1341. ヒッチコック
《ネタバレ》 誰もが知るサスペンスの巨匠、アルフレッド・ヒッチコック――。生涯にわたって天才の名を欲しいままにした彼の言わずも知れた代表作「サイコ」製作の舞台裏を、その知られざる苦悩の日々や、赤裸々な私生活をも絡めて描き出した伝記作品。いやー、あの古典的名作誕生の裏側には、こんな中年夫婦の倦怠期の危機が重要な役割を担っていたとは(笑)。そんな創作活動の根源的な苦しみと、危機を乗り越えたからこその夫婦の篤い信頼関係を軽妙にユーモラスに描いたところは素直に面白いと感じました。映画史に残る猟奇殺人鬼を創出したヒッチコック監督の役を、レクター博士というこれまた希代の猟奇殺人鬼役で一世を風靡したアンソニー・ホプキンスが演じるってところもなんだか暗喩的で良いです(そしてサイコの殺人鬼役は、名前が激似のアンソニー・パーキンスって!)。ただ、伝記映画としてそのあまりにも優等生な創りに、若干パンチに欠けるかなーって感じたのも事実でした。夫婦の危機をもっと破滅的に描くとか、ヒッチコックが創作の苦悩からはまり込むエド・ゲインの狂気の世界を濃厚に映像化するとか、そんなパンチの効いた演出があと一つあれば、もっと良かったかなぁと思います。当然だけど、ヒッチコックの「サイコ」という映画を観ていなければ、この作品を完全に楽しむのは厳しいと思われるので、未見の方は必ずエド・ゲインという実在の殺人鬼をモデルにした、狂気のサスペンス映画の傑作を事前に鑑賞すること。その後に、この熟年カップルの夫婦愛をハートフルに描いた作品を観るのってどうなんだろ?とは思うけどもね(笑)。 [DVD(字幕)] 6点(2014-02-23 00:32:06) |
1342. ラストスタンド
《ネタバレ》 メキシコとの国境に近い、アメリカののどかな片田舎ソマートン。ほとんど事件など起きない平凡で退屈なそんな町で、長年保安官として働いているレイは、ある日不審なトラック運転手2人組を目撃する。念のため部下に車両照会を命じた彼のそんな直感は、ものの見事に当たってしまうのだった。刑務所を脱獄した凶悪な麻薬王がメキシコへと逃亡を図るため、最新鋭の超高速スポーツカーで町へと乗り込んでくることを知ったレイは、堅物の副保安官、情熱はあるもののどこか間抜けなルーキー、紅一点の勝気で男勝りなヒロイン、銃器オタクの冴えない駄目男、そして酒が原因で身を持ち崩したヒロインの元カレらとともに、町の平和とそして正義を守るため、これで最後とばかりに立ち上がるのだった!いろいろしてて約10年ぶりとなるシュワちゃん主演作は、そんな古き良き時代のエッセンスを随所に感じるオーソドックスなアクションエンタメ作品でした。混迷する現代社会を象徴するかのように、正義と悪の狭間でやたらと苦悩したり、ヒーローでありながらどこかダークな側面を持っていたりする主人公がやたらと多いなか、さすがにもう辞めたとはいえ元カリフォルニア州知事が演じる今作の主人公は、「カリフォルニアの有権者のみんな、今までサンキューだぜ!ベイビー」と高らかに宣言するかのような単純明快な正義の頑固ジジイ(笑)。「うーん、さすがにシュワちゃんも年取ったなぁ」としみじみ思いながらも、そんな彼が大活躍する小気味の良いスピーディーな展開に中盤まではけっこう楽しんで観てたんだけど、町でのなんともまったりとした銃撃戦が始まったあたりから、見事なまでにグズグズに…(笑)。いやー、前半は良かったんだけどね~。でもまあ、僕の青春の1ページでもあるシュワちゃんの待望の復帰作ということで、ちょっぴり甘めに6点っす! [DVD(字幕)] 6点(2014-02-22 18:58:47)(良:1票) |
1343. ペーパーボーイ 真夏の引力
《ネタバレ》 60年代アメリカ、うだるような暑さが続くマイアミの片田舎で保安官が鉈で殺されるという残虐な事件が起こる。ほどなく、沼地に住みワニの皮を剥いで生活していたヒラリーという粗暴な男が逮捕され、裁判の結果電気イスへと送られることに。そんな無事に解決したはずの事件に疑問を抱いた敏腕新聞記者ウォードは現地へと向かい、真実を求めて取材を開始するのだった――。正義感の強いウォードの相棒ヤードリー、彼の弟でいかにも童貞の青臭い青年ジャック、獄中のヒラリーと手紙を遣り取りし彼と獄中結婚したがっているアバズレの40女シャーロット、そして全てを客観的に見守る黒人メイドのアニタ…、それぞれの視点から事件の真相が炙り出されてゆくなか、彼ら各々の隠された思惑から事態は意外な方向へと向かい始めるのだった。かつて、劣悪な貧困家庭に生きる少女の哀切なドラマをエネルギッシュに描いた「プレシャス」という作品で鮮烈なデビューを飾ったリー・ダニエルズ監督の二作目となる今作、豪華な俳優陣も出演してることだしとけっこう期待して鑑賞してみました。