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六本木ソルジャーさんの口コミ一覧[この方をお気に入り登録する

プロフィール
コメント数 823
性別 男性

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81.  ウルヴァリン:X-MEN ZERO 《ネタバレ》 
正直いって、「X-MEN」シリーズはそれほど好きではない。 自分とブライアン・シンガーとの相性の悪さもあるが、純粋に楽しめる作品に仕上がっておらず、アクションエンターテイメント作品としてはどことなくヌルさを感じていたところである。 ただ、監督が代わったこともあってか、「ファイナルディシジョン」からは面白いと評価できるようになった。 このような経緯もあり、それほど期待していなかった本作だったが、何も考えずに楽しめる合格レベルのエンターテイメント作品に仕上がっていると感じられた。 それぞれのミュータント能力を活かしたバトルシーンは上手くかつ熱く描かれており、見せ場がたっぷりだ。 また、意外と丁寧な作品作りがなされていたことも好感がもてる。 戦場でしか生きることができなかった兄と弟の間に、微妙なズレが生じていくことを一連の戦争の歴史の中で描き出している点は上手いの一言。 さらに、兄と弟の関係や姉と妹の関係も描かれているのも面白い。 兄弟でいくらいがみ合っていても仲直りできてしまう点や、妹のために自分の愛さえも犠牲にできてしまう点など、切っても切れない“血”という宿命の面白さも感じられる。 ウルヴァリンと恋人の関係(特に名前に刻まれた想い)や、老夫婦とウルヴァリンの関係なども、短いながらも心にきちんと残るように丁寧に描かれており、監督の力量が窺われる。 命名の由来のエピソードは完全には理解できなかったが、恋人の“月”と引き裂かれた“ウルヴァリン”は、ローガンの方ではなくて、恋人の方だったというのは面白い。 確かに、孤高となり静かに夜に輝き続ける“月”と、孤独なローガンの姿は少々ダブるところがあるかもしれない。  展開は恐ろしいほど拙速なものとなっているが、極力無理がないように上手く編集されている。 各キャラクターの心情や動機を窺うことができるほど、心の深い部分まではきちんと描きこまれていないのは確かなことだが、エンターテイメント作品なので、この程度でも許されるのではないか。 しかし、ウルヴァリンが記憶を失うという“既定路線”に対して、上手くリンクできなかったことが悔やまれるところか。 「そうなっているのだから、しょうがない」と取って付けたような仕上がりにせざるを得なかったのはもったいない。 “続編”という手段もあるので、あまり急がなくてもよかったのではないか。
[映画館(字幕)] 7点(2009-09-12 23:21:05)
82.  96時間 《ネタバレ》 
アクション映画としては、満足できる仕上がりとなっている。比較的リアリティを感じさせるアクション・設定となっている点が好感をもてる。悪い意味での“突っ込みどころ”が少なく、鑑賞中には嫌悪感や疑問符などは感じさせなかった(「頼むから、クルマごとクルーザーまでダイブしないでくれ」と祈っていたら、きちんとクルマから降りて、橋から飛び降りてくれて一安心した)。 また、純粋なハリウッド作品ではなく、フランス製ということもあり、いい意味で洗練されていない“粗さのある切れ”が逆に引き付けられる。 リーアム・ニーソンの存在感によって、クールかつ重厚な作品にもなっている。 腕っぷしの強さだけではなくて、名刺一枚で乗り込んでいく度胸や知的さ、冷静な状況判断などは、あまり見られないタイプの主人公だ。 そういう意味においても、評価できる作品になっている。 さらに、前半に父親としての愛情及び、愛情を上手く注げない寂しさや苦悩を存分に描くことによって、それがストーリーにいいスパイスとなっており、効果的に機能している。 いい父親にはなれなかったからこその想いも感じられる。 フザケタ作品にはなっていないので、最後のオチだけがやや悔やまれるところ。 ハッピーエンドにすること自体は反対しない、むしろ無事に父と娘が再会できたときはちょっと感動することもできた。 しかし、能天気にアーティストに会いに行って、「俺は義父よりも凄いんだぜ!」という子どもじみたオチを見せられると、ちょっと疑問符も生じてくる。 犯罪組織とはいえ、あれほどの大量虐殺を行ったのだから、なんらかの代償を払ってもよかったのではないかという気もする。 犯罪組織やフランス警察にあれほどの喧嘩を売ったのだから、“もう日常生活には戻れない”“もう娘とは会うことが出来ない”といった“苦しさ”や“やりきれなさ”を最後まで維持して欲しいところでもある。 自業自得ともいえる主人公の娘と、無関係な者にまで暴走し続ける父親なのだから、もう少し自己中心的になり過ぎない程度に抑えないといけない。 “悪いヤツは全員ぶっ殺して、俺たちだけは幸せになりました”ではいつものリュック・ベッソン映画になってしまう。 観客に最後まで“スカっとした気分”になってもらうためには、仕方のないオチを製作陣は選択したのかもしれないので、不正解というわけではないが、正解ともいえないところ。
[映画館(字幕)] 7点(2009-09-05 21:42:02)
83.  HACHI/約束の犬 《ネタバレ》 
