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田吾作さんの口コミ一覧[この方をお気に入り登録する

プロフィール
コメント数 273
性別 男性
年齢 58歳
自己紹介 歳をとるごとに趣味と呼べるものがだんだん少なくなり、今では多忙ななか映画を鑑賞することがひとときの楽しみとなっています。
無数の作品の中から良作を探し出すツールとして、本サイトのお世話になっています。

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61.  湯を沸かすほどの熱い愛 《ネタバレ》 
親から継いだ銭湯を営む夫が1年前に遁走し、やむなくパートで働きながら娘を育てる「お母ちゃん」を、宮沢りえが文字通り「熱演」している。 そのお母ちゃんが末期がんと診断されてからの、約3か月を描いた作品。  本作では、どこにでもありそうな家庭の雰囲気を上手く表現している。 洋画に対する邦画のひとつの優位性は、この「どこにでもありそうな」画を通して、観客を作品世界に誘いやすいことだが、 特に家での食事シーンなどは、家族ならではの会話や独特の間などに、俳優や脚本(監督)の力量を感じる。  高校で陰湿ないじめに遭う娘に「今逃げたらずっと逃げることになる」「お母ちゃんにはわからない」「いやわかる」「わからない!」「わかる!」 このやりとりだけで、お母ちゃんもかつていじめを受けていたことが暗示される。 普通なら、戸惑いのなか中途半端な同情から甘やかしてしまうところを「お母ちゃん」は決して妥協せずに娘の背中を押す。  産みの母の迎えを待ち続ける(夫と他人の間に生まれた)子を真剣に気遣い、明るく受け入れるお母ちゃん。  突然家からいなくなった夫を許したのも、すべて自分がいなくなった後の家族を考えての事。  夫婦問題やいじめ、複雑な家庭環境といった不遇な人生を経験した人間なら、彼らの喜怒哀楽が画面の向こうの出来事とは映らないだろう。 (本作では、これらを演じる俳優陣の演技力も相当に高いことも付言しておきたい)  そして、物語が進むにつれて、それらのお母ちゃんの愛が「湯を沸かすほどの熱い愛」だったことに気付いていく流れも秀逸。  娘に買ったブラジャーや、毎年同じ日に届く「タカアシガニ」、たびたび食卓に登場する「しゃぶしゃぶ」といった小道具も上手く活用している。 (ちなみにこの「しゃぶしゃぶ」の湯も暗示的ではある)  そして、最終盤には、このお母ちゃんにも、はやり不遇な過去があったことが示されるくだりでは、胸が痛くなった。  最後のオチも含め、この家族の行動には現実離れしているところも多いが、私は映画表現として問題なく受け入れられた。 そして観終わった後は、(湯を沸かすほどではないにしろ)自分の心もお母ちゃんにほのかに暖められていたことに気付く本作は、久しぶりに観てよかったと思える作品だった。
[インターネット(邦画)] 8点(2019-06-09 20:04:48)
62.  クリード 炎の宿敵 《ネタバレ》 
30年以上も前に劇場で観た「ロッキーⅣ」だが、サントラの秀逸さもあり、シリーズでは「ロッキー」の次にお気に入りの作品。  本作はその続編ともいえるストーリーだけに、胸を躍らせながら鑑賞。  ストーリーはもう完全に予定調和なのだが、あのドラゴやその元奥さん?が出てくるだけで、前作のファンとしては嬉しい。 あの時ロッキーに負けてからのドラゴは大変な人生だったのね。 できればドラゴ息子は父をも上回る、現代の超ハイテクなトレーニング方法で鍛えて欲しかったかも。  とはいえリターンマッチでのクライマックスで「ロッキー」の音楽が流れると、やっぱり涙が出てしまう。  映画としてはワンパターンだし、ラップ音楽も肌には合わないが、スクリーンの向こうにロッキー・バルボアがいる限り、また観てしまうんだろうな。
[インターネット(字幕)] 6点(2019-06-07 14:18:57)
63.  ハクソー・リッジ 《ネタバレ》 
