1. 8 1/2
あらゆるもんがどん詰まりへと陥り、肉体的にも精神的にも疲れきってしもうた男の苦悩を、現実と夢と幻想と過去を同列に並べた構成や、視覚と聴覚と感性に訴えかけてくる、映画的ダイナミズムと芸術性にあふれた演出によって見せてった手腕は見事で、不思議で楽しくて悲しくて怖いっちゅう、なんとも形容しがたいおもしろさには度肝を抜かれてしもうた。ラストの妙な大団円なんてもう脳みそぐ~るぐ~る! [DVD(字幕)] 10点(2012-01-01 11:41:45)(良:1票) |
2. グラン・トリノ
男イーストウッドの俳優人生の集大成とでもいうべき遺言的傑作で、老境を迎えた頑固親父の人生の締めくくり方を、ユーモアと、皮肉と、カッコよさと、残酷さと、激しさと、温かさと、美しさと、悲しさと、過去と、現在と、未来を織り交ぜながら描き出しており、男が決断した死にざまの美学と、若者に残した人生の指標には、もう男泣きに泣き崩れてしもうた!これぞまさに男の生きる道!! [ブルーレイ(字幕)] 10点(2011-12-22 10:20:09) |
3. サテリコン
まるで夢の断片をつなぎ合わせたかのような不条理感満点のとんでもない作品で、意味不明加減ではあの『8 1/2』より強烈やったんやけど、それゆえにおもろいっちゅう妙な映画的魔力に満ちた作品で、フェリーニ監督の演出力にはとにかく感嘆。まあちょっと支離滅裂すぎてついていけんところもあってんけど、不思議で、怖くて、おもろくて、不快な、なんとも珍妙でたまらん作品でありました。まさに悪夢やねこれは。 [DVD(字幕)] 8点(2012-01-01 11:44:51) |
4. キック・アス
オタクの妄想を見事に具現化させた作品で、ヒーローにあこがれるオタク少年の夢と現実をシニカルさとユーモアを交えて痛快に描き出しとったし、アクションシーンにおける容赦のないバイオレンス描写は圧巻で、とくにヒットガールの最後の突撃シーンの美しさと残酷さは絶妙な挿入歌の使い方も含めて燃えに燃えた。唯一の不満があるとすれば終わり方をもうちょい苦いもんにしてほしかったっちゅうことかな。 [ブルーレイ(字幕)] 8点(2011-12-18 16:37:18) |
5. 瞳の奥の秘密
サスペンスを軸としながら人間ドラマ、ラブストーリー、コメディ、アクション、社会的メッセージなども内包して見事にまとめあげた極上のエンターテインメントで、過去と現在を複雑に行き来する構成や、二転三転するスリリングな展開がホンマにすばらしかったし、最終的なオチのなんともいえん衝撃は強烈やったんやけど、そのあとのエピローグが見事にそれを救ってくれとった。しかし中盤の追跡劇のワンシーンワンカットの長回しにはおいさん感動してもうたなぁ。 [DVD(字幕)] 8点(2011-12-18 16:30:05) |
6. 第9地区
アパルトヘイトのメタファーとしてエイリアンを使うのはややベタやねんけど、フェイクドキュメンタリー的な手法や細かな設定、エイリアンの生活形態などによって見事なリアリティを付与しとったし、主人公が生体実験をされ出したあたりからいっきに映画が加速し、エイリアン、政府軍、そして地元ギャングによる三つ巴の血みどろ合戦のカオス状態なんて圧巻で、夢見る男子のハートはもはや灼熱状態。唯一いらんかったのはラストのカットかな。 [ブルーレイ(字幕)] 8点(2011-12-18 16:27:20) |
7. 白いリボン
上から下へと流れていく抑圧の連鎖っちゅうか、それによって村全体を覆っていく不穏な空気や不安、恐怖、憎悪、嫉妬、猜疑心、そして形成されていくナチズムの萌芽を静かで不気味で美しいモノクロ映像によって映し出しており、なんちゅうかこのいかがわしさは只事ではなかったし、謎を謎として解決しないまま放置している物語もまさにハネケの本領発揮。ホンマもうロクデモナイ人間しか出てけーへんねんなぁ。 [DVD(字幕)] 8点(2011-12-18 16:24:56) |
