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1.  AIR/エア 《ネタバレ》 
少しでもNBAの選手を知っていれば、映画冒頭の新人選手の誰をスポンサーするかっていう会議でニヤニヤが止まらない(あー、そっちにいっちゃだめー!とか、そいつは意外とイケるよ、とか)。そんななかで二流スポーツブランドだったナイキ社員のソニーが「これだっ」と見出したのがドラフト3位のマイケル・ジョーダン。しかしジョーダンはすでに当時大手だったアディダスとの契約を希望しているらしい、さて、どうする? という話。  そもそも結末はみんな知っているので、「交渉」の緊張感にハラハラするよりも、バックに流れる80年代音楽とともに流れに身を任せる感じ。映画的な見所はそこで出会う人物たちのキャラとソニーとのやりとり。ナイキの幹部たち、オリンピック関係者、エージェント、そしてジョーダンの両親など、みんなキャラが立ってて主人公ソニーとのやりとりは本当に面白い。とくにエージェントのデヴィッド・フォークが興奮してまくし立てた言葉に思わず笑ってしまうマット・デイモンの表情など、(まるでコントの相方のやり過ぎに思わず笑ってしまった芸人のようで)俳優達も楽しんでる感じが伝わってて最高です。交渉のキーパーソンとなるジョーダン母役のヴァイオラ・ディヴィスの貫禄はさすがだし、軽妙なジョーダン父とのバランスもすばらしい。  あえてマイケル・ジョーダンその人はちゃんと出てこないという仕掛けも面白いけど、まだ「神」になる前の「青年」だったことを思えば、誰かに台詞つきで演じさせてもよかったのかなーとは思います。その(まだプロとしては何も成し遂げていない)「青年」の可能性にどこまで賭けられるのか、という話なので。あと、脚本的には契約の肝だったロイヤリティの話が突然出てきて、しかもあっさり解決してしまったのが少し残念。ここは交渉時からの伏線がほしかったし、フィル社長がそれを受け入れる過程をもう少しうまく描ければ、ナイキの歴史を変える決断の大きさがもっとエモーショナルに伝わったのではないかと思います。とはいえ、肩肘張らずに楽しめるビジネスものの快作。90年代にNBAやバスケットシューズに夢中になった人は必見。
[インターネット(字幕)] 6点(2023-05-28 08:25:03)
2.  エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス 《ネタバレ》 
アカデミー賞授賞式当日(平日)午前に映画館で鑑賞。観客はシネコンの小さめスクリーンに20名程度。高齢者多めだが、高校生くらいの男子グループも。自分も評判は聞いていたのですが、基本的には「中国系女性が主人公」「マルチバースらしい」「カンフー映画らしい」程度の予備知識で鑑賞。結果、大半のシーンに驚き、困惑し、呆れるばかり。でも終わってみたら、しっかりした家族の物語で、年頃の娘がいる自分としては感涙必至の大傑作でした。  『クレイジー・リッチ・エイジアンズ』のときもそうでしたが、とっ散らかった作風でも家族の軸を中心に置くと一気に普遍性を獲得してしまうのがアメリカ映画のすごいところです。本作の見所は、中国系移民家族三世代のギャップ。とくに出色は主人公の娘ジョイが抱える「虚無」の表現。「何でもできる」「何にでもなれる」と言われ続ける現代の子どもたちが、だからこそ直面する現実との折り合いの難しさ。ジョイが最も絶望した瞬間が、自分を「理解している」風の態度を見せる母親エヴリンが放った一言だったのにも納得。そんな彼女の「虚無」にどう向き合うのか。その問いに、エヴリン自身が持っていたはずの無限の可能性をマルチバースとして描き、カンフーで戦うハチャメチャなアクションで答える。最後の落とし所は、たぶん「解決」ではない。でも「虚無」に向きあうための勇気を、そこに感じることはできたからこそ、多くのアメリカの観客はこれを受け止め、大ヒットにつながったのでしょう。