「良心的兵役拒否者」という戦争映画としては異色のテーマで、実話がベースになっている作品。 敬虔なクリスチャンで知られるメル・ギブソン監督らしい着眼点だ。  前半は主人公デズモンド・ドスの育った家庭(特に第一次大戦でのPTSDを抱えた父親との確執)や、後に結婚するに至る恋人とのエピソードを語り、 中盤ではデズモンドが愛国心から兵役を志願する一方で「決して銃に触れない」と宣言したことから惹起される上官や仲間からの迫害にも決して屈しない姿を描き、終盤では衛生兵としての戦場での大活躍が描かれるという安定した展開。  不謹慎の誹りを恐れずに言えば、監督得意のグロ描写に期待して鑑賞したのだが、リアルな戦場描写は期待通りだった。 ハクソー・リッジ(日本では前田高地と呼んでいたらしい)での上陸戦のシーンは、最前線での白兵戦の凄惨さを見事に再現している。 白煙で視界の悪い戦場で、いきなり機関銃の雨にさらされ、訳も分からないまま次々と死にゆく米兵たち。 鉄兜ごと頭を撃ち抜かれたり、爆発で手足をもぎ取られたり、その地獄絵図の中を駆け回る衛生兵はモルヒネを打つことくらいしかできないという凄惨なシーンがこれでもかと続く。 実際、極限状態に置かれた皇国・日本兵の捨て身の攻撃は、米兵にとって脅威であったに違いない。  劣勢のなか一度撤退を決めた米軍にあって、ただ一人戦場に残り「神様、どうかあともう1人助けさせてください」と、まだ敵の銃弾が飛び交う中、息のある兵士を次々と救出し続けるデズモンド。そうして(驚くべきことに日本兵も含め)数十人もの命を救ったデズモンドは、最後は真の英雄として讃えられる。  「戦争」という合法的な殺人を目的とする非人道的な場面にあって「汝殺すなかれ」とのキリスト教の教えをどう実践するべきなのか、という問いに対する一つの答えが本作なのだろう。 しかし、他のレビュアーも指摘しているとおり、主人公がなぜあれほどまでに頑なに信念を貫けたのか。多くは特定の信仰をもたない日本人にはなかなか理解しづらいだろう。  しかし本作は、人間にとって信仰とは、信念とは、本当の勇気とは、そして真の強さとは……と様々考えさせられる良作である。
[インターネット(字幕)] 7点(2019-06-05 17:51:18)
64.  カメラを止めるな! 《ネタバレ》 
ご多分にもれず、巷の話題に乗せられて鑑賞。  前の日に観た「ミッション・インポッシブル」が約200億円を投入したハリウッド大作なのに対し、本作は無名の俳優オンリーで300万円だとか。  しかし観終わってみると「ミッション…」とは全く違う「面白さ」が確かにあり、その意味では映画の「面白さ」というのは色々なんだと今さらながら考えさせられた作品。  ちなみに本作は、一見私の好きな「ゾンビもの」のように思えるが、その実はB級映画人達の悲喜こもごもであり、家族の物語であったというところでしょうか。  映画好きな人なら観て損はないと思います。
[映画館(邦画)] 8点(2018-08-15 11:57:44)
65.  ミッション:インポッシブル/フォールアウト 《ネタバレ》 
お待ちかねのシリーズ第6作。 今回も大規模なプロモーションが展開され、予告篇や見どころ映像が嫌でも事前に目に入ってきたため、実際の鑑賞での大きな驚きはなかったものの、最初から最後までノンストップのサスペンスアクションは今回も健在だった。  IMAXで鑑賞したせいもあり、特にフランスの街並みを疾走するカーチェイスではリアルなエンジン音が鳴り響く中、「どうやって撮影した?」 と思えるような際どいシーンの連続で目が離せなかった。  いつもどおり観客をも欺く変装トリックや、最新のスパイガジェットも数多く盛り込まれ、ベンジーやルーサー達とのチーム作戦も安定して楽しい。  またクライマックスのヘリコプターアクションも、カメラアングルの妙もあり観客も一緒に体感しているような映像の合間に、地上チームの爆弾解除ミッションが同時進行で進み、最後までハラハラドキドキだった。  他にも「HALOジャンプ」や、有名な「骨折シーン」を含め、アクション俳優としてのトムのプロフェッショナル精神が炸裂している本作は、間違いなくシリーズ最高レベルの面白さだったと言える。  ともかく、劇場での2時間20分の間、ポップコーンを口に運ぶ暇さえ与えてくれない本シリーズこそ、本物の娯楽アクション映画といって間違いない。
