181. ガンファイターの最後
《ネタバレ》 撃つ者と撃たれる者が縦構図の中におさまり、 撃つ瞬間と撃たれる瞬間、双方のアクションが 同一画面の中に展開する。 ガンアクションの醍醐味溢れる秀逸なショットに痺れる。 落下スタントを織り交ぜた冒頭の暗い納屋での対決や、 リチャード・ウィドマークが部屋に飛び込みざま 手前に滑り込みながらドアの背後の若者を銃撃する、 レナ・ホーンの部屋での対決などだ。 物語自体は時代の反映もあってか陰鬱でアクションシーン自体も少ないが、 そうした瞬発力の高い銃撃ショットが強烈な印象を残す。 乱打、乱射を細分化したカッティングで見せる昨今のアクションフィルムとは 比較にならないシンプルなワンショットの何と活劇的なことか。 「列車の到着」で幕を開け、緩やかな列車の出発で幕を閉じる。 その夜の深い黒がよく映える。 [DVD(字幕なし「原語」)] 7点(2015-07-08 15:10:13) |
182. アメリカン・スナイパー
《ネタバレ》 始まって早々に、今どき流行りの時間の巻き戻しが入る。 幼少期の父親の薫陶であったり、ライフル体験であったり、9.11への義憤であったり。 これが結果的には、今そこにある主人公に対する弁明・釈明ともなり得てしまう。 従来の監督なら、回想による生い立ち説明などには依存せずに あくまでも現在の人物の言動で提示しうる範囲でもって人物を描写したのではないか。 「スナイパーはスナイパーだから狙撃する。」と。 そうした「古き良き」簡潔さを許さぬのが映画の現在であり、 実話ものの制約・しがらみなのだろうが、 この隙もまた本作をめぐるイデオロギー論争を助長させたように思える。 ともあれ、本作での銃撃や着弾の即物的音響は生々しく尾を引く。 白いシーツの翻る、視界不良の屋上空間では、尚のこと音の恐怖が倍増する。 帰国後の主人公を苛むのも、ドリル音や子供の泣声など、視覚以上に聴覚的記憶のほうであり、 携帯電話から響く戦場の音も、現場が見えないだけに主人公の妻を恐怖させる。 エンディングはそこからの開放でもあろうか。 [映画館(字幕なし「原語」)] 7点(2015-07-05 20:44:27) |
183. マッドマックス 怒りのデス・ロード
《ネタバレ》 なぜ『2』かといえば、それが最も『駅馬車』的、即ち最も西部劇的だからだろうか。 近未来ものでありながら、狼煙としての発煙弾、砂嵐や土埃、 塩湖や奇岩や峡谷のスペクタクル、投擲と銃砲による襲撃などなど、 原初的でアナログな西部劇の風情が新鮮な魅力となっている。 (ついでにブルーの『アメリカの夜』(day for night)の魅力も加えておこう。) 原初的というなら、一台のビークルの構造をとことん使いこなし車上を動き回るアクションや、 メカニックを自壊させていくアナーキーぶりは『キートンの大列車追跡』や『マルクスの二挺拳銃』に遡ってもいい。 竿の反動を使った良きアナクロアクションなどは特に楽しい。 序盤の残念なコマ落としアクションではこの先どうなるかと不安になったが。 [映画館(字幕なし「原語」)] 7点(2015-06-24 23:58:09) |
184. ラン・オールナイト
《ネタバレ》 一筋縄ではいかない両儀的なキャラクター同士の取り返しのつかない対決。 遠方に雷光が走る繁華街の夜景や、黒・青・白を基調とした操車場の硬質なロケーション、 走る車窓を滲ませる夜の雨などとともに、結部を冒頭に持ってきて回想形式で語る ノワールスタイルが運命論的な憂愁を終始纏いつかせる。 逆にそうした不穏感の持続が、エド・ハリスとの対決シーン以降の顛末を 間延びさせてしまった感もあるのだが。 階段といい、煙草や鏡などの小道具の用法といい、監督は案外ワイルダー好きだろうか。 お遊びのような移動空撮、スロー弾丸などはいい加減やめて欲しいし、 細切れ編集の格闘アクションは、『セブンス・コード』の前田敦子にも負けている。 [映画館(字幕なし「原語」)] 7点(2015-05-23 23:42:14) |
185. ゴーン・ガール