私もマルチバース構造と本作のメッセージを完全に理解したとはいえませんが、その勇気を受け取ったと感じたことは確かです。でも、それで正解なのかなと思います。だって、ザ・ダニエルズの監督2人もまた「家族なるもの」と「虚無」と戦ってて、本作が描いたのは、その「答え」じゃくて「戦うこと」のほうだったと思うからです。だから、あのパーティの翌日、やっぱりこの家族は、結局は夫婦の不和をかかえ、親との関係に悩み、娘の変貌に戸惑ってるんだろうなと思います。  ところで、本作を「ポリコレ作品」と見る動きもあるようですが、基本的に不謹慎ギャグの連続で、どっちかといえば「正しくない」描写に溢れた一作です。そして「正しい答え」を期待してはいけない一作でもあります。まあ、移民家族の葛藤とか不和を描いたと作品なんて、あの『ゴッドファーザー』をはじめ、アメリカ映画ど真ん中じゃないですか。それを「アジア系だから評価されてる」みたいな風にみちゃうの残念だなあと思ってしまいます。むしろ、ど真ん中のテーマを堂々と描いてることが評価されてるんですよ。下ネタいっぱい詰め込みながら。  映画が終わって劇場をでたら、アカデミー賞作品賞取ってました。その後見た授賞式の動画で、実はキャストたちが語る「アメリカン・ドリーム」に感動しつつも、私はこれでまた「何にでもなれる/なんでもできる」と言われて「虚無」に陥る子どもが増えるんじゃないかとちょっと心配になりました。日本でも、これで多くの人が劇場に足を運び、驚き、戸惑い、呆れることでしょう。でも、そのなかで1人でも多く、この作品が描いたものから勇気を受け取った人がいれば、それはこの映画の勝利なんだと思います。
[映画館(字幕)] 8点(2023-03-19 09:19:07)(良:2票)
3.  ヱヴァンゲリヲン新劇場版:Q 《ネタバレ》 
決して熱心とはいえないエヴァ鑑賞歴ですが、「序」「破」に続いて外出自粛期間でのYouTube無料公開にて鑑賞。冒頭からいきなり前作で「死んだ?」と思っていたアスカが全開で登場して「え?」となり、その後のミサトやリツコの変貌に「えええ?」となり、巨大戦艦がヤマトっぽく出てきて「えええー?!」となる。ポカーンとなったまま物語はズンズン進み、カヲルとのBL展開に「あ、そこは変わらないのね」と思いつつ、すっかり変わってしまった舞台設定に戸惑いながら、あ、でもエヴァってこうゆうやつだったな、という感覚がだんだん蘇ってくる。そう、この振り回され具合、予想の斜め上展開こそ、それが面白いかどうかは別としても「エヴァ体験」だったのだ。伏線回収などの「整った」シリーズ物語を見たければ、ハリウッドが何百億ドルもかけて作ってくれている現在、破綻の美学をここまで体現したシリーズは逆に貴重。つねに期待を裏切ってこそのエヴァ・・・とたいして熱心ではないからこその勝手な意見ですが、そんなことを思いました。そういう意味で楽しめました。ただ、残念なほうの「期待外れ」は「使徒」の描写。今作ではオリジナリティあふれる「使徒」の描写が少なめだったので、圧倒的な「外部」の存在が消えて完全な内輪ものと化してしまった。まあ、それはテレビシリーズも旧劇場版もそうだったので、お約束だったのかもしれませんが。
[インターネット(邦画)] 7点(2020-04-27 09:16:47)(良:1票)
4.  ヱヴァンゲリヲン新劇場版:破 《ネタバレ》 
テレビシリーズ、旧劇場版はリアルタイムから数年の周回遅れで鑑賞済だけれど、新劇場版は「序」を地上波で見て以来は仕事だ子育てだでまだ見てなかった・・・程度のエヴァ歴です。今回、新型コロナウィルスの感染防止のため外出自粛のさなかにYoutubeにて新劇場版シリーズ無料配信ということで、時間もあるしだったら久々に見てみるか、というわけで「序」から鑑賞。「序」は基本テレビシリーズどおりだったので、新しい映像技術で昔のエヴァを見るつもりで「破」を見てみたらびっくり。アスカは登場したと思ったら、あれよあれよと死んじゃう(?)し、レイが食事会を企画・・・!?と、どんどん予想外の展開に戸惑う。あ、「破」から完全新ストーリーなのね、とやっと気づいたくらいで終わってしまった。面白かったといえば面白かったけど、エヴァってこんな感じだったっけ、という戸惑いのほうが実は大きい。あと、合唱歌二連発は演出としてはかなりいただけない・・・。シーンに合わないBGMを流すのもエヴァ流といえばそうでしょうが、ああいうのは1作に1回限りでしょう。しかも二回目がクライマックスなので、あそこで気持ちがスーーっと作品から引いてしまったのが、本当に残念。
