101. ソフィーの選択
《ネタバレ》 かなり怪しいバカップル、彼女の方は苦労人で、彼から命を助けられ、まあいろいろ有るけど二人にしか分からない絆があるから度々の大げんかも仕方ないのかな、くらいに思っていた田舎者のスティンゴと、またそれを見ていたわたくし視聴者なんぞは、二人の正体を知ったときに、これまで見ていた物が、はたと現実的にしっくりと来るわけです。二人の間につけ入る隙など無い事に気付くのです。この出会いと別れはこの上なく不毛でもあり、青年の心に仕舞っておくには余りにも壮大な出来事でもあり。青年が成長するためのほろ苦いピソード、にしては重い重い彼女の悲しい選択。彼女の選択はいつも間違っている。 [インターネット(字幕)] 8点(2022-02-12 17:01:21) |
102. アルキメデスの大戦
《ネタバレ》 歴史的事実と実在の人物を配しているが、主人公やエピソードはフィクションであり、数学の力で戦争を止めようとするファンタジー として見るのが正しいのか。目的が最初からしっかり据え置かれていて分かりやすく、いろいろな困難を乗り越えてその目的(見積額の不正を暴く)を達成した。と、ここまでは普通のファンタジーです。そして最後まで見終えると、なかなかどうして、唸ってしまう所あり、です。軍人嫌いの計測オタク学生が、最後には何処からどう見ても軍人に仕上がっているし、美しく潔く散るために造られた、日本のそして日本人の象徴としての大和、この二つ(櫂=作られた軍人、大和=時代の勢いに乗せられた日本国民)が悲惨な歴史的事実を牽引してゆく事になる、という切ない物語なのでした。 [インターネット(邦画)] 7点(2022-02-10 11:02:03) |
103. アヒルと鴨のコインロッカー
《ネタバレ》 原作未読で恥ずかしながら何の予備知識も無いまま鑑賞しました。ストーリーを想像できるような類のタイトルではなく、またその無味無臭のタイトルから、ゆるい若者たちの日常をポップに描いてます、みたいな事しか推測しておらず、そんなスタンスで見始めたら裏切られました。全体的に独特なユルさは持ちつつも、生命の尊さとか、同じ人種でも解りあえない価値観の違いもあれば、人種や言葉は違えどそれを超えた友情や心の交流はある、とか、こうやってありきたりな表現で文字にしてしまうと物凄く陳腐なメッセージ、それをどんでん返しありのストーリー展開で上手く、押しつけがましくなく表現していて。なかなかです。ボブディランなんかも、カリスマミュージシャンのアイコンとして、若者二人が出会うためのきっかけに過ぎないのかと思ったけど、重要なシーンで効果的に使われていて、映像化の成功を感じます。原作も読みたくなります。 [インターネット(邦画)] 8点(2022-01-26 11:33:11) |
104. ホテル・ムンバイ
《ネタバレ》 無差別テロという殺戮が、何と無意味で虚しく生産性ゼロで憎むべき悪行であるということを再確認する。首謀者は、純粋無知な少年らを携帯電話で遠隔操作するこの世の物とは思えない卑劣極まりない、顔のない人物。登場人物全員が被害者で、そこでたまたま生死を分けられようが、生き残ったとて被害者には変わらない。怒りで辛くなる。アメリカ人ベビーシッターが命懸けで赤ちゃんを守り、イラン人の若い母の手に渡したシーンに世界平和の尊さを感じた。厳しい料理長とアルジュンが抱き合うシーンで人の為に命を張り成し遂げたホテルスタッフのスピリットを感じ、命からがら家に帰れば愛する妻と、丸々太った幸せそうな幼子がいる、そんな日常の有難さを感じた。しかし、感動以上に、あまりにも辛く憤りばかりを感じてしまう作品であることは間違いない。 [CS・衛星(字幕)] 6点(2021-07-20 15:50:57) |
105. ゴジラvsコング
《ネタバレ》 面白かったです。ハリウッドが好む家族愛とかアメリカ万歳色は極力薄めに、本来の怪獣プロレスをきちんと魅せてくれてます。 そうプロレスです。宿命の対決はどちらが勝っても負けても嬉しくもあり寂しくもあり、〇勝〇敗〇引き分け。引退するまで続くのです。世紀の対決の最中に悪徳レフェリーが水を差したら、お前は関係ないんだ引っ込んでろとその瞬間ライバル同士がが結託する。どちらの推しかというのは観戦する上で重要ですが、コング推しの女の子のシーンとゴジラ押しの女子のシーンが交互に出てきて、どちらが悪だと位置づけず、あとはそれぞれ好みの問題だとフラットな目で見せてくれたのも良い。大人も子供も観戦できる格闘技です。 [映画館(字幕)] 8点(2021-07-09 10:45:14) |
106. タワーリング・インフェルノ
