美しいさくらに驚いた。たぬき顔で茶髪で膝上スカートで脚が綺麗で身体細くて。キーパンチャーなんてモダンな仕事してて。キツネ目でいい加減で馬鹿でヤクザな寅と、兄妹なのが信じられない。 本作は冬子がマドンナ・ポジションだけど、真のマドンナはさくらじゃないかな。20年ぶりにやっと会えたら、結婚して離れ離れ。本作以降いつも隣りにいるけど、永遠に距離が縮まることのないシリーズの陰のマドンナ。そんなさくらにスポットが当たったのが、まさかの1作目だったとは。 大企業のBGからお見合い、結婚、出産と、1作の間に大人の階段を登っていくさくらに対し、35歳にもなって麦わら帽子に釣竿持って冬子のところに遊びに行く子供みたいな寅。『生まれも育ちも東京葛飾柴又』あぁ、寅次郎って20年前から、14歳の頃から時間が止まっているんだな。 父との大喧嘩から家を飛び出し、テキ屋稼業で生計を立て、舎弟の登の面倒を見て、可愛い妹は嫁に行き…『男はつらいよ』の意味が、マドンナにフラれるから以外の意味も、しっかり持たせてある1作目でした。 一年後、喧嘩別れ同然に故郷に帰したハズの登と一緒にテキ屋をしている寅次郎にほっこり。 [CS・衛星(邦画)] 8点(2023-05-24 23:48:27)(良:1票) |
367. ロビン・フッド(1991・ケビン・レイノルズ監督作品)
《ネタバレ》 “Robin Hood: Prince of Thieves”サブタイなんてあったんだ『ロビン・フッド:窃盗団の王子様』なんか半グレ詐欺集団の独女担当みたい。この当時はケビンの人気が頂点に近かった頃で、格好良さとユーモアセンス高め、知性とナルシシズムは控えめと、二枚目人気俳優としてバランスが絶妙だったと思います。当時“面白かった”って感想しかありませんでした。 改めて見ると、敵兵がシャーウッドの森を怖がる理由の弱さ(モーティアナのほうが怖いわ)。ロビンとリトルジョンのゆる~い決闘(泳げないのに川で闘う?)。ロビンあっさりリーダーの座に。ロビン前フリ無く弓の名手に。お祭り騒ぎにてウィルお前反乱軍抜けたんじゃなかったのか?などなど当時の映画らしい大雑把さだけど、勢いがあって次の展開が気になる魅力もあったと思う。明るく楽しいだけでなく、拷問とか死体とかのダークなシーンも多く、それらがクドくないバランスも絶妙。 今回久しぶりに鑑賞しましたが、モーガンとアランが出ていたことは、インパクトが強かったので覚えていましたが、他の主演俳優のことは覚えてなくて、クリスチャン、メアリーに「へぇ、こんな役で出てたんだ」って。それくらい、私にはケビンがひとり光ってる映画って、印象だったみたいです。 アラン・リックマンの、ロビンに逃げられて門番を殴る回数の多さ。イライラしてナイフで皿を刺す勢い。彼のキレ演技が面白い。 そしてショーン・コネリー登場に「ワオ!」ってなりました。映画の最後に“観て良かった感”を持ってくるのは、ズルいけど上手い演出ですよね。 [ビデオ(字幕)] 7点(2023-05-23 00:58:12) |
368. キネマの神様
《ネタバレ》 Wikiを見たところ、原作は映画の現代パートの方なんでしょうか?で、過去パートは映画オリジナルってこと?原作ではコロナも出てこないだろうから、作品の6~7割の部分がオリジナルなのかな?松竹映画100周年記念作品とのことで、キネマの天地でも描かれていた往年の輝かしき日本映画界に再びスポットを当てた映画となっている。 志村けんさんの突然の訃報から、どれだけ脚本が変わったか気になるところだけど、沢田研二さんが志村さんの代役に徹しているのが凄い。当時音楽活動中心で、映画やテレビと言った映像の仕事には出ていなかった沢田研二が、志村のために用意されたゴウという登場人物を淡々と演じている。