評価をするのは難しい映画だが、素直に感動することもできるので、それほど悪くはない映画に仕上がっている。 映画としてはかなり物足りない作りにはなっているが、ラッセ・ハルストレム監督がベテランらしく温かくて優しい映画を作った。 パーカーとHACHIとの関係ばかりではなく、夫と妻との関係、父と娘との関係をもきちんと盛り込まれている。 特別なイベントは存在しないが、彼らの関係性やお互いに対する気持ちは伝わってくる。 本作のストーリーははっきり言って存在しないといってもよいが、ゴチャゴチャと話を膨らませるよりも、HACHIだけをメインに撮ろうと余計なストーリーを省いた点は逆に潔いともいえる。 本作において必要不可欠な「パーカーとHACHIとの交流」「パーカーを待ち続けるHACHIの姿」だけあれば十分と判断したシンプルさが最近の映画には見られないものであり、評価できる点にもなっている。 秋田犬は、表情が豊かなため、色々と問いかけているようにも感じられるので余計な説明も要らないだろう。 ストーリーは最後の最後まで極めてシンプルとなっている。 新聞に載ったからといって変なミラクルも起きず、登場人物と絡んで余計な感動を強いることもなく、駅で待つHACHIにあり得ないようなハプニングも襲わない。 ただただ、周囲の人々はHACHIを見守るだけだ(時折食事を与えるだけ)。 観客も彼ら同様に、主人を待つ続けるHACHIを見守るしかない。 それだけでよいのではないか。 パーカーの孫のやり取りは、本作を見る子ども達向きには良いまとめをしてくれたと思う。 HACHIの姿を通して、“愛する人を忘れない気持ち”を大事にするという大きな話でまとめてくれれば、これが特別な話ではなくて、自分にとっても身近な話だと分かるだろう。
[映画館(字幕)] 7点(2009-08-16 22:44:17)(良:2票)
84.  3時10分、決断のとき 《ネタバレ》 
個人的には狙ったわけではないが、「3時10分」から始まる回を鑑賞。 劇場の方は完全に狙っているだろう。 世間一般でも絶賛されている本作だが、なぜか上手くハマれなかった。 オリジナルを見ていなければ、もうちょっと高い評価をしたかもしれない。 予習用にオリジナルを見た直後に鑑賞したのが完全に裏目に出たようだ。 人間ドラマに焦点をあてて、西部劇らしからぬ西部劇だったオリジナルの良さに惚れこんだが、派手でありがちな西部劇に変化させてしまったことが引っ掛かってしまった。 オリジナルでは、冒頭の強奪の際に双方に多くの死傷者が出るほど派手な銃撃戦はない。 アパッチ族も出てこなければ、トンネル爆破もない。 護送中にベンが護送をしている者を殺すこともなければ、金目当ての住民から撃たれることもない。 派手さを“時代”が要求しているのかもしれないが、そういったことをしなくても良作ならば、観客は付いてくるのではないか。 派手な撃ち合いがあること自体に対して非難するつもりはないが、ベンという男に対して“感情移入”を妨げるような結果に繋がっているような気がする。 オリジナルでは意外と紳士だったベンは、このために極悪非道ぶりを露呈せざるを得なかった。 油断したといって仲間を殺したり、ブチ切れて次々に殺したり、訳の分からない奴に恨みを買われたり、助けに来た仲間を殺したりと、彼には“良心”がなく、はっきりいって好きにはなれないキャラクターだ。 ダンの“名誉”のために最後の列車には乗ったものの、馬を呼んで脱獄する気が満々というのもいかがなものか(これでは皆が無駄死になる)。 このような無法者の犯罪者と貧乏な牧場主では“友情”や“絆”は築かれないのではないかと思う。 オリジナルではベンはダンの姿に、成れなかった自分を投影していたが、ダンの“名誉”を守るほどの関係性がオリジナルほど深まっていないような気がした。 オリジナルではそれほど出番のない息子をクローズアップして、「自分に対する誇り」というテーマを重要視している。 そのテーマには惹かれるが、名誉ある“死”が心の中で上手く整理することができず、“感動”に繋げることができなかった。 自分自身に対する“満足”、自分に対して軽蔑の念を抱いていた息子や妻へ“自分の生き様を刻み付けた”という意味のある“死”ではあるが、ちょっとすっきりしないオチでもある。
[映画館(字幕)] 6点(2009-08-16 01:50:22)(良:2票)
85.  G.I.ジョー(2009) 《ネタバレ》 
元ネタに関しての知識は一切なし。 頭脳を1秒も使うことのない、くだらないバカ映画だろうと期待度ゼロで臨んだが、本作は見るに耐えないバカ映画ではなくて、素晴らしいバカ映画だった。 映画には常々“深み”が必要であると説いてきたが、本作には“深み”は一切要らない。 いい意味での“浅さ”をスティーヴン・ソマーズ監督は徹底的に追求してくれた。 最近のアメコミ作品は「ヒーローとしての苦悩」といった面に、ことさらスポットが当てられてしまい、肝心の映像やアクションがイマイチ楽しめないものが多かった。 本作はアメコミ作品ではないが、そういった面を排除して、徹底的にアクションやユニークな世界観を追求しているので、それを存分に堪能することができる。 頭脳を使うことのないバカ映画だが、「それで何が悪い!」という思い切りの良さを評価したいところ。 こういう映画も、ときには必要ではないか。 本作を楽しめるようなココロをまだ持っていることが少し嬉しかった。 本作は、我々が子ども時代に空想していたような世界が繰り広げられている。 訳の分からない兵器を巡って、訳の分からない組織同士が訳の分からない北極の基地で戦いを行う(往年の「007」シリーズの近代化したような感じ)。 メチャクチャな兵器が多数登場して、それらを使い壮絶な銃撃戦を行って、派手に人間やクルマや建物などが吹っ飛ぶ(クルマが電車に吹っ飛ばされたあとに軽症で這って出てくる辺りが最高)。 訳の分からない因縁をもった、訳の分からない名前の忍者が、訳の分からない誓いを立てて、訳の分からない戦いを行う(変な“東京”が良い)。 クスリのようなもので操作された恋人と戦いながら、愛のチカラで乗り越えたり、黒幕が意外な奴だったりというベタさ加減がさらにツボにハマる。 こういったことは、まさに人形を使って、我々が子ども時代に想像しながら遊んでいたような世界ではないか。 童心に返って、バカっぽい世界を楽しむことができた。 各キャラクターも自分の役割を認識しているかのように、ノリノリで“個性”を発揮している。 イ・ビョンホンも意外といい味を出していたのではないか。 それほど悪くはない悪役だったと思う。 ぜひとも“続編”を製作してもらいたいものだ。
[映画館(字幕)] 8点(2009-08-12 00:10:49)(良:3票)
86.  アマルフィ 女神の報酬 《ネタバレ》 
