81. はちどり
主人公ウニは1994年に14歳だから1980年生まれ、監督もそれくらいの人でやはり自伝的な部分が多々ありそう。だからか起承転結はあまりはっきりせず、結局どういう映画だったんだろう…という思いは今もある。ただ、抱えきれないほど多くのことが起きて爆発しそうだった日々も大人になってから振り返ると悪いことだけじゃなかったと思える、世界は不思議で美しいと言える日が来るんだってことならばなかなか素敵。国は違うがどこか懐かしい風景と、ウニを演じたパク・ジフの可愛らしさと繊細な演技が印象的な作品。おススメ。 [CS・衛星(字幕)] 7点(2021-12-25 13:37:38) |
82. スパイの妻《劇場版》
戦時下(=日中戦争)において関東軍の化学兵器製造とそれに伴う人体実験を告発しようとする夫婦の物語で、なかなかスリリングであったが、それ以上に二人の行動原理が興味深かった。基本的に夫は正義、妻は愛で動いていて、どちらも大望のために残酷な決断もする。「お見事ーっ」と言えるかどうかは分からないけど、驚きもあって楽しませてもらった。師弟関係にあるようだが黒沢清×濱口竜介は今考えたらかなり凄い。主演の蒼井優は当時の女優を意識したかのようなお芝居をしているがそれが吉と出たかは微妙なところか。 [CS・衛星(邦画)] 7点(2021-12-16 22:30:29) |
83. 花束みたいな恋をした
押井守に興奮して意気投合。麦と絹は趣味が重なるお似合いのカップルだった。しかし「始まりは終わりの始まり」で徐々にすれ違いが多くなり冷めていく。今日、別れを告げると決めて最後に楽しい思い出を作る二人… しかし麦は未練たらたら状態になって「別れたくない。結婚しよう」と迫る。恋愛なんてそんなものだと。妥協して結婚すれば幸せになれると。そして、そうかもしれないと頷く絹。映画的にはやはり別れるだろうと思いながらも、そうならなかったからといって必ずしもバッドエンドじゃないし、正解、不正解のない選択は人ぞれぞれ違った捉え方になるんだろうなぁ。2021年を代表する邦画の一つだけあってさすがの完成度、クオリティ。面白かった。 [CS・衛星(邦画)] 7点(2021-11-29 00:33:03) |
84. 翔んで埼玉
原作は未読だが「パタリロ」の漫画家さんの別作品ということで実写化のハードルは高そうに見えた。しかしそれを可能にしたGACKTという稀有な存在、この映画はキャスティングの勝利だなー。二階堂ふみしかり、京本政樹しかり。そして埼玉をいじりながらも根底には埼玉愛があり(言い過ぎか?)嫌な感じはせず最後まで観ることができた。ま、小ネタはわからないところもあるにはあったが。関東民ならさらに楽しめ、埼玉県民ならさらにさらに楽しめる映画ということだろう。続編決定おめでとうございます。 [CS・衛星(邦画)] 6点(2021-11-21 22:23:20) |
85. まともじゃないのは君も一緒
人付き合いが下手な塾講師と毒舌女子高生が利害一致し、ある計画を進めていくが二人の関係も徐々に変化していく…というお話で、前半はコメディ色が強い。成田凌がボケ、清原果耶がツッコミの役割を果たし軽快で笑える作品になっている。一方後半は普通ってなんなの?という問い、それなら普通じゃなくてもいいんじゃない?といった二人を肯定する温かさが感じられ、爽やかなラストへ向かう。演者もよく嵌まっており、おすすめできる一本だ。 [CS・衛星(邦画)] 7点(2021-11-03 16:09:16) |
86. ノマドランド