《ネタバレ》 もうね、映画界の金字塔ですよ。アクション、パニック、人間ドラマ、それらを全部高い水準で兼ね備え、次々に押し寄せる困難に立ち向かう人間たちは、良くも悪くも儚く美しい人間賛歌。こういう作品を撮られると、後々の作品は大変だな、と気の毒にすらなりますが、この年のアカデミー賞はゴッドファーザーPART2でした。良い時代。 [インターネット(字幕)] 10点(2021-07-05 19:33:01)(良:1票) |
107. レディ・プレイヤー1
《ネタバレ》 スピルバーグ監督、凄いなぁお年を召してもやっぱり天才は健在、と素直に思ってしまう。リアルの世界は決してハッピーではなくむしろ後退している感の2045年という時代、ヴァーチャルに依存する傾向だけは進んでいて、人々は現実逃避に忙しい。登場人物のハリデーが作ったオアシスという劇中ゲームを使って、スピルバーグはやりたい放題。様々なカルチャーに傾倒するオタクどものオタク心をくすぐるアイテムを次から次へと登場させるからターゲットが広い。ハリデーとスピルバーグは間違いなく同一人物にして確信犯。こういうのみんな好きでしょ~って。ゲームや特にネトゲ―には全く興味のない者でも、シャイニングのホテルやタイプライターには鳥肌が立ったし、アイアンジャイアント、ガンダム、メカゴジラが出てきたらウホ~ってなるし、デロリアンやエイリアン他にも嬉しくなる瞬間がたくさん散りばめられていて、アミューズメントパークのよう。リアルの世界が大切というのが本題ではあるが、悪者が逮捕され、オアシスは週休二日になって、それだけでこの世界がどう変わるのかはさて置き、少年の成長物語に複雑なリアリティーは必要ないのである。 [インターネット(字幕)] 8点(2021-06-28 14:27:47)(良:1票) |
108. 続・夕陽のガンマン/地獄の決斗
《ネタバレ》 長い!うん、でも面白い!南北戦争の戦場シーンなどはド派手で、夕陽のガンマンよりスケールはかなり大きくなっています。登場人物三人の中では、卑劣漢というキャラクターがとにかく魅力的。イーストウッドは相変わらず冷静沈着カッコイイ、普通にしてるだけでスマートなんだけど、卑劣漢とのデコボコぶりがお互いを良く引き立てている。裏切ったり裏切られたり、打算で手を組んだり情をかけたりで、二人の関係がずっと面白く、長いのに印象深い見せ場も多かった。橋爆破、墓場で爆走、そして三つ巴はたっぷりと。ラストの再び自己紹介テロップには笑いました。うん、面白い! [インターネット(字幕)] 8点(2021-06-07 17:40:49) |
109. 夕陽のガンマン
《ネタバレ》 賞金目当てや復讐劇で人がバタバタと死んでくのはこのジャンルならではの映画の世界観。音楽もかっこよくて、日本の時代劇にも通ずる爽快感。ピストルか日本刀かの違いだけで、エンターテイメントとしての殺しのシーンというのはどこの国でもどの時代にも必要なんだろう。単純にその所作をカッコイイと思うし、ヒーロー性を感じ(必ずしも善ではないが)そこに痺れる。ここ最近ではコンプライアンスとか何とかふざけた風潮が偉そうにはびこり、本作のような単純な殺し合いだけのものなんてのは見れない時代だなと改めて思った。これ見た結果「殺し」を真似しようと思う人間がいるのだろうか。もういい加減一部のくだらないPTAみたいな人種に気を遣うような事はやめたらいいのにと、本作の感想ではないような事を考えてしまったなぁ。ラスト金銭的に丸儲けのクリントイーストウッドと、カッコよさを独り占めしたリーバンクリーフのバランスが絶妙に良かった。 [インターネット(字幕)] 7点(2021-05-28 11:14:04)(良:2票) |
110. シン・ゴジラ
《ネタバレ》 いや~、好きですねぇ。そう言えば劇場で二回と、地上波でも観たので、今回が4回目の鑑賞になりますかね、でも面白いんですよ。最初に見たときは難しいセリフをまあ良くもペラペラと話しますねと、聞き取れない=理解できない部分もたくさんありましたが、それでも日本国政府が巨大不明生物に果敢に立ち向かう事に感動しました。口からの火炎放射と背中からの光線によってビル群をぶった切っていく姿は言葉は悪いが神々しく、ヤシオリ作戦で攻められる姿は何だか可哀想で、やっぱり作り手の皆さんはゴジラが好きなんだなと感じました。何度も見る事により理解も深まり更に面白くなりますし、「有識者会議」なるものを少々揶揄した形などは見るタイミングによって当時は震災対策を皮肉っていたかと思えば、今回は正にコロナ対策を思わせる。この感じは法治国家のあるあるなんでしょうかね。いろいろ考えさせらる内容も気に入っていますが、やっぱり一番の見所はヤシオリ作戦です。在来線爆弾やビルの倒壊で攻め、数台のコンクリートポンプ車で寄ってたかってゴジラの口に血液凝固剤を投与する。可哀想だったけど超クールでした。米国プランの再開もあるという怖い余韻も残している所も秀逸です。 [インターネット(字幕)] 10点(2021-05-25 14:43:30) |