その代役の徹底ぶりは素晴らしいと思った。 過去パートの甘酸っぱい三角関係、忙しいけどワイワイ楽しげな撮影現場から、歩の失業、ゴウの借金、病気、コロナと暗い話題ばかりのクタクタな現代パートの繋がりの段差が大きすぎて、このジイさんが本当にあのゴウか?って思ってしまったり… コロナの影響で閉館する劇場。実現しなかった斬新なアイデアを、人生の終わりに体感するゴウ。ソーシャルディスタンスの空いた席に、スクリーンから飛び出した桂園子が座るなんて、かなり素敵なアイデアだと思う。でもソーシャル関係なしにガラガラの劇場なのと、モト映画界の人なのに上映中に孫にべらべら喋るゴウ。このクライマックス、もっと丁寧に創っていれば、更に良いシーンになったかなって思った。 『古き良き映画業界と、その後の映画人たち』が本来の骨格だったところ、映画を創っている途中で『衰退していく映画産業と新型コロナによる社会の変化』に枝分かれして、そっちに進んでしまったような印象を持ちました。 [CS・衛星(邦画)] 5点(2023-05-22 23:34:01)(良:1票) |
369. ドランク・モンキー/酔拳
《ネタバレ》 “Drunken Master”『大酒飲みの達人』。ジャッキーのカンフー映画黄金期の作品はほとんど好きだけど、一番完成度が高いのがこの酔拳でしょうか?いろんな格闘技がある中で、酔っ払いの動作で敵と闘うって発想が凄い。ダンスのような酔拳の動きは小学生にも真似しやすく、カンフーの組手ごっこは、プロレスごっこみたく痛くないからか、男子はみんなやってましたね。 殺し屋の鉄心良いですよね。生意気な飛鴻をさんざん痛めつけるけど、殺したりしないオトナな対応。たぶん初めて見る酔八仙に対し、封じ技の無影拳で対抗するのは殺しのプロらしくてカッコいい。 あと棒のオッサンが結構好きです。相手が蘇と聞いて帰ろうとするトコが最高。腹から出血してたけど、生きていてほしいなぁ。 今改めて見ると、ストーリーは結構雑です。街で見かけた可愛い娘が従姉妹、叔母さんは拳法の達人だけど2人の出番は前半のみ。個性の強い師範代(ディーン・セキ)も出番は最初の方だけ。街で喧嘩したキザ男の父親が飛鴻のお父さんの商売敵だったけど、特に掘り下げなし。殺し屋鉄心を倒して…商売敵とのその後は?飛鴻とお父さんのその後は? なんかツギハギだらけの話でモヤモヤしそうだけど、一切ご心配なく。華麗なカンフーの動き。だんだんランクアップする敵。観たこともない修行方法。合間に入るコメディ要素。CGの無い時代、人間の身体能力のと華麗な組み手が、観ていて飽きさせない、観ていて疑問を感じさせない、観ていて退屈させない、すごく前向きで明るくてパワフルな、素晴らしい娯楽映画だと思います。 やっぱりジャッキー映画は石丸さんの吹替版が良いよね。カーーーンフーージョーーーーnデデッテーーーーン♪ [地上波(吹替)] 10点(2023-05-20 20:18:46) |
370. ウィンストン・チャーチル/ヒトラーから世界を救った男
《ネタバレ》 “Darkest Hour”『最も暗い時間』。つまりあの時が最悪の時であり、ここから徐々に明るくなっていくって意味でしょう。しかしなんて邦題だ。日本人は近代史に疎いとはいえ、歴史上チャーチルがどんな立場の人物だったかくらい、自分で調べさせても良いものを。起承転結の“結”がサブタイ。しかも劇中描かれていない部分。続編が出来たらどうするんだろ? ドイツの快進撃。電撃作戦で次々突破される各国防衛戦。役に立たなかったマジノ線。ダンケルクの友軍を救うための決断、カレー守備隊への命令があまりに血も涙もなく絶望的。ダンケルクの戦いのあと、バトル・オブ・ブリテン辺りが、一番『ダーケスト』な瞬間に思えたけど、本作で描かれたチャーチルの選択。