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1.  アルマゲドン(1998) 《ネタバレ》 
“Armageddon”『世界の終わりの最終決戦(の場)』滅亡とかって意味かと思っていましたが、善と悪の滅亡を掛けた決戦なんですね。この映画の前は『ハルマゲドン』って言ってました。デビルマンでも幻魔大戦でも。本作の相手は悪魔や侵略者でなく隕石ですが、地球を当たり前のように善の側としているところが、この映画の単純さを表していて清々しいです。 アメリカ人もノストラダムスを信じていたか知りませんが、世紀末に相応しい、グッド・タイミングな映画です。  私がジェリー・ブラッカイマーにマイケル・ベイって名前を認識したのが、この作品からだったと思います。例えばM・ナイト・シャマランやJ・J・エイブラムスは、デビューから一緒に成長した感じがあるのに、ブラ&ベイは突然大物として現れた感じがしました。堀江貴文が野球チームを買収しようとした時や、剛力彩芽が前澤友作と付き合ってたのを知った時に感じた「誰?この人。何がすごいの?」って気分。私の知らない社会の裏側で、着々と力を付けてきた人な感じが強かったです。人見知りな私は、何か拒否反応が出て、ディープインパクトは割と早めに観たけど、こっちは後回しにしました。  映画館の大画面で観るアトラクションなので、ストーリーに文句を言っても仕方ない作品です。こういう、頭空っぽにしてその場その場を楽しむ作品というのもまた、映画の醍醐味だと思います。 いきなりアトランティス号が爆発。作戦室でぐるぐる動くドキドキのカメラワーク。F-15のスクランブル発進の緊張感。破壊されるニューヨーク。逃げる松田聖子…こういう映画で観たいもの(破壊シーン)を最初っから観せてくれます。親切ですね。 中だるみはしますが、シャトル打ち上げからはノンストップ・アクションの連続。爆破は大成功し、オープニングでNYを破壊した隕石の破片が落ちてくるとかの心配もなさそうで、何よりです。小惑星の不時着であれだけボロボロになっても、きちんと帰ってきて、そこにみんな揃ってて、歓迎のアクロバット飛行まで観せて、大団円で終わる。観客が求めたものをきちんと直球勝負で提供できてたんじゃないでしょうか。  この映画全体がアメリカ人の理想のように思えます。人類最後の切り札が、NASAの精鋭チームでも米軍特殊部隊でもなく、採掘現場のブルーカラーの普通のオジサン達。…まぁ海洋石油採掘プラント勤務だからその辺の肉体労働のおじさんでなく難しい資格を持ったスペシャリストですが、でも親しみは感じます。 油にまみれた男たちの肉体美と、リブ・タイラーのセクシーな下着姿。パソコンの導入で肥満が増加したアメリカ人の思い描く、理想的な身体ですよね。 そして父親の愛情。リブ・タイラーは世界を救ったハリーの娘・グレースであり、主題歌を歌うスティーブン・タイラーの娘リブであり…彼女にとって本作は、愛情あふれるゴージャスなプライベートフィルムになってます。そして今回不覚にも(!?)泣いちゃったのは、ハリーのAJへの思い。「お前をずっと息子のように思っていた」ってところ。ホント、厳しくもカッコいい父親像でした。  世界を守る正しいアメリカ。世界を楽しませる娯楽の中心ハリウッド。ハリウッドの超大物・ブラッカイマーとベイのコンビ。カッコいいアメリカ人を描いて、狙い通り世界中でヒットしてしまったこの映画。3年後、ブラ&ベイ(&アフレック)が創ったパール・ハーバーは世界中から(アメリカからさえも)失笑され、ニューヨークのビルには隕石でなく飛行機が突入する。まるで理想と現実を履き違えたアメリカの解答に対する、世界の答え合わせかのよう。
[地上波(吹替)] 5点(2024-11-17 17:01:21)《新規》
2.  マトリックス レザレクションズ 《ネタバレ》 
“Resurrections”『蘇生』。または『(死体の)発掘』って皮肉なタイトルにも取れます。レボリューションズから18年も経って、マトリックス・シリーズで、なにか観たいもの(やり残したこと)があるか?…と言われると、私は後者の気持ちのほうが強かったです。 そもそも私にとってマトリックスは、至高の1作目と、オマケで蛇足の2~3作目という印象だったので、キアヌ主演であの続きを創る事に、そんなにワクワク感は感じませんでした。  違う人の演じるトリニティ(モーダル)、スミスがモーフィアスで、これもどちらも違う人。でもすぐにトリニティ(ティファニー)が出てきてひと安心。アンディ(リリー)が抜けてラリー(ラナ)だけで創ったから、主要メンバーも半分ってか? 出だしは心配になったけど、マトリックス・トリロジーを“かつて大ヒットしたゲーム”にして、社会現象や続編制作について、制作会社やキアヌ、キャリーに語らせるメタ的展開はとても面白かったです。現実と物語の世界。ホワイト・ラビット(歌)がまた印象深く、現実と物語の世界の狭間に苦しむアンダーソン君の心の表現に上手く使われていて、ネットでよく見るベンチに座る(ハリウッドスターのオーラのない)キアヌ画像とも重なり「あ、結構イイじゃん」って思いました。このあたり、バードマンで感じたのと同じワクワクを感じられましたね。  過去映像が多々出てきて、アンダーソン君がアイオに行った辺で興味がストンと失速します。真っ白い部屋で難しい話。東洋の建物でカンフーの修行。まぁこういうのもマトリックスだけど、過去作をなぞるような展開に、リブート作品な感じが強く出てしまいます。特にザイオンの話は観客ウケが良くなかったんだから、サラッとで良かったんだけどね。オリジナルのナイオビ=ジェイダが出てるからかな。 トリニティ覚醒からの展開は鳥肌ものでした。おぉスミスかっけぇ!屋上ダイブからの、え?そっち?アナリストへの“ママのお仕置き”もスカッとしました。…なんかね、マトリックスに続編(リロ&レボ)が創られるってなった時、勝手に期待したエンディングはこんな感じのものでした。それを22年越しに観ることが出来たって感じ?私はレボのあの終わり方より、こっちの方がずっと好きです。 トリニティがネオを覚醒せた1作目と、ネオがトリニティを覚醒させる本作が対になっていて、そこにラリー(ラナ)の人生の選択も大きく影響したであろう展開がとても興味深かったです。  …じゃあ、面白い映画か?というと、私は2回寝てしまい、3回目でやっと完走できました。アイオが強敵でした。 やっぱりモーフィアスもスミスもオリジナル・キャストに拘ってほしかったな。特にモーフィアスは、フィッシュバーンが劇中の(軽めの)モーフィアスを演じていたら、説得力は増したと思います。どうにもターミネーター3以降の作品を観ているような気分。特にTVドラマのサラ・コナー・クロニクルズを観た時のような、面白いんだけど、安っぽさも感じてしまうんだよ。