[映画館(字幕)] 9点(2018-08-15 11:29:03)
66.  ハン・ソロ/スター・ウォーズ・ストーリー 《ネタバレ》 
本作は誰もが知っているあのハン・ソロの(EPⅣの)前日譚。 したがって一番のポイントはハン・ソロがハン・ソロに見えるかどうかで評価は大きく変わるわけだが、 自分の場合は残念ながらそういう風に見えなかった。 確かに顔やしぐさはよく似ているが、あの人を食ったような鼻にかかったニヒルな声でなければハンには見えない。 個人を識別するうえで声というのは重要なわけで、(別な声優でアフレコするなど)もう少しなんとかならなかったのか残念。  だがそこを割り切って、ひとつのSF冒険活劇として観れば、最後まで飽きることなく楽しめたのも事実。 チュウ・バッカとの出会い方は意外だったが、ランドは思ったとうりの食わせ者だし、 有名なケッセル・ランのシークエンスでは、本編のスコアが鳴り響く中、我らがファルコン号が大活躍。 そう、本作の準主役はミレニアム・ファルコンであることは論を待たない。 個人的にはEPⅤの名曲「アステロイド・フィールド」がかかった時はアドレナリンが全開になった(笑)。 そして、ファルコンの操縦席にあの二人が並んだ「銀河の名コンビ誕生」シーンが本作のクライマックスだろう。  逆に言えば、その後のシーンは付け足しといっていいほど盛り上がりに欠け、サプライズで用意されたであろう、あのシスの登場も訳がわからなかった。 (アニメシリーズは知っているが、この登場の仕方は消化不良だと思う)  とはいえ、映像や音響は大迫力であり、劇場で大好きなSWの世界観に浸ることはできたため、8点献上。
[映画館(字幕)] 8点(2018-07-16 16:04:52)
67.  探偵はBARにいる3 《ネタバレ》 
今回も札幌・ススキノを舞台に、大泉洋が八面六臂の大活躍で、監督が代わってもシリーズがもつテイストはしっかりと継承されている。  ススキノという大歓楽街に行き交う人々が抱えるどうしようもない哀しさ、せつなさが本シリーズのベースになっているわけだが、その中にあって大泉と松田龍平のトボけたキャラクターが独特の可笑しさを醸し出し、暗いストーリーに笑いが丁度よくブレンドされているのが独特の味になっている。  今回のマドンナ役北川景子も美しく、振れ幅の大きい役柄を魅力的に演じている。  背景となる事件や犯罪が若干現実離れしているところや、昭和の刑事ドラマばりの泥臭い殴り合いは、あえて割り切った志向と思われるが、その辺りが時代遅れと感じる向きもあるかもしれない。  それをわかったうえで、伏線となるエピソードや謎解きのミステリー要素を素直に観れば、きちんと楽しめる仕上がりとなっている。  お馴染み「喫茶モンデ」の安藤玉恵や、大泉がひどい目に遭わされるシーン等はもはや定番の面白さであり、松重豊や田口トモロヲなどバイプレーヤーの演技も光っている。  ロケ地も、道庁赤レンガやノルベサ、札幌ファクトリーなど観光地を取り入れており、札幌観光誘致作品としても一役買っていた。 (毎回市長が出演するのはいかがなものかとも思うが)  何より前作以上に笑えるシーンが多く、文字通り「最後まで」楽しませてもらった。  いろいろ書いたがいつもの札幌在住の身びいきで及第点はつけさせていただく。
[インターネット(邦画)] 7点(2018-07-15 19:03:38)(良:1票)
68.  サウンド・オブ・ミュージック 《ネタバレ》 
名作の呼び声高いことは知りつつも、長尺かつ「ただ主人公や子ども達が脳天気に歌いまくるミュージカル映画」 という先入観があったため、今に至るまで鑑賞の機会を逸していた。 しかし、鑑賞後は一転その浅はかさを悔やんだ。  まず冒頭の空撮からのオーストリアの素晴らしい風景、そして丘に立つマリアにクローズアップしての主題歌への流れは、 聞きしに勝る映画史に残る名シーン。 ストーリーは確かに予定調和的ではあるが、純粋で天真爛漫なマリアが音楽を通してトラップ家に影響を与えていくプロセスは、 わかっていても心惹かれる。  