事件の成り行きを見守ることができるので極端につまらない映画ではない。しかし、面白いとは思えないというのが率直な感想。風呂敷を大きく広げた割には、全体的にこじんまりとしてしまったか。 織田裕二は嫌いな役者ではなくて、むしろ応援している方だ。しかし、好意的に見ても、完全に“黒田”というキャラクターをモノにしているようには思えず、やや中途半端な印象を受けた。彼からは“個性”が見えてこず、“魅力”を感じられなかった。天海に対するいたわりのようなものは、テレビを付けない、間仕切りをする等の行為から読み取ることはできるが、苦悩も悲しみも焦りも苛立ちもなく、感情が伝わってこない。オーバーアクトをしたくないのは分かるが、もうちょっとキャラクターを作った方がよかったのではないか。似たようなキャラクターになるのを避けても、結局つまらない男を演じては仕方がない。本作では、もっと冷酷で“嫌な男”を演じてもよかったか。“任務”を遂行するためには、手段を問わず、汚い手を使ってでもこなすダークヒーロー的なキャラクターでも面白かったと思う。イタリア警察に反旗を翻すようなシーンがあったが、あの程度では弱い。 西谷監督については「容疑者Xの献身」しか知らない。「容疑者Xの献身」では監督としての“個性”がないと評価したが、本作は個性を出しているものの、悪い部分しか顔を出さなかった。全体的にメリハリがなく、のっぺりとしており、やはり好きにはなれない監督だ。本人は“面白い”と思って色々とやっているつもりだろうが、“計算”や“効果”を考えているとは思えないものばかりだ。“誘拐事件”という緊張感のある事件を扱っている割には、肝心の緊迫感も何もない。 “真相”についてもそれほど驚くべきオチというわけでもなく、どこかで見たようなことのあるネタだなと思う程度。当然、テロリストにならざるを得なかった“悲哀”というものも感じられなかった。そもそも、犯人が日本人、対象者が日本人、追い詰めるのも日本人というものを何故イタリアで撮る必要があったのかもよく分からなくなってしまった。予算の無駄遣いをできるのは外交官だけではなかったようだ。テレビ局というところも、どうやら無尽蔵に予算があるようだ。
[映画館(邦画)] 5点(2009-08-09 22:49:00)(良:2票)
87.  レスラー 《ネタバレ》 
作り物とはどこか思えず、実際に存在するキャラクター・ストーリーとしか思えないほど、なにもかもがリアルだった。 自分はプロレスをそれほど好きではないが、普通の人よりは多少知っているレベルだ。 最近でも、68歳のアブドーラ・ザ・ブッチャーと65歳のタイガー・ジェット・シンが戦い、両者反則負けという壮絶な試合をしたそうである。 本作を見ると、自分の世界でしか生きられない男は果たして不幸なのかということを考えざるを得ない。家賃を払う金もなく、愛すべき娘に嫌われて、相手にしてくれるのはストリッパーくらい。全身は傷だらけで、心身ともにボロボロ、まさに満身創痍という状態。リングの下では明らかにカッコいいとは思えない。しかし、いったんリングに上がると、あれほどカッコいい男がいるだろうかというほど輝いている。 不器用で無様で愚直な生き方とも思えるが、その無様な姿も貫き通せば、カッコよく見えてくる。 また、自分の道を貫き通せば、後悔することはなく、自分自身が納得できるのではないか。他人と同じような生き方ができなくても、普通の人が見られる世界ではないものを味わえるはずだ。 自分の世界でしか生きられない男は決して不幸ではなくて、やはり多くの人の憧れであり、カッコよくて、ある意味で幸せな男なのである。 全うな生活を送らなくてはいけないということを頭では分かっていても、心は拒絶してしまうものでもある。 それにしても、娘との食事の約束をすっぽかす理由が、ヤクをキメて、女とヤッていたことが要因になっているということがなんとも泣かす。誰かを助けていて約束を守れなかったり、プロレスの大事な試合と天秤に掛けるという特別な事情ではなくて、リアルに約束を忘れるということが重要な気がする。 自分の世界で生きる男は、やはり全うな生き方はできないのである。 全てを捨てており、頭と心にあるのは、その世界のことだけなのかもしれない。 その分、多くの代償を払う必要があるが、きっと後悔はしないだろう。 プロレスラーだけではなくて、スポーツ選手、歌手、お笑い芸人、俳優など、かつてはスターだったのにこの世界にしがみついている人たちがいる。 明らかに全盛期を通り過ぎているにも関わらず、無様にもがき続けている。 そういう人たちを見る目が本作によって変わるかもしれない。 大切な精神を失わない限り、きっと彼らの輝きは失われないだろう。
[映画館(邦画)] 8点(2009-08-02 23:29:22)(良:2票)
88.  愛を読むひと 《ネタバレ》 
好き嫌いは分かれるかもしれないが、個人的にはかなり気に入った作品だ。ほとんど飽きることがなく、映像にチカラがあるため、完全にこの世界に引き込まされた。本作は、このストーリーを映画化した際における最高のデキといえるのではないか。これ以上のモノを作れる者はほとんどいないだろう。それだけ、スティーヴン・ダルドリー監督の手腕が光っている。セリフで何かを説明するのではなくて、様々な“行為”で多くのことを語らせている点が秀逸だ。脚本に書かれていること以上のことを映像化できる監督は評価されるべきだ。アカデミー賞監督賞に連続ノミネートされているのも納得といえる。 本作を一言で言えば、“愛”を映像化している作品だ。“愛”というものは形が定まっていないだけに、上手く映像化することはできない。しかも、その難しいことに成功しているだけではない。 “愛”の純粋さだけではなくて、“愛”の奥深さや複雑さをも描き切っている。 「人生」や「男と女の関係」は“愛”だけでは簡単には割り切れないことをよく分かっている。「世の中」というものは、一般的な映画のようにそれほど単純ではない。 単純なハッピーエンドでもバッドエンドでもない、どちらとも解釈が可能となるグレイの部分を描いている。本作の時代背景はかなり古いが、現実世界における“厳しさ”“深さ”に通じることを描いているようにも感じられた。 本作には色々と説明が足りないところが多く見られる。「なぜそうなるのか」「どうしてそうしたのか」「どういう想いが込められているのか」といったことが映像を観ただけではよく分からないと思う。主人公たちに簡単に感情移入できるほど単純な映画ではなく、彼らの行動を全て“理屈”で説明することができない。 しかし、人生や愛とはそういうものではないか。説明が足りないからこそ、より“深み”が増したようにも感じられる。本作には余計な「説明」も「答え」も要らない。 観た者が感じたことを色々と想い巡らせればよいだろう。 むしろ、これ以上何かを説明しようとすれば、“蛇足”となるのではないかと思う。 ケイト・ウィンスレットもアカデミー賞主演女優賞獲得が納得できる演技をみせた。 監督や脚本の意図を汲み、“深み”のある演技をみせている。セリフや説明が少ない分、微妙な“感情”や“表情”で内面を表現して観客に何かを感じてもらおうと努力している点を評価したい。