しんどいね生きていくのは。ドキュメンタリーのような…というかドキュメンタリーも含まれる映画といった感じで終盤のボブ(息子が自殺)の話も実話とのこと。ただしこれは悲しみや喪失感を抱えた人たちがあえて選んだ生き方だから、そこはとても尊重されているし、ことさら政治が悪いと主張することもなかった。もちろん厳しい現実もたくさん見せられたから憧れはしないけど、ノマドのことを知り、考える時間は悪いものじゃなかった。 [CS・衛星(字幕)] 7点(2021-11-03 16:07:30)(良:2票) |
87. ひらいて
めちゃくちゃ面白かった。原作は未読で、予告編と山田杏奈のインタビュー動画を見てから鑑賞。そのインタビューで彼女は主人公・木村愛を「わからない」と言っていた。主演を務めた人でもそうなのだから、と最初から理解や共感を目指さなかったのが良かったのかな。少し引いて眺めれば愛の行動は単純に面白くて目が離せないじゃないか。萩原聖人なんて絶対刺されるんだろうなと思いながら見てたからね。俗にいう悪女モノは過剰になってコメディ化するものもあるが、これは10代の精神的不安定さが前提にあるせいか、そこまではなっておらず好印象。愛を演じた山田杏奈も素晴らしく、空虚な言葉や吐き捨てるようなセリフの数々をちゃんと自分のものにして自然に操っていたように思う。一応ベッドシーンもあったことだし、なんらか賞をあげてほしいなー。美雪役・芋生悠の顔・名前もこれでしっかり覚えた! [映画館(邦画)] 8点(2021-11-01 20:17:10)(良:1票) |
88. 佐々木、イン、マイマイン
あなたの人生に多大な影響を与えた忘れられない友人はいますか? いるならこの映画はきっと心に響くでしょう。自分はいなかったから点数としてはこんなもんかな…(寂しい)。主演の藤原季節が「人の感情はまとめられない。まとめられないものをまとめないままだったからホッとした」と言っていたのが記憶に残っているが、ホントにそういう映画だなと思った。20代でこれを撮った内山監督の今後が楽しみである。 [CS・衛星(邦画)] 6点(2021-11-01 01:04:59) |
89. アップグレード
AIが最善を導き出して人にアドバイスするのはすでに始まっていることだが、それがさらに進化し、体の動きまでコントロール可能になったら? そんな近未来を舞台にしたSFアクション。よくよく考えるとツッコミどころもあるんだけど、観てる間はそこを感じさせなかった。スピード感や緊張感が程よく見応えある映画になっている。オチも秀逸で満足だけど少々グロいのと、くしゃみで人を殺す技術に若干白けてしまったのを思い出して7点ということに。 [CS・衛星(字幕)] 7点(2021-10-26 23:00:19) |
90. 燃えよ剣(2020)
威厳ある"ちゃんとした"時代劇。スケール感が必要なところにはしっかりお金をかけているし、往年(70年代あたりか)の邦画ような懐かしさも感じた。原作「燃えよ剣」は上巻・下巻という形で出版されていたと思うが、この映画化記念?で一冊にまとめられたものも見かけた。分厚かったなー 150分に収まる内容ではないはずだ。必然、駆け足になる。原作ファンは厳しい評価を下すかもしれない。が、未読の自分からするとこれでも十分楽しかった。新選組誕生のワクワク感、池田屋での死闘、やがて賊軍となり散っていく。敗者の悲哀は近藤や松平容保公に任せて、主人公・土方歳三はどこまでもクールでドライな存在であったのが一つ特徴と言えるかもしれない。病により衰弱していく沖田総司を演じた山田涼介の減量ぶりもなかなか。こういう大作時代劇が今後も作られ続けるといいな。 [映画館(邦画)] 7点(2021-10-16 09:05:43) |
91. 燃ゆる女の肖像