[DVD(字幕)] 5点(2024-11-17 14:30:40)《新規》
3.  マトリックス レボリューションズ 《ネタバレ》 
“Revolutions”『革命』。Re-volutionで、再回転とか逆回転とかの意味もあるのかも?前作にちなんで、回転式拳銃のリボルバーとも結びつくかも?と思ったけど、上手くたどり着かなかったわ。 BTTF2~3に倣ってか、前作公開から半年間引っ張って公開された本作。2までは劇場で観た当時の私は、マトリックス世界のその後に興味を失い、たしか遅れに遅れて地上波で観ました。確かに観たけど、全然頭に入ってこなかったですねぇ。  久しぶりに観ましましたが、やはり難しい話です。前作でもかなり置いてけぼりだった登場人物&世界観に、更にトレインマンとかプログラム少女サティーが出てきて、余計に整理が追い付かなくなります。 本作の見所はザイオンを守るAPU(ロボット)VSセンチネルの大群。グリグリ動くCGがすごいですが、マトリックス世界と違って『バレットタイム』や『ストップモーション』といった観せ方の工夫はなく、なんか普通のSF映画になってます。 マトリックス世界の際立ったアクションは、最後のネオVSスミスに一点集約された感じですが、銃撃戦無しの舞空術を駆使しての殴り合いなので、好みによるかもしれません。まぁ、アニメや3Dゲームから飛び出したようなロボットアクションと格闘アクションの両方が楽しめると思えば、お得感も感じられそうですが、映像革命と言われた1作目のような新鮮さは感じられず、カタルシスはなかったです。ミフネの生傷が痛々しい現実世界と、マトリックス世界の痛みの感じられない殴り合いの対比を観せたかったんでしょうかね? そういう意味では主人公をネオ(ハンドルネーム)と呼ぶ人間と、Mr.アンダーソン(本名)と呼ぶプログラムの対比は面白かったですね。  良く解りませんが、ザイオンと機械の戦争は終わりました。マトリックス誕生後、人間と機械の戦いは6回(7回?)ループしていて、今回の救世主ネオは、世界で最大の脅威となったスミスを、自分を犠牲にして倒し、ループを断ち切った(=マトリックス世界に革命を起こした)ようです。今まで世界をループさせていたのは創造主アーキテクト。ネオに革命を起こさせたのは預言者オラクル。今後の世界はサティーらが創るんでしょう。あの緑がかったマトリックス世界が、最後鮮やかな原色の世界に変わってましたね。(レビューでなく解説になってんな) まだ眠ったままマトリックスの養分になってる人間は、希望すれば開放するそうだから、今後もマトリックスで遊んでいるか、ザイオンで集会して踊るか、選べるんでしょう。ザイオン側は勝利(あれ?平和だっけ?)を勝ち取った感がありますが、機械側(電池が減る)にもマトリックス世界(人口減る)にも、あまりメリットがないように感じます。良く解りませんが… 私としてはマトリックス世界のその後なんかどうでも良くって、ネオとトリニティが幸せに暮らす世界線があれば、それで良いかなって思っていたんですが、もう世界はループしないでしょうから、これで終わりでしょうね。え続編?この先まだ何かやるの?
[DVD(字幕)] 4点(2024-11-17 14:20:48)《更新》
4.  スペースボール 《ネタバレ》 
“Spaceballs”複数形なので『宇宙のキンタマ』かと思いました。また“ball”だと『楽しい時間を過ごす』意味になって“balls”だと『くだらない』って意味になります。最後のsって以外に大事。 きっと、今も当時も賛否両論だったことでしょう。ブルース・ブラザーズやリトル・ショップ・オブ・ホラーズを面白いと言えば、何かバイリンガルでスマートでお洒落な感じもしますが、スペースボールが面白いと言うと、笑いのツボが別次元なんじゃないか?って心配になります。  リック・モラニスだし、またアメリカンな濃いコメディかと思っていましたが、案外すんなりと楽しめたと言うか、日本でもこういうコメディってあったなぁ~って、懐かしい気持ちになりました。何だろう?ハイスクール奇面組とかに通ずる笑い? 本作も数十年前に一度観て、その時は全然楽しめなくて…でも今回そこそこ楽しめました。きっと私の笑いの方向性が、本作をカバーできる範囲まで広がったんでしょうかね? 奇面組を例に出しましたが、当時は結構好きで、コミック全巻買ってたんですよ。でも私の笑いの方向性がグルンと変わったのか、ある時から全然笑えなくなって。でもきっと、いま改めて読んだら、懐かしさ込みで楽しめると思います。  スター・ウォーズをベースとしたパロディですが、映画の最中に自分たちの映画のビデオを観るのとか、SWを揶揄した大量のグッズ戦略。トドメはジョン・ハート自身がエイリアンに腹を食い破られる時の一言。メタ的な笑いのオンパレードは、案外笑えます。いや笑えると言うか、ふふって気持ちになれます。
[CS・衛星(字幕)] 5点(2024-11-11 00:56:46)
5.  リング(1998) 《ネタバレ》 
80年代以降のホラー映画は、血みどろのスプラッターか、特殊メイクやVFXで気持ち悪いクリーチャーを観せる“観客を驚かせる”ジャンルと、ある種の固定観念が出来上がっていたところに、日本から強烈な一石を投じたのが、このリングだったと思います。 開発が進んで便利になった生活に、徐々に入り込む余地が無くなってきた“呪い”というジャンル。それを“ビデオ”という、家電の中でも割と後発の機器と結びつけ、都会の中で恐怖を引き起こしたアイデアが素晴らしい。  もうね、最初の智子と雅美(うわ、竹内結子と佐藤仁美だ、若っ!)のシーン。当時の家の中の蛍光灯の冷たい明かり。電気スタンドの白熱球の温かい光。光が届いてないところの薄暗い感じが、懐かしくもあり、何かが潜んでいそうで怖い。LED照明だとあの感じ出ないんですよ。ブラウン管テレビのザラザラ具合も懐かしい。液晶の今と比べると低画質のザラついた映像と、放送終了後の砂嵐の無機質さ、寂しさを巧く恐怖に結びつけてます。 呪いのビデオというアイデアだけ聞くと、殺害シーンとか死体映像なんかを連想してしまうけど、ビデオの内容が何とも意味が解らず、不気味で怖い。あのヒリヒリした音。ジャワジャワ動く文字。私は頭に布をかぶった指差し男にゾワッとしました。暴力とか直接的な表現のホラー映画が多かった当時、心理的に恐怖を感じさせる表現に圧倒されました。ビデオを観た人物の、写真の顔が崩れてるのも怖い。ビデオという新しい恐怖を創る下地として、心霊写真という当時のポピュラーな怪奇現象を入れるのも巧いです。  モニターから出てくる貞子の映像については、観客に恐怖を与えられるか、興ざめされるか、制作陣も入れようかどうしようか判断に迷ったでしょうけど、あの見開いた目が怖いので、正解だったんだと思います。 ここまでで充分満足出来るホラー作品ですが、そこからもう一歩進めて、ビデオデッキを積んで父親のもとに向かう玲子という、悲しい怖さを入れるのも素晴らしかった。特に中盤で孫と祖父の仲の良さを入れてるものだから、残酷さが際立っている。凄い。 余談だけど、みんな運転荒いね。特に松嶋菜々子。徐行運転しない感じ。あと後部座席の人がシートベルトしてないのも、時代だねぇ。
