1. 東京物語
改めて評価する必要もないでしょうが、心理描写の細やかさとカメラワーク、進行のテンポが見事にかみ合った作品だと思います。今の時代にはすべてが遅すぎ、静かすぎるのかもしれませんが。アジア諸国で上映し、反応を聞いてみたい作品です。個人的には、唐沢版「白い巨塔」の最終回の翌日、BSで放映されていたのを見て、改めて衝撃を受けました。「白い巨塔」での財前教授の死は、それなりの深みをもっていたと思うのですが、やはり「東京物語」と比べるといかにも平板にあざとく思い返されました。人の死をみつめるという現代人が逃げてしまう現実を思い返させてくれる作品でした。 10点(2004-04-30 15:42:43) |
2. 2001年宇宙の旅
映画史上最高傑作の一つといってよいでしょう。作家(クラーク)と組んで歳月をかけて作りあげた脚本、撮影技法の斬新さ、音楽の使用法、すべてにおいて見事です。しかしそれ以上にこの作品が傑作なのは、誰もがこの作品の意味を理解しようと問いかけること。映像は印象を与えることができるだけで、意味を伝えることはできないのですが、普通の映画はそのことを忘れさせるように作られています。それに対してこの映画は、映像の限界を示し、しかも我々を知的に昂奮させてくれる。何かを知ろうとして見るべき映画ではなく、見る者の想像力をかき立て、頭をひねらせる点で希有の映画だと思います。 10点(2003-03-02 19:33:45) |
3. ダントン
ワイダ映画の中で必ずしも最高作とは位置づけられていないようですが、政治の論理を描いた映画としてはこれに勝るものは見たことがありません。ダントンとロベスピエールの対話の緊張感! 10点(2002-12-31 00:07:07) |
4. 大いなる幻影(1937)
映画史上の歴史的名作であることは間違いないと思います。やはり第一次世界大戦の頃のヨーロッパの背景を知らないと分かりにくいとは思いますが、愛国心と貴族的感情の間で揺れ動く将校たちと、若い兵卒の感情のからみは歴史の一面を鋭く描いていると思います。 10点(2002-10-06 00:34:14)(良:1票) |
5. ワンス・アポン・ア・タイム・イン・アメリカ
私のオール・タイム・ベストの一つ。『ゴッドファーザー』よりもよいと思うんですが、なかなか支持は得られませんね。20世紀初頭の新移民によって荒々しくなり、同時に活力を得たアメリカ。その30年後には、移民の一部はエスタブリッシュメントに手が届きかけていた。FDRからケネディ、ジョンソンと続く民主党政権と移民層のつながりもそこはかとなく示唆されていますね。それらを伏線に友情、恋愛、裏切り、挫折という普遍的なテーマを優雅な音楽で彩る、最高の逸品です。 10点(2002-05-01 23:20:57) |
6. ブルース・ブラザース
いやーいいですねぇ。テンポがよいし、ユーモアがある。音楽もいい。真剣に見る映画じゃないけれど、独特のカタルシスがありますね。 10点(2002-04-19 19:22:23) |
7. 博士の異常な愛情 または私は如何にして心配するのを止めて水爆を愛するようになったか
風刺映画の傑作ですね。キューブリックの監督と、セラーズの好演が組み合わさった希代の快作でしょう。当時、核の自動報復とか、偶発戦争とかが真剣に議論されていましたが、そのすべてを皮肉った映画ですね。 10点(2002-04-19 17:03:32) |
8. 未来世紀ブラジル
学生時代に衝撃を受けた映画。オーウェルの『1984』へのオマージュなんだろうか。ハイテクを使わず、タイプライターやダクトを使ったのも一種の風刺でしょう。パソコンとインターネットで便利になったと思っているけれど、一皮むけばすぐクラッシュするOSやハードディスク、よく分からない配線の嵐に結局使われているだけじゃないかな。ギリアムの『バロン』も好きだけれども(あれは啓蒙主義に対する皮肉)、今ではこういう社会風刺すら使いつくされてしまった。 10点(2002-04-19 15:45:30) |
9. ヒポクラテスたち
いい映画ですよ、これ。ほぼ同時期に学生していたので、感じがよく分かります。でも今から考えてもよくできた青春映画だったと思います。古尾谷さんに合掌。 9点(2003-04-30 00:28:19) |
10. 砂の器