[インターネット(邦画)] 4点(2020-04-27 08:43:55)
5.  LBJ ケネディの意思を継いだ男 《ネタバレ》 
スピルバーグが『リンカーン』で奴隷制を廃止する憲法修正13条を成立させるまでのドラマを濃厚な政治描写で描いたけれど、今回は差別を禁止する1964年公民権法を制定するまでのジョンソン大統領の苦闘を描くとして、政治ドラマ的な期待をもってみたら、まったくもっての外れでした。序盤から、CNNの追悼ドキュメンタリーあたりで使われそうな、いい話風のBGMがやたら流れていて嫌な予感はしていたのですが、政治劇というよりは、ドラマの大半はケネディ暗殺前後に絞られ、「日陰」にいたジョンソンがいかに大統領としてケネディの遺志を継いだのかという部分に絞られています。だいたい97分という、政治もの、歴史ものとしては極端に短い尺からしても、本来なら複雑な政治劇にしようとしたところ、小難しくなるのを嫌ったスタジオの圧力で単純化させられたんだろうなあというのは容易に想像できる。それでも、ケネディ兄弟と南部実力者のあいだの「中間管理職」的な政治家というポジションとして、ジョンソンを描いたのは、さすがはベテラン監督のロブ・ライナーらしい「落としどころ」でした。とくに、南部の重鎮議員のラッセルとの関係と確執は本作でももっとも緊張感にあふれた名シーンの連続でした。ただ、その緊張感ある構図もケネディ暗殺までしか持たず、その後は、ジョンソンのちょっといい演説で法案成立というのは、ある意味、それまでのジョンソンの政治キャリアを否定するような描写だったと思う。彼の真骨頂は、ケネディのような若々しさや印象深い演説ではなく、議会であの手この手で賛同者を増やし、票を積み重ねるプロセスにあったはずで、そっちをすっとばして演説一発、あとはナレーションで解決、というのは法案成立の歴史的過程とも本作のテーマともあってなかったと思うし、何より政治家としてジョンソンにフォーカスを当てた意味がまるでなくなってしまった。
[CS・衛星(字幕なし「原語」)] 5点(2020-04-26 10:51:51)
6.  映画ドラえもん のび太の月面探査記 《ネタバレ》 
前作で映画ドラえもんにはすっかり関心を失っていたのだけれど、子どもがやっぱり行きたいというのと、脚本が辻村深月さんだということで今年も映画館へ。辻村さんといえば、藤子F不二雄先生とドラえもん(&大長編ドラえもん)への愛と尊敬を込めた小説『凍りのくじら』の作者。各章をひみつ道具に絡めて描いた『凍りのくじら』と同様、旧作への愛情をたっぷりと感じる展開はとても面白く感じました。とくに、のび太たちがちゃんと「小学生」している日常の学級シーンを序盤に丁寧に描いたのは素晴らしい。そして、「日常」からの「異説クラブメンバーズバッヂ」からの大冒険という展開には、ドラえもんがずっと描いてきた日常世界と夢の世界を繋ぐ「想像力」の大切さというメッセージにもしっかりつながっていてグッときた。月にいく宇宙船が、科学的には無駄にしか思えない「気球」型、というのもそれっぽくていい。このあたりの辻村テイストの丁寧な積み重ねゆえに、この映画はじわじわと感動が積み重なるつくりになっていて、ルカとの友情にもしっかり感情移入できる。ただ、最近の「映画ドラえもん」らしい部分が、その辻村テイストとどこまで合っていたかには疑問も。まず、ルカやルナの絵柄。いかにも最近のアニメっぽい外見なのだけれど、正直のび太たちと画が合っていない。