[地上波(邦画)] 8点(2024-11-11 00:26:30)
6.  コマンドー 《ネタバレ》 
“Commando”『特別奇襲部隊』。コマンドーと伸ばしてますが、コマンド部隊のコマンドとスペルは一緒みたいです。でも『命令』とかの意味のコマンドは“Command”だそうで、ややこしい…。『ランボーがグリーンベレーなら俺はコマンドーだ!』って感じなのかもしれないけど、当時の実在の部隊ではなさそうな? 公開当時、同時上映がバタリアンでした。なんともワクワクが止まらないラインアップでした。  やっぱシュワルツェネッガーの筋肉って美しい。メイトリックスは上半身ハダカにコマンドベストの出で立ち、これがまたカッコいいんだ。彼の美しい筋肉を引き立てる銃火器の数々。まさに筋肉と武器の見本市のような映画です。ロケットランチャーにライフル、ショットガン、ウージー、拳銃、機関銃と、一本の映画で一人が使う武器にしちゃ多すぎです。そんな訳で、ストーリーなんてオマケです。アクション映画でよく聞く架空の国バル・ベルデの案件。ビバヒルの最後と一緒のお屋敷。お屋敷の地下にはT2の最後みたいな巨大なボイラー室。なんか色々とデジャブ。 シンディのロケットランチャー後ろ撃ちは、当時のアクション映画を代表する名シーンです。  当時のシュワルツェネッガーはまだ英語が流暢ではなかったので、他の映画でも短い単語のセリフが多かったですが、その中でも本作ではピリッと効いたジョークが印象的です。 「気に入った、殺すのは最後にしてやる」→「あれは嘘だ」 「手荷物は?」→「この男だ。」 「友達を起こさないでくれ。死ぬほど疲れてる。」 「クックの車で行こう。奴はもう使わないだろう。」良いですねぇ、冴えてますねぇメイトリックスさん。 「ガール・ジョージの方が良いんじゃないか?」…あれれ?どうした?何この残念なオヤジギャグは?野蛮なジョークはあんなに名言揃いなのに? 同年代向けのジョークは出来ても、子ども向けは難しいんですよね。特に父親のジョークって娘にはウケないんですよ…。ある意味リアルです。まぁ普段からチュッチュと仲睦まじいから良いんだけど。頑張れシングルファーザー・メイトリックス。 名言といえばこの映画で「アイル・ビー・バック」と「トラスト・ミー」が出てきました。いつも吹き替えで観てたんで気付きませんでした。  本作では黒人系のレイ・ドーン・チョン(黒人のクォーター)がパートナーです。当時のハリウッド映画って、エキゾチックな顔立ちの、いかにも黒人って感じの女優を出すことが多かったと思うんですが、彼女のように整った顔立ちの美女を出すのって、まだ珍しかったと思います。やはりランボー2でアジア系美人情報員コー・バオを出したのに対抗したんでしょうかね?アジア系も、男女とも平たい顔のインチキ臭い俳優が多かったような。 本作もランボー2も、筋肉マンとブロンド巨乳って馬鹿っぽい組み合わせを嫌ったんでしょうか。今思うと大正解です。
[地上波(吹替)] 6点(2024-11-10 23:05:39)
7.  トラック野郎 御意見無用 《ネタバレ》 
子供の頃、近所の玩具屋さんのお爺さん店主が、大きなデコトラのプラモデルを見せてくれました。「見ててごらん」とお店の照明消してスイッチ入れると、トラックに仕込まれた沢山の装飾電球がチカチカ点灯する、それは綺麗なプラモデルでした。…当時LEDなんて無かった時代、あれはムギ球で光らせてたのかな?今となっては謎です。  さてトラック野郎。土曜の昼とかに流れてた気がしますが、子供の頃は観せてもらえませんでした。だってエロいシーンがあるんだもん。ヤクザ映画の人が主役だし、想像では、ヤクザがデコトラ乗って殺し合いとかするんだろう…と思っていました。実際観ると人情ものでした。当時は東映の看板作品として、松竹の寅さんと『トラトラ対決』なんてしてたんですね。  人情ものではありますが、まぁムチャクチャです。スピード違反に過積載。仕事終わりはソープでくつろぐ。ソープ嬢へのお土産は盗んだスイカ。'75年8月と言えば松竹のトラは『メロン騒動』の回。奇遇ですね。食堂では殴り合いの大喧嘩。この食堂が『くるまや』。当時はまだ『とらや』だけど、これまた奇遇ですね。やもめのジョナサンは家に帰ると子だくさん。更にもう一人産まれて、身寄りのない子も養子にしちゃおうなんて、ホントムチャクチャです。でもこのムチャクチャ加減が、当時の日本のパワーを感じさせます。後先考えないエネルギッシュさ。若者が老後のためにコツコツ積立NISAなんかしてる今と大違い。  汚い便所からマドンナが出てきてキラキラ星が輝くなんて、ベタだけど笑っちゃいます。桃次郎の付け焼き刃な紳士的な振る舞いも微笑ましいです。何よりオッサン二人が褌一丁でキャッキャ・ウフフと戯れる姿が可愛くて。桃もジョナサンも、トラック降りて、履き物をバンザイして掲げてから放り投げるのがシンクロしてて、また可愛いのさ。 惚れた女のために、愛車をボロボロの泥だらけにして送り届ける姿は、ちょっとホロリと来ます。1作品に色々詰め込み過ぎな気もしますが、面白かったなぁ、続きも観てみたいなぁ。
[CS・衛星(邦画)] 8点(2024-11-09 11:36:02)
8.  ランボー/怒りの脱出 《ネタバレ》 
“Rambo:First Blood Part II”アメリカでもタイトルに『ランボー』入れました。あれ?当時の記憶ではポスターとか『ランボー2』だと思ってたんだけど、ネットのどこを探してもそんな表記が出てこない。思い違いかぁ、2と付かない理由はwikiに出てました。 ジョンの筋肉が、1作目の頃に比べて、すごく・・・大きいです・・・。ロケットランチャーを構えた上半身ハダカのスタローンのポスター。美しいマッチョの裸体と、破壊力抜群な巨大な武器。このコラボって間違いなく本作からでしょう。ランボー2以降、色んなアクションヒーローがこのスタイルを真似ました。ああ・・・次はM60機関銃の片手撃ちだ。 ランボーはいろんな武器を使いますが、基本装備は一本の巨大なサバイバルナイフのみ。鍛え上げた肉体とナイフ1本あればどんな軍隊も壊滅できる(んじゃないか?)というストイックさが、ランボーの魅力です。  ビジュアル面の魅力は増しましたが、作品の質はガラリと変わってしまいました。