8. 息もできない
劣悪な家庭環境から発生していくどうしょうもない暴力の連鎖と、それでも他者のぬくもりを求める悲しい人間の性を、遠近を巧みに使い分けたカメラワークによって鋭く切り取っとり、そこで描かれる暴力描写の痛さと哀れさは半端やなかったし、後半はやや予想どおりで国民性である粘着系のしつこさが出て失速してもうたんやけど、暴力が生み出していくどうしょうもない現実っちゅうもんをいやおうなしに突きつけてくれとった。 [DVD(字幕)] 8点(2011-12-18 16:22:12) |
9. ロビン・フッド(2010)
娯楽色に徹したけっこう軽い感じのノリの作品で、迫力の戦闘シーンに意外なドラマやキャラクターが素直におもしろかったし、途中ずっと「『ロビン・フッド』ってこんな話やったけ?」と思いながら観とってんけど、ラストで「ああ、なるほどね」とわかる仕掛けが非常によかった。残念やったんは娯楽に徹したことによってリドリーらしいバイオレンスさが薄めやったってことかな。だってエンディングのアニメが最もバイオレンスやったんやもん。 [ブルーレイ(字幕)] 7点(2011-12-18 17:16:30) |
10. エクスペンダブルズ
基本的に話の中身はあってないようなもんやねんけど、B級魂と遊び心満載の潔い映画作りは観とってめっちゃ気分がよく、消耗品であることを自覚した男たちの意地とプライドと命をかけた死闘を存分に堪能させてもらったし、おもいっきりのいいバイオレンス描写も痛快。基本的に失敗することの多いオールスターキャストをそれなりに活かしとっただけでも高評価やしね。 [DVD(字幕)] 7点(2011-12-18 17:11:25) |
11. インセプション
何層にも重ねられた夢の入れ子構造や、夢への介入、共有、操作のための複雑な設定など、複雑すぎて劇中で行われている事象を正確に理解するんに若干のタイムラグが生じてしまうんやけど、これだけ複雑な設定を破綻もなく緻密にまとめあげ、なおかつエンターテインメントとして昇華させとった点は評価できるし、革新的とまではいかへんねんけど映像的にもインパクト十分の仕上がり。せやけどこれって絶対に今敏から影響受けとるよね? [ブルーレイ(字幕)] 7点(2011-12-18 17:08:35) |
12. バッド・ルーテナント
オリジナルの宗教くささが抜けたぶんグッとエンタメ性やブラックジョーク感が増しており、人間のダメさ加減を哀れみながら愛するっちゅう、狂気と愛と普遍性が入り混じった快作っちゅうか好編へと仕上がっとったし、主役のアンチヒーローを嬉々として演じとるニコラス・ケイジのハマり具合も抜群で、彼にとっては久々のあたり役。おいらの趣味的にはオリジナルよりもこっちに軍配が上がりますねぇ。 [DVD(字幕)] 7点(2011-12-18 16:51:58)(良:1票) |
13. インビクタス/負けざる者たち
アパルトヘイト撤廃直後の南アフリカにおける人種的対立、緊張関係、そして和解を、どちらに寄ることもなく公平かつ真摯に描き出したイーストウッドさすがの横綱相撲で、とくにラストの決勝戦の迫力とスリリングさは凡百の監督では永遠に出せんであろうダイナミックさ。しかしイーストウッド特有の毒やブラックさがほとんど感じられず、近年の彼の監督作のなかではインパクトは薄め。よくも悪くも普通にいい映画やったって感じかな。 [ブルーレイ(字幕)] 7点(2011-12-18 16:47:37) |
14. ぼくのエリ 200歳の少女