ゴダートも衣装や外見は相当微妙だった。それから、俳優さんのゲスト声優出演。最近は主要ゲストキャラは有名俳優さんたちが演じることが多いけれど、ルナ役の広瀬アリスさん、ゴダート役の柳楽優弥君は明らかに浮いていた(これは俳優さんが悪いのではない。あくまでキャスト側の問題だ)。そして、なにより最近のテレビアニメの映画化作品がこぞって向かうアクション映画志向。終盤のかぐや星での戦いなど、大きな音と音楽でスケール感を出してるのだけれど、その勢いでせっかくのじわじわ重ねてきたドラマが突き放されてしまうというか、1本の映画のなかに二つのドラえもん映画が混在しているようで、うまく乗り切ることができなかった。ちなみに、子どもたちの感想は、面白かったけど笑えるシーンが少なかった・・・とのこと。ふむ。たしかに、「いい話」だったけど、子どもたちがゲラゲラ笑うシーンはそこまで多くなかったかな。子どもも大人も両方を満足させるのはなかなか難しいようです。
[映画館(邦画)] 6点(2019-03-22 09:41:37)
7.  映画ドラえもん のび太の宝島 《ネタバレ》 
ドラえもん映画は約30年振り。実ははじめて映画館で観た映画が元祖『のび太の恐竜』です。最近のドラえもん映画版は子どもたちがAmazonプライムで見てますが、私はちらっと横目で見る程度。今週で近場の映画館は上映終了と聞いて行きたいと訴える子どもたちの付き添いで久々の映画館へ。超久々の映画版は個人的には残念な体験でした。冒頭の「宝島を見つけてやる」とのび太が意地になる動機も弱いし、ジャイアンとスネ夫がイカダで河を下ってるのも唐突すぎる。「船に乗ったら宝島の世界観になる」とかいう設定は中盤以降全く無関係に話が展開するし、あの巨大な宝島号(?)にいたたくさんの人たちはあの大騒ぎのあいだどうなってたのかよくわからない。登場キャラが多いわりにはみんなイマイチ活躍の場がないまま終わる。海賊シルバーが奥さんが死んだりいろいろショックだったのはわかったけど、それで「海賊」になる理由もよくわからない。で金銀財宝集めたのは結局なんだったのかもやっぱりわからない。だいたい金銀財宝って地球脱出した後に最も役にたたないものだろうし。もう脚本がズタズタなのに、終盤は突然の父子&家族ネタの感動シーン大盤振る舞い。ドラえもんだからそりゃ家族連れが見るだろうから、シーンの説得力がなくても設定だけでもう泣けるに決まってるけど、それはシチュエーションの力であって別に映画の力ではない。台詞に聞くべきものもない。大泉洋と長澤まさみの無駄遣い(完全に舞台挨拶とマスコミ対応要員)。映画ドラえもんはジブリより歴史があるはずなのにやたらとジブリっぽい絵がやたら続くのはあれでいいのか。星野源の2曲はよかったけど映画ドラえもんならテレビ版の主題歌を冒頭には流してほしかった。ちなみに子どもたち、お約束のギャグ・シーンはゲラゲラ笑って楽しそうでした。ただ、終わった後に少し冷静に「感動シーン多めだったね」と言っていたのには苦笑。見透かされてるやないか〜。
[映画館(邦画)] 3点(2018-05-27 18:14:02)
8.  エンド・オブ・キングダム 《ネタバレ》 
最近のジェラルド・バトラーの充実っぷりといったスゴいが、なかでも殺戮マシーンがヒーローなこのシリーズはバトラー映画のまさに王道。ヘリが落ちようが、車が大破しようが、痛そうなのは一瞬。数秒後には全速力で走り回る驚異の回復力。万事がこんな感じで前のシーンで起きたことが後につながることは皆無で、すべての伏線が振り切られる。そして、考える時間を一切与えず、質より量の怒濤の展開で押し切り、99分にまとめてしまうという離れ業。必要ないのに何度もナイフで刺しまくるサイコとしか思えない主人公。こんな男が仕事辞めてフツーのパパになるとか絶対無理だろう・・というか、この映画の世界では閻魔様とか因果応報という言葉など存在しないかのように、主人公側(&アメリカ側)の大殺戮をなんの躊躇もなく正当化してしまう。とくにラストのラスト。ひとり善人風だったモーガン・フリーマンが、敵の黒幕ボスに下した仕打ち・・・。「暴力の連鎖」なんて言葉をせせらわらうような展開に絶句するしかない。この世界観でいけば、たぶん数年後には地球は破滅してますよ。なんだか、ジェラルド・バトラーが『デビルマン』に見えてきた。