平和な田舎町を舞台に戦いに追い込まれ、大の大人が自分の内なる辛さに泣き出す姿が、多くのベトナム帰還兵たちの共感を産んだ前作と違い、本作では『見捨てられたアメリカ兵捕虜のために戦う』という、大義名分を持たせました。そしてベトナム兵とソ連兵という、解りやすいくらい『アメリカの敵=アメリカから見た悪い奴ら』が相手とシンプルです。 「彼らが国を愛するように、国も彼らを愛して欲しい。俺の思いも同じです」あくまで作中の、ベトナム戦争で戦った捕虜の気持ちを代弁したセリフですが、まるで全アメリカ人の精神を代弁する演説のようです。良くも悪くも、ここがレーガン政権下のプロパガンダ『強いアメリカ・正しいアメリカ』と見事にマッチしちゃったんですね。  でも作品の中身はと言うと、アメリカ軍は捕虜とランボーを見捨てます。それをベトナム人の諜報員女性コー・バオが独断で助け出します。今じゃ珍しくもないですが、映画の中で女性がイチ兵士として、泥臭い戦場で活躍するというのは、もしかしたら本作が初?かもです。しかもアジア人女性がメインキャラクターというのも、あまり無かったかも。作中で彼女が戦う理由もきちんと語られていて、お飾りとして適当に創られた感がありません。脚本にキャメロンが参加していたことで納得できました。彼の作品では必ず“強い女性”が出てきますから。 そう考えて観ると、続編としての完成度が高いのも頷けます。田舎町の銃撃戦からジャングルの戦争へと方向性を変える手法。前作のインパクトのある映像=崖からジャンプ、ナイフの拷問、機関銃片手打ち、最後のランボーの語りなどなど、観客の『コレが観たかったんだ!』を織り込んで満足させる手法。さすが続編の名手キャメロン(※実際どこまで作品に関わったのか解りませんが)。あのランボーの続編としては首を傾げるところですが、娯楽映画のツボを抑えた手法が随所に散りばめられていて、見応えは充分にあります。
[地上波(吹替)] 7点(2024-11-09 09:18:18)
9.  スタンド・バイ・ミー 《ネタバレ》 
“Stand by Me”『私をそばで支えて』。原作のタイトルは“The Body”『死体』。 本作はS・キングの中編小説シリーズ『恐怖の四季』の秋編で、春編があのショーシャンクの空に(原作『刑務所のリタ・ヘイワーズ』)。 原作では、クリスを刺したのがショーシャンク刑務所から出所したばかりの男だったり、猛犬チョッパーの後の最強犬伝説が、狂犬病になったクージョ(映画クジョー)だったりと、メイン州を舞台にした作品間のリンク(お遊び)が楽しめたりします。 '80年代のS・キング原作の映画化と言えば“玉石混交”のイメージが強く、ぶっちゃけ駄作が多かった印象です。名作シャイニングやキャリーは、原作を大幅に改変してる中、本作は原作に忠実なのに名作という、稀有な作品でした。  『あの12歳の時のような友達を、それ以降持つことはなかった。なぁ、誰だってそうだろ?(Jesus, does anyone?)』 この言葉に共感できる人。それ以降にもっと大切な友だちが出来た人。色々だろうけど、自分が物心付いた頃の父親の年齢を超え、人生はきっとまだまだ続いて、今後は年老いていく。人生を振り返った時、それが何歳であれ、子供の頃の損得じゃない価値観で、大切な時間を共有出来た友達こそが“あの時のような友達”なんでしょうね。  私はめっちゃ共感できました。進学(成長)とともに疎遠になっていくのも痛いくらい解ります。本作では価値観と精神年齢の違いから、テディとバーンとは続かなくなっていくのが伺えます。 あと自動車解体場のあとの“まだ3時前とは思えなかった 色んなことがありすぎた”ってとこ。あぁ子供の頃ってどうしてあんなに時間が長かったんだろう?放課後友だちと遊んで、夕方のアニメ観て、晩ご飯食べてゲームして…あの頃と比べて時間の長さが確実に短くなったよ。今日は仕事休みなのに、大したこと出来てない。今後、ただ年老いていくのかと思うと不安になるけど、私にも“あの時のような友達”と、掛け替えのない時間を過ごしたことを、この映画が思い出させてくれて(多少美化もしてくれて)、共感と郷愁とともに、辛いことが多い今の人生を支えてくれてます。なぁ、誰だってそうだろ?
[地上波(吹替)] 9点(2024-10-26 18:26:12)(良:1票)
10.  霧の旗(1965) 《ネタバレ》 
仕事熱心で真面目な兄を思って、自分もタイピストとして、貧しいながらも真面目に働いて、ろくに恋愛をしてこなかった桐子。…兄思いでキーパンチャーだった寅さんのさくらと被るなぁ。殺人犯の妹として熊本で働き続けられなくなり、銀座のスナック(※BAR海藻とあるが、同僚「表の明かりを消して12時過ぎまで営業云々」って、ちょっぴり違法な店)に身を落とす。  さて、熊本の田舎から遠路はるばる東京まで(しかも終始鈍行列車で)、電話の1本も入れず弁護士事務所に直接訪問する桐子。こんな常識外れな桐子に、大塚弁護士は直接会って断るという、誠心誠意、紳士的な対応をしています。弁護費用は約80万円。当時の初任給が約17,000円~20,000円、ラーメン1杯は80~100円の時代、およそ今の1/10と考えると、20歳そこそこの娘に払える金額じゃありません。それでも『費用を1/3にまけろ』と言うから、桐子はそれなりの金額は払う覚悟はしていたんでしょう。 大塚は弁護を断ったがために逆恨みされます。桐子のしつこい性格から考えて、もし引き受けて、裁判で負けても、やっぱり逆恨みされたんじゃないでしょうか?この時の大塚に非があるとしたら、断る口実の一つに『多忙』と言っていたのに、愛人の経子に会いに行っている。特に説明はないですが、川奈(ゴルフのメッカらしい)と聞いて、桐子は察したんでしょうね。  推理好きは、サウスポー山上の登場と『犯人は左利き』って情報を結びつけます。観るものに『こいつが真犯人だ』と思わせます。更に桐子の前で2回もライターをいじって、そのライターが経子の事件現場に。 兄の事件と経子の事件は良く似ています。兄も経子も犯人じゃないのに、嫌疑を恐れて現場を逃げています。桐子が、山上こそ2つの事件の真犯人だったって証明する結末こそが、復讐劇の王道展開です。でも桐子は死んだ兄の汚名を晴らすのではなく、大塚の因果応報に結びつけたんでしょう。お金が払えないから兄を救わなかった大塚を逆恨みし、自分は復讐のために愛人経子を救わない。また大塚に対し仕事外(ツン)と仕事中(デレ)のTPOの使い分けを徹底しているのも、結末を考えると計画的で恐ろしい。   タイトル『霧の旗』。「霧は音を立てて流れる」…じゃあ旗は?霧は=桐子でしょう。旗は…昔は女の生理日を“旗日”と呼んでいました。当時白が多かった女性下着の一部が赤く染まる様子から生まれた隠語です。桐子は憎い大塚に自分のもっとも大切な処女を捧げ、それが大塚を陥れる動かぬ証拠となりました。水商売の桐子が処女だったという予想外の結末が、意味不明だったタイトルに結びついたようで、モヤモヤが晴れるとともに、改めてゾッとしました。
