1. 火垂るの墓(1988)
思ってたのと違った。私が『火垂るの墓』を初めて見たのは小学生の頃。学校の集団映画上映会にて仰々しく上映され、見終わったら感想文を書かされた。「けっ」と思った。「いつものやつか。」私は紙に“戦争反対”と書いて提出した。2回目に見たのは高校生くらいだったと思う。夏休みのテレビで放映されていた。「けっ」と思った。「なんやこいつ、自分のせいで妹殺して悲劇のヒロイン気取りか。」いよいよ私は『火垂るの墓』に別れを告げた。大っ嫌いな映画としてカテゴライズし、二度と見ることはないと思った。そして10年以上経ち、今日、夏休みのテレビで放映されている本作をたまたま見た。ものすごく驚いた。思っていたのと全然違った。おそらく私はこの映画に、もっとも悪い形で出会ったのだと思う。このあたりは、戦争を題材にしたアニメ映画ということで安直に教材に取り上げる小学校側に文句を言うべきであろう。これは反戦映画ではない。たまたま舞台が戦時中というだけで、たとえば大災害とか、出稼ぎに行った親を待つ子とかでもこの話は成り立つ。反核映画としてしばしば取り上げられる作品『風が吹くとき』が、実はその危機的状況に瀕した夫婦の会話やあり方を描くものであるように、この映画は幼いゆえに過ちを犯し、それでも父親の帰還を信じて兄妹で必死に生きたふたりのあり方を描くものなのだ。これは反戦映画ではない。どんな感想も強いられていない。この原作者は、この作品を執筆している際「締め切りに追われて必死だった」と娘に語り、“原作者の気持ちを答えなさい”と問うテスト問題に娘が不正解をもらったという話は有名である。その程度なのだ。何の教育的思惑も裏もない、ひとつの映画として、フラットな気持ちで見るべきなのだ。私のように、幼い日に感想を強いられ、「けっ」と思ってこの映画と決別した人にこそ見てほしい。 [地上波(邦画)] 8点(2015-08-15 00:17:51)(良:3票) |
2. 名探偵コナン 11人目のストライカー
コラボレーション先への揉み手が画面から透けて見えるようで、コナン映画の中ではかなり嫌いな作品です。どんだけ先方に気を使っているのか知らないが、選手の声優起用も含め、ストーリー展開に支障が出ています。しかも真剣な試合にヤラセ要素を持ち込んだりと、肝心なところもどうなのかという始末。こういう企画モノは、存在そのものに意義があるとは思いますが・・テレビスペシャルでやんなさいよ。 [映画館(邦画)] 3点(2015-07-29 04:09:22) |
3. 名探偵コナン 業火の向日葵
今年のコナンは怪盗キッドメインの絵画ミステリー。といっても「モナリザに隠された秘密が・・」的な王道絵画ミステリー要素はありませんのでご注意を。とにかく怪盗キッドが活躍します。常に主人公の一歩先、探偵の専売特許である犯人当てすら主人公より先行しています。怪盗キッドのファンにはいいんじゃないでしょうか。私はコナンが好きで、コナンが小さい体で一生懸命頑張る姿が好きでこうしていい年になっても毎年劇場版を映画館で見続けているので、なんだか残念でした。ショタコンじゃないです。 [映画館(邦画)] 5点(2015-07-29 03:34:29) |
4. ショーシャンクの空に
何故かはわかりません。わかりませんが、見終わった後、「グリーンマイルが好きな人はこれも好きなんだろうな」という仮説が頭をよぎりました。私はグリーンマイルが苦手で、うまく説明できないのですがおそらく同じような理由でこの映画も苦手です。理屈も根拠もない乱暴極まりないこの仮説、みなさんはいかがでしょうか。さあグリーンマイルが苦手なそこのあなた、ひょっとしたらこの映画もハマらないかも?? [CS・衛星(字幕)] 6点(2015-07-29 02:58:11) |
5. レナードの朝
《ネタバレ》 難しいですね。何が正しくて、何が間違っているのか。効果も副作用も不明な新薬を、独断で増量投薬する。まるで実験台じゃないか・・もし自分が医師だったらとても真似できません。したくありません。しかし、そうして目覚めたレナードの喜び、世界の輝き。何物にも代えがたいはずです。レナードが目覚めた最初の夜、「僕は起きている」と笑うシーン。母親を認めて腕を広げるシーン。ほかの患者にも投薬治療をし、皆が次々とベッドから起き上がるシーン。あの喜びと輝きに満ちた、鮮やかな場面は、全ての批判を跳ね返す力があります。もちろん結果論です。成功したから肯定できる。見方を変えれば彼をマッドサイエンティスト(?)と呼ぶこともできるでしょう。彼は間違っています。しかし、レナードにとって彼は救世主で、かけがえのない主治医で、友人でした。