和平交渉を捨てて徹底抗戦する選択が、その後の連合軍の反撃の第一歩となっている。でもホント第一歩。序章も序章。 余談だけどガンダムでもターニングポイントとなった演説(ジオンに兵なし)があって、元ネタはこのチャーチルの演説なのかな?なんて思ったりしました。 戦場をほぼ描くことなく、戦争の悲惨な状況、国家の危機を首相の目の届く範囲で描く映画として、どうしても『ヒトラー 最期の12日間』を意識してしまう。どうしてあまり必要性のないタイピストのミス・レイトンを主要人物にしたんだろう?若い一般人を出すことによって、堅苦しく年寄りくさい政治・歴史の映画も、人間味と柔らかさが出てきますね。でもそれ以上の役割を持たせても良かったかもしれません。 さてノーヒントで劇中のチャーチルを観て、ゲイリー・オールドマンだって、何人が気がつくだろうか?CGとは違うメイキャップ技術の進歩。デ・ニーロやクリスチャン・ベールのような肉体改造とは別なベクトルの俳優の演技力。ある意味これはこれで、映画俳優の到達点かもしれないですね。 [CS・衛星(字幕)] 6点(2023-05-20 19:14:49) |
371. イエスマン "YES"は人生のパスワード
《ネタバレ》 “Yes Man”『信念がなく、相手の言いなりになっている男』。 友人や知り合いの誘いを全部断り、オフの時間は部屋で一人で映画DVD三昧って、そのまんま私じゃないか!コロナの影響もあって、余計に独り遊びが加速してしまって…さぁこれからどうしましょう?また週末に飲み歩いたりなコロナ禍前の生活を復活しますか? この映画は人と付き合うYESを肯定し、人を拒絶するNOを否定する映画じゃない。とは思うんです。だけどカールは暇つぶしに映画DVDを観ているんではなく、映画が好きで、自分の自由な時間を映画鑑賞に充てていたんだと思うんですよ。私みたいに。 自分の意志で映画観ることより、人に言われるがまま考えもせずイエスって応えてしまう方が良い。って内容に思ってしまいがちですが、そんな事はありませんよね?ね? 問題はNOの方で、YESで行う行動に対し、NOで行う行動がネガティブ要素が強いから、良くないよって事だと思います。後半でテレンスがぶっちゃけた通り。お金も時間も体力も無限にあるわけじゃないから、カールの生き方を本気で実行したら大変になりますね。 ズーイー・デシャネルと言えばランドセル背負ったハリウッド女優で有名だと思うけど、この映画のアリソンだったらランドセル背負ってそうで、不思議ちゃんなズーイーのイメージビデオっぽさも感じられました。代理ミュンヒハウゼン?変な名前のバンドもズーイーっぽい。 [CS・衛星(字幕)] 5点(2023-05-18 00:39:55) |
372. キャスト・アウェイ
《ネタバレ》 “Cast Away”『(岸に打ち上げられた)漂流者』であり『投げ捨てる・見捨てる』って意味もあります。 それこそ命が掛かっている場面で、チャックは数々の選択を迫られます。飛行機が墜落する間際、救命胴衣とケリーの懐中時計のどちらを取るか?懐中時計を取ったチャックは運良く墜落から生き延びる。救命胴衣を取っていた場合、どうなっていたかは解らないけど、孤独な無人島生活で、ケリーの写真がどれだけチャックの精神を支えた事か。 島から脱出する際、大切な相棒ウィルソンが流されます。ロープを限界まで伸ばし、イカダを取るかウィルソンを助けるか?「すまないウィルソン」とずっと泣き叫ぶチャック。 今後の人生が掛かっている場面でも、チャックの選択は続きます。4年間夢見たケリーとの人生。その4年間にケリーが歩んでいた人生。直進して果てしない道を2人で進んでいくか、右折して10m先のケリーの家に向かうか。 チャックが開けなかった羽の描かれた荷物って、OPから出ていたんだね。ただOPの羽はピンク。