[DVD(邦画)] 8点(2024-10-26 17:31:45)
11.  マトリックス リローデッド 《ネタバレ》 
“Reloaded”『再装填』。銃に弾丸を入れ直すリロードであり、ゲームを再びやり直すRe・Loadでもあり、この世界が6巡目のマトリックス世界で、ネオは6番目に装填された救世主だった。という意味もあります。バッチリ決まってますね。 公開前から『2と3が連続して創られていて、割と短期間のブランクで公開される』と言われていましたね。1作品で完結しないのが解っている映画を観るのは、ちょっとモヤモヤしそうですが、またあのすごい映像が観られるのが楽しみで、劇場に観に行きました。 空からバイクとトリニティが降ってくる。いちいちポーズが決まっていて、最初っからカッコいいです。そうそうコレコレ、これがマトリックスだよ。そして覚醒したネオとエージェント3人の戦い。ネオ圧勝だ。イヤホン外して別行動のスミスが2人に?おぉ、良いぞ良いぞ!?今回はザイオンの描写が増えるのか、二足歩行ロボットが勇ましいねぇ~!…ん~…。うん…。ふぁ~あ…  30分近いザイオンの描写は、オープニングからの興奮を見事に中和し、まるで別の映画を観ているようでした。そりゃ2つの世界がある映画だけどね。集会のモーフィアスの演説。そっから何故かみんな踊りだすんだよね。洞窟の中でクラブさながらに、約5分も踊り狂うのさ。延々と続く踊りに、ネオとトリニティのセックスが延々とオーバーラップして…この辺で飽きちゃったって人、私だけじゃない筈だ。 いよいよスミス登場!待ってましたぁ!うわっ、増殖した!ヤバい、数がヤバい!…ん~??…なんか、この格闘って決着着くの?映像は凄いけど、お互い致命傷となるダメージを与えられてないから、格闘技の達人同士がただペチペチと遊んでるだけのように観える。 ザイオンだけでなくマトリックス世界でも難しい話が続く。キーメーカーに会う目的で、ケーキ食べて興奮する女の話を挟む意図がよく解らない(あ、ここが最後のトリニティ蘇生に繋がるのか?)。ネオとボディガードの戦いも、今更こんな、無敵の人VS格下との戦いを観せられても…って感じ。  高速の死闘は面白かったです。映像が凄かった。銃撃を受けた車の穴の空き方、ボンネットからジャンプするエージェント。こういうのをたくさん観たかったのさ、これがマトリックスだよ。モーフィアス&トリニティVS双子VSエージェントの、どっちが勝つかわからない感が良いのさ。ネオは強くなりすぎて、負ける気がしなくて緊張感がないのさ。やっぱ普通のエージェントとの戦いが、バランス的に見応えあるわ。双子は今後も出てくると思ってたけど、アレで終わり?ちょっとスッキリしない最後。  映画はこの先も続くんだけど、高速の死闘がピークでしたね。ただでさえ凄い力を持つネオが、直接心臓マッサージに現実世界での超能力と無茶振り観せるから、最後の方ついて行けなくなってました。前作もネオが凄い力に目覚めて終わりますが、単発作品として舞空術もアリだったんです。今回、舞空術以上の凄いものを観せなきゃって思ったんでしょうか、続編の前フリとして、やりすぎてしまったと思います。
[映画館(字幕)] 5点(2024-10-23 23:11:44)
12.  さすらいのカウボーイ 《ネタバレ》 
“The Hired Hand”『使用人』…いや解るよ?解るけど、それタイトルにする? 太陽光を受けてキラキラした水面と、水浴びしたり釣りしたり、遊んでるわけじゃないんだろうけど、少なくともきちんと定職についてない3人組。そこに流れるヒッピー・ムーブメントを感じさせる気怠い音楽。 普通にイメージする西部劇とは何か違う。初っ端、溺死した少女が川を流れてくるのなんて、この映画のその後の、どこに繋がるんだろう???  「3人で西海岸行こうぜ!」「カリフォルニアだぁ!ハッハッハ!」「…やだ」「…え?」「お家帰る」「えっ!?」7年も放浪して、時間の無駄だったと思い立って、今さらながら捨ててきた女房のもとに帰るハリー。それに付き合うアーチ、彼とはもう女房より長い付き合い。 夫は死んだものとされている女房ハンナの家で『使用人』として働く2人。「ハンナは『使用人』とも寝るんだぜ?良かったな!ハハハ!」街で誹謗中傷を聞き激怒する2人。ピュアな男たちと現実的な女。あの当時の女だって、いくら西部開拓時代とはいえ、一方的に出て行った夫をいつまでも待っているほど優しい世界じゃない。  「俺やっぱ海見てくるわ」アーチが選んだ男のロマン。「彼を助けたら戻ります」「最初から計画してたんだろ?あんた絶対戻らないわ」ハンナはハリーが心の奥底で、アーチを追い駆けたい気持ちを察していたんだろうな。 最後、アーチの腕の中で、ハリーはやっと、追い求めていた自由を手に入れる…そういう解釈でいいのかな? 男2人の友情。その2人の終着点の違い。オートバイでフロリダを目指したイージーライダーと、馬でカリフォルニアを目指した本作って、敢えて対になるように創ったのかも。
[CS・衛星(字幕)] 5点(2024-10-22 23:12:56)
13.  シビル・ウォー アメリカ最後の日 《ネタバレ》 
“Civil War”『内戦』。 じゃあ、逆から考えてみましょうか。最後に1枚の写真が出てきますが、恐らくあれが“アメリカの歴史を捉えた1枚”です。今後、この内戦を振り返る際、必ず目にする1枚にして、きっと歴史書に出る写真かもしれません。その前の数枚は、きっとネットで拡散されるでしょう。その前の1枚は、戦場カメラマンとしての彼女の人生を変える1枚となったことでしょう。 さて、この歴史的1枚は、どのようにして撮られたんでしょう?この物語は、ある女性に出会うところから始まります。…とまぁ、戦場カメラマンがあの1枚を撮るまでを描いた、記録モキュメンタリー映画だとしたら、戦況や状況の説明が薄いのも納得できるかも。  私も予備知識無しで観たから、大統領側と対抗勢力の1対1の衝突なのか、他にも幾つか組織があるのか、どっちがどう有利不利なのか、そもそも何で内戦してるのか、目の前のこの兵士はどっち側なのか、相手の方はどっち側なのか、サッパリ解らず観ていました。ただ、目的地だけはD.C,と決まっていて、そこで大統領にインタビューを行う、戦場を1400km駆け抜ける、無茶苦茶なロードムービーとなっています。クルーの4人は年齢的に、両親と子供、そして祖父という“拡大家族”の様相。恐らく今のアメリカの一般的な家族一世帯のユニットなんでしょう。映画は『疑似家族が目にする無政府状態のアメリカの人々』で、意図的にそうしたんでしょうね。  wiki見たら結構細かく(結末まで)書いてましたね。ふむふむ、なるほど~、19の州がねぇ…怖いねぇ。 アメリカは50の州(国)が集まった合衆国だから、政府が無茶するなら各州の独立もあり得るのかな?アメリカを別けるとしたら民主党の青い州と共和党の赤い州に別けるのがシンプルですが、テキサス(赤)とカリフォルニア(青)が連合を組んでるので、現実の大統領選を前に、内戦を助長するような組織図にはなっていないようです。 ただ影響されやすい国民性と、大統領の権限が絶大な国だから、映画の惨状がリアルなばっかりに、歯車が狂えば現実に…なんて、不安になりますね。