《ネタバレ》 ヨーロッパの映画らしく静かで気品がある。しかし燃え盛るような熱いものも感じた。主人公はマリアンヌとエロイーズ、二人の女性。画家のマリアンヌはエロイーズの肖像画を描くことになる。これは現代で言うお見合い写真なのだが、エロイーズはそもそも結婚に後ろ向き。以前雇った画家には一切顔を見せなかったという。その轍を踏まぬため、正体を明かさず、散歩のときなどによく観察して描くよう、エロイーズの母から言われている。ここから二人の関係が始まる。肖像画を描くためにエロイーズを目に焼き付けていくマリアンヌ、そして彼女の視線を感じ続けるエロイーズ。モデルを引き受けてからは互いにそのような状態になり、二人を結び付ける。良いキスシーンがある映画は良い映画だ(テキトー)。ラストシーン、エロイーズはマリアンヌを決して見ない。一方、自分が見られていることは分かっている。エロイーズは涙を流しながらも最後は笑うのだ。それぞれの道を歩んでも、あの日々の記憶が消えることはない。切なくも美しい映画であった。 [CS・衛星(字幕)] 7点(2021-10-11 23:39:21) |
92. 朝が来る
<原作未読>想像してたよりさらにヘビー…。英題はTrue Mothersっていうのか。これは素直に佐都子とひかりのことと受け取っていいだろう。ひかりの妊娠は思わぬことだが、ちゃんと愛する人の子であり、もし社会が許容するなら大切に育てたはずだ。だから彼女には母性みたいなものが既にある。しかし、経済的苦境はそんな我が子を不幸にするであろう行動にひかりを駆り立てていく。ポスターになっているのがまさにそのシーンなのだが、最後は… 一言で言えばやっぱり母なんだよね。そこに帰結する。女性原作者×女性監督だからこその説得力もあるのかな。演者に対する要求も「七人の侍」を撮ってた頃の黒澤監督ばりで驚くが、それがメインから脇まで実を結んでいるのだから大したもの。じつに丁寧に撮られた良い映画だが、振り返ればあそこはカットしても良かったかな…と感じる部分も無いわけじゃないので7点ということで。 [CS・衛星(邦画)] 7点(2021-09-27 18:34:12)(良:2票) |
93. 劇場版 鬼滅の刃 無限列車編
<原作未読、アニメ1期は鑑賞済み>列車での(との)戦いはそこそこだったが、上弦の鬼が現れてからというもの、一段ギアが上がってなんとも凄かった。主人公そっちのけだけど、柱のかっこよさで400億円。心を燃やせ、か。ありがとう煉獄さん。2期も楽しみに待ってます。 [地上波(邦画)] 8点(2021-09-26 00:00:36) |
94. アス
<ゲット・アウトは未見>嫌な思い出があるビーチに出かけると、その夜、奴らが現れた。ここまでは良かった。邦画ならこの不気味な雰囲気をしばらくは引っ張るんだろうけど、こちらはすぐに直接対決が始まる。そしてあっさり制圧される主人公サイド。反撃に出て以降、笑って良いのか悪いのかよく分からない戦いが続いて、だんだん飽きてきた。で終盤戦、肝心の奴らの正体だが… 唯一言葉を話す彼女が説明してくれたが「なんだそりゃ」という感じ。と同時にあるオチが浮かんでくるが、案の定そう来たんで驚きにも繋がらず…。残念な印象が強い映画。 [CS・衛星(字幕)] 4点(2021-08-25 00:06:14) |
95. イエスタデイ(2019)
《ネタバレ》 事故から目覚めるとビートルズが存在しない世界だった…という面白い設定。名曲の数々を自分の作曲として発表し、世界的スターになる主人公ジャック。しかしやってることは盗作だから当然葛藤もあり。果たしてどのような結末を迎えるのだろうか。早い段階で興味はそこだけという感じになっていたが、一つ特別なシーンがあった。78歳になったジョン・レノンとの出会いだ。世代的にビートルズに特別思い入れはないのだが、それでもあそこだけはじーんと来るものがあった。そしてジャックはある決断をする。無難なオチと言えるが、まあ悪くはない。全体の尺はもう少しコンパクトにまとめた方が良かったかも。 [CS・衛星(字幕)] 6点(2021-08-23 00:02:59) |