妻からの贈り物を受け取った夫のディックはモスクワで浮気してる。チャックが最後まで開けなかった箱の羽は黄色。こちらもきっとモスクワのディック宛の荷物だったんだろう。チャックとともに4年間掛けて戻ってきたんだけど、どうしてチャックはベティーナに届けた(送り返した)のか?ディックが4年後もモスクワに居るとは思えないけど、もしチャックがディックに届ける方を選んでいたら?ここにももしかしたら、どちらかを選ぶ選択があったのかもしれませんね。 もしかしたら、4年前の別れ際にケリーに渡したプレゼント(婚約指輪?)、本来の役目を果たせなかったプレゼントと、届かなかった黄色い羽の荷物が、どこか同じ境遇に思えたのかもしれません。だから、届け先のディックでなく、送り主のベティーナに届けたのかも? 4年前に異国の地で夫を失っていたベティーナとの出会い。これから進む道は4つ。 救命胴衣と懐中時計。イカダとウィルソン。自分が夢見た人生とケリーの人生。ベティーナの家への道とそれ以外の道。どちらかを選ぶということは、どちらかを『捨てる』という事で、人が生きているという事は、それぞれの岐路で別な人生の可能性を捨ててきた結果なのかもしれません。 余談になるけど主人公の名前がチャック・ノーランド(No Land=陸地がない)って遊び心かな。 [ビデオ(字幕)] 7点(2023-05-17 23:22:12) |
373. バラ色の選択
《ネタバレ》 “For Love or Money”ん~…単純に『愛か金(成功)か』で、良いのかなぁ?単純だなぁ。 マイケル・J・フォックスがニューヨークを舞台に、ちょこまかと駆け回るコメディ。邦題からも、あのヒット作の路線でもう一発。って香りがします。 当時コンシェルジュが日本でどれだけ浸透していたか分からないけど、バタバタしながらもダグはコンシェルジュとして有能。ホテルのスタッフも個性的で楽しいし、いい職場だなぁって思ってしまう。ダグが天職に就いてるモンだから、あの映画のように『不遇な立場からの一発逆転劇』感は薄い。 ガブリエル・アンウォーは可愛いけど、アンディはどう考えても騙されてる女って役なので、有能なダグがアンディの顔以外のどこにあれだけ惚れたのかが、イマイチ伝わってこない。 終盤のダグとアンディの口論が、イヤミっぽいダグとアホっぽいアンディって感じで、「あーこの2人合わないわ」って思ってしまいました。 ハノーバーの契約チラつかせながらの無理強いに加え、ダグとアンディがくっつくのが本当に幸せか?って疑問が湧いて、適度にストレスが溜まっていくんだけど、最後の10分くらいにバタバタっと終わるので、あまりスカッと爽快感は感じられない。ハノーバーとアンディは都合よく自滅。それも歌のせいって、ハノーバーが失言してなければ関係続いてたんだろう。だから、マイケルがあの手この手で追いかけるのも、見た目は楽しいけどそんなに重要じゃないんだよね。ケチなウェグマンさんがあんな感じな役どころなのは、お約束の安心感があるけど、それにしても唐突な感じ。 “Not For Love or Money”で『あり得ない』って意味だそう。 その“Not”を外して『あり得ない。事もない』ってタイトル訳だとどうでしょうかね?唐突感も少しは薄まる? [CS・衛星(字幕)] 4点(2023-05-14 14:06:31) |
374. ボーダーライン: ソルジャーズ・デイ