相変わらず猥雑で残酷な現実社会をゴージャスで極彩色な映像で描き出すその手腕は今回も健在でしたね(いま冬だけど、ちょっぴり汗ばんじゃいそうなほど暑苦しかったっす笑)。社会の底辺で、貧困や矛盾から無尽蔵に生まれくる暴力という荒波に押し流されそうになりながらも、必死に踏み止まって生きてゆく人間たちの群像をあくまで黒人的感性でソウルフルに描いた作品としてなかなか見応えありました。ただ、後半テーマがいまいち搾りきれておらず、なんだか散漫な展開となってしまったところがちょっぴり残念でしたけど。それでも、刑務所の面会室でのニコール・キッドマン&ジョン・キューザックのいかにもイヤらし~い遣り取りとか普通に面白かったっす。あと、ずっとニコール・キッドマンのケツばっか目で追いかけてた童貞野郎ジャックの熱い想いには、股間が痛くなるくらい共感できました(笑)。 [DVD(字幕)] 6点(2014-02-21 13:00:33) |
1344. サイレントヒル:リベレーション3D
《ネタバレ》 人智の及ばぬ地平に存在する、闇に閉ざされた街サイレントヒルへと迷い込んだ親子が、いろいろ頑張ったけれど結局は元の世界へと戻ってくることが出来ませんでした。な、ラストを迎えてしまった前作。その続編である今作は何故か冒頭から、「ところがお母さんがあの後いろいろ頑張って娘のヘザーだけは元の世界へと帰ることが出来てたんだ」という、とっっってもご都合主義的展開で始まり、嫌な予感がしたのですが、残念ながら僕のそんな懸念は見事に当たっちゃいました。超有名なゲーム(僕はあまり知りませんけど)を映画化した一作目は、ストーリーこそお馬鹿で薄っぺらいものでしたが、その過剰なまでのグロ描写と独自の圧倒的な世界観を有するホラーワールド、そんななかに仄見える廃墟と化した街サイレントヒルの精細で美しい雰囲気など、かなりのセンスを感じさせる映像美がなかなか見応えあったのだけど、こちらはちょっとね~。もう、前作にさらに輪をかけたような中身のない薄っぺら~いストーリー展開(特に主人公2人、いつの間に相思相愛なっとんねん!)はまぁ目をつぶるとしても、前作に比べていかんせん映像が凡庸過ぎです!取り敢えず、元ネタのゲームに出てきたであろうアイテムをただはべらせて3Dにしときゃ観客は満足なんだろ!というスタッフたちのやっつけ感が画面に滲み出ていて不快感さえ湧いてきそうでした。クライマックスでメリーゴーランドが炎に包まれたとき、この映画自体も燃えちまえばえーねん!と思わず突っ込んじゃったし(笑)。 [DVD(字幕)] 3点(2014-02-20 23:53:09)(良:1票) |
1345. ハッシュパピー ~バスタブ島の少女~
《ネタバレ》 地球温暖化の影響で今にも海の藻屑と消えようとしている、大量のガラクタや腐りかけの生ゴミ、濁った泥水に埋め尽くされたゴミ溜めのような島、バスタブ。そこで酒浸りの駄目な父親とともに暮らす、常にモジャモジャの髪の毛に薄汚れたTシャツと長靴姿の少女ハッシュパピーは勝気で夢見がちな6歳の女の子。ある日、来るべきときがやってきたかのように大嵐が襲来、バスタブ島はとうとう沈没の危機を迎えてしまう。「俺たちは絶対に奴隷になんかならねえ!死ぬまでここで生き延びてやるんだ!」と豪語する父親や個性的な島民らと共に、そんな沈みかけの島で必死に生き延びようとするハッシュパピーだったが、政府の冷徹な魔の手が彼女たちへと襲い掛かってくるのだった。この独特で摩訶不思議な世界観に支配された作品を観ていて、まず真っ先に思い浮かぶのは南米のノーベル賞作家ガルシア・マルケスの創出したマジック・リアリズムと言われる小説群だろう。リアルとアミニズムとファンタジーが絶妙なバランスで配合された唯一無二な世界で描き出されるのは、下品で猥雑で最高に下世話なのだけど、それでも圧倒的な生きるエネルギーに満ち溢れた人間と動物たちの真実の姿。確かに、そんな世界をハッシュパピーという無垢な少女の目線で描き出したところは新鮮で秀逸だと思うのだけど、僕は昔からマルケス風マジック・リアリズムが個人的に苦手なもので、そこまで心惹かれませんでした。うーん、面白いとは思うんですけど、これはもう完全に好みの問題ですね、6点。 [DVD(字幕)] 6点(2014-02-19 23:51:48) |
1346. マン・オブ・スティール
