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《ネタバレ》 日本映画の名作として名高い本作だが、遅ればせながら先日の健さんの追悼番組で初鑑賞。あらすじは知っていたものの、主要キャストが出会い、徐々に明らかになる健さんの回想シーンの入れ方が絶妙で、どんどん引き込まれた。はやり本作の面目躍如はキャスティング、特に主役に高倉健を配したことに尽きる。それまで任侠モノばかりだった健さんがヒューマンドラマに進出したきっかけにもなった本作だが、そうした健さんのイメージと本作の主人公がぴったり重なる配役の妙。役名は島勇作だが、私には髙倉健としか見えなかった。それまでの作品での役柄上、当時の観客は健さんの「殺し」には麻痺していたのだろう。今の時代ならなんらかの贖罪シーンが必要なところだが…。最初は野暮ったくみえた武田鉄矢や桃井かおりだが、見ているうちに彼らと一緒に旅をしているかのような錯覚に陥り、一緒に健さんの一挙手一投足にスカっとしたり、やきもきしている自分に気付く、というロードムービーのお手本のような作品。番組冒頭で本作の主題について武田鉄矢が健さんの言葉をとおし、「おかえり」の声が返ってくることの幸せ、と語っていたが、作中の欽ちゃんと朱実もこの短い旅でそのことに気付き、若者から大人に成長することを予感させる終わり方も良かった。そしてラストの名場面は、普通ならベタに抱き合うところを敢えてそうせず、ただうつむき嗚咽する倍賞千恵子の手を引き、優しく家へといざなう健さんの不器用な姿にどれだけ多くの日本人が共感し涙したことだろう。あと、北海道民としては昭和50年代の街並みや車、生活風景が妙に懐かしかった。上映以来、本作のような出会いを(無意識に)求めて北海道を訪れた若者はきっと数知れなかっただろうと思うと、本作がもっている普遍的な輝きを感じざるを得ない。
【田吾作】さん [地上波(邦画)] 10点(2014-11-29 16:51:11)
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