[映画館(字幕)] 8点(2009-07-31 00:37:55)(良:1票)
89.  ノウイング 《ネタバレ》 
終始、乗れない映画に仕上がっている。 結末が明らかになるにしたがって、乗れない理由がだんたんと分かってくる。 監督自身、脚本に関わっているかもしれないが、この脚本の監督を任されたら、どのようなアプローチを試みればよいか、途方に暮れるほどの難しさを持った作品だと思う。 “父と子の別れ”のようなものがテーマにもなっているので、もうちょっと父子の絆を重めに描いた方がまだ良かったのではないか。 ニコラスが子どもを無視したり、放ったらかしにして、終始一人で暴走しているようにしか思えないので、父子の絆が描かれているようには思えない。 母の死で心を閉ざした子と父が協力しながら、タイムカプセル内の紙の謎の暗号を解き明かそうとして、父子関係が回復していけば、まだ面白くなったのではないか。 そもそも紙に書かれた暗号や事件など、本作の結末とはほとんど関係ないのだから、あの暗号に意味を持たせるとすれば、こういう使い方をするしかない。 派手なアクションがあるSF作品であるが、ヒューマンドラマの要素をもっと増やせば、もうちょっと見られた作品になったかもしれない。 “手話”という手法を利用しているが、必ずしも効果的ではないのは、劇中で彼らの絆の深さが足りないからだろう。 しかし、地球が消滅しそうになる映画の大半で、訳の分からない方法で何度も地球が救われてきたが、何の手も打たずに地球が消滅するというのはなかなか思い切った手法だ。ただ、二人の子どもがアダムとイヴとして新たな人類を再生していくという解釈は面白い宗教観になっている。冒頭の父と子の会話がヒントになっているものの、風呂敷が広すぎてピンとは来ないが。 本作を見て、分かることはニコラス・ケイジの偉大さだけだ。 宇宙船が登場した瞬間に、ヒザから崩れ落ちるニコラス・ケイジを見て、「スゲえわ。カッコ良すぎる」と思ったほどだ。彼が出演しているから、ギリギリ映画として成り立っている。普通の役者ならば、見ていられないほどのレベルの作品だと思う。 どんなに荒唐無稽な作品でも、彼が持つ“何らかのチカラ”が働いて、荒唐無稽と思わせないようになっている。逆に、どんなにリアルな作品でも、“絶対に冗談だよな”と感じさせてしまうかもしれないが。 大げさな音響や音楽も本作をより低い作品にしてしまっている。あまりにもセンスがなさすぎやしないか。途中からうんざりしてしまった。
[映画館(字幕)] 4点(2009-07-13 00:14:47)(良:1票)
90.  モンスターVSエイリアン 《ネタバレ》 
3-D版を鑑賞。やはり迫力や美しさは格別だ。大したことのない風景や描写でも、3-Dになっているだけで、感動的なものに仕上がっている。3-D版を鑑賞したので、やや高めに評価している部分があるかもしれない。 3-D版の難点は吹き替えが中心になることだが、本作のベッキーとバナナマン日村はどちらも悪くなかった。もともとベッキーのことをよく分かっていないためか、彼女の吹き替えには違和感が全くなく、自然かつ上手く吹き替えをしている。素人とは思えないほどだ。 日村については、彼がセリフを言うたびに、日村の顔が浮かんでくるが、彼が吹き替えたボブというゼリー状のキャラクターが日村の外見や中身と酷似しているので、悪くはない効果が生じている。 ストーリーについては、深みはほとんどないが、ノンストップアクションが繰り広げられており、全く飽きることがない。今まで観たこともない驚くような展開は見られず、逆に「スター・ウォーズ」などの他のSF作品をやや想起させるようなシーンも見られるが(パクリというよりもパロディといえる)、王道的なストーリーが展開されているので、時間分はきっちりと楽しめるようになっている。「チーム」や「友情」というテーマもきちんと描かれているので十分だろう。 また、本作の良さといえば、各キャラクターが個性的である点だ。 ヒロインのスーザンの表情はアニメ作品としては珍しく豊かであり、弱さとともに強さを兼ね備えた好感のもてるキャラクターになっている。彼女を助ける4体のモンスターも個性的な仕上がりとなっている。ユニークな存在のボブ、マッドサイエンティスト・コックローチ博士、見かけだけのミッシング・リンクどれも上手くバランスが取られている。出しゃばりすぎず、存在感が薄いわけでもない。 全く喋ることができない巨大なムシザウルスにさえ、個性や愛着を感じるほどだ。 リンクがムシザウルスをきちんと“仲間”であると認識して接しているから、観客もそのように感じるのだろう。 大統領や将軍といった完全なサブキャラでさえ、個性や愛着を感じられるので、キャラクター造形については成功しているといえるだろう。 将軍が「50年間、モンスターを見守ってきた」というセリフを言っていたので、「オマエ、いったい何歳だよ?」と突っ込みをいれたが、その突っ込みに対する返答がエンドクレジット中に用意されているのも面白い。
[映画館(吹替)] 6点(2009-07-12 14:35:59)(良:1票)
91.  それでも恋するバルセロナ 《ネタバレ》 