《ネタバレ》 スーパーマン――。ポマードで塗り固められた髪型、世界最高峰クラスなまでにソリッドに割れたアゴケツ、戦いの邪魔としか思えない赤いマント、何よりアイアムスーパーマン!と恥ずかしげもなく徹底的に自己主張するかのごときあの胸の赤い〝S〟マーク…。僕のなかでは、アメリカ的マッチョイズムのダサさの象徴のようなキャラクターなのですが、あのクリストファー・ノーランが製作を務め、そしてギレルモ・デル・トロと並び現代ハリウッドを代表するオタク監督であるザック・スナイダーがメガホンを取り満を持して再映画化ということでかなり期待に胸を高鳴らせながら、同時期に公開されたデルトロの「パシフィック・リム」がアメリカの一般的観客などはなから度外視、ひたすらハードなロボットSFオタクと潔いまでに日本市場を狙ったその作風とは真逆をいく、アメコミヒーローの原点なのだけど日本ではいまいち人気の乏しいキャラクターのいかにもアメリカ人好みなスーパーヒーローモノという対照的な内容に、ちょっぴり比較しつつ鑑賞してみました。いやー、スーパーマンってこんな話やったっけ?と思わせる、前々作「ウォッチメン」の小難しい哲学的要素を良い意味で薄めた感じのスナイダーらしい怒涛のエンタメ作品でありました。確かに「パシフィック・リム」と比べても負けず劣らず圧倒的に拘り抜いたその映像美は出色の出来です。その時間軸を行ったり来たりするまだるっこしいストーリー展開に、正直中盤までは「う~ん、これはどうなんだろう?」と疑問を感じながら観ていたのだけど、後半30分の「これ、もう地球を守ってるというより壊してるよね(笑)」ってくらいの怒涛のアクションシーンは圧巻!はは、スナイダーに見事にやられちゃったよ~、これ。全体的な完成度&お馬鹿なユーモアさえ漂う唯一無二の世界観は「パシフィック・リム」、完成度より後半の沸点を越えちゃった感のある振り切れた展開&911のメタファーなのかとも思える深い内容は「マン・オブ・スティール」といった感じで甲乙付け難しでした!両者のひたすら我が道を行く孤高のオタク的スタンスに、今から2人の次回作が楽しみっす!! [DVD(字幕)] 7点(2014-02-19 00:11:10) |
1347. ハード・ラッシュ
《ネタバレ》 裏社会の運び屋として世界的に活躍していたクリスも、いまや引退して警備商品を扱う会社の経営者となり、家族とともに平凡な生活を送っていた。ところがある日、そんな彼の幸福な生活をぶち壊しにするかのように、ヘロインの密輸に失敗し凶悪なヤクの売人に脅された義理の弟が、彼の元へ助けを求めてやってくる。二度と犯罪には手を出さないと誓ったクリスだったが、家族との生活を守るため仕方なく偽札の密輸へと手を染めることに。かつての仲間を集め、綿密な計画を打ち立てたクリスは意を決してパナマへと乗り込んでゆくのだが、様々な男たちの思惑から、完璧だったはずの彼の計画はどんどんと破綻の兆しを見せ始めるのだった。リアリティを重視したみたいだけど、なんだかストーリーのテンポが悪く登場人物たち誰もがいったい何がしたいのかいまいちよく分からないせいで、残念ながら僕はそんなに乗り切れませんでした。リアルに拘ったわりには、密輸に頑張っていたクリスが途中から何故かギャングたちの強盗作戦に加わりいつの間にか警察と銃撃戦しちゃってるし(笑)。なんでやねーん!それに、アル中男の陰湿な暴力描写があるかと思えば、最後は主人公とその仲間たち誰もがみんな最高に幸せになるという薄っぺらいラストを迎えちゃったし(気付いたら、主人公たちが百億円の価値のある絵を手に入れちゃってましたって、おい!笑)。うーん、何をメインに描きたかったのかいまいちよく分からない作品でありました。相変わらずお美しいケイト・ベッキンセールが、ぼっこぼこにされちゃうシーンにはびっくりしましたけど。あ、あとあのアル中男、ケイトが死んだと思い込んでコンクリ詰めしようとする前に、脈ぐらい確認しろっつーの! [DVD(字幕)] 4点(2014-02-18 12:07:41) |
1348. スモーク(2012)
《ネタバレ》 いつものようにバスに乗って帰宅の途についていた看護師アナは、乗り合わせた冴えない漫画オタクの青年フレディに声を掛けられる。しつこく話しかけてくる彼に「もしかして…、ナンパ?」と、うざったく思いながらも適当に聞き流していたら、突如、そのバスが原因不明の交通事故を起こしてしまう。ところが一転して、お互いの自宅のベッドで目覚めた2人、何故か世界から一切の人々が消え去り、そして漆黒の煙に取り囲まれていた。次第に迫りくる暗い煙、そこに紛れて襲いくる恐ろしい怪物、徐々に明らかとなる彼らの隠された過去の出来事…、いったいここは何処なのか、2人は無事に元の世界へと帰ることが出来るのか。いかにも低予算で製作された、アイデア一発勝負のB級ホラー。確かに頑張っているのは分かるのだけど、いかんせん全体的に地味で凡庸な印象が拭えない作品でした。映像的にも既存の映画(特にミスト)の影響をモロに受けてて、新しい部分をほとんど感じなかったです。発想は良かっただけに、惜しい!でも、主人公たちをどんどんと追い詰めてゆく、もやもやとした濃厚煙描写はそこそこ良かったかなー。いやあ、息苦しかったっす。観終わったあと、大自然の清涼な空気のなかで思いっ切り深呼吸したくなっちゃいました(笑)。と、いう訳で、今からサイクリングへと出掛けてきまーす。 [DVD(字幕)] 5点(2014-02-18 07:52:39) |