そして何と言っても、劇中歌のほとんどが耳に馴染みがあるナンバーばかりで、これらの楽曲がもつ力こそが、 本作を名作たらしめているのは疑いない。 鑑賞後も頭の中でリフレインするような不思議な魅力を持っている。  また、ジュリー・アンドリュース演じる外連味のない生き生きとしたマリアも、クリストファー・プラマー演じるトラップ大佐の豹変(笑)も、 観る者すべてを惹きつける魅力がある。  さらに、本作が不朽の名作たりえる理由として、背景がナチスドイツによるオーストリア併合という、戦争の暗雲がたちこめる時代であることがあげられる。 そのことが歌や音楽の持つ力をコントラストとして際立たせることに成功しており、ありがちなハッピーエンドにとどまっていないのだ。  男爵夫人や長女の恋人も含め、本作にはいわゆる悪人は登場しない。それぞれが時代の波に押し流されながらも、懸命に生きている姿が活写されており、暗い背景の割に後味がいい。  監督と役者、作曲家など、溢れる才能が結集して創られた傑作というのはそう易々と作れるものではないが、本作は紛れもなくそれにあたるだろう。  本作は、いつの時代においても、愛や音楽が人々の喜びであり希望であることを高らかに歌った人生の賛歌であり、 これからもずっと残っていくであろう不朽の名作である。
[インターネット(字幕)] 10点(2018-07-11 14:05:44)(良:2票)
69.  ミスト 《ネタバレ》 
若干の予備知識ありで鑑賞したにも関わらず、スーパーに立てこもる人々に迫り来る脅威にドキドキしながら引き込まれた。 「霧」という舞台装置を上手に使い、見えざる脅威を少しづつ明らかにしていく展開は秀逸と評価できる。  この手のシチュエーションホラーではよくある展開だが、本作でもはやり非常事態における「人間同士の諍い」をメインテーマに据えている。 特にある狂信的な女性が、危機が深まるにつれ群衆の共感を得ていく様子は、私たち日本人には異様に映る。 自然現象のほとんどを科学的な理解の内にいれている(と思い込んでいる)人ほど、人智を超える現象を目の当たりにしたとき、一種宗教的な感情に引き込まれやすいことを本作では上手く表現している。  また人々が不安と恐怖に陥る状況下で、その場にリーダシップをとれる人物がいるかどうか、またその人物が冷静な判断ができるかが実際には重要な鍵を握るわけだが、本作ではそれが決して簡単ではないこともよく表現できている。 本作の主人公は一見そのリーダータイプと思わせながら物語は進行していくわけだが、本作ではそうした予定調和に納めないところに独特のユニークさがある。  話題になっている救いのないラストの展開だが、妻も犠牲になっており、頭上を闊歩する巨大な異生物を見てしまった主人公の絶望の後では、十分にありえる行動だと納得できた。  そうした意味で、本作はどのジャンルにおいても類似性を見ない、特異なサスペンスホラーとして一定のクォリティーをもっており、佳作といえる。  ※蛇足だが、ダラボン監督ということもあり、後の「ウオーキング・デッド」のキャストが数多く出演していることは意外な発見だった。
[インターネット(字幕)] 7点(2018-02-21 11:21:59)(良:2票)
70.  スター・ウォーズ/最後のジェダイ 《ネタバレ》 
「観ている2時間あまりの間、日常生活を全く忘れさせてくれる…」ジョージ・ルーカスが良き娯楽映画をこう表現したことがあったが、本作もまぎれもなくそうであり、SWだった。  正統なSWには、いくつか外してはいけない要素がある(手に汗にぎる宇宙戦、ドロイドやファルコン号の活躍、様々な惑星やクリーチャー、ライトセーバー戦、フォースの哲学、ジェダイ(ライトサイド)とシス(ダークサイド)の戦い、そしてスカイウォーカー家の血縁関係…)これらをきちんと盛り込み、さらにファンが観たいものもきちんと見せてくれた(ルークとレイア、R2―D2との再会、ヨーダの登場、二つの太陽など)  一方で観客をミスリードする展開を多用したり、スノークのあっけない退場、ルークの隠遁の理由がよくわからない、など不満点も残りはしたが、今回は新キャラクター(レイ、ポー、フィン)の成長譚でもあり、希望の余韻を残すエンディングもよかった。  レイはジェダイオーダーを再建できるのか、銀河に再びバランスをもたらすの誰か、カイロ・レンはダークサイドから脱却できるのか そして、レイの血縁は…EPⅨへの期待は膨らむ。  EP4の劇場公開から40年近く経っても、新作を楽しみにできる幸福を与えてくれたルーカスとディズニーに心から感謝したい