[CS・衛星(字幕)] 3点(2018-05-20 22:53:48)(笑:2票)
9.  エンド・オブ・ホワイトハウス 《ネタバレ》 
大ざっぱな勢いだけで最初から最後まで押し切ったアクション映画。ここまで「伏線」というものを無視した映画も珍しい。冒頭の自動車事故、ホワイトハウスに詳しい息子、妻との小さなすれ違い、大統領夫人を救えなかった主人公、主人公と現役シークレットサービスとの微妙な関係、「私がコードを言わなければいい!」(笑)などなどの要素はほとんど全く顧みられず、それを示唆したり想起させるシーンもほとんどないまま、とにかくその場の思いつきの行動ですべて進んでいく。過去の事故はテロとつながっているとか、息子は絶対どこかで人質になりながらも事件の解決の鍵になるとか、最後にどうやって大統領からコードを聞き出すのかとか、そういう積み上げられた問いの斜め上をひたすら突き進みます。冒頭のホワイトハウス侵入シークエンスからして、ほとんど正面突破に近いやり方で、ある意味、ここにこの映画の全体のトーンが集約されていたのかも。また肉体派で行くんだったら、たとえばテロリストの殺され方にいろんなバリエーションを用意するみたいな工夫もあってもよかったと思うけど、それもなし。それでも何とか見られたのは、わかりやすい敵役さんの好演とジェラルド・バトラーの容赦ない殺戮マシーンぶりで映画に「勢い」があったから。観客もそれに巻き込まれるように映画の世界に入れればいいけど、途中で何か疑問に思い始めると耐えられなくなる、そういう映画です。
[CS・衛星(字幕)] 5点(2016-11-20 22:43:29)(良:1票)
10.  映画 鈴木先生 《ネタバレ》 
ドラマ版を見た後に鑑賞。基本的にはドラマの延長戦(レッスン11)であり、生徒たちと鈴木先生の議論メインで進んでいく。出水君の問いかけはちょっとナイーブ過ぎる気もするけど、ドラマ版でも彼の謎かけの回は結構好きだったので、今回も選挙演説会までの流れは楽しかった。しかし、そのドラマの流れに、どうにもかみ合っていなかった部分があちこちに。1つは、小川さんをめぐる妄想の再来で、結局これは何だったのかうやむやのまま映画も終わってしまった(ストレス?とかそういうことではないでしょう)。2つめは、他のレビューにもあるように、風間俊介君が起こす事件。彼はハマり役だったけど、彼の動機には、このドラマ・映画で最も肝になる「ロジック」が乏しい。だから鈴木先生との「論戦」も今ひとつかみ合わないまま、最後はアクションとジャンプで強引にまとめてしまったのは残念。それから、あの公園を「居場所」としてた若者2人とも、結局その居場所を失って犯罪に絡んでしまうのも短絡的というか・・・。やっぱり、彼らには彼らのロジックをもって、鈴木先生に対峙してこそ、この映画らしいクライマックスになったのになあと思います。
[CS・衛星(邦画)] 5点(2016-07-30 15:24:14)
11.  X-MEN:フューチャー&パスト 《ネタバレ》 
正直なところを言えば、『ファースト・ジェネレーション』の正統な続編が見たかった。あのあと、チャールズとエリックがをどんな現実に直面するのか、ケネディ暗殺からベトナム戦争まで、アメリカ史的にも盛りだくさんの時代だったので、前作のテイストと登場人物で続編を描くことは可能だったはず・・そう思ってしまうくらい、今作のチャールズとエリックは前作にはあった「軸」がない。ダメ人間化するチャールズと、意図がよくわからないまま派手にテロリスト化するエリックの行動は、台詞で説明されても、どうにもピンと来ない。せっかく登場したウルヴァリンは結局最後まで「いたっけ?」っていう程度の活躍だし、未来のシーンはなくても物語は成立していたし、逆に「歴史が変わってすべて解決!」なラストは、物語のカタルシスという意味では逆効果だったように思う。どうにも散らかった感じが終始続き、最後に強引にまとめきったというのは、このシリーズらしいといえばそうなのだけど、キャラも時代背景もいい素材が揃っていただけに、残念な感じは拭えない。クレジット後の映像をみれば、これで終わらない雰囲気もするけど、もう前作の世界に戻ることはなさそうなので、あまり期待せず、次を待つことになりそうです。