1349. インポッシブル
《ネタバレ》 2004年12月、スマトラ島沖を震源とする大地震が発生、ほどなく猛烈な勢いの津波が東南アジア各国を襲い、約20万もの命が失われた――。クリスマスのバカンスとしてタイのリゾート地を訪れていたベネット家族も、そんな自然の猛威へと容赦なく翻弄されることに。巨大な津波に巻き込まれ胸と脚に深い傷を負いながらも、命からがら長男のルーカスと共に生き延びた母マリアは、決死の思いで引き離された夫と子供たちの行方を追い始める。そんな母親を心底気遣う息子ルーカスと共に、二人は地獄のような光景へと変貌を遂げた被災地を無力感に打ちひしがれながらそれでも希望を捨てず彷徨い続けるのだった。ギレルモ・デル・トロが製作を務めたダークファンタジーの傑作「永遠のこどもたち」でデビューを果たしたJ・A・バヨナ監督の第二作目にしてハリウッドデビュー作となる今作、その前作があまりにもデルトロ・テイストの作風だったために、あれはもしかしたら彼がほとんど監督した作品だったんじゃないかとの疑念を確認する意味も込め、この度鑑賞してみました。ところがところが、今作も理不尽で残酷な現実という試練に試される親と子の絆という「永遠のこどもたち」に通じる重厚なテーマを真正面から取り上げたヒューマンドラマの佳品へと仕上がっており、そんな僕の疑念は杞憂に過ぎなかったと改めて再確認することが出来ました。ナオミ・ワッツのボロボロになりながらも常に子供たちのことを気遣う真に迫った熱演、胸を打たずにはいられないユアン・マクレガーの携帯電話を巡るエピソード、何より圧倒的な力で押し寄せてくる無慈悲で残酷な津波描写も(311を経験した我々日本人には直視しがたい部分もあるとはいえ)素直に圧倒されました。ただ、真実を基にしたと言いながら、主人公家族をちょっぴり美化しすぎているっぽいところがなきにしもあらずだけど、デルトロ風のアクの強さも抜け、ストレートな人間ドラマとしてなかなかの秀作だと僕は思いました。J・A・バヨナ監督の次回作も期待して待ちたいと思います。 [DVD(字幕)] 7点(2014-02-17 00:14:37) |
1350. パシフィック・リム
《ネタバレ》 そう遠くない近未来、太平洋の海底に突如として現れた巨大な裂目から、次々とやって来る冷酷無比な〝カイジュウ〟たちの容赦ない攻撃によって、人類の運命は風前の灯火と化していた。それまで些細なことでいがみ合っていた人類はそんな存亡の危機に一致団結、その叡智を結集して最終兵器を造り出す。それは、超小型核ミサイルでもDNA解析に基づいた生物化学兵器でも最新鋭の戦闘機でも巨大空母でも宇宙兵器でもなく、何故か〝イェーガー〟という名のパイロットのメンタル面がやたらと重視される超面倒臭い操縦法(トラウマを抱えた女性が乗り込もうものなら、簡単に暴走しちゃう笑)で駆動する人型巨大ロボットだった!「スターシップ・トゥルーパーズ」が公開されてからはや十数年、ヴァーホーベンが馬鹿馬鹿しくも圧倒的な情熱でもって切り拓いた中2病映画界という新たな地平に、今度はギレルモ・デル・トロがまたまた新しい伝説を打ち立てちゃいましたね~。まあ、馬鹿馬鹿しいっちゃあ馬鹿馬鹿しいですけどここまでやたらとお金を掛けて真面目に真剣に真摯に取り組まれたら、やっぱ凄いっすわ!個人的に、昔からロボットものって一切興味なくて「ガンダム」も「エヴァ」もほとんど観て来なかったのだけど、これには完全にやられちゃいました。夜の海から悠然と現れるカイジュウと洗練されたメタリックな美しさをまとったイェーガーとの迫真のバトルには素直にハラハラドキドキ。それに、倒されたカイジュウの死体を違法に採取する非合法集団の胡散臭~い描写も何気にツボでした。いやー、ギレルモ・デル・トロって、ほんと心に無垢な魂を宿した映画作家なんだろうね。昔からの彼のファンとしては、「ヘルボーイ」とか「パンズ・ラビリンス」のエッセンスを随所に感じる拘り抜いた映像美とねちっこいストーリー展開に感慨もひとしおっす!何より「ミミック」という、地下世界を蠢き回る気持ち悪~い巨大ゴキブリと人類の戦いを描いたB級ホラーでデビューした彼が、ここまでビックバジェットの映画をあのころの信念を失わずに撮ったという事実に感動すら覚えてしまいました。でも、次はもっと「パンズ・ラビリンス」のように真面目な映画も撮ってね、デル・トロくん(笑)。 [DVD(字幕)] 8点(2014-02-16 00:03:57) |