[映画館(字幕)] 10点(2017-12-26 10:08:11)(良:2票)
71.  ダンケルク(2017) 《ネタバレ》 
ノーラン監督ということと、体感型の戦争映画との触れ込みに期待して劇場まで足を運んだが、正直期待外れだった。  戦いの全貌を説明することなく、セリフすら最小限で、ひたすら局地戦での撤退の様子を名もない一兵士の視点で追う、という発想は悪くないが、あまりにも展開が地味すぎて、面白さを感じることなくエンディングを迎えてしまった。  唯一「スピットファイア」と「メッサーシュミット」の空中戦シーンは、(CGではなく)実機を使用しているだけあって、リアルな画づくりが印象に残ったが、良かったのではその程度で、イギリス国民が誇る「歴史」に共感するまでには至らなかったのは残念。  あえていえばIMAXで鑑賞していたら、もう少し点数が上がっていたかも知れない。
[映画館(字幕)] 5点(2017-09-22 13:40:00)
72.  パッセンジャー(2016) 《ネタバレ》 
原作がない映画としては、ひとえにプロットの妙が冴える作品。  地球からスペースコロニーへの移住を目指す宇宙船。クルーも乗客(パッセンジャー)も人工冬眠状態で、船はフルオートマチック航行で目的地をめざす。到着までは120年だが、30年経ったところで、アクシデントが発生し、一人の男が目覚めてしまう。 船に再度冬眠する設備は搭載されていないなか、1年以上の孤独な生活を経た男が、ある時冬眠ポットで眠っている、とある女性に恋心を抱いてしまう……  大方のストーリーは事前に知っていたし、ある程度予想できるストーリーでありつつも、丁度いいところで丁度いい出来事がほどよく発生する展開に(ローレンス・フィッシュバーン演じるクルーの出現や重大アクシデントの発生など)、最後まで飽きることなく楽しめた。 様々な伏線もうまく配置され、きちんと回収されている(IDリストバンドや船外活動スーツなど)  特に、宇宙船のデザインや内部の設定、ギミックについては近未来感を上手に演出できていたし(バーテンダーロボやダンスゲーム、ミールサーバー、医療ポッドなどなど)それらを見るだけでも結構楽しめる。(「エリジウム」や「オブリビオン」などが好きな人にはおすすめできる)  誰も経験したことのない主人公ジムの心情をクリス・プラットはほぼ表現することができていたと思うし、ジェニファー・ローレンスも同じく大きな感情の振れ幅を大変魅力的な演技で見せており、こんな女性ならジムの行動に同情できなくもない、と男性諸氏なら思ってしまうかもしれない。いずれにしても、男性の立場、女性の立場で「自分ならどうするだろう」と、それぞれの価値観に訴えかけるストーリーに乗っかってしまうのが本作を楽しむ作法のように思える。  そして最後どういう形で終わるのかも興味深かったが、大半が納得するような上手い終わらせ方だったのも良かった。  もう一つの作法として、本作のような作品はあくまでSF(サイエンス・フィクション)であり、特に「フィクション」であることを前提に観ることで、細かい設定を気にせずに楽しめるはずだ。
[ブルーレイ(字幕)] 8点(2017-08-25 11:51:11)(良:1票)
73.  スター・トレック/BEYOND 《ネタバレ》 