《ネタバレ》 “Sicario: Day of the Soldado”『暗殺者:兵士の夜明け』。デイ・オブ・ザ~で“初日”みたいな意味があるので、ミゲル視点のタイトルかなぁ?と想像しました。前作同様、終始緊張感があってピリピリする映画です。スーパーで突然起きる自爆テロの怖さ、日常がひっくり返る怖さ。前作でそういう映画だって解っていても、怖い。 Wiki見たら“スピンオフ”なんですね。たしかに前作の主人公ケイトが出てこない。だけど、いわゆる“常識人の目”はイザベルがやってくれます。 アメリカ市民のミゲル少年と、カルテルのボスの娘イザベル。この2人が出会って助け合って…なんて、そんな甘っちょろいシナリオじゃないことは想像できます。とはいえ物語上、死の危険にさらされるキャラクターが少女となると、『最後助かるんじゃないかな?』という安心感も抱いてしまいました。ミゲルとイザベルの役どころの性別が逆だったら、もっと怖かったかも? もちろんアレハンドロ(そういう名前だったか)が処刑されたところは驚きましたよ。あ~やっぱりシカリオだ。あの映画の続編だ。って。イザベルは最後助かるだろうって、ハリウッド娯楽映画の安心感の糸。アレハンドロが撃たれ、糸が切れた凧状態のイザベルからの、最後そうなるんだ。って流れは、映画としては上手いと思います。アレハンドロのその後は、えぇ~??とは思いましたが…。まぁいくらリアリティに拘るにしても、わざわざお金を払って、後味悪く劇場をあとにはしたくないでしょうからね。2人が再会しないのも良いさじ加減だと思います。 前作も本作も、劇場で公開されてたことさえ知らなかったけど、こういう泥臭い血なまぐさい映画って、あまり宣伝されないですよね。お客さん入んないからでしょうか?少なくとも女性ウケはしない内容だから、デートムービーにはならないし。 でもこういうハードな映画も、一部の映画好き以外にも観てほしいって思ったりします。 [インターネット(字幕)] 7点(2023-05-14 12:50:27) |
375. フェア・ゲーム(2010)
《ネタバレ》 “FAIR GAME”『恰好の的』。なんか1995年の方の映画だと思ってました。 イラクは大量破壊兵器を保有しているから、世界平和のためにぶっ潰す。なんかもう無茶苦茶だなアメリカって、開戦当時思ったモンです。 私にとってリアルタイムの戦争だった湾岸戦争。その想像してたのとぜんぜん違う“実際の戦争”。アメリカを中心とした多国籍軍の最新兵器の前に、開戦直後からタコ殴りにされていたイラク。そんなイラクが終戦から僅か10年ほどで、世界を脅かす大量破壊兵器を保有なんて、まるで輩がイチャモンつけてるようにしか思えませんでした。 ニジェールから500トンものウランと、中国から6万本のアルミ管を輸入したっぽい?ホラやっぱり、アメリカにもマトモな人がいて、兵器製造なんて否定してる。でもリビー補佐官のような結論ありきな人間に握りつぶされる。はい開戦。ホントに輩のイチャモンだったなんて… 突然CIA工作員だと暴露されたヴァル。まるで無一文・真っ裸で日常生活に放り投げられるような恐怖。バリバリ働く奥さんと仕事の少ない夫だったのが、暴露以降、水を得た魚のように闘うジョーが頼もしい。それにも増して、普通の医者なのにスパイさせられて、とかげの尻尾切りされたハッサン先生とお兄さんたち科学者家族が可哀想過ぎる。 戦争のきっかけとなったブッシュの一般教書発言は知らないけど、妻のヴァレリー・プレイムの名前は知っている。情報操作は都合の悪い真実から目を背け、力を奪われた弱者を恰好の的とする。それは工作員だと暴露されたヴァルであったり、敗戦からインフラ整備すらままならない状態のイラクであったり。 [インターネット(字幕)] 6点(2023-05-12 01:57:39) |
376. ブレードランナー 2049