《ネタバレ》 カメラに正対した第一ショットのロザムンド・パイクの妖しい瞳の表情から 一気に引き込まれるのだが、ラストで反復されるその黒い瞳の力は145分の ドラマを経て一層の凄味を増して迫る。 映画を牽引していく彼女のキャラクターが圧巻だ。 携帯カメラで撮られた表情によって印象操作される、 テレビショー出演の反響と印象度を即座にネットでチェックするなどといった、 メディア批評も随所で光る。 スクリーン内スクリーンの中で夫を演じるベン・アフレックの表情に交差する 虚と実が何ともスリリングだ。 そして本作でも、ズリ上げを始めとする音使いの妙が映画のテンポを上げている。 有り金を奪われたロザムンド・パイクが公衆電話で話す声をかき消す トラックの騒音、ドアのロック音・ノック音など、さりげない音を サスペンスにしてしまう演出に唸る。 妻の帰宅シーンにあえて安堵感に満ちたBGMを被せるシニカルな選曲なども堪らない。 [映画館(字幕なし「原語」)] 7点(2014-12-11 23:43:37) |
186. ジャージー・ボーイズ
《ネタバレ》 トランクに無理矢理金庫を押し込んで前輪の浮き上がった車が夜の街を 迷走する。 金の重みに後輪をとられてうまく舵をとれない車は、その後のドラマの暗示でも あろうか。それでも必死にハンドルを駆るジョン・ロイド・ヤングは 上方の光に向かう姿勢で前へと進んでいく。 それはそのままラストの街路で光を見上げる彼らの擬似ストップモーションと 釣り合う形ともなる。 60年代へのオマージュか、厳格なロケーション主義かと思われた監督がさらりと スクリーンプロセスを使う趣向があったり、長身のエリック・バーゲンが カウンター席で斜め後方を振り返るといった特権的な仕草を見せたりと あちらこちらがさりげなく面白い。 「SHERRY」をはじめとする楽曲とそれに合わせた4人の振り付けにももちろん心踊るが、 やはり既成曲の力に寄りかかりすぎの気がしないでもない。 クライマックスも少々くどくはないだろうか。 [映画館(字幕なし「原語」)] 7点(2014-10-02 23:04:09) |
187. フライト・ゲーム
《ネタバレ》 携帯画面の文字情報と、それを読むリーアム・ニーソンのリアクションを 同じ画面内に乗せながら物語を畳み掛けていく。 観客は双方に視線を配りながらの視聴を要求されるが、それぞれのショットを 定番的に分断させるよりも断然テンポとリズムがいい。 その意味でも「NON STOP」である。 犯人とメール交渉をしつつ、相手の反応を機内の複数の監視カメラを通して 女性二人にチェックさせていく。 そこに同時進行で機外との通話が重なる、といった具合に複雑な シチェーションを的確に処理しながらテンションを上げていく手際がいい。 主人公を陥れていくマスメディア、謎解きに一役買う携帯動画メディア。 各種映像媒体の提示も現在的で面白い。 閉所での格闘アクションは相変わらず煩雑でぶつ切りなのが玉に瑕だが。 割れた鏡面に歪む主人公の像などは、もはや監督のトレードマークといえる。 [映画館(字幕なし「原語」)] 7点(2014-09-11 23:59:05) |
188. 剃刀の刃(1946)
タイロン・パワーがインドの山上で啓示を受ける。 物語的に肝心であるべき箇所で描写を怠り、 その悟りを口頭説明で済ませてしまうことで映画への興が醒めてしまう。 全般的に過剰気味の台詞と対話芝居の重視、そして徹底したパンフォーカスの カメラはきわめて舞台的な演出だ。 その上で施された映画的演出の一つが、アーサー・C・ミラーによる 縦横無尽のカメラワークだろう。 パーティ会場やレストラン、パブなど多彩なエキストラが多数入り乱れる 躍動的なモブシーンを後景に、主要人物が画面手前で会話をしている。 と、背後の群衆の中から不意にアン・バクスターやらクリフトン・ウェッブらが 画面手前に入ってきて話者が連鎖的に入れ替わっていく。 その嫌味なくらい統制のとれた人物の出し入れのタイミングとフレーミングが圧巻だ。 パン・フォーカスのシャープで密度の高い縦構図と、そこにさらに奥行きを加える 流麗な移動画面。 その背後の群衆の中から何時どのように主要人物を中心化させるのか、 手前の複数の人物をどう出し入れし、どう移動させて構図を決めていくのか。 そしてどこで俳優の表情芝居にクロースアップするのか。 物語映画でありながら、その説話展開以上に画面展開の緊張で見せていく映画である。 そのキッチリしすぎた段取り感がやはり仇ではあるが。 [DVD(字幕)] 7点(2014-08-26 22:44:39) |