1351. レア・エクスポーツ ~囚われのサンタクロース~
《ネタバレ》 サンタクロースの正体は、実は冷酷無比なモンスターだった!雪深いフィンランドの片田舎の地中から発見された、そんなサンタクロースたちが村を襲い、子供たちを次々とさらっていってしまう。そんななか、何故か唯一サンタの毒牙にかからなかった肉屋の息子ピエタリは、生き残った大人たちと共に村を取り囲むサンタの脅威へと奮然と立ち向かっていくのだった。というヘンテコな設定のお馬鹿映画。はっきり言って、主人公たちへと襲い掛かる化け物がサンタという設定を取り除けば、後には低予算で作られたZ級レベルの観るに耐えないクソつまらないゾンビ映画しか残りません。つながりの悪いストーリー展開、極度なまでに魅力に乏しい登場人物たち、中途半端でうざったい親子の葛藤描写、挙句の果てはよぼよぼのジジイどもが全裸で襲ってくるだけというちっとも怖くないモンスター(サンタ)たち…。そんな中で唯一新しいと言える、サンタクロースがモンスターだったという設定も、味の素2、3粒を超まずい炒飯に振り掛けた程度のスパイスしか効いていない安易でお粗末な代物でありました。いやー、久々にこんなつまらん映画を観てしまったよー、こんにゃろー。 [DVD(字幕)] 2点(2014-02-14 22:37:12) |
1352. バトル・イン・シアトル
《ネタバレ》 1999年11月29日、アメリカの大都市シアトルではWTO(世界貿易機関)による定期会合の開催を明日に控え緊張していた。弱者を切り捨て利益のみを追求する資本主義社会の暴走を食い止めるため大規模なデモを実行しようと世界中から市民活動家たちが集まっていたからだ。警官隊は混乱を最小限に押さえ込むために綿密な計画を立てて不測の事態に臨んでいた。夜があけ、不穏な空気が徐々に街を支配していくなか、情熱的な活動家のリーダーや職務に忠実な警察官、偶然暴動に巻き込まれた妊娠5ヶ月の彼の妻、中立の立場で事実を伝えようとする女性ジャーナリスト、将来のための実績作りに余念がない市長など、様々な立場からそんな拡大するグローバリゼーションの現実を見つめたアクション色の強い群像劇。冒頭から、あくまで客観的に描かれたそんなシリアスな人間ドラマにけっこう期待して鑑賞していたのだけど、中盤辺りから、やたらと反グロ団体(もはや死語?)の主張へとどんどんと肩入れしていく展開に嫌な予感を募らせていたら、とうとう最後はそんな市民活動家たちの単なるプロパガンダ映画となってしまいました。デモ集団のなかに「絶滅寸前の海亀を守れ!」って主張する団体も居たりなんかして胡散臭さ爆発だし(これが鯨ならもはやシーシェパードだねっ笑)。なのに最後は「そして私たちの弱者を救う戦いはこれから先も続いてゆく…」というヤな感じのメッセージを残して終わっちゃいました。べつにそんなメッセージを主張したい監督の意欲は大いにけっこうなのだけど、あまりにも活動家の人たちを美化しすぎていませんか、これ。妊婦を襲って流産させたのも実は警官でしたって設定もあざと過ぎます。もっと活動家側の闇もきちんと描かなければ、フェアではないと思います。21世紀に入っても、相変わらず繰り返されるサブプライムローンやリーマンショックなどという現実とその度に催される無力なデモ活動のことを思えば、なんとも薄っぺらい作品と言わざるをえません。豪華な俳優陣はなかなか見応えがありましたけどね。 [DVD(字幕)] 5点(2014-02-11 08:16:53) |
1353. テイク・ディス・ワルツ
《ネタバレ》 本当は小説家になりたかった、今はライターとして生活しているマーゴは、結婚して5年になる夫と共にアメリカの片田舎で平凡な日々を過ごしている。料理研究家の夫は物静かでとっても優しいのだけれど、彼女はそんな毎日に何か物足りなさを感じているのも事実だった。そんなおり、マーゴは近所に住む貧しいながらも画家志望の青年ダニエルと運命的な出会いを果たす。「駄目、夫のことを裏切ったりなんか出来るわけないわ…」と必死に感情を押さえ込むマーゴだったが、情熱的な青年ダニエルによって彼女の心のドアは徐々に開かれてゆくのだった。という前半のあまりにもな、一昔まえのレディースコミックのようなベタな展開に、「どうせ、この人妻が速攻でこのダンディな男と一線を越えて快楽に溺れてすぐに夫にもそれがバレてこの後ドロドロな展開が続くんだろー、あーあ、失敗したぁ」と辟易しながら観てたのだけど、意外にも主人公マーゴが全然そんな一線を越えないばかりかかなり切実に悩んでいくという展開(それに女たらしのジゴロ風だったダニエルもけっこう真面目な奴だったし)にだんだんと惹き込まれていきました。