96. ドライブ・マイ・カー
<原作未読>3時間の長尺だが「長いなー」とか「疲れたなー」とかは感じなかった。セックス、タバコ、ウイスキーに80年代あたり?の古い車、そして風景と、オシャレな演出や美しい映像に酔える映画だが、ストーリーも次の展開が気になりダレることはなかった。そして映画は山場を迎える。西島秀俊に「今凄いことが起こっている」と言わしめた岡田将生の語りによって、妻の秘密が明らかになるのだ。主人公の心から後悔が消えることはないだろう、しかしそれに縛られてはいけない。そんな思いがこもった結末に胸をなでおろす。ただ、残念なことに自分は舞台関連はあんまり飲み込めてない。2回目の鑑賞が必要かもしれないが、今すぐという訳にはちょっと…。余談だが台湾の女優さん、綺麗でした。 [映画館(邦画)] 7点(2021-08-20 20:22:05)(良:1票) |
97. アルプススタンドのはしの方
《ネタバレ》 やはり話題になった映画だけあって面白かった。どこにでもいるような高校生の、なんてことない会話が続くだけなのにね。不思議だなあ。試合終盤の熱い応援も良いが、序盤・中盤のなんとなく見てる感じはより好きだったりもする。この映画の特徴の一つは試合の様子を一切映さないこと。だから園田や矢野の顔は知らないが、最後のサプライズには思わず笑っちゃった。低予算でも良い映画は作れることをまた改めて教えてもらった気分。 [CS・衛星(邦画)] 7点(2021-08-18 00:00:35) |
98. パーム・スプリングス
《ネタバレ》 繰り返される11月9日。眠るか死ぬか、あの洞窟に行くかでリセット。もちろん記憶は積み重なっていく。多くの人がこのループからどうにかして抜け出そうとするサラに共感するのは間違いないだろう、しかし迷うナイルズや、受け入れたロイにも全く説得力がないわけじゃなく、人生とは一体…と考えさせられる。主人公自ら「よく聞く話だろ」と言ってるくらいで、ありきたりな設定ではあるが、そのへん、佳作に出会えたという満足感あり。念のため言っておくと、決して上品なコメディではないので一応ご注意を。 [CS・衛星(字幕)] 7点(2021-08-17 00:14:42) |
99. 罪の声
ゾクッとするシーンがいくつもあり、下手なホラーより怖かった。142分とやや長めではあるが、そう感じなかったのは出来が良い証拠かな。引き込まれた。とくに生島の子である望と総一郎は曽根俊也とは比べ物にならないほど事件にガッツリ巻き込まれていて、この二人だけで一本の映画になるだろうというくらい壮絶。42歳の総一郎を演じた宇野祥平がこの年の賞レースを賑わせていたのも納得だ。ただ、事件の真相が明らかになっていくにつれどうも尻すぼみ感が…。あと、これは自分自身の問題だが、モデルとなったグリコ・森永事件をもう少し頭に入れてから観るべきだったかな、と少々反省もあり。ともあれ、こういう社会派映画がヒットしたのは良いことだと思う。 [CS・衛星(邦画)] 6点(2021-08-10 17:34:59) |
100. 思い、思われ、ふり、ふられ(実写映画版)
<原作未読>丁寧に、そして繊細に撮られた映画であるが「長い」とも感じてしまった。実際には124分だからそうでもないのだが、リズムが終始同じなのと、4人分のストーリーだから映画的に小さい山場が繰り返されているようでもあった。4本の映画…は言い過ぎだが2本分くらいに長さを感じてしまったので少々疲れた。悪い物語ではないし、映像もしっかりしてるんで及第点は及第点。アニメ版は、、、遠慮しておこうかな。 [CS・衛星(邦画)] 6点(2021-07-10 22:38:14) |