やがてレナードに再びゆるやかな死が迫り、お互いに苦悩し、心を分かつ場面もありましたが、しかし最後まで二人は努力を続ける戦友であり続けました。何が正しくて、何が間違っているのか。外野がとやかく言える問題ではありません。ラストシーン、セイヤーは、たどたどしい口調で看護師エレノアをコーヒーに誘います。正しいも間違いも存在しない。人は成功と挫折の中で一生かけて学びつづけ、自分が最善だと信じる方へ進み続けるしかないのだと思います。 レナードとポーラのダンスシーン。文句なく素晴らしい、まさしく名場面です。そして、あの奇跡のひと夏が終わりを告げ、患者はすべて元のような人形に戻ってしまいますが、あの「髪を染めたいわ、私の髪は黒髪なの」と気恥ずかしそうに笑ったおばあちゃんの髪が変わらず黒く染められ、化粧を受けているシーン!ぐっときますね。セイヤーは「自分のしたことはひどく残酷なことではないか」と悩みますが、果たしてそうでしょうか。あのおばあちゃんの黒髪は、ひどく救いに満ちていると感じました。(私が女だからでしょうか・・) [CS・衛星(字幕)] 9点(2015-07-29 02:19:25) |
6. 深呼吸の必要
ひと冬の間、沖縄でさとうきび刈りのバイトに奮闘する若者を描いた映画。そんなのんびりしたプロットそのままに、ゆったりとした時間が流れる映画です。深呼吸しても水泳は速くならないし、ビリはビリ。でも、する前より楽しくなれる。そんな人生の深呼吸を疑似体験させてくれます。仕事に疲れたときにお勧めです。逃げ込む場所ではなく、ここで休んだらまた行ってらっしゃいと背中を押してくれます。 [CS・衛星(邦画)] 7点(2013-07-30 00:14:18)(良:1票) |
7. 顔のない天使
《ネタバレ》 師弟であり親友である、怪人と少年の交流。最後まで世間の誤解が解けないというビターな展開は映画を地味なものにしていますが、考えさせられます。もし私があの町の住人だったら、母親だったらと思うと、やはり彼を遠ざけてしまうと思う。判決出てるし、この世には本当に悪い人間っているからね。こればかりは難しいです。そんな世間の冷たい目の中で、最後に二人の親友が笑顔で手を振りあえたことを救いとするしかない。 [CS・衛星(字幕)] 7点(2013-07-29 23:51:03) |
8. ライフ・オブ・デビッド・ゲイル
《ネタバレ》 なんかなー。冤罪の可能性があるから死刑に反対なんでしょうか。死刑場に駆け付けた反対論者は「罪は神に許されたから」と言っていましたが。彼は冤罪であって冤罪でないわけで、こんな手法はもはやテロでしょう。彼が死刑になったのは悲劇で反対すべきことなんでしょうか。悲劇だとしたら、冤罪のそれなのか?運動に狂信的におぼれていった彼女の、そして彼自身の悲劇では?なんかもやもやする映画でした。「健康のためなら死んでもいい」と大真面目に言われたような気分です。 [地上波(字幕)] 5点(2013-07-29 23:30:13)(良:3票) |
9. ヘアスプレー(2007)
《ネタバレ》 楽しい映画でした。人種差別に対し黒人たちが「ブラックベリーは甘味の王、ダークチョコレートはリッチな味」なんて歌い上げちゃう明るさがいいです。逆に、デモシーンになるととたんに真面目になってしまいがっかりです。あんなに広いストリートで、あんなにたくさんのダンサーがいて、なんで普通にデモしちゃうのか。もっとエンターテイメントとして突き抜けてもよかったのではないかと思います。ともかく全編にわたって楽しくて、ステップなんて踏めないのについ体が動く映画です。 [CS・衛星(字幕)] 8点(2012-10-11 00:28:51) |
10. カールじいさんの空飛ぶ家
《ネタバレ》 ピクサー作品に登場するキャラの中には“お調子者枠”がある。よくしゃべり場を引っ掻き回し、しかしどこか憎めない、そんな愛すべきお調子者。私はこのお調子者枠が正直苦手だ。今まではオモチャだったり小動物だったり車だったりで何とか許せてきたが、今回は人間の子供だったのでそれはもうダメだった。しかも話が進む中で全く成長せず、最後まで自分勝手なまま。もう本当にダメ。ピクサー作品に登場するお調子者は成長させてはいけないとかそういう制約でもあるのでしょうか。ダメだった…。こんなコメントですみませんが、全体的にはおもしろかったですよ。 [映画館(吹替)] 7点(2012-10-10 23:57:44) |
11. 崖の上のポニョ
登場人物に現実感がない。何というか観念的で、血の通っている感じがしない。おそらく、子供向けというより、幼児向けのアニメなのだと思う。幼児に現実感はいらない。大人の冷静な注