[DVD(字幕)] 6点(2014-10-11 13:51:09)(良:3票)
12.  X-MEN2 《ネタバレ》 
一作目と比べると、ミュータントの能力の見せ方がうまくなってる。とくに、冒頭の大統領襲撃とかマグニートーの脱獄シーンは必見。ただ、主役格のウルヴァリンの見所は、「ツメで刺す」「撃たれてもすぐに復活」の2点なのでけっこう地味だし、プロフェッサーも今回はいいように操られて残念。ラストでは、ジーンが乗りうつったプロフェッサーとスコットの今回役に立てなかったコンビが見つめ合う珍シーンまであります(感動シーンのはずなんだけど・・・)。シリーズものとしては内容・映像ともに順当な進化を見せてくれましたが、ラストのジーンの扱いにはやっぱり疑問で、わざわざプロフェッサーにジーンの動機について解説させたのもさらにマイナス。
[地上波(吹替)] 5点(2011-10-28 05:58:54)(良:2票)
13.  X-メン
うーむ。ファーストジェネレーションを見て面白かったので、シリーズ第1作にも手を出してみたけれど・・・。テーマ的には共通しているけれど、この第1作ではあまり掘り下げられていないので、「設定」を説明しているだけで、肝心のキャラたちの苦悩が生々しく伝わってこない。とはいえ、シリーズ化を前提としたキャラクターたちの顔見せ的な作品だと思えば、こんなものか。
[DVD(字幕)] 5点(2011-10-16 01:54:04)
14.  X-MEN:ファースト・ジェネレーション
実はシリーズ通してはじめてちゃんと観た(ほかの作品はテレビ放映時にちらっと見た程度)。もともとX-MENシリーズの背景にはアメリカの人種をめぐる問題があると言われていたわけですが、この作品では、X-MEN物語の誕生とアメリカの人種問題が歴史的にも結びつけられています。舞台となっているのは、1962年のキューバ危機ですが、実はこの時代はアメリカでは人種差別の解消を目指した公民権運動の時代でもあります。有名なキング牧師の「私には夢がある」演説が1963年です。しかし、この時代には、白人との「統合」を目指すキングとは対照的に、黒人の誇りや自立を求めるマルコムXも新しいリーダーとして登場してきます。本作のチャールズとエリックの対立は、この2人の黒人リーダーの対立に重なるものとして描かれています。いま私たちが直面している人種問題の根源的な対立(これはアメリカだけの問題ではなく、世界史レベルの問題の象徴として「ホロコースト」がある)を、物語のなかに、ちゃんと歴史的な同時代性をもって描きこむことで、単なる勧善懲悪ではない深みを物語に与えています。しかし、そんな頭でっかちな内容に終始しないのも本作のすばらしいところで、さまざまなミュータントが能力を発揮するようになるプロセスは見てて楽しいし、アクションにもセンスを感じます。娯楽映画としても一級品というところもすばらしい。
[映画館(字幕)] 9点(2011-09-04 10:44:47)(良:3票)
15.  ヱヴァンゲリヲン新劇場版:序
実は映画化で一番の楽しみは、宇多田ヒカルの主題歌がどういうタイミングで流れるのか・・っていう点でした。でも先日のテレビ放送では結局流れることなく、「破」の予告で終了・・・。エンディングのクレジット?部分で流れたようなので、やはり映画は金払ってみるものですね。内容的には「序」はTVシリーズのリメイクであって、懐かしさはあっても新しい発見はありませんでした。でも相変わらず「使徒」のデザインは秀逸だなあということだけは再確認。日本の特撮特有のシリアスななかにもコミカルな部分を含む「怪獣」を思わせる造形がとても光ってました。映画としては次回以降に期待。