自分は熱心なトレッキーではないため、本リブートシリーズもそんなに嫌悪感なく、むしろ最新のSFXとビジュアルでスタートレックの世界を楽しめるという理由で好意的に楽しんでいる。 本作も然り。 冒頭のカークとエイリアンとのネゴシエーション(決裂)場面も、きちんとオチがついていて楽しい導入部だったし、宇宙基地ヨークタウンの描写も秀逸。 ただアルミタット星での敵のあまりに圧倒的な攻撃に、エンタープライズ号がほぼ「瞬殺」されてしまう展開には疑問符がついた。 あれほど強力な攻撃力をもってすれば、ヨークタウンの破壊など新兵器に頼らずともたやすくできてしまうと観客に思わせてしまう。 その後の展開もご都合主義の連続ではあるが、新キャラクターのジェイラは魅力的であり、今後のクルーとして活躍が期待できる。 もうひとつ、エンタープライズと多数のクルーを失ったにも関わらず、ラストのパーティーシーンでのハッピーエンド感にも少々違和感を感じた。そしてすぐさま新しいエンタープライズが建造されてエンドとなるわけで、こんなご都合主義を繰り返していると、この先どんな危険に陥っても、誰も心配しなくなるぞ(笑) それらを踏まえてハードルを下げて観れば、本作は場面展開も早く、それなりにアクションの見せ場もあるので、退屈することなく楽しめる。
[インターネット(字幕)] 6点(2017-06-12 13:33:32)(良:1票)
74.  ジャック・リーチャー NEVER GO BACK 《ネタバレ》 
前作同様、導入部からの引き込み力は秀逸。このシーンだけで、ジャック・リーチャーなる男がただ者ではないことが端的に表現されている。 ただし、その後は、相棒の女性を助けて、共に悪の黒幕に迫っていくとう前作と既視感のある展開で期待したほど新鮮味はなかった。 そのためか、本作ではジャックの娘(?)が登場し、ジャックが父性を全開に彼女を守ろうとする変化球が投げ込まれている。  しかし、ジャックが持つ無敵感(安心感)は相変わらずで、どんなシチュエーションでも、どんな強敵と戦っても、まるで負ける気がしない。 それが本シリーズの特徴と割り切れば、場面展開が早く、飽きさせないため、それなりに楽しめるだろう。
[インターネット(字幕)] 6点(2017-05-12 16:23:59)(良:1票)
75.  ハドソン川の奇跡 《ネタバレ》 
本作は実際にあった航空機事故を題材にしているものの、事故そのものより、重大インシデントの当事者となり一躍有名人になってしまった機長の当惑そして誠実な人格が描かれている。その意味では原題の方が主題をよく表しているといえる。  程度の差こそあれ、どんな事故でも当事者の心理としては、その一瞬(もしくは数秒)の出来事を後から何度も思い出しては「もしこうだったら」と想像したりするものだ。とりわけ旅客機は、一度事故を起こせば多くの乗客に甚大な被害をもたらすため、その命を預かるパイロットの精神的負担は想像するに余りある。 冒頭、窓外に飛行機がNYの摩天楼に突っ込んでいく幻影を見て思わず我を忘れてしまう機長に、そして正常時に50の脈拍が事故後2週間も100前後になってしまったあたりに、その心理的ショックの大きさを垣間見ることができる。  事故後の調査委員会での調査というあまり知られていない事柄をストーリーの骨格とし、観客に事故のシーンを少しづつ見せながら「機長の判断の是非」を浮びあがらせていく構図は、単なる飛行機パニックものとは違う秀逸さを感じた。   「四十数年間たくさんの乗客を乗せてきたが、最後の208秒だけが裁かれるのは妙な感じだ」のような機長のセリフがあったと思うが、長い間の地道で誠実な仕事も、何かのきっかけでその信用が崩れてしまうことがありえる。この機長のように、今日一日の仕事があとからいかに検証されても耐えうるような、そんな仕事を心がけたいと思った。
[インターネット(字幕)] 8点(2017-02-17 11:59:51)
76.  ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー 《ネタバレ》 