かつてはニューヨークを舞台とした映画を得意としていたウディ・アレン監督だが、ヨーロッパとの出会いを果たし、今回はスペインとの出会いにより、監督の新たな一面が引き出されている。 ニューヨーク時代のシャープで冷淡な雰囲気とはまるで異なり、スペインの陽気な雰囲気がそうさせているのだろうか、全体的に丸みが感じられる。 また、ストーリーがどんどんと予期しない方向に進みながらも、完全な調和が保たれている点が素晴らしい。 本作を見るまでは、アレン監督の衰えを感じていたが、ベテランの円熟した手腕を発揮したばかりか、新たな境地を模索している点は驚かされる。 まだまだ彼は終わっていないようだ。 アントニ・ガウディの作品、スペインのギター、写真などを利用することにより、芸術的な雰囲気に溢れている点も見逃せない。 さらに、ウディ・アレンらしさは失われてはいなかった点も評価したいところ。 各キャラクターは結局、同じところをぐるぐると回っているだけだろうか。 レベッカ・ホールは婚約者を愛しておきながら、人生の不満を抑えられずにいるものの、スペインで世話になった奥さんと同様に現状を維持しようとする。 スカーレット・ヨハンソンは何かを得たとしても、現状に納得できずに自分探しを延々と続けている。 ハベエル・バルデムとペネロペ・クロスはお互いを傷つけながら、別れたり、戻ったりを繰り返している。 人間というものは、悩んだり、苦しんだりしながら、結局スタート地点から進められずにいるものなのかもしれないというようなことを、本作を見て感じた。 人間というものは変われるようで変われないのだろうか。 エンディングについては、特にオチもなく、投げっぱなしにしたことは、本作のテーマや趣旨を考えれば、ベターな選択だろう。 確かに、何らかの結論を付ける類の作品ではない。 ただ、シニカル的な味付けをもうちょっと工夫すると、一般の観客には分かりやすい作品になったかもしれない。 アカデミー賞を受賞したペネロペは、(役柄の違いがあるにせよ)スカーレット・ヨハンソンを圧倒する存在感をみせている。 彼女の登場により、空気感が明らかに変わるという面白い効果が出ている。 それまでもカオスな状態だったのに、さらに異次元のカオスに突入しているが、ウディ・アレン監督がそれを上手くまとめ上げている。
[映画館(字幕)] 7点(2009-07-12 14:32:28)
92.  トランスフォーマー/リベンジ 《ネタバレ》 
マイケル・ベイの映画は、前作を含めてもちろん好きではない。中身がなく、ご都合主義的なストーリー展開ばかりで、ストーリーも人物も何も描けていないからだ。くだらないアクションの連続ばかりであり、「付いていけない!勝手にやってろよ!」と思うときすらある。人間というものはあえて不得意な分野にチャレンジすることも大事なことだが、自分の得意分野を徹底的に追求することも大事なことなのかもしれない。今回もノーストーリー、ノーキャラクターではあるが、派手なアクションや壮絶なバトルに釘付けになった。ここまで自分のスタイルを徹底的に通してくれると、「参りました」と言わざるを得ない。言葉は悪いが、バカを追求すれば、ここまで素晴らしいバカになれるものかと感心してくる。「細かいことは言わずに地球が救われるのを見ろ」というようなセリフがあったかと思うが、まさに本作を一言で表しているのではないか。 アクションばかりではなく、マイケル・ベイ映画のお約束というべき「ラブストーリー」「親子愛」「アメリカ万歳」もきちんと描かれている。たいていは減点となるような描かれ方をされているが、本作に限っては「とことんやっちゃっていいよ!」という気になってくる。ここまで強いアメリカ軍を描いてくれると、本作を見るアメリカ国民は盛り上がるだろう。現実では苦戦しているのだから、映画の中では活躍してもらわないと困る。 ただ、アクションの見せ方に関しては、もう一工夫必要だったか。基本的には、同じリズムで構成されており、抑揚というものが全くない。「全速力で突っ走るぜ!」というスピードで押し切るタイプの作品なので、オプティマスがやられるシーンなども、何かを感じたりするようなことはあまりなくなってしまう。 しかし、前作に比べるとだいぶ見易くなったように思える。 目で追うのはしんどいところはあるが、観客の目を意識した仕上がりになっている。 オプティマス、バンブルビー、フォールン、メガトロン、スタースクリーム程度を判別できれば、一応は楽しめるだろう。個人的には好きなキャラクターであるスタースクリームの外見がメガトロンと似ているので、もうちょっとスタースクリームが判別できれば、より面白くなったと思う。 ただ、お笑い担当となるべき、ルームメイトのレオや、双子のオートボットもいい機能を果たしていない点はもったいなかった。
[映画館(字幕)] 8点(2009-07-05 23:09:03)(良:2票)
93.  トランスフォーマー 《ネタバレ》 
元ネタに関しては知識なし。さすがはマイケル・ベイという映画に仕上がっている。派手さは超一流であり、期待感を煽っておきながら、中身はまるで大したことがない。変型シーンやバトルシーンは多少の見応えがあるが、基本的にはスピードでごまかされているような気もする。マイケル・ベイの映画だから中身は気にしなくてよいが、よく分からない展開が目立つ。きちんと説明されていると思うが、「ダムを捨てて市街地に向かう理由」や「サムがビルの屋上へ行って、ヘリコプターにキューブを持ち込む理由」がまるで分からなかった。「キミはもう立派な兵士だ」という一言で片付けてしまうところが、“さすが”といえるかもしれない(むしろ、このような展開がないと逆に面白さが半減するかもしれないが)。 その他の問題点としては以下のとおりか。 ①『オートボットの個性が中途半端』味方が5体もいるのに、存在感があったのが2体のみというのが寂しい限り。敵も何体かあったのだから、それぞれに見せ場を用意すべきではないか。ジャズが死んでも悲しみも何もないという状態に陥っている。ロボットがぶっ壊れたと思わせるのではなく、観客を泣かせるほどまで描いて欲しい。 ②『バトルが分かりにくく、盛り上がりに欠ける』何と何が戦っているのすら分かりにくい。リアルさを出したかったと思うが、もっと単純でいいのではないか。