《ネタバレ》 前作から30年後(現実世界ではナント35年後)の世界。ネクサスも6型から9型の時代に。あの退廃した世界観を継承した、外伝的な作品だと思っていました。 レプリのK(=ジョー)とAIのジョイ。これがロボット同士とかアンドロイド同士の恋愛とかなら想像の範囲でしたが、それぞれ別な目的で人間に尽くすために造られた2人の、2人だけの世界。ある意味可愛らしいバーチャルな恋愛がとても興味深かったです。ずっとこの路線で行ってくれてよかったと思ったんだけど… デッカードが出てくる辺りから、なんか話が前作の“単なる後日談”になってしまったような、せっかく広がった世界観がちっちゃくなってしまったような、ジョーとジョイの恋愛がオマケになってしまったような、そんな印象を持ちました。レイチェルのコピーが当時の髪型と格好そのまんまで出てくるのなんか、ファンサービスのハズなんだろうけど、この映画の主人公ってジョーとデッカードのどっちなんだろう?って思ってしまいました。ガフは嬉しかったけど。 レプリは歳を取らない=デッカードは人間。という解釈で良いのかな。ジョーの出生。2021.6.10と掘られたの木馬。今から28年前って事になるけど、このミスリードも、ジョーの見た目年齢が28歳位の時にレイチェルの遺骨を発見するよう仕組まれていたんだろうか? 前作を踏襲しているのか、ロイ同様にデッカードを“生かす”ジョー。ホントどっちが主役だろう。 中盤からの登場ながら、最後まで物語の中心人物だったデッカード。当時のハリソン・フォードはシリーズ物の復刻版に引っ張りだこで、クリスタル・スカル、フォースの覚醒と、全盛期さながらにグイグイ前に出てきてたっけ。だけどこのブレードランナーのデッカードは、もうちょい控えめなポジションでも、良かったかもしれません。 私は前作のロイたちレプリの脱走事件って、あの時代では良くある事件だったと思ってます。もちろんタイレルの社長と、その右腕とも言えるセバスチャンが殺されてるから、結構大きな事件かもだけど、ブレードランナーって職業が認知されるくらいには、レプリの脱走事件は頻発していたと。 事件の背後でデッカードとレイチェルがコソッと逃げて、警察に追われることもなく、人知れず幸せに暮らしましたとさ。って、そんな小さな愛の物語がブレードランナーだったって思うからでしょうか。 だからこそ本作では、ジョーとジョイの、小さな愛の新たな物語が一番興味があったんだけどね。そこにスポットを当ててこそ、ブレードランナーの続編なんじゃないかな?って。 [ブルーレイ(字幕)] 6点(2023-05-11 23:39:07) |
377. 帰ってきたヒトラー
《ネタバレ》 “Er ist wieder da”『彼が帰ってきた』。この映画、とても内向きというか、ドイツ国内・ドイツ国民向けに作られた映画に思えます。移民に困っていたドイツ人の中にフツフツと湧いていた不満を、思い切った登場人物にぶった切ってもらう。 ヒトラーを頭ごなしに“悪”とみなす(と思われた)現代社会に、ヒトラーを置いて直接話させてみたらどうなるか?ドキュメンタリー風な撮影から、思いのほか好意的な人が多いことに驚いた。でもこれ、台本なしの会話にしても半分ジョークとして答えてるようにも思えるのと、モキュメンタリーの可能性も否定できない。エンディングで顔が黒塗りの人もいれば、顔出しでナチス式敬礼してる人もいて、何かそんなリアリティが却って造り物っぽく思えたかな。 この映画の目的・着地点は『誰もが知る悪のハズのヒトラーが、何故か民衆の心を掴んで現代社会で受け入れられていく』ことで、本当のハプニングを楽しむ映画ではないだろう。 バラエティ番組に初登場した時の長い沈黙は、ヒトラーのカリスマ性をしっかり感じさせた。そして低俗なテレビ番組の批判。彼の演説に引き込まれる観客。笑わせる所で笑い、考えさせられる所で考える。過去から学んだハズのドイツ人が、解決できない今の問題の答をヒトラーに求める。 実際『シェパード・ダックスから純血のシェパードは生まれない』の話は説得力があるというか、その通りだと思う。