鑑賞後の率直な感想としては微妙だった。  反乱軍スパイによるデス・スター設計図の奪取ミッションを描いた、エピソードⅣの前日譚と位置づけられるスピンオフだが、 最新のVFX技術を駆使して40年前の作品の前日譚を描くというチャンレジは成功していると思う。 既視感のある宇宙船や登場人物そして音楽により、本シリーズの世界観が踏襲されているため、来年公開のエピソードⅧを 待ちきれないファンにとっては楽しめたと思う。  特にターキン提督やレイア姫のアーカイブ映像とCGを駆使した登場には驚かされた。まだ多少の違和感は否めないが、この手法がさらに進歩すれば、スピンオフ制作の自由度はかなり増すだろうと思われる。  しかし肝心なストーリーについては、特に前半は様々な登場人物や惑星を登場させるために、若干とっちらかった印象は否めず、 主人公ジンや「ローグ・ワン」チームの人物背景の掘り下げが浅いため、後半のおける彼らの自己犠牲に感情移入しきれなかった。 この辺りの受け止め方で本作の評価は変わってくるだろう。  スパイという設定が実際には「荒くれ者チーム」だったという微妙な設定変更に加え、これだけの英雄譚だったわけだからエピソードⅣで誰かが「ローグ・ワン」の活躍に言及するシーンがあればもっと感動もあったと思われるが(強いて言えばエピソードⅤのスノースピーダー編隊に名前が継承されてはいるが)この辺がこうした「後付けストーリー」の限界なのかもしれない。  とはいえ、特別出演?のあのアナキン君の成れの果て(特に最終盤の無双シーンは鳥肌モノ)が見られたので、及第点は付けさせて頂く。
[映画館(字幕)] 7点(2016-12-24 11:51:34)(良:1票)
77.  この世界の片隅に(2016) 《ネタバレ》 
原作未読。本サイトでの高評価が気になり鑑賞したが、なるほどその理由に納得した。  本作はジャンルでいえばいわゆる「戦争もの」に入ると思われるが、主人公は題名が示すとおり一介の無名の女性庶民であり、英雄でもましてや兵士でもない。舞台も戦場ではなく、普通の庶民の生活の場である。したがって本作では、庶民の側からみた戦争、本土に住む大半の市井の人々にとって、あの「戦争」とはいかなる体験だったのかが描かれている。その意味ではあの『火垂るの墓』と軌を一にするものの、こちらは悲愴感は控えめに、むしろユーモアや希望、力強さといったポジティブな感情に訴えかけくる違いがあった。 本作にはいわゆる悪人は登場しないし、残酷描写も控えめである。そのため、中高生などの鑑賞にも適していると思われるが、実際にあの時代に生きていた人々は本作での控えめな描写よりもっと大変で過酷であったことは(大人ならば)容易に想像できるはずだ。  おっとりのんびり屋の少女だった「すず」が18歳になり、戦争の暗雲が立ち込める中、相手もよくわからないまま広島から呉に嫁にゆく。 見も知らない土地の中で懸命に働くすず。早朝水を汲み、火をおこし、炊事をし、掃除、洗濯、裁縫…食糧が不足するなかでも、さまざまな工夫をして食卓を彩ろうとするすず。本作ではこうした何気ない生活や街並みなどが丁寧に描かれている。そのすずの狭い世界にも戦争は「少しづつ」影を落としていく。この「少しづづ」の描写が大変秀逸なため、観客も、すず達と一緒に忍び寄る脅威を追体験できる。 のどかな山野に襲い来る空襲また空襲、鳴り響くサイレンまたサイレン。そして、その空襲は、ついにすずの右手と晴美を奪い、さらに8月6日には…. 玉音放送を聞いたあとの、すずが怒りを爆発させ「何も考えん、ぼーっとしたうちのまま死にたかった」と慟哭するシーンは、見る者の心をわしづかみにして離さない。  戦争が(いかなる大義名分があろうとも、たとえそれが正義といわれるものであったとしても)なぜ起こしてはいけないのか。もしわからなくなった人はこの作品を観ればよい。あの時代、何万人、何百万人の「すず」が「晴美」が、浦野家の人々が、北條家の人々が、確かに生きていたこと。そして今を生きる私たちの祖父母や曾祖父母がまさにその人々であったことを、思い出させてくれるだろう。  ただし、本作が投げかけるメッセージは単なる「反戦」などではない。  救いだったはの夫である「周作」の「すず」への変わらぬ愛情が物語のベースにあったこと。 お互いにとってそれは大切な人生の「居場所」だったのだ。  戦争という狂気の時下にあっても、「この世界の片隅に」こうした居場所さえあれば、人はたくましく生きていける。 灯火管制が解除された戦後の町に灯りがともっていく。その光のひとつひとつが愛しく思えた。
[映画館(邦画)] 9点(2016-12-04 23:24:11)(良:1票)
78.  最高の人生の見つけ方(2007) 《ネタバレ》 