DVDで最近見ました。映像の美しさに感激。付録映像でロケハンの苦労が語られていましたが、この時代の機材でここまで、と驚きました。スタッフ、役者共に一級で、細部までこだわった作りは日本映画の誇りだと感じました。完璧ではないけれども、この水準の映画をもっともっと見たいと感じました。 9点(2003-03-09 00:01:43) |
11. タンポポ
80年代の日本を代表する1本と思います。出演者も脚本も演出も明るく、テンポがよい。伊丹監督、輝いてましたね。この後、少しずつ彼の才気が暗い方向へ向かうのと、日本の方向も重なってしまった。バブルとその後の日本社会に真摯に取り組もうとした伊丹監督を思うと、笑った後にしんみりする作品になってしまいました。 9点(2002-08-19 01:57:42) |
12. ある日どこかで
昔、読売テレビ(関西)の深夜にやっていたカルト映画紹介番組で初めて見て、忘れられない映画になりました。アメリカでも根強いファンがいるようで、DVDも2000年版が出ていますね。日本でもDVDで出て欲しい映画です。恋人同士で見るのにおすすめ! 9点(2002-06-09 19:51:34) |
13. 羊たちの沈黙
ホラーサスペンスでは時代を代表する作品ですね、グロテスクな描写も含めて。ジョディ・フォスターとアンソニー・ホプキンスのからみは、ある意味現代の『ローマの休日』かも。レクター博士のまがまがしさを越える演技は誰にもなかなかできないでしょう。 9点(2002-04-19 17:14:06) |
14. 刑事コロンボ/別れのワイン<TVM>
コロンボの中では一番ストーリーが好き。ペーソスがありますね。犯人を追いつめるだけではない世界を作り出せたコロンボはやっぱりよくできていました。 9点(2002-04-19 16:18:10) |
15. 見知らぬ乗客
ストーリー・テリングとカメラワークで非現実的な状況をもっともらしく描く、ヒッチコックならではの映画でした。テニス・シーンはかなりうまく撮れていると思いました。逆に回転木馬シーンは無理な感じがしました。いずれにせよ、サスペンスのお手本映画の一つでしょう。 8点(2005-03-12 22:25:49) |
16. 刑事コロンボ/忘れられたスター<TVM>
悪意がない関係の中で起きる殺人。犯人を追いつめながら、人間性ゆえに最後の決着をつけないコロンボ。推理ものテレビドラマの最高水準ですね。コロンボ、リメイクされないかなぁ。 8点(2004-11-04 16:52:54) |
17. キャッチ22
《ネタバレ》 戦争風刺作品として一級です。せりふが面白い。「キャッチ」という言葉のぴったりした日本語が思いつきませんが、「落とし穴」といった感じでしょうか。除隊されたい主人公が医者に「自分が精神病者だということにしてくれ」と言い、これに対して「精神病者が自分で精神病だと分かることはないから、精神病を理由に除隊はされないんだ」と返答する場面で笑えれば、この映画の世界に入っていけるでしょう。監督による解説が付いたDVD版を見ると、いろいろと裏話が聞けて面白いですよ。オーソン・ウェルズって神のようにあがめられていたんですね。 8点(2004-09-27 10:18:46) |
18. 十二人の怒れる男(1957)
12人の男を一部屋に詰め込んで、その会話だけで事件の性格と社会性を描き出す構成は傑作の名に値するでしょう。見て損はしない作品です。今の時代に同じシナリオで作れば、結末が予想できるとか、こんなに素直に皆が説得されないだろうとか、12人の社会的構成が偏っている(女性がいないとか、黒人やヒスパニックがいないとか)いろいろと不満が出て、成立しないとは思いますが。白黒映画の時代的傑作ということでしょう。 8点(2004-09-27 10:11:16) |
19. リング(1998)
文脈で恐怖を演出する手法が成功したよいホラーだと思います。恐怖が謎を呼び、謎解きが更なる恐怖へと導いていくのは正統派ホラーのあり方ですよね。演出は限界を感じますが、日本映画に頑張って欲しいので少し甘めに8点です。 8点(2004-05-03 08:00:03) |
20. ゴッドファーザー PART Ⅱ
父ヴィトーの苦難から上昇への人生の軌跡と、孤立の道を歩む息子マイケルの軌跡を対比させたのは面白いと思います。しかしマイケルの妄執がいささか強く出過ぎてしまった感じがしました。 8点(2004-01-04 00:30:24) |