決して綺麗なわけじゃないしスタイルだってなかなかのぽっちゃり具合(かなりリアルなタイプの笑)なのに、中盤辺りからいつの間にか彼女のことを好きになっていく自分が居ました。確かに、あの何も悪いことしてないかなり善い人な〝夫〟側の視点で見れば、むちゃくちゃやり切れないストーリーではありましたけれど、まさにワルツを踊るようなセンス溢れる綺麗な映像で描き出された登場人物各々の繊細な心理描写とかなかなか良かったですね。特に、マーゴが苦悶の末に発した「デートの約束をしましょう。ただし、今から30年後の2040年8月5日午後2時に。場所はあなたと初めて出逢った場所。きっと来てね、ダニエル。35年も夫に尽くしたら、きっとあなたとのキスくらい許される…」という言葉にはラストシーンの余韻とともにかなりジーンときちゃいました。うーん、切ない!ただ、決して夫婦で観てはいけません。気まずくなります(笑)。 [DVD(字幕)] 7点(2014-02-08 23:12:19) |
1354. ヒプノティスト-催眠-
《ネタバレ》 雪深い北欧の大都市、ストックホルム。とある家族が何者かによって惨殺された。父親も母親も果ては幼い女の子までもが、凶悪なナイフによって血の海へと沈められた。しかし、神のご加護か長男の少年だけがわずかに息のある状態で発見される。被害者にして、唯一の目撃者でもある彼だったが、意識不明の昏睡状態でとてもじゃないが事情を聴くことなど適わなかった。業を煮やした刑事ヨーナは、天才的な催眠技術を持つ精神科医エリックに少年の無意識下の記憶を探って欲しいと依頼する。だが、犯人と思しき謎の人物が今度はエリックの家族へとその非情な刃を向け始めるのだった。これまで豊かな自然描写を背景に、理不尽な現実へと翻弄される市井の人々の機微を瑞々しく描き出してきたハルストレム監督が、いままでとは全く正反対な作風へと新たに挑んだサスペンス・スリラー。冒頭の「ハルストレム、あんた、こんなに血糊なんて使ったの生まれて初めてちゃうの?」ってくらい凄惨な殺人現場の描写からちょっと無理してるっぽい感じがして不安に駆られながら観てたのだけど、すぐにいつものように淡々とした人間ドラマが展開されていきました(笑)。やっぱり彼のセンスはこういうジャンルには合ってないって!催眠術を駆使した背筋が凍るような恐怖を描いたサスペンスなのか、人生の岐路に差し掛かった家族の葛藤を描いた人間ドラマなのか、うーん、なんとも中途半端っす。ハルストレムって昔から好きな監督なんだけど、今作は残念ながらぎりぎり及第点かなーと言わざるをえないレベルの作品でありました。相変わらず、映像は綺麗でしたけどね。 [DVD(字幕)] 6点(2014-02-06 23:01:58) |
1355. フィービー・イン・ワンダーランド
《ネタバレ》 「不思議の国のアリス」が大好きで夢見がちな少女フィービーは、絶対にやっちゃいけないと教えられたことを必ずやってしまったり、怒ると誰彼構わず唾を吐きつけたり、空想上のお友達とお喋りしたり、さらにはストレスを感じると自傷行為にまで及んでしまう精神的に問題を抱えた9歳の女の子。しかし、自分にしか見えないお友達のアリスに促されるようにして学校の文化祭で行われる舞台「不思議の国のアリス」のオーディションを受けてみると、奇跡的にアリス役へと抜擢されてしまう。戸惑いながらも仲間たちと一緒に練習を始めるフィービー。すると、同時に受けていた精神科医のカウンセリングと投薬治療の成果もあって、彼女の問題行動は徐々に改善されていくのだった。悩んでいた両親も素直に安堵の表情を見せ始めるのだが、しかし重役へのプレッシャーから、フィービーの問題行動はまたもや再発してしまう…。精神的に不安定な女の子フィービーが迷い込む悪夢のような精神世界を描いた子供版「ブラックスワン」といった趣きのとってもシリアスな人間ドラマ。と言うか、この作品のパッケージやタイトルロゴのデザインだけ見ると現実感なんて欠片もないおもいっくそゴリゴリのメルヘンファンタジーっぽく思わせといて、この内容って(分からない人はビデオ屋さんでパッケージを確認することbyルイス・キャロル)、日本の配給会社の方、これはもう詐欺行為に等しいっすよ!胸踊るファンタジーを期待して手に取った多くの子供たちにとっても、子供の心の闇と家族の葛藤を真面目に描いたこの作品にとっても非常に残念な宣伝手法だと思います!!そして肝心の内容のほうですが、周りのみんなにただ認めてもらいたいだけなのになかなかうまくいかない少女の繊細で今にも壊れてしまいそうな心情が、アリスをモチーフとしたシュールな映像を交えて丁寧に描かれていて、素直に良かったと思います。難を言えば、フィービーが入り込む空想世界の描写が圧倒的に少ないことと、その世界観にいまいちセンスを感じなかったところが残念ではありましたけど、家族の絆を描いた人間ドラマとしてなかなか見応えありました。それだけに作品の内容と掛け離れたあのパッケージのせいで間違った評価を下されないか、つくづく心配です。 [DVD(字幕)] 6点(2014-02-05 09:34:43) |