[映画館(字幕)] 7点(2024-10-21 22:57:25)
14.  ランボー 《ネタバレ》 
“first blood”『最初の血=(相手が)先に仕掛けてきた』という意味だそうです。劇中トラウトマンとの無線のセリフで出てきます。 ランボー2公開直後のテレビ初放送で観ました(まだ2は観てないです)。当時のスタローンは、ムキムキ・マッチョな2の時と比べて、無駄な筋肉がなく、言い換えると線が細いんですね。映画自体も、戦場でドンパチするド派手な2と比べて、田舎町と山の中で、敵も田舎の警官で、想像より大人しめなアクション映画だなぁと、当時はそんな印象でした。  そして最悪だったのが、初見時、保安官ウィルがランボーに撃たれて以降、観るのを止めてしまったんですよ。親にチャンネル変えられたのか、他に観たいのがあったのか覚えてませんが『まぁ、良いかな』って思ってしまったんです。翌日学校で、みんな「最後が凄かったね」って。「ランボー泣き出して可愛そうだったね」って言うわけです、小学4年生の子供らが。私は『ランボーあれだけの騒ぎを起こして、最後泣き出すって、どういうこと??』って、理解できませんでした。  数年後('88年の金ロー?もう2は観ています)に観返すと、まず声が聞き慣れた低音ボイスのスタローン声(羽佐間道夫)でなく、若々しい声(渡辺謙)で驚きました。そして私が見逃した“最後”が、あまりに強烈でした。戦場で出来た友人は次々と死んでいき、帰ってきてからも仕事もなく孤独な毎日を送る。そこに来て警察での酷い扱い。怒りの奥底の悲しみが伝わってきました。警官を殺して、静かな街を恐怖に陥れたランボーの行為は社会的には“悪”と捉えられます。でもランボーの側から社会を観ることで、善悪なんてそんな単純な事情じゃないことを、観させてくれました。この映画で、どれだけのベトナム帰還兵の心が救われたことか。 そして渡辺さんの吹き替えが、まさに心を痛めた青年の叫びでした。羽佐間さんだとマッチョなオッサンのイメージなんですね。私もやっと、クラスのみんなの言っていることが解りました。エンディングの“It’s a Long Road”が染みます。  本作以降のシリーズのランボーとね、このファースト・ブラッドのジョン・ランボーは違うんですよ。別に人並みにしかアメリカを愛してないし、アメリカの愛なんてデッカイもの求めてないし、ただ戦場で心を痛めたちっぽけな自分を、いつまでも受け入れてくれないことに、驚いて、悲しんでるだけなんですよ。 ランボーを愛しているなら、至高の名作として、そっとしておいてあげるべきでした。特に3と5。そういうトコだぞ。
[地上波(吹替)] 8点(2024-10-21 12:22:32)(良:1票)
15.  侍タイムスリッパー 《ネタバレ》 
公開されてから結構な日数が経っていますが、思った以上の人の入りでした。客層は若い方はまばらで、私より二回りほどご年配の方が多くお見受けされましたね。 春からBSで再放送されていた朝ドラ『オードリー('00)』を観ていたので、たまたまチャンバラ映画末期の京都撮影所の内情に、多少の理解がありました。時代劇は映画からテレビへ、そしてテレビからも消えてゆく。'11年に水戸黄門の放送が終わり、人知れず地上波から時代劇が消えていたようです。 『幕府滅亡から140年』滅亡が1867年だとして、舞台は現代ではなく2007年くらいのようです。優子がスマホでなく携帯を持っていたのと、『子供の頃友達がセーラームーン('92~)を…』と言っていたので、大体その頃かな?って思って観ていました。あとから沙倉ゆうのさんの実年齢を知って驚きました。せいぜい30歳前後かと…  さて、幕末の京都から同じ京都太秦の時代劇撮影所へ。侍の格好した人が歩いていても珍しくない場所に来ちゃったから、周りからはちょっと風変わりな役者だと思われる高坂。戸惑いながらも徐々に時代を受け入れて、切られ役として第二の人生を歩みだす… 自分だけこんな平和な時代に来て、真っ白な握り飯を食べることに涙する高坂に、私も何故か涙が出ました。ベテラン俳優風見の登場に『そう来たか』と思い、幕末と真剣にまた涙が出ました。最後の闘いはとても迫力があり、息を殺して観ていました。幕末の会津藩士の思いと、終わりゆく時代劇への思い。それぞれの立場で一生懸命に役目を全うしようとする人たち。私には泣ける一方な映画でしたね。  最初は“タイムスリップあるある”で笑いを誘うところですが、会場は思いのほかウケてましたね。『え!え?今のコテコテのネタ、そんなに面白い?』って戸惑ってしまいました。鑑賞中は確かに『ここって実は、後々の伏線で、それを知ってる人が笑ってるのか?』って勘ぐってしまいました。 この映画はもともと、ある程度ご年配向けに創られた映画なのかもしれません。そう、寅さん→釣りバカシリーズ辺りまでは、映画館に足を運んでいた世代の方々。そんな方々が、久しぶりに映画館に足を運びたくなるような映画だったのかもしれません。そこを見据えてユーモラスな効果音とか「すべる、落ちる」の寅さん定番ネタを入れたんでしょうね。最近のスタイルで、家で独りでDVD観てると、面白くても笑わないんですよね、ニヤリとはするけど。振り返ると、ご年配の方々は“面白いシーンは声出して笑う”という、当時のままの楽しみ方をされているんだなぁ。と思うに至りました。   もっと素直な気持ちで楽しむ映画でした。この時代に来たばかりの高坂には、コンクリの建物やワゴン車が目に入っているだろうに、そこはスルーしてます。確かにいちいち全部に反応していたら、一向に話が進まなくなるし。でも病院から一晩、独りでさまようのをしっかり観せないのは、その間彼が何を知って、何を知らないのかが解らなくなり、映画を観てる私との間にちょっぴり溝が… 上の方で2007年と、wikiにも出ていた時代設定をわざわざ得意げに書いたのは、鑑賞中、そこにもうひと捻り理由があるんだろう。と思ってしまったからです。更に先の時代があったり、逆にモトに…だったり。あと映画の途中もう一人の存在に触れたことで、そこも気になっていて、どこかに絡む前フリだと思っていました。そう、私は勝手に、この映画には驚くような仕掛けがあるんだ。と思ってしまっていたわけです。ネット記事の「某映画の再来…」という見出しが、私のハードルを少し違う方向に上げてしまったようです。失敗。 あとですね、今回始めて去年出来たTOHOシネマズで観たんですが、セリフと画が微妙にズレてて、ちょっと気が散りました。このズレ、どこで観てもそうなのかな。(※これは評価に含めてません)