[地上波(邦画)] 5点(2009-07-28 16:58:45)
16.  エリザベスタウン
『シングルス』のシアトルや『バニラスカイ』のニューヨークの印象が強かったんで、キャメロン・クロウが描く「南部の田舎」という設定はどうかな~と思っていたけど、お父さんの葬式の描写なんか、とてもよかったと思う。あと、キルスティンもうまい。スパイダーマンより数倍いい。ただ、やはり問題は主人公か・・。オーランド・ブルームは顔はキレイなんだけど、やっぱり平板な感じだし、そもそも喪失と再生というテーマもありきたり。リンクレイターの『ビフォア・サンライズ』の会話センスと比べると、あの電話のシーンも物足りない。あと、キャメロン・クロウ映画の特徴というべき音楽も今回はあまり印象に残らず・・・。見所はいくつかあるけど、総じて「まあまあ」という映画。
[DVD(字幕)] 5点(2006-06-06 11:21:56)
17.  エターナル・サンシャイン
なんとなく思ったのだけれど、カウフマンとゴンドリーの組み合わせは、実はけっこう相性が悪いんじゃないかな。アイデア勝負・感性一本勝負みたいな二人がタッグを組んだところで、ケミストリーはあまり感じられず、基本的に印象的な断片の積み重ねに終始してしまって、結果的には退屈だった。『マルコヴィッチ』や『アダプテーション』がよかったのは、もの悲しいのに笑える場面があったことだったと思うのだけれど、この映画は、そういう部分に欠けていた(というかイライジャやキルスティンの場面も笑えるほど面白くなかった)のが残念。
[DVD(字幕)] 4点(2005-12-21 01:57:49)
18.  エネミー・オブ・アメリカ
5年以上前に「情報監視社会」というテーマを娯楽映画に仕立てたブラッカイマーの先見の明に感心。携帯電話、SuicaやICOCA、監視カメラなど、利便性や安心感と引き替えに成立しつつある監視社会の恐怖をかいま見ることができます。ただ、それを使ってる人間たちが、意外なほどマヌケなのもブラッカイマー流なのかも。序盤のウィル・スミスがどんどん包囲されていくまでは、面白かったのだけれど、そこから急に話が荒唐無稽になっちゃった上に、ラストは某映画を思わせる銃撃戦・・・。題材が面白かっただけに、ちゃんと脚本も練ってくれたら上質なサスペンス・スリラーになったと思うんだけど、それをこの映画に期待するのが間違いか・・・。
5点(2004-10-23 21:41:11)
19.  8 Mile
失業が蔓延しトレーラーハウスに住む「ホワイト・トラッシュ」と呼ばれる人々の現実をちゃんと描いたことで好印象。もうどーしよーもないママをはじめ、どーにもならない閉塞感のなかだからこそ、ラップのバトルにも、単なる下品な言葉遊び以上のものが浮かび上がってくる。最後の主題歌Lose Yourselfは、歌詞も映画の内容を反映してていい感じなんだけど、サビ部分の訳詞「ビートを刻んでゴーゴー」には、ちょっと笑ってしまった・・・。
7点(2004-09-26 22:49:27)
20.  エイジ・オブ・イノセンス/汚れなき情事
いい映画でした。あいかわらず完璧なダニエル・D・ルイスはともかく、ウィノナ・ライダーはすばらしかった。脇に回った彼女はホントに輝いてました。対照的に、ミシェル・ファイファーはやっぱりミスキャストでしょうか・・。コスチューム・プレイの役柄には似合ってなかった。「ギャング・オブ・ニューヨーク」のディカプリオもそう思ったけど、スコセッシ監督って、こういうミスキャストやらかしますよねえ。もったいない。
7点(2004-03-12 13:02:14)(笑:1票)
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