189. ラストミッション
西部劇への目配せからしてヘイリー・スタインフェルドを抱き上げる ケヴィン・コスナーはなるほどナタリー・ウッドを抱き上げるジョン・ウェインなの だが、スーツ姿への衣装変化と故ホイットニー・ヒューストンを抱え上げた 『ボディガード』も経由して重ね合せるなど、ポイントごとに 映画的感慨を刺激してくるのも悪くない。 父娘が『明日に向かって撃て』的に自転車を二人乗りする坂道や、 ラストの白い崖と入り江の別荘に至るまで 勾配や高低をドラマに活かしたロケーションの数々が印象的であり、とりわけ 父が娘に自転車を教えるシーンは高台から見下ろす街並みの景観と自然光あっての 情趣だ。 そして開始早々は彼女が主役かと思いこまされる、アンバー・ハード。 以降、思い出したように登場するのみでありながら、それでいて彼女の放つ妖しさ・ クールビューティぶりも鮮烈だ。 携帯の着信音のギャグなど、何とか携帯電話を映画的に活用しようとする意欲も買う。 [映画館(字幕なし「原語」)] 7点(2014-08-21 23:46:22) |
190. GODZILLA ゴジラ(2014)
人間ドラマ部分は、冒頭の家族のシーンをはじめとして顔面アップのくどい、 相変わらずの平坦な主流ハリウッド式画面が続く上に、怪獣映画の宿命的な理屈付け に費やされるのだが、ひとたび特撮シーンになると画面は俄然、密度と奥行きを増す。 退避区域に打ち捨てられた車両のドアミラーに、対岸の風景 つまりカメラの背後の画を映り込ませたショット。 または、バスの窓に映るゴジラの背鰭と、それをバスの中から見上げる子供たちと を重層化させたショット。etc. 反射物を利用して一つの画面空間に奥行きを生む工夫だ。 対峙する怪獣2体を、間に挟まれた人間が交互に振り返りながら仰ぎ見るショット。 津波に埋もれる街路から、次々と停電していくビルの窓を追いながら上昇し、 屋上から発射された照明弾を追っていくと、 左手に巨大生物の皮膚が黒光りしながら浮かび上がってくるショット。 これらはカットを割らずにカメラを持続的に移動させて空間を広げることで、 立体感と巨大感を生む工夫だ。 その持続的なカメラは、ゴジラの見得切りのタメと外連でもある。 ビル群や粉塵の演出は勿論のこと、海鳥をその周囲に飛ばせること、 チャイナタウンの瓦屋根や 赤い提灯を画面手前に配置しての構図取りなど3Dを意識した芸も細やかだ。 東宝特撮映画には必須の、火薬大爆破シーンも取り入れて抜かりない。 ドラマにかかわるわけでもない、退避地区の野犬や線虫。津波に追われる犬。 東海岸のコヨーテや海鳥など。役割がなくとも何気なく画面に現れる動物たちも 映画を単調にさせないアクセントとして気が利いている。 [映画館(字幕なし「原語」)] 7点(2014-08-02 14:09:43) |
191. リベンジ・マッチ
折角のファイトシーンも俳優のシェイプアップも、 ロッキー完結編のインパクトの後ではかなり分が悪い。 トレーニングメニューや練習場所のロケーションも様々に趣向を凝らすが、 これもやはり二番煎じだ。 それでも随所に散らばるユーモアがいい。 それらの積み重ねが、逆にふとシリアスになるシーンを活かしている。 特にアラン・アーキンの軽妙な芝居が絶品だ。 [映画館(字幕なし「原語」)] 7点(2014-05-03 00:17:16) |
192. クラブ・ラインストーン/今夜は最高