“良さ”を活かしきれておらず、味気がなく、爽快感がない。ラストのバトルももっとボロボロになるまで追い込まれないと面白みに欠ける。 ③『登場人物が中途半端かつ無駄に多すぎる』音声の分析官と友達ハッカーは、モールス信号などで存在感を示したとはいえ、敵側の弱点を発見するわけでもないので、存在自体をカットできる。タトゥーロも味方でも敵でもない中途半端なキャラクター。敵側に付くか、あるいはキューブのパワーを狙う第三者として、ストーリーをかき回す役柄を担うべきであった。存在感のある演技力をみせていたが、効果的な使い方ができていない。ジョン・ボイトとアメリカ軍の大尉もイマイチだが、そこまで求めるのは酷というものか。肝心の主役のラブーフについては、感情が伝わってこないので、あまり評価はできない。怒り、悲しみ、苛立ち、苦しみ、使命感などをもっと演技で観客に伝えるべきだろう。ミーガン・フォックスの方が、まだ怒りや苛立ちといった感情が伝わってくる演技をしていた。
[DVD(字幕)] 5点(2009-07-05 22:54:13)(良:1票)
94.  ヱヴァンゲリヲン新劇場版:破 《ネタバレ》 
テレビ版のストーリーは一応知っている程度のそれほどシリーズに興味がない立場からレビューしたい。 テレビ版から上手く再構成・再構築が図られている。「テレビ版と全く同じものを作るのならば、わざわざ劇場版を作る必要はない」という製作者の強い想いが感じられる。テレビ版の各キャラクターは周囲と意思疎通が図れず、それぞれの“孤独”が前面に押し出されているだけの悩める中学生に過ぎなかったが、劇場版はシンジ、綾波、アスカともに“大人”になっている。テレビ版では人形のような存在だった綾波は恋愛感情(ぽかぽかした気持ち)を持ち、碇親子の関係修復にチカラを貸そうとしている姿は、大きすぎる変化だ。テレビ版では自分のことしか考えずに暴走していたアスカが、そうした綾波の気持ちを知り、三号機のテストに乗ると言ったのも大きな変化だ。シンジが三号機のテストパイロットがアスカだと知っていることもテレビ版とは異なり、大きな意味をもった。「攻撃できない」というシンジの意思がより加わり、ヱヴァから降りるという決意についても、大きな意味をもった。また、アスカを攻撃できないということだけではなく、使徒に取り込まれた綾波を助けたいという強い意思をシンジから感じられるところも大きな変化だ。ひたすら謝って現状を維持することを望むシンジにも大きな変化が感じられる。テレビ版を見ていた視聴者も十数年が経ち、悩むだけの“子ども”ではなくて、強い意思をもった“大人”に変わらなくてはいけないとでも庵野総監督は伝えたいのだろうか。 脚本的には、上手くまとめあげられていると思うが、映像上においてはややまとまりを欠いているところもある(新宿MILANOの音声状態が悪すぎたという問題もあるが)。 シリーズのファンは自己補正できるかもしれないが、あまりシリーズを深く楽しんでいない者にとっては、詰め込まれすぎているためか、それぞれのエピソードがぶつぎられていると感じられるところもある。“序”の方が、まとまり感はまだ良かった。 多少期待していた新キャラクターの真希波については、今回においてはそれほど重要なキャラクターではなかったか。コアの変換もなしに二号機を操縦できたり、ビーストモードを起動できるというのは謎だが、戦線を離脱したアスカと、テレビ版におけるスイカ畑での加持の代わりをさせたに過ぎない。坂本真綾を起用したかっただけのような気もする。
[映画館(邦画)] 7点(2009-07-04 16:32:46)
95.  ヱヴァンゲリヲン新劇場版:序 《ネタバレ》 
正直に言うと「エヴァンゲリオン」は今までまったく興味が無かった。過去に一話たりとも見たことはない。しかし、ここまで盛り上がりをみせられるとどれほど凄いのかをこの機会に触れておくのが、ベターではないかという思いを強くした。とはいえ、いきなり見たとしても時間と金の無駄になるのが目に見えていたので、一通りDVDで旧作をさっと見ることとした。 今回の劇場版はネームバリューで客を釣る単なる金儲けという企画ではない。決して旧作の焼直しではない、まさに新たに生まれ変わったオリジナルストーリーに近い仕上がりをみせている。製作者のプライドや信念が感じられる渾身の作品だ。「今さらなぜヱヴァなのか?」という問い掛けに十分応えるものだ。この新作により、シリーズ全体の更なる底上げに繋がるものとなるのではないか。 全体的に編集が非常に上手く、過不足を感じない内容となっている。 前作と同様の内容でもあるが、旧作の数倍のブラッシュアップが感じられる。 「ヤシマ作戦」が成功するのは、誰しもが知っていることだが、それにも関わらず、ぞくぞくするような緊張感、迫真の盛り上げ方は評価できる。 恐らくストーリーは我々が知っているものとはかけ離れていくのではないか。それとともに、各キャラクターも知っているものではなくなっていくような気がする。今回の作品でも、各キャラクターには微妙に変化を感じられる。シンジは確かに弱くて情けない姿を露呈しているが、今回の彼にはどことなく“強さ”を感じる。「ヤシマ作戦」から逃げなかったのは、彼の成長だろう。彼の成長を描くために、前作とは異なり、簡単に終わらせるのではなく、「ヤシマ作戦」をスケールアップした壮絶なものとして描いている。父親ゲンドウの更迭発言を乗り越える逞しさを感じられる。 ミサトもシンジを強く信じる気持ちが随所に現れている。序盤において、リリスをシンジに見せて、シンジ一人ではなく、誰もが共に戦っているという想いをシンジに伝えている。トウジとケンスケのボイスメッセージも、その視点の表れである。 綾波レイも非常に重点を置いて描かれていると思う。新シリーズの彼女はどこか違う。 人形ではない、彼女の意思がどこかに感じられる。「次は、もう少し(シンジを)レイに接近させる」というゲンドウの会話からも、シンジとレイの関係が大きなテーマにもなりそうだ。
[映画館(邦画)] 7点(2009-07-04 16:25:03)
96.  ブッシュ 《ネタバレ》 