1356. プレミアム・ラッシュ
《ネタバレ》 ブレーキのない自転車、それがおれの人生――。時代の先端をゆく、毎日たくさんの人々と車が忙しなく行き交うマンハッタンの喧騒の中を、信号無視や速度超過なんて当たり前、ひたすらカスタマイズされた競技用の自転車を乗りこなしメッセンジャーとして疾走してゆく通称コヨーテことワイリー。ある日、恋人の同居人から依頼された封筒を届けようといつものように交通警察官に追いかけられながら街を突っ走っていたら、突然現れたギャンブル狂いの悪徳刑事に容赦なく付き纏われる羽目に。いったいこの封筒はなんなのか、そしてワイリーは無事に荷物を送り届けることが出来るのか?こういう登場人物誰もがみんな体力勝負でひたすら走っているだけのワンアイデアの映画って、最後まで圧倒的なスピードで観客をぐいぐい引っ張る疾走感を途切れさせないことが胆となるものだけど、今作は時間軸を行ったり来たりするストーリー展開とGPS画像や主人公の軌跡を追う矢印などを随所に差し挟むというセンス溢れる映像、そしてノリの良い軽快な音楽とで見事にそんな疾走感を演出させてましたね~。なかなか気分爽快な映画でございました。後半、ワイリーがタクシーに激突し路上へと放り出されるという冒頭部分へとループしたトコあたりから、ちょっぴり減速しちゃった感がなきにしもあらずだけど、普通に面白かったっす。ただ、普段から自転車通勤している僕としては明日からの自分の運転に悪影響があるんじゃないかとちょっぴり心配!ママチャリですけど(笑)。 [DVD(字幕)] 7点(2014-02-05 08:20:54) |
1357. モネ・ゲーム
《ネタバレ》 メディア王にして大富豪のシャバンダー(露出癖ありのゴーマン野郎)。彼の下で働く冴えない美術鑑定士ハリー(いつも貧乏くじばかり引く悪運の持ち主)は、そんないけ好かない上司に一泡吹かせてやろうと、テキサスの片田舎から見付けてきたカウガールのプズナウスキー(年増の癖にかなりのお転婆)と共にモネの名画をめぐる詐欺を計画するも、あまりにも穴だらけの作戦はどんどんとおかしな方向へ。ホテルの廊下をパンツいっちょで歩き回る羽目に陥ったり、貴婦人のおならを聞かされたり、果たしてハリーの計画はいったいどうなってしまうのか?!いかにもコーエン兄弟が書きそうな軽~いタッチのロマンティック・コメディ。個人的にあんまり好きとは言えないジャンルの映画だったのだけど、そこそこ豪華な俳優陣に惹かれて(それにコーエン兄弟脚本だし)鑑賞してみました。いやー、この「まあ、なんてお下品なんでしょ!」と眉を顰めているそこの紳士淑女の皆様、とか言いながらこういうのけっこう好きなんでしょ、こっそり笑っちゃってください、と言わんばかりのこの手の笑いはやっぱり苦手っす。ただ、それを抜きにしても中盤から登場する日本人集団の悪意ありありの馬鹿にしたような描き方には、いくらそれが狙いだとはいえ、僕のなかに眠る民族主義的大和魂にメラメラと火が点きそうになっちゃいました。あー、腹立つ!!最後にフォローがあったから良かったものの、あれがなければ今すぐアメリカにテロしに行くとこだったよ、もう! [DVD(字幕)] 3点(2014-02-02 13:49:16) |
1358. 愛、アムール
《ネタバレ》 子供たちも独立し長年仲睦まじく暮らしてきた老夫婦ジョルジュとアンヌ。ところがある日、妻アンヌに不穏な病の兆しが現れる。診断の結果は軽い脳梗塞。だが、簡単に成功するはずだった手術は失敗し、アンヌには半身不随の後遺症が残ることに。失意のうちに妻を自宅へと引き取り献身的に在宅看護する夫ジョルジュだったが、アンヌの病はどんどんと悪化の一途を辿ってゆくのだった――。都会の片隅で次第に追い詰められていく老夫婦の姿を淡々と描いた哀切な人間ドラマ。かつて「ファニー・ゲーム」という、観終わった後に強烈な不快感だけが残り、しかも観客に強烈な不快感を残してやるというこの監督の意図にまんまとハメられたと思うと二重の意味で腹が立つ最低最悪な映画を撮ったミヒャエル・ハネケ監督。