ニューヨーク夜景の空撮から始まって、その華やかな金髪とスパンコールの輝きを 伴いながら笑顔を振りまくドリー・パートン。 相方には、ギンギラの衣装でカントリーミュージックを熱唱する シルヴェスター・スタローン。 二人が演技以上の親密さで共演するステージシーンがそれなりに煌びやかでいい。 彼らの仲睦まじいツーショットを収めるためのシネマスコープサイズと云っても 過言ではない。 中盤の長閑なテネシーの場面でも、シネスコを活かした二人の配置と照明によって 印象的な画づくりをいくつか見せてくれる。 『オスカー』以降のコメディ演技にはどうにも無理矢理感があるが、 ここでのスタローンは音楽に、コメディにと果敢な意欲を見せる。 ほとんど無謀だが。 ともあれ心底楽しげに弾けているところが微笑ましい。 [DVD(字幕なし「原語」)] 7点(2014-02-17 20:49:00) |
193. モロッコ慕情
テロリズムの蔓延るフランス占領下のシリア・ダマスカス。 シビアな政情を生きる男たちの面構えがいい。 ハンフリー・ボガートの居所をフランス軍に売る男は職業俳優だろうか。 脇役ながら、如何にも殺伐とした世界を生き抜いてきたというような 凄みを感じさせるしたたかな顔貌がいい。 リー・J・コッブの強面がそれに負けていないのもいい。 映画は夜のシーン、地下のシーンが中心となり、閉塞感を増す。 狭い路地や地下住居の設計が独特の闇を創り出し、異国の趣を漂わせている。 とりわけ、ゲリラ達との接触場所となるローマ時代のカタコンベの美術が素晴らしい。 [DVD(字幕なし「原語」)] 7点(2014-02-01 21:36:25) |
194. REDリターンズ
それぞれの俳優のキャリアをパロディ的に活かすあたり、 『ギャラクシー・クエスト』の監督らしい味だ。 ロケーションのスケールを広げつつも、テンポは軽快であり、 続投組も新規キャラクターも見せ場を与えられ、そのバランスも申し分ない。 新規組では、イ・ビョンホンがアクティブな魅力と色気を放っている。 前作の『ガントレット』シーンを今回担うのは彼だ。 逆に続投組ではヘレン・ミレンら女性陣が光る。 ポーカーフェイスで大見栄を切る彼女の射撃アクションも前作を継承して爽快である。 カーアクションで滑稽に弾けつつも、一方では堅気の健気さを覗かせる メアリー=ルイーズ・パーカーはその絶妙なバランスで今回キャラクターが 豊かに膨らんだ。 彼女がラストにサンバを踊りながら見せる陽気な笑顔がいい。 [映画館(字幕なし「原語」)] 7点(2014-01-05 21:42:48) |
195. ゼロ・グラビティ
驚くべきは、その引切り無しの音の氾濫である。 映画冒頭の字幕第一行目でまず宇宙の無音を説明し、劇中の二者の会話でも 宇宙の魅力をその「静寂」と語らせているにもかかわらず、だ。 通信音声が終わると同時に、船外作業の三者の対話が止めど無く続き、 間髪入れずに脅かしのBGMやSEが鳴り響く。 映画が全くの無音を採り入れるのは、中盤でジョージ・クルーニーが ハッチを開けた瞬間の約30秒弱。正確にその一箇所のみである。 無論、音響によって静寂を逆に強調する手法もあるだろうが 本作の場合は明らかに音や台詞が過剰だ。 サンドラ・ブロックがひたすら何かを「GRAB」しようとする 純粋なアクション映画としてならばそれもよろしいが、 映画は最後に何やら地球讃歌・生命讃歌をやりたいらしい。 それなら、最後の羽虫の羽音や波音の感動はより対比的に際立たせるべきではないか。 彼女は単に重力だけを実感しているのではないのだから。 空の青さに、大地の感触。そして生命の音。 タイトルを読むことばかりに囚われては、それらを見逃し、聞き逃すだろう。 (そもそもこの題名自体、重力だけを意味するのではない。) ともあれ、サンドラ・ブロックが素晴らしい。 中国の宇宙ステーションに取り付かんと悪戦苦闘する、 その全身のアクションこそ感動的だ。 [映画館(字幕なし「原語」)] 7点(2014-01-05 19:03:46) |
196. ホワイトハウス・ダウン