[映画館(邦画)] 6点(2024-10-21 12:05:44)
16.  リトルショップ・オブ・ホラーズ(1986) 《ネタバレ》 
“Little Shop of Horrors”『恐怖の小さい店』。グレムリンみたいな怖可愛いのを想像してたらミュージカルだったわ。 '60年のB級ホラーをモトに、'82年にミュージカル化して大ヒット。それを映画に逆輸入したのが本作。だからミュージカル仕立てなんですねぇ。 眼を見張るのはオードリーⅡの唇の動き。チュウチュウと唇の先をすぼめる滑らかな動きは、当時のSFX技術の結晶です。スティーブ・マーティンのバイクシーンが、ブルーバック撮影で特撮感丸出しな時代なのを考えると、マペット技術は頂点に達していましたね。  主演のリック・モラニス自身もそうですが、当時テレビや映画で活躍していた、アメリカで大人気のコメディアンが多数出演しています。スペースボールやブルース・ブラザーズも同様で、'80年代のハリウッドのコメディ映画って雰囲気が強めです。一番印象深いのがサド歯医者VSマゾ患者で、全然映画本筋とは関係ないけど、強烈なインパクトが有りました。アメリカのコメディアンの笑いなので、同じハリウッド製コメディ映画でも、スラップスティック・コメディやシチュエーション・コメディとは笑いのベクトルが違います。ここを理解して楽しめる人には、最高のミュージカル・コメディでしょう。  最初、オードリーⅡが動いたり喋ったり血を吸ったりって、シーモアの妄想なんだと思っていました。植物に操られたと思い込んでる連続殺人鬼シーモアの話。…まぁそんな事はなかったですね。でも、歯医者の死体を損壊し、店長は食べられる位置に誘導しています。そんなシーモアが最後、愛するオードリーと幸せに暮らしましたとさ、おしまい。…って良いのかいそれ?
[DVD(字幕)] 6点(2024-10-21 10:45:30)
17.  マイ・ライフ・アズ・ア・ドッグ 《ネタバレ》 
“My Life as a Dog”『僕の人生は犬同様』。 イングマルは他の子と比べても、性格もやる事も幼い印象を与えます。兄のせいもあるけど、子供らしい失敗やイタズラが病弱なママを苛つかせます。時間が経つごとに、自分が成長するごとにママの病状は悪化していく。でもちょっぴり大人なカエルちゃんはグイグイ誘ってくる。 田舎に行ったら風変わりな人がいっぱいいた。みんながイングマルを暖かく迎えてくれる。そして今度はサガがグイグイ誘ってくる。美女の裸をのぞきはしても、直接的な性に興味を示さないイングマルは、これ以上成長することに怖さを感じていたのかも。時間とともに病状とイライラが悪化するママ。幼い頃の優しかったママを思って、子供なりの抵抗をしていたんじゃないかな?  母が亡くなり、再び田舎へ。でも時間は経過して、田舎の事情も大きく変わっていました。隣人アルビドソンさんは亡くなり、今はギリシャ人家族に。「家が狭いので寝る時は叔母さんの家へ」厄介者のような扱いに心を痛めるイングマル。サガもより女の子として成長していました。成長していないイングマルに残された“当時と変わらないもの”が愛犬シッカンの存在。でもシッカンは既に殺処分されたのは薄々わかってます。サガの自分への愛情もわかってます。犬のマネで、幼稚にその場をはぐらかそうとしたんでしょうか。シッカンの死をサガに突き付けられたイングマルは、精神的に追い詰められ、あずま屋に閉じこもる。本当にライカ犬のように。 後半の2人の本気ボクシングの場面で、サガってのはあだ名でフロイドが実名だと勘違いしました。そして最後の方、イングマルとフロイドの試合がラジオで掛かってて「え?2人が本当にボクサーに?」って勘違いの上塗りを…   スウェーデンの映画です。よく知らなかったけど、このスウェーデンって国、大戦中はドイツにもイギリスにも組みせず終戦まで中立を維持。戦後も西側諸国と交流をしつつも、ソ連を刺激しないようNATOには加盟しなかったんですね。 映画の舞台は'58年から'59年、この年代は近代スウェーデンがもっとも輝いていた年代です。日本で言えばおそらく'64年東京オリンピック前後でしょうか?'58年、劇中のラジオで掛かっていた自国開催のサッカーワールドカップで、史上最高成績の準優勝をしています。そして翌年、ボクシングでイングマル・ヨハンソンがフロイド・パターソン(米)を破りヘビー級王者になりました。映画には出てきませんが、この時ボルボが世界初の3点式シートベルトを開発し、この時サーブが世界最高速の実用戦闘機ドラケンを創りました。…ちょっと脱線しましたが、イングマルという名は、輝かしいスウェーデンの象徴と思っていいと思います。日本で言えば、今なら大谷翔平。当時なら力道山とかでしょうかね? サガを友達から女として受け止め、子供から大人への一歩を踏み出したイングマルを、世界に羽ばたいていった当時のスウェーデンと重ね合わせた映画なんじゃないでしょうか?「スウェーデン万歳!」
[ビデオ(字幕)] 7点(2024-10-21 09:17:43)
18.  デッドコースター 《ネタバレ》 
“Final Destination 2”そのままで良いのに何この邦題?配給会社の新人に付けさせたの?ってくらい、あれれなタイトルです。 『大事故を免れた人々が、運命付けられた死を回避できず、順々に死んでいく』というプロットが優れています。工夫次第でいろんなバリエーションが創れそうです。今回はハイウェイの多重衝突事故。まぁ飛行機事故=ほぼ100%死ぬことを考えると、交通事故ってそこまで、関係者の死亡率高いか?って思いますが、日常で誰にでも起きうる死なので、良い着眼点だと思います。  また事故当日を『晴れてるけど路面が濡れた朝』にしています。撮影のため、わざわざ数百m~数kmもの路面を濡らしたと思うと(いやCGかな?)、制作側のちょっとしたコダワリが感じられて好感度高いです。ってか、後半に出てくるハイウェイの路面も濡れてます。単に季節的な気候現象なのかな? 大惨事は一瞬でしたが、「つぶせ!つぶせ!」のスクールバスや、ミニカー2台をガッチャンガッチャンしてる子供とか、事故に至るまでの不吉な予兆も、イイ感じにイヤな感じです。前作では、人によってはアッサリ死んだんですが、本作ではまるで『こんなアンラッキーな死に方はイヤだ』のオンパレードです。じわじわ迫る死を、どうにか回避…したと思ったら突然死。って感じで、本作では特に拘ったポイントだったんでしょうね。  クレアが精神病院に自主入院しているのは、悲惨なその後が伺えて良かったですが、あっさり死んでた主人公アレックスは、もう少し深堀りしてほしかったような…レンガが頭にって…。 後半けっこう雑です。せっかく再登場のクレアの最後、正直印象薄かったです。死神が1年掛けたミッションが、ようやくコンプリートしたんだから、達成感的な何かがあっても良いような気もしたけど。死を回避するには新しい生命の云々…も、無理やりなこじつけ感が強いかな。そもそも自殺は出来ないのはユージーンが実証済みだし。まぁ、結局はそれが正解じゃなかった。って結末でしたね。