もうこいつの映画は二度と観まいと心に誓ったのだけど、一作だけでそう判断するのはフェアではないと思い、カンヌでグランプリを取ったという今作をあらためて鑑賞してみました。舞台は何処にでもあるようなアパートの一室のみ、登場人物もほとんど老夫婦二人のみという挑戦的な演出、そして内容の方も老々介護というとてもじゃないが胸踊るような楽しいテーマとは言いがたい作品なのに、最後まで観客の興味を持続させ2時間強という長い上映時間を淡々と見せ切るところは、悔しいけど彼の才覚を認めざるをえませんね。特に主演俳優2人の真に迫った熱演には素直に圧倒されました。とは言え「ファニー・ゲーム」同様、今回も見れば見るほど気が滅入るような理不尽な現実をひたすら観客の前に提示するという、この監督の(ラース・フォン・トリアーとはまた違ったタイプの)圧倒的な負のエネルギーは確かに凄いとは思うし、その芸術的価値も充分に認めるけれど、やっぱり積極的に次を観たいとは思えません。どうぞご自由にやっててくださいといった感じです(笑)。 [DVD(字幕)] 7点(2014-02-02 10:26:18) |
1359. パラノーマン ブライス・ホローの謎
《ネタバレ》 死んだ人の霊が見えるという特殊な力のせいで、近所の人たちや学校のクラスの中で浮いた存在である少年ノーマン(ゾンビ映画大好き)。ある日、彼の元を訪ねてきた謎の大男から恐ろしい魔女が今夜復活することを知らされ、さらにはとある本を授けられる。「今日、日が沈むまでに魔女の墓の前でこの本を読まなきゃ大変なことになっちゃうよ!」と急いで魔女の墓へと向かうノーマンだったが、追い掛けてきたいじめっ子の嫌がらせのせいでぎりぎり間に合わず、街は復活したゾンビたちで大混乱に!果たしてノーマンは魔女の呪いを解き、街の平穏を取り戻すことが出来るのか。暖かみのあるクレイ・アニメーションで描かれたコメディタッチのファンタジー・ホラー作品。予告編で強調されていた、「コララインとボタンの魔女のスタッフが贈る…云々」という宣伝文句に惹かれて、同作をこよなく愛する自分としてはけっこう期待して鑑賞してみたのだけど、完全に騙されちゃいましたね、これ。ホントにこれってコララインのスタッフが関わってるんですか?冒頭から、はっきり言って魅力に乏しい登場人物たちが織り成すあまりにもベタベタな(そして安直な)ストーリー展開に終始辟易。特に、キュートな魅力に溢れていたコララインと違い、こちらの主人公ノーマンのいじけキャラっぷりにはちょっぴりイライラさせられちゃいました。ゾンビだって7人も居るのに、どいつもこいつも同じような造形でワクワク感なんて欠片もありません。そして、後半のノーマンの仲間たちが唐突に正義感に目覚めてからの妙に説教臭い展開にも何だかなーといった感じでした。と、「コララインとボタンの魔女」を愛するがゆえにちょっぴり(?)辛口になっちゃいましたが、それでも頑張って面白い映画を創ろうというスタッフたちの想いには素直に好感が持てました。次は、もっと頑張ってね! [DVD(字幕)] 5点(2014-01-31 20:55:54) |
1360. コズモポリス(2012)
《ネタバレ》 ネズミが通貨の単位となった――。若くして投資家として成功し、何処に行くにも常に豪華なリムジンで移動していたエリックだったが、通貨・元の値動きを見誤り、破産寸前へと追い込まれてしまう。「俺は今から髪を切りに床屋へ向かうんだ」と、意味もなく大統領が周遊しネズミの死骸を投げつけあう暴徒たちが暴れ回る街を、セックスさせてくれない結婚したばかりの妻を追い求めながら、エリックは次々とリムジンへと乗り込んで来ては去ってゆく怪しげな人たちと共にただただ床屋を目指して彷徨い続けるのだった。オースター、マッカーシーらと共に現代アメリカ文学の旗手と目されるドン・デリーロの難解な小説を、これまたいつの頃からか難解路線を突き進むクローネンバーグが映画化ということで、途中で眠ってしまわないように苦いコーヒーをいっぱい用意して、この度鑑賞してみました。いやー、小難しいっすね(笑)。同監督の「裸のランチ」からグロ要素を排除した、やっぱり睡眠誘発剤のようなシュールな作品でありました。リーマン・ショック以降の、混迷するアメリカ社会に漂う閉塞感を徹底的に暗喩として描き出そうという狙いは分かるのだけど、いまいち成功しているとは言い難いです。やっぱクローネンバーグはグロがなきゃ!それでも全体を覆う、常に何か嫌なことが起こりそうなエッジの利いた雰囲気とかはなかなか良かったかなー。取り敢えず、コーヒー飲み過ぎてただいま胸焼け中っす(笑)。 [DVD(字幕)] 5点(2014-01-29 23:26:54) |