北欧の寒々とした美しくも寂しい雪景色をバックに、孤独な少年と少女(?)の生きるための選択を描いた作品で、甘酸っぱい初恋的要素を含みながらも、ここで描かれとるのは生きることのつらさと厳しさっちゅう紛れもない現実であり、そんななかで互いに寄りそってなんとしてでも生き残っていくことを決断したふたりの姿は、正直どっか哀れですらあった。結局は他者を犠牲にしなければ生きていけないという、悲しい現実やよねぇ……。 [DVD(字幕)] 7点(2011-12-18 16:45:09) |
15. ハート・ロッカー
パンチドランカーならぬ戦争ドランカーを描いた作品で、戦場っちゅう過酷な状況に長期間さらされた結果、人間に芽生える両極端な感情を非常に冷静に描き出しとったし、ドキュメンタリータッチの臨場感あふれる戦場描写も秀逸で、とくに視線の扱い方がめっちゃうまかった。しかしこういう撮り方はデ・パルマが『リダクテッド 真実の価値』ですでにやってもうてるので、ちょい二番煎じ的な印象はぬぐえんかなぁ……。 [ブルーレイ(字幕)] 7点(2011-12-18 16:42:04) |
16. フェリーニのローマ
フェリーニの目から見たローマ、彼の主観によるローマの姿を延々と映し出したフェリーニはんのシコシコ映画で、確かに彼の感性とイメージはすばらしく、とくにセットをこしらえてまで撮影した雨の高速道路と、皮肉と美しさが混在とした教会ファッションショーのインパクトは強烈やってんけど、物語らしい物語がまったくないっちゅうのは正直しんどく、おもろいけどいまいち入り込むことができへんかったんは残念。 [DVD(字幕)] 6点(2012-01-01 11:47:22) |
17. シャッター アイランド
《ネタバレ》 やや仰々しすぎたような気もすんねんけど、スコセッシらしい無駄に力の入った演出は完璧で、CGなども巧みに取り入れながらじつにスリリングな映像を作り上げとったし、妄想に逃げてまわな壊れてまう人の心の弱さ、哀れさもテーマとしては理解できる。しかしどちらにミスリードしていくかだけの問題で、基本的には予想どおりの展開、オチでしかなく、脚本面でのインパクトが薄かったんはめっちゃ残念。 [ブルーレイ(字幕)] 6点(2011-12-19 21:05:53) |
18. カラフル(2010)
人間の残酷さっちゅうもんを真正面から描きながら、多様な人間性の尊重、他者がいるひとりじゃない喜びという普通の幸せを、これまで以上に丹念な生活描写の積み重ねんなかで見せてったじつに原恵一らしい作品で、とくに食事や食卓をドラマの起点として使っとったところは秀逸。ただ今回は脚本がちょい平凡すぎたんが難点で、オチも非常に早い時点でネタバレ。自分で脚本も書きゃーよかったのに。 [ブルーレイ(邦画)] 6点(2011-12-19 21:03:11) |
19. ハングオーバー! 消えた花ムコと史上最悪の二日酔い
いわゆるおバカムービーとしてはほぼ文句のない仕上がりで、誰もが多少の覚えはあるであろう羽目をはずしすぎたことによるとんでもない醜態を、映画的にカリカチュアライズして最高に下品で情けなく描き出してくれとったし、意外と脚本がしっかりしとったのも高評価で、暇つぶし映画としてはホンマにほぼ完璧な内容。根底にあんのは男同士の友情であるっちゅうところもええしね。 [ブルーレイ(字幕)] 6点(2011-12-19 21:00:46) |
20. 冷たい雨に撃て、約束の銃弾を
《ネタバレ》 男同士の熱い友情、食事シーン、芸術的なまでの照明と撮影技術、激烈なる銃撃戦、バイオレンス描写など、いつもどおりのジョニー・トー印にはおおいに楽しませてもらったんやけど、海外資本が入っているせいかどっか無難な仕上がりで、『エグザイル/絆』のようなとことんまで突き抜けた感じがあらへんかったし、アンソニー・ウォンたちジョニー・トー組があっさりと死んでしまってからの盛り上がりもいまいち。主人公の記憶障害っちゅう設定もちょっと活きとらんかったしなぁ……。 [DVD(字幕)] 6点(2011-12-19 20:58:08) |