111. フォレスト・ガンプ/一期一会
《ネタバレ》 当時見た時は、いまいちピンと来なかったという印象だったのですが、久々に見てこの作品の持つ意味みたいな物が分かった気がしました。最近のコマーシャルなどで流行りのアレでしょう。化粧品や清涼飲料、会社までをも擬人化する手法の。フォレストは、アメリカ国そのものの擬人化で、ジェニーは、自由(の女神)の象徴でしょうか。フォレストのお母さんは、「運命」であり、原始的な全ての起源のような普遍的なものの象徴で、ダン中尉は戦場でも電話でしゃべり続けてるから「文明」的な物の象徴かあるいは「ベトナム戦争」そのものか。アメリカという国の反省とこれからの歩みに期待するというアメリカPR映画、というと聞こえは悪いが、この大国の運命が世界に地球上に、大きな影響を及ぼす事は間違いない。と思わざるを得ないのです。感動というよりは、なかなか深い作品かも、です。 [インターネット(字幕)] 8点(2021-04-09 11:47:35) |
112. シティ・オブ・ゴッド
《ネタバレ》 凄いものを見てしまった。まず最初のシーンから走る鶏の躍動感。絶対面白いやつだこれ。 この街の子供たちは将来の選択肢の少ない中で、教育も受けず道端でたむろしてマリファナ吸ってる。こんなガキどもがシマを巡って殺し合いの子供戦争。地獄だ。ただこの作品、救いようのない地獄を、ノンフィクション(現実)として悲壮感なくパワフルに伝えている。そこに伝える側の主観は無く、見る側にはストレートに伝わってくる。時系列の編集の仕方なんかはお洒落で飄々としている。こういう感じが映画らしくてドライでまたいい。 その銃をカメラやペンに持ち替えたなら、と無理やり啓蒙的に考えようともするが、この街は変わらない。ガキ軍団の世代交代は繰り返される。こういう街があるんだよって話。 [インターネット(字幕)] 9点(2021-03-18 13:21:41) |
113. サブウェイ・パニック
ウォルターマッソーにハズレなし。安定感、安心感があります。故にパニックもので安心感というのは少し邪魔になっているかもしれないが、皆さんおっしゃるとおり、ラストのあの顔が秀逸。あのシーンだけで一気に、記憶に残る作品になってしまう。粋だなぁ。と思う。 [インターネット(字幕)] 7点(2021-02-12 18:17:59)(良:1票) |
114. イエスタデイ(2019)
《ネタバレ》 ビートルズの楽曲、改めて名曲揃いだ。エドシーランも現代の素晴らしいアーティストなのは間違いないが、50年以上以前のイギリスの若者がどうしてこうも世の人々のハートに響いてしまう曲ばかりを発信できていたのかと考えると、彼ら当時のビートルズにこそ何かSF的な力の思し召しがあったのではないかと思ってしまう。そしてこの世界では存在しないはずのビートルズから多大なる影響を受けているエドシーランはトップアーティストとして実在しているわけだから、矛盾してる部分も多いんだけど、とにかくビートルズが偉大であるということと、ALL NEED IS LOVE. それが全てなのである。 [インターネット(字幕)] 8点(2020-12-22 19:36:55) |
115. ファンダンゴ
《ネタバレ》 ケビンコスナーがカッコイイ~。私が初めて彼に出会った時、彼は農場の気のいいオヤジでした。広大なトウモロコシ畑の風景と普通のご家庭に囲まれた、ザ・アメリカ人のお父さんという感じで、少年の心はまだ残っていましたが、既に生活臭の漂うおっさんでした。 そして次に会った時は、正義感あふれるお役人で、マフィアと戦っていました(あくまでも私が出会った順番ですよ)。その時の彼は若さゆえのやる気と無っ鉄砲な所を持ったエリートでしたが、周りの大人たちがカッコ良すぎて、存在感は普通の人間どまりでした。 その後も度々彼に出会う機会があったものの、時代の流れに上手く乗れないタイプなのか、加齢とともにとは言え、いつの間にかパッとしないオジサンになっていました(あくまで個人の見解です)。で、35年前の彼はというと、いちいちカッコイイ。絵になる。バカ騒ぎやっても、口から出まかせハッタリで何となくその場を切り抜けて突っ込み所ばかりだけど、カッコイイんだな~。で、ハメ外してバカな事も勢いでやっちゃって、何なんだろうと思っていたら、仲間と埋めたタイムカプセルを掘り起こして。全部大人になるための卒業式だったんだ。切ないけど誰もが通る、実はピリッとした人生のワンシーンのような、素敵な映画です。 [インターネット(字幕)] 9点(2020-11-20 12:13:15)(良:1票) |