最近の多様性を変に認める世の中の動きに怖さも感じる。単一民族というその地域に根づいた人種の境界線を否定するような、曖昧に濁して混ぜてしまうような恐ろしさ。面と向かって移民受け入れを否定することが悪のように思われる世の中。多様性の行き着く先が、ネットで目にする『日本の地方都市の国道』の、同じチェーン店ばかりのツマラナイ風景になるようにも思える。それはそれで恐ろしい。 ただ、ヒトラー×ナチスがユダヤ人に対して行った極端な政策の反動から、昨今の思い切った政策を行えないドイツの弱さに繋がっているとも言えるかもしれない。日本も同じかもしれないけど。 言いたい不満を自分が言えない代わりに、ズバッと言える行動力あるカリスマを支持する。1933年、ヒトラーは暴力と恐怖でドイツを支配したのではなく、民衆の自由意志で選ばれて首相になった。それもまた恐ろしい。 [インターネット(字幕)] 6点(2023-05-09 23:33:01)(良:1票) |
378. おくりびと
《ネタバレ》 私の地方では“湯灌の人”って呼び方だったかなぁ?葬儀屋さんの仕事の一環だと思っていたけど、納棺師という独立した職業があることと、案外歴史は浅いことなど、この映画をキッカケに、雑学知識がちょっと増えた気がします。 人の死という重たいテーマだけど、程よくコメディ要素を入れて、エンタメとして取っ付き易い作品にしています。 妻の「汚らわしい」発言は、ちょっとオーバーな演出に思えたかな。まぁ遺体に触った手で触られることに抵抗を感じるのは無理の無いけど、潰した鶏の頭や足まで食卓に並べる人が言うセリフじゃないような…活タコにビビってたのに… 裏表のない夫婦関係だからこそ出てきた言葉って考えたいところだけど、奥さんに内緒で1800万円ものチェロを買う。納棺師になったことを黙っている。突然実家に帰る。妊娠したことを告げずに突然帰ってくる…ちょっと変わった夫婦関係だわ。 困ったのは旧友の見下した態度。「もっとマシな仕事しろ」は、東北山形の土地柄なのか、納棺師の成り立ちに対してだろうか。普段納棺師について考えたことがなかった分、そこまで言われる仕事なの?って。 ただこうした極端な反応があるから、彼らの丁寧な仕事ぶりが光って見える。納棺師に対する見方が変わる。 考えたら世界中に葬儀の手順や儀式があって、この“納棺”は日本独自の文化なんだろうね。所作がとても美しく、良い風習だよなぁって思えました。 この映画が葬祭業にスポットを当てて、生活から切り離せない尊い職業の一つとして認識させた功績は大きかったと思います。 そして人の死という重たい生業で生活している人もいる事を思うと、軽いコメディ色も上手な味付けに思えました。 死と隣合わせの生。生きる象徴の食。干し柿、フライドチキン、フグの白子の美味そうなこと。そして性。広末のスタイルとファッションのエロ可愛さ。余貴美子はなんか居るだけでエロい。困ったことに。 [CS・衛星(邦画)] 8点(2023-05-09 20:19:33) |
379. ブレードランナー/ディレクターズカット<最終版>
《ネタバレ》 ~『ブレードランナー』の続き~ 「(同じ作品のレビューは)2つで充分ですよ~解って下さいよ~」ってことで、最近DVDで買ったのが〈最終盤〉と書いてました。 良く解らない『フォークト=カンプフ検査』。裏返しの亀とか茹でた犬とか突然のインパクトある言葉から、人間でも絶句してしまうけど、レプリはそれ以外の反応が出るんだろうな。何度観ても良く解らない。 今さらながら“赤目”に気がついた。レプリは角度によって目が赤目現象になるのね。きっと撮影の時、赤目になる照明に視線の角度を合わせて撮っただろうから、偶然の産物ではなく、故意に赤目にしてたんだろう。 「(俺じゃない)誰かが追うだろう」ってセリフの時にデッカードも赤目になる。