基本的にはオリバー・ストーン監督作品の「ニクソン」と製作スタイルは似ている。製作者の強い主張は込めずに、視点をややボヤかしながら事実を中心に描き出し、観た者に何かを感じ取ってもらいたいという意向が込められている。ユーモアと鋭さを交えながら、オリバー・ストーンらしい面白い作品には仕上がっているが、はっきり言って「ニクソン」に比べると物足りない点は評価できないところだ。自分の過去の作品を超えられないようでは、あえてチャレンジする必要もなかったのではないか。ややネタバレになるが、どちらも同じような存在に怯えるようなところもあり、ワンパターンともいえる。 また、ニクソンに比べて、ブッシュの方が人間的なのかもしれないが、面白みや魅力に欠けるのもマイナスだったかもしれない。描くべき題材としてはあまり適していないのだろうか。石油利権やイラン等の周辺国への影響は描かれているが、戦争を起こして英雄になりたいという野心や政府の陰謀が描かれるわけではなく、ただただ当時の情勢に従い、大量破壊兵器があると信じて、戦争を起こしただけであり、当時としてはベターという選択をしたに過ぎないことが描かれている。戦争を起こした後の長期的な展望が欠けおり、物事をあまりにも楽観的に考えていただけだ。ブッシュ自身は、自らのポリシーも強い信念もなく、周囲の意見に流されるまま、父親への反抗心やただ神のお告げという信心深さにより、色々な行動を起こしたに過ぎないのかもしれない。 さらに、全般的に亘り、終始表面的にしか描かれていないような気がして、“深み”が足りないと感じられたのもややマイナスか。 冒頭に触れたように、製作者の強い主張は込められてはいないと思われるものの、オリバー・ストーンが共和党支持なのか、民主党支持なのかは分からないが、結局のところ、ブッシュを人間的に描き、「ブッシュを許そうではないか」というような擁護するような意図が含まれていると感じられた。人間的なバカさ、人間的な優しさがあるものの、リーダーには不向きなだけだったということだろうか。そういう趣旨を込めたことも、もう一歩踏み込められなかった要因だろうか。 ただ、アメリカの政治に対してほとんど知識を持ち合わせなくても大半は理解できるほど、難解さがなく、平易に描かれている。ブッシュ映画や政治家映画の入門編と考えれば、評価できないわけではない。
[映画館(字幕)] 6点(2009-06-28 11:35:22)
97.  消されたヘッドライン 《ネタバレ》 
リアリティのある仕上りであり、ラッセル・クロウの演技も見応えがあった。クロウ演じる新聞記者が真相に気付くまでは、もうちょっと高い評価をしようとしたが、予期せぬ“どんでん返し”があったため、評価を下げることとなった。観客が驚くオチを考えようとするあまりに墓穴を掘ったという貴重な例だろうか。 あまり頭が整理できていないので、間違っているかもしれないが、ネタを整理すると「議員が戦友と親友の“友情”を利用して、自分をスパイしていた民間軍事企業を逆に陥れようと画策した」というところか。「スパイ行為を行っていたものの民間軍事企業は殺しまでは手を染めていなかった」ということが真相だろうか。脚本的には上手くオチている気がするが、映像上では上手くオチている感じがしない。新聞記者がカラクリに気付いてから、殺し屋が最後の行動を起こすまでの一連の流れが拙速すぎるという印象をもつ。議員の奥さんの一言だけで全ての糸が解れるというのはあまりにも唐突だ。 殺し屋も最後に何をしたかったのか、なぜあの場所に居られたのかも不明。本作の“肝”になるところなので、もっと丁寧に描いて欲しかったところだ。異なるエンディングの1バージョンというような浮ついたものとなっている。 また、本作の「友情と真実」というテーマも上手く描き切れているとは思えない。“真実”の追求するためには友情を利用・犠牲にしてもいいのかという記者の“苦悩”がもっと必要ではないか。この部分が緩いため、逆に“友情”を利用していたのは議員の方だったというオチが効果的に機能していない。 さらに、レイチェル・マクアダムスの演技にも不満が残る。もともとはウェブ版の担当ということであり、冒頭は“軽め”の演技でも問題ないが、終始その“軽さ”が払拭されなかったという思いが強い。目の前で証人が死んでいるにも関わらず、あまり大きな変化が感じられなかった。最後の記事を“送信”できるほど、本物の“ジャーナリスト”に成長して欲しかったところだ。 悪くはない作品だが、“素材”を活かしきれておらず、最高の調理ができたとは思えないので、評価をやや下げたいところ。「大統領の陰謀」を参考にしているようなところもやや気になる。当初はブラッド・ピットが新聞記者を演じることとなっていたが、彼が降板した理由も少々理解できるものとなっている。出演してもあまりプラスにならない映画だ。
[映画館(字幕)] 6点(2009-06-28 11:31:07)(良:1票)
98.  ゴーン・ベイビー・ゴーン 《ネタバレ》 
アメリカで評価されていた通りの良作に仕上がっている。題材の良さを活かしており、監督・脚本家として才能の高さを示したといえる。事件モノ、ミステリー、ヒューマンドラマ、社会派映画といった複雑な顔を持ち、見ている者に色々と考えさせられる深い映画に仕上がっている点は評価できる。「何が正しくて、何が間違っているのか」が見えてこない難しいテーマに対して、スムーズな問題提起がなされている。主人公が果たして正しいことをしたのかどうかを考えざるを得ないだろう。主人公が行った「7歳の男の子を殺した犯人のアタマをぶち抜いたこと」と彼らが行った「少女の将来のために誘拐すること」は果たしてどちらが正義でどちらが悪なのかが分からない。ラストの選択については、人の親でもなく、女性でもない主人公だからこそ、あのような行動を取ることができたのではないか。娘が大切にしている人形の名前を間違えるような母親でもアマンダにとっては幸せなのかもしれないと考えたくなる気持ちも分かる。 一方、「実の娘を亡くした者」「不妊症に悩む妻を持つ者」「子どもが犠牲者になる姿を見たくないパートナー」、どのキャラクターも子どもに対して深い思い入れを抱える者である。