余命宣告されてからの「やりたい事リスト」というテーマ自体は目新しくはないが、モーガン・フリーマンとジャック・ニコルソンという二大名優の共演が見所の本作。 印象に残るのはピラミッドでのワンシーン、死んだ後で天国の扉の前で問いかけられるという二つの質問をモーガンがジャックに投げかける。一つは「人生に喜びを見つけたか」もう一つは「他者に喜びを与えたか」。ジャックは二つ目の質問に答える代わりに、疎遠になっている娘の話をする。それを聞きモーガンはあることを決意するわけだが、このあたりは本作の邦題である「最高の人生」には、他者にどれだけ喜びを与えたかということも深く関連していることを象徴するシーンだった。  もうひとつ、ジャックとの旅でモーガンは忘れていた妻に対する愛情を取り戻す。夫婦の倦怠は誰しも訪れるわけだが、身近な大切な人との結びつきこそが「最高の人生」に不可欠であることも思い出させてくれる。  ジャックもラストで首尾良く「世界一の美女とキス」できたり、エベレストのくだりも含めて、意外な形で二人の「棺おけリスト」は成就していくわけだが、こうした意外性の中に人生の重要なテーマを印象に残すことに成功している佳作。  
[インターネット(字幕)] 7点(2016-11-20 13:28:29)
79.  シン・ゴジラ 《ネタバレ》 
オリジナル第一作は未見だが、現代日本がつくる新たな「新・ゴジラ」、オリジナルの真意に迫る「真・ゴジラ」、そして世界を震撼させる「震・ゴジラ」を改めて世に問おうとした製作陣の意欲は伝わってきた。 まさに「現実」対「虚構」を描いているのだが、「虚構」は言い換えれば「想定外」ということでもあり、類似する事態が未来永劫に発生しないとは言い切れない。まさに福島原発がそれであり、日本の引いては世界の危機管理こそが本作のテーマであり、そのシミュレーション映画と言っても過言ではない。 深刻かつ危急な事態にあって、人間(及びその組織)はいかなる行動をとりうるのか、世界はどう動くのか…… その意味では、本作はあの「3.11」があったからこそ生まれた、原点回帰ゴジラ映画とも言える。したがって「ゴジラ」との発音、フォルム、そしてあの音楽も必須だったと思える。 終盤の血液凝固剤経口投入作戦は「ウルトラマン」の実相寺作品に見られるような荒唐無稽な作戦ではあるのだが、福島原発でのポンプ車出動とリンクさせているように思えてならない。「想定外」の事態には、正確な情報と速やかな判断、そして何より「行動力」が問われるわけだが、これは国家でも人間でも変わらない。本作が日本(日本人)の危機管理向上に有益であることを願ってやまない。
[映画館(邦画)] 7点(2016-08-17 11:02:03)
80.  アウトロー(2012) 《ネタバレ》 
冒頭の犯行シーンから、元軍人スナイパーの逮捕、そして意味不明の「ジャック・リーチャー」を呼べ……と、導入からのサスペンス演出には見事に引き込まれた。 原作未読だが、最初から犯人を明かしながら、その企てを女性弁護士と主人公が協力しながら解き明かしていく王道のサスペンスに、無敵ともいえる主人公の素手でのアクションが加わり独自の世界観を確立している。 トム・クルーズもイーサン・ハントとは違うキャラクターづくりに成功しており、役者としての幅の広さをまた一つ披露した作品になった。 そしてヒロイン役の女性弁護士、特徴的な顔立ちでどこかで見た顔……と思っていたら「ゴーンガール」の妻役だったことを思い出したが、芯が強く、知的で魅力的なキャラクターを演じている。 捜査当局に内通者がいる展開も、最後まで上手にミスリードしたところは原作の秀逸さにもよるのだろう。 ありがちなラブシーンも排除し、ジャック・リーチャーというキャラクター一本で押し通す硬派な作りだが、掘り出し物の上質なサスペンスアクションに仕上がっている。 ただ一点、ありふれた邦題は興行的には損をしたと思う。今年続編が公開されるが、毛色の違うキャラクターで複数のシリーズをこなすトム・クルーズははやり稀代の千両役者なのだろう。
[インターネット(字幕)] 7点(2016-07-27 11:23:38)
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