こっちは偶然だったろうけど、ここからデッカードもレプリって後付(ウラ)設定も出来たんだろうな。原作も読んだけど、ネットが普及するまで、そんな設定思いも付かなかったわ。 非武装のゾーラ(女)を背後から撃つデッカードと、それを観て驚きと怒りを表すレオン。撃たれて苦しむプリスにとどめを刺して、苦悶の表情のままのプリスを放置するデッカードと、キスをしてプリスの舌を納めるロイ。感情豊かなレプリに対し、人間味の薄いデッカード。透明な酒(チンタオ)を濁す赤い血が、彼が人間である証明とでも言わんばかり。過去が造り物と知り涙するレイチェルに対しては人間臭さを見せるデッカード。 寿命が来て静かに死んでいくロイ。手には釘(痛み、争い)と白い鳩(平和、自由)。鳩の側でなく釘の側の手でデッカードを引き上げる。ロイの遺言、自分の生きた証を、自分達を創り出した人間に語ったのか、自分達とは違う寿命のない新型レプリに語ったのかで、解釈も変わってくる。私はデッカードは人間であってほしいと思うなぁ。 一番最後のドライブのシーンがない。重たい空ばかりの未来映像のなか、開放感ある最後のあのシーンが、この映画の清涼剤として機能していたんだな。って思ったわ。だからたぶんDVD買い直すわ。その際未見の〈FC版〉にしようか迷うところだけど… [DVD(字幕)] 8点(2023-05-06 14:36:52) |
380. ブレードランナー
《ネタバレ》 “Blade Runner”レプリカントを処分する職業の名称なんだけど、なんか『非合法な医療器具(メスとか)の運び屋』って意味の小説タイトルから拝借したそうな。医者(警官)じゃないけどガン細胞(レプリ)を見つけて切り取る(処分する)仕事。ってニュアンスだろうか? 初見はサイバーパンク目覚ましい'80年代後半。近未来リアルSFの金字塔として超有名な本作。ターミネーターみたいな派手なSFだと思っていたのが、思いのほか静かな映画で驚いた。近未来が舞台のハードボイルド映画なんて想像してたのとあまりに違った。 火を吹き上げる工場の煙突。薄暗いモヤモヤの空(光化学スモッグ?)。身体に悪そうな雨(酸性雨?)。空飛ぶパトカー。動く写真。奥行きのある写真。ウロコに書かれた製造番号。大画面で映される芸者風の女性。強力ワカモトがコカコーラと同等に映される。ゴルフ用品?怪しい日本語表記。中国っぽい自転車の行列。ネオンの「ジッジッ」って音。傘の柄にもネオン。箸で器用にうどんを食べるハリソン・フォード…これこそ私達の近未来。 和洋中ごちゃ混ぜな世界観。'70年代まで主流だった便利で明るい未来とは別な、退廃的な未来像。漠然とした不安を感じさせる世紀末以降の世界として、どこか説得力と力強さがあった。あの時代によくこんなワケ解んない世界を映像化したよ。凄いよリドリー・スコット。 そうそうレイチェルの凄い髪型。あれってきっと芸者の日本髪から着想したんだろうな。物凄い肩パットとともにレトロ感を感じさせるようになってしまった。もちろんあの凄い髪型から、どうやったか謎だけどウェービーな下ろし髪にした際の可愛さアップにホッとしてしまう。 舞台は2019年11月。いつの間にか現実が近未来を追い越してしまった。サイバーパンク世界の時代はついに来ること無く、ブレードランナーですら過去の物語になってしまっていたわ。 色々なバージョンが有るこの作品だけど、私が当時何回も繰り返し観ていたのは、レイチェルの寿命について説明のあるバージョン。ビデオには“完全版”って書いてあった気がしたけど、多分こっち。 いわゆる“完全版”も、どこかで観た気がするんだけどなぁ。 ~『ブレードランナー/ディレクターズカット<最終版> 』へ~ [ビデオ(字幕)] 9点(2023-05-06 14:34:00) |