ドラマの中に登場するメディアが、テレビ報道から今やネット動画へ。 変わらぬ王道プロットだけに、そんな細部の差異が約20年の時代変化を感じさせる。 コンビの掛け合いは『リーサル・ウェポン』や『48時間』を彷彿させつつ、 二者の人種関係の社会的変化も隔世の感である。 ホワイトハウスは黒煙に包まれ、白シャツは綺麗な黒へと染まっていく。 格闘アクションはひたすら無骨で泥臭く、それを追うカメラも乱雑である。 建物の空間性を活かしきっているようにも思えない。 そんな格闘、爆発、破壊の描写を差し置いて、最も感動的なアクションを 担ってしまうのが、少女ジョーイ・キングの旗振りであるところが楽しい。 [映画館(字幕なし「原語」)] 7点(2013-12-29 01:29:33) |
197. ヒッチコック
劇場内の観客の反応をロビーでリズムを取りながら聴くアンソニー・ホプキンスの 満足げな姿は、『フレンチ・カンカン』のジャン・ギャバンのようでもある。 『映画術』での、「大衆のエモーションを生み出すために映画技術を 駆使することこそが歓び」であり、「観客を本当に感動させるのは、 メッセージでも名演技でも原作小説の面白さでもなく純粋に映画そのものなのだ。」 との監督の台詞がこのシーンに体現されている。 その意味では、ヘレン・ミレンのいかにもな「名演技」臭に少々くどさも感じるが、 いずれの役者もモデルに似せる以上のアプローチを目指していて、 演劇的な楽しさに満ちている。 セロリを齧る咀嚼音や、ソファの軋む音など、 さりげなく不穏を掻き立てる音使いとその積み重ね。 装置としてのプール、水着などのドラマへの活かし方もいい。 [映画館(字幕なし「原語」)] 7点(2013-04-14 22:04:42) |
198. アルゴ
車窓を流れていく、クレーンに吊るされた見せしめの死体。 夜の路側で炎上している車両。 マイクロバスの窓を叩いて威嚇してくる、デモ行進の市民。 それらはベン・アフレックの無言の視線を介して捉えられることで強調され、 同化を促し、不穏と緊張を巧妙に増幅する。 つながらない電話のシーンをさりげなく布石として配置しておき、 クライマックスに反復を仕掛ける手練。 人物の忙しない動きをスムーズに追いかけていく移動撮影もまた、 映画に緩急のリズムをもたらし、最終盤の盛大な横移動で テンションをマックスに高めていくよう、運動感の構成もよく出来ている。 細々した映画ネタが色目使いに見えなくもないが、あくまで適度におさめる品の良さがいい。 [映画館(字幕なし「原語」)] 7点(2013-03-09 23:57:52) |
199. アウトロー(2012)
レザーを纏い、獣性を帯びたカマロを駆る流れ者トム・クルーズ。 勾配のロケを舞台とした狙撃戦から、雨中の徒手格闘へなだれ込むアクションの流れ。 決斗の場となるアジトの四角いドア枠に、細かいところではバスタブの意匠など。 映画は古典的なウェスタンの趣を漂わせる。 殺し屋の持つ携帯電話に、幾度も発信しては語気鋭く相手を挑発する主人公。 あるいは、ロザムンド・パイクの部屋にかかってくるトム・クルーズからの電話。 彼女の背後に立つ二者のどちらかが裏切り者だと伝えられる、その表情とリアクションのサスペンスが素晴らしい。 公衆電話と携帯電話を介した緊張感漲る駆け引きが光る。 ロバート・デュヴァルとの再共演もやはり感慨深い。 [映画館(字幕なし「原語」)] 7点(2013-02-22 01:26:22) |
200. ドリームハウス
ヒーローを演じつつもどこか邪まさを匂わせるダニエル・クレイグの キャラクターイメージが次第に活きてくる作劇の転換が サスペンスを呼び込んで面白い。 夜の窓外に蠢く人影より何より、主人公の変貌ぶりにインパクトがある。 家の映画としても、二階に続く階段、地下への階段がそれぞれドラマの舞台に 組み込む配慮が為されていて如才ない。 ラストの業火の中、レイチェル・ワイズとのやり取りが感動的で、 温かい余韻を残す。 [映画館(字幕なし「原語」)] 7点(2012-12-30 00:29:56) |