116. 疑惑(1982)
《ネタバレ》 あまり見ないジャンルの作品ですが、こちらの点数が高かったので。桃井かおりが炸裂してますねぇ。上手い下手ではなく、存在感が凄い。鬼塚球磨子という毒女を完全に自分のものにしています。他の出演者、柄本明、鹿賀丈史、小林稔侍、松村達雄、山田五十鈴、それぞれ皆さんちょい役ではありますが、味がある。とても自然で、まるでそこに実在している人物のように、演じるでもなく収まっている感じがいい。特に一番の見せ場、ワイン掛け合いのシーンはしびれました。事件が二人を呼び寄せ、それぞれ一人ずつ身内を失ったものの、特段何事も無かったかのように、二人はそれぞれの道を孤独にも強く生き進んでいく。そんな女たちのお話でした。 [インターネット(邦画)] 7点(2020-09-07 18:01:35) |
117. ディア・ハンター
《ネタバレ》 直接的に多くを語ろうとしない作品。背景にはベトナム戦争という有事が起こっているが、普通の若者たちの日常から始まり、若者たちの友情で終わる。若い彼らに必要なものは、どこにでもある日常。酒を飲み歌を歌い、キャデラックで遊びに行ったり。友情に似た愛情と、少しの愛国心。そんな日常が永遠に続かないという現実もちゃんと受け止めている。彼らは誰も責めない。特に反戦感情もなければ、大切な仲間を最悪な形でしか連れ戻せなかった友を責めることもしない。彼らは時代の流れに逆らうことなく、現実を受け止める(否定しない)事で今を精一杯生きている。この精一杯な姿を私たちは傍観し、戦争の悲惨さや彼らが置かれた立場の皮肉を感じ取らなければならない。鹿狩りとロシアンルーレット、ロシア系移民のベトナム戦争出征、ラストに静かに歌われる屈託のない愛国歌、普通に描かれているそれらが何とも悲しい余韻としていつまでも胸をざわつかせる。そんな青春映画。 [インターネット(字幕)] 10点(2020-08-27 15:02:59) |
118. メメント
難解。何度か見ないと絶対に分からないし、一回だけ見て諦めるのはもったいない。一回見ただけで評価が出来ないし、レビューも書けない。頭悪い自分を再確認するのも悪くはないだろう、ヒュ~。メメントプリントのシャツあったら欲しいな。 [インターネット(字幕)] 6点(2020-08-25 10:16:09) |
119. プリズナーズ
《ネタバレ》 長尺ながら、その長さを感じさせず、全くダレることなく最後まで緊張しっぱなしで鑑賞出来ました。ヒュージャックマンとジェイクギレンホール、二人の熱演が物凄いので感情移入は必至です。被害者お父さんも犯人も共に、敬虔なキリスト教信者であった訳ですが、お父さんは子供を救うために悪魔になり、犯人も我が子の悲劇を機に、神に挑戦すべく悪魔になりました。被害者も加害者も紙一重。間に入った形の刑事も、お父さんからは責任を問われたり、自分のミスで貴重な情報網である容疑者を死なせてしまったりで、既に第三者としての域を超えて巻き込まれていきます。見ている側も、最終的な犯人が誰なのかはもうどうでもいいってくらい、とにかく子供たちを無事に家族のもとに戻してあげて、お父さんや家族を楽にさせてあげてと悲願するばかりでした。全ての登場人物の気持ちが痛すぎて痛すぎて。ただ、ここまでタフで信念を持ったお父さんが、真犯人の前で完全に言いなりになってしまったところから失速してしまったのが残念。余韻を残してのエンドですが、ホイッスルの音を聞いて刑事がお父さんを救出している方に一票。 [インターネット(字幕)] 8点(2020-07-31 14:34:53) |
120. パターソン
《ネタバレ》 バスの運転手さんパターソン君の規則正しいルーチン生活と、その周りで生活する家族や仲間、通りすがりの見知らぬ誰かと交わる一瞬の日常。ただそれだけなんだけど、何とも心地よい作品。平凡な生活と、稀に起こるちょっとした出来事の間をちょろちょろと水のように流れるパターソン君のしたためる詩。秘密のノートに根気よく記したその詩たちは、一瞬にして滝の如く流れて行ってしまいました。また一滴ずつ集めて、激流の滝にしていってください、パターソン君。 [インターネット(字幕)] 7点(2020-07-24 11:54:03) |