子どもの明るい将来のため、子どもが確実に不幸せにならないために、法律を超えた行動を取ろうとする気持ちがよく伝わってくる。どちらの考えもよく分かり、この問いに対する明確な“答え”は存在しないだろう。 エンディングシーンも心に響くような仕上がりとなっている。 娘が実の母親の元に戻ったのだから、形式上はハッピーエンドであるのは間違いない。 しかし、これほど素直に喜べないハッピーエンドで締めくくったアフレックは凄い。 バッドエンドと考える者もいるだろう。 冒頭にも触れられていた「街」というキーワードも大事にされていたと思う。車の運転中に飛び出してきた子どもから暴言を吐かれるような「街」の姿が描かれている。子ども達が悪いのではなくて、そういう「街」で育ったことが起因となっているだろう。暴力や銃やドラッグが溢れていれば、大人たちがおかしくなり、子どもも徐々に汚染されていく。そういう子どもが大人になり、親となれば、彼らの子どももまた不幸になる。 そういった連鎖を断ち切らなくてはいけないということを「街」というキーワードを用いて、アフレックは一応の「答え」としているのではないか。
[DVD(字幕)] 8点(2009-06-28 11:24:04)(良:2票)
99.  スター・トレック(2009) 《ネタバレ》 
本シリーズは全くの未見だったため、本作を鑑賞する前に1と2をとりあえずチェックして本作に臨んだ。その予習があまりにハマったため、多少オマケをしたいところ。 「コバヤシ丸」テストのエピソードは、2を観ていないと深く楽しむことはできまい。未来のスポックが若いカークに出会った際に語ったセリフ「これまでもそしてこれからも私は永遠にあなたの友人です」も2を観ていないと“深さ”が分からないだろう。 このシリーズを観ていない者も楽しめるように作ったらしいが、やっぱり往年のファンを喜ばせるような作りになっている。 たんなる前日譚だろうと思っていたら、見事に裏切ってくれたアイディアは評価できる。パラレルワールド化したことで、既定路線を交えながら、新たな世界観を構築できるメリットを生んだ。新シリーズは新たな解釈を加えていくことが、これによって可能となったといえる。 パラレルワールドというアイディアもそうだが、冒頭の壮絶なシーンに対して、感動的な“出産”を上手く絡めてくるなど、「1+1」が「3」にも「4」にもなることをエイブラムスはよく分かっているようだ。 ただし、違和感があったのは、肝心のスポックだろうか。 バルカン人は感情を抑制し、全てを論理で物事を考えることができるという設定の割には、あまりにもあらゆる“感情”に溢れていた。 彼からは「怒り」「悲しみ」「喜び」「愛情」「友情」といったものが伝わってくる。 もっとも、地球人とのハーフであり、母親と故郷を同時に失っているので冷静にいられるわけではないということは分かるが、序盤のカークとの確執などは感情的になりすぎているところがある。 未来のスポックが語っていたように論理的に考え過ぎることは正しいことではなく、感情的になること自体はもちろん悪いことではないが、地球人らしい感情の表し方に終始しており、バルカン人らしさが上手く活かされていなかったような気がする。 カークとスポックがいい対比関係にはなっているものの、ややステレオタイプ的なところがある点が気になるところだった。 全体的にも、単なるSFアクションに展開しすぎるところが見られるが、最後の「新世界を探索し、新しい文明、生命体を求めて、人類未踏の世界へ」といった類のセリフを聞くと興奮が高まり、やはり低い点数は付けられない。 新シリーズへの期待感はいっそう高まってくる。
[映画館(字幕)] 8点(2009-06-14 03:18:50)(良:2票)
100.  グラン・トリノ 《ネタバレ》 
まさに“傑作”だ。 見事に“生と死”が描き込まれている。 このような難しいテーマを肩肘張らずに、平然かつ軽妙にやってのけてしまうことに、イーストウッドの恐ろしさを感じる。 ベテランの卓越した味というよりも、何かを悟ってしまったかのような境地に到達してしまったのではないか。 「生きるとは何か、死ぬとは何か」ということをイーストウッドは我々に教えてくれたばかりではなくて、「“男”とは何か」ということまでもが描かれている。 タオや神父同様に、半人前だった自分が本作を見ることでちょっとだけ一人前の“男”に近づいたような気がした。 本作風にいえば、イーストウッドに対して“とんでもねえ、ジジイだ”と最大の賛辞を与えたいところだ。 「チェンジリング」の際にも触れたが、イーストウッドのことはそれほど好きではなかった。 本作を見るのがこれほど遅くなったのも、強いて見たいとは思わなかったからだ。 イーストウッドの作品は、どれもこれも素晴らしい映画だとは思うが、自分にはその良さが素直には理解できなかった。 何度か見れば良さは徐々に分かってくるが、初見では何も感じられないことが多く、苦手としている超一流監督の一人だった。 自分が変わったのか、イーストウッドが変わったのかは分からないが、「チェンジリング」のときから、彼の素晴らしさがだんだんと分かるようになってきた。 他のレビュワーも語っているが、恐らくイーストウッドが変わったのではないか。 本作は「許されざる者」と“対”になるような作品と思われる。 完全には覚えいていないが、似たような展開のような気がする。 しかし、“結末”が大きく異なっている。 “年齢”や“時代”とともに彼は変わっていったのではないか。 イーストウッドだけではなくて、本作のコワルスキーも徐々に変わっていったことがよく分かる。 蔑視していた隣人や青二才の神父を受け入れるようになっていった。 誰もが変わることができる。 コワルスキーはあのチンピラギャングたちでさえも変わることができると思ったのかもしれない。 もちろん、我々も「イーストウッドが教えてくれたような男」に変わることができるのではないだろうか。
[映画館(字幕)] 10点(2009-06-14 03:00:25)(良:3票)
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