[地上波(吹替)] 6点(2024-10-17 22:43:06)
19.  マトリックス 《ネタバレ》 
“The Matrix”『母体』。劇中の意味は『人工知能が人間を支配するために創り出した仮想現実の世界』を指しています。 マトリックスは『映像革命』という言葉とともに私達の前に現れました。今まで表現できないモノや事象を、映画の中に実際にあるものとして映像化してきたCGですが、本作では遂に“その映像を、どんな角度で、どんなスピードで観せるか?”を可能としました。 簡単に言うと、漫画の実写化でしょうか?漫画はコマの大きさや絵(カメラ)の角度、コマ割りの数(時間表現)などで、平面で動かない絵を、まるで動きの一瞬を切り取ったかのように表現する作品です。平面の絵のコマとコマを繋いで、活き活きと動きを付けるのがアニメーションです。その技術を実写映像に取り入れたのが、このマトリックスでした。 具体的には、例えは漫画で描かれたパンチの連打。アニメでは格好良く表現出来たけど、実写にするととたんにウソっぽくなるか、格好悪くなる(実写版北斗の拳みたく)。それをしっかりと格好良く観せてしまった最初の作品が、このマトリックスだったんですね。…伝わってるでしょうか?  どうしても“マトリックス避け”とか、映像の奇抜さや素晴らしさばかりに注目してしまいますが、世界観も負けじと素晴らしかったです。 現実と変わらない都市だけど、どこか緑がかった無機質な仮想現実の都市。ダライアスとかのシューティング・ゲームのような敵メカが泳いでる現実の世界。カタカナやローマ字が混ざった緑の文字(マトリックス・コード)が流れるモニター。コネクターとコードを通した生体と機械の融合。SF映画の敵=ロボットやサイボーグだったものが、21世紀を前に、コンピューターとプログラムに変異しました。自由に他人に乗り移れて、物理的に破壊できないプログラム“エージェント”は、過去に例を見ない脅威の敵キャラです。  人間らしく平和な暮らしが出来る仮想現実世界と、ドブネズミのように隠れて生きなきゃいけない現実世界のギャップがキツく、私なんかサイファーの裏切りにとても人間臭さを感じました。うん、多くの人はモーフィアス達みたく強くは生きられない。 モーフィアス救出作戦からの、ノンストップアクションは息を呑む迫力と美しさです。だけどこの映画を何度も観るほどに、最初に撃たれまくるビルの警備員たちが不憫に思えます。彼らは仮想現実世界に住む、いわゆるNPCの扱いだけど、彼らが死ぬと、カプセルで養分になってる本体も死ぬんだよね?たぶん。観ようによっては無差別殺人です。仮想現実を実世界として生きる人にしてみれば、ネオとトリニティは頭のイカれたテロリストです。良くまぁあんなにアッサリと殺せるなぁ…9.11テロ以前だから創れた作品とも言えるかも?  ネオが覚醒し、スミスと互角以上の戦いをしてみせるのは、アドレナリン出まくりです。最後は人知を超えたネオの“舞空術”で、映画は終わります。この“これから先、俺は何だって出来るぞ”って感じが、劇中のマトリックスの世界だけでなく、映画業界全体にも無限の広がりが感じられて、今後どんな凄い映画が楽しめるんだろう?って、期待に胸が膨らみましたよ。 '99年と四半世紀も前の作品ですが、マトリックス以降、少なくとも映画の世界では、次の映像革命と呼べるものは、未だに起きていないと思っています。たぶん。インセプションなんか凄かったけど、正常進化型だよなぁ。 スマホのアプリの短編動画の方が、映画業界より進んでる気さえします。映画は3D立体映像や4DXの動いたりするアトラクション化が進んでいますが、スクリーンに映し出される映像自体は、未だにマトリックスの応用の範囲に思えます。
[映画館(字幕)] 8点(2024-10-16 23:21:45)
20.  ライトスタッフ 《ネタバレ》 
“The Right Stuff”『正しい資質=適任』。何かの本でたまたまX-1とチャック・イェーガーの記事を読んだちょっと後に、テレビで本作が放送されてて「あ、コレって、アレじゃん!?」って驚いた記憶があります。チャックだけで1本の映画が出来そうなものの、本題はマーキュリー計画で、まさに映画1本で2本分のボリュームがあり、長尺なのに飽きずに最後まで楽しめました。 まず驚いたのは特撮の質です。'83年の作品で、CGデジタル合成が出る以前の作品。当時は特撮とハッキリ解るブルーバック合成がメインで、明らかに“ウソの映像”と解り、シラケてしまうことが多かったんですが、本作では恐らく、ミニチュア模型による特撮をメインにしているんでしょうね。合成より古い技術ですが、むしろ凄くリアルでした。  マーキュリー計画も米ソの宇宙開発競争がどれだけ熾烈だったかが良く伝わりました。でも、ソ連が先行する→ジェフ・ゴールドブラムが走ってくる→「知ってるよ、座れ」の流れが見事にテンドンになってる。宇宙飛行士の訓練とお猿の訓練をオーバーラップさせるのも上手いし、尿意を我慢するアランにジョボジョボと飲み物のシーン被せるのも巧い。そんな真面目一辺倒じゃない作風から、長時間でも飽きないんだな。  宇宙飛行士7人のうち、メインとなるのは4人。最初に打ち上がったアラン、便意に尿意に色々大変だった人。2番目はガス、ハッチが吹き飛びパレードも大統領の夕食会もなかった人。かわいそう。地球を周回したジョンは3番目、吃音症の奥さんへの愛情がじんわり来る。宇宙で観たホタルの美しさ&不思議さに見惚れたわ。最後が6番目、地球を21周周回したゴードン。4番目スコット、5番目ウォルターは割愛。7人目のディークは病気で飛べなかったそう。でも調べると、それぞれにもドラマがあるなぁ。 話はイェーガーのその後に戻り、“最後の有人戦闘機”ギラギラのF-104が飛び上がる。雄々しく美しい。奥にチラッとF-102が走ってるのも美しい。 時代とともに記録は塗り替えられる。だけど先人の偉業は決して色褪せることなく輝き続ける。
[地上波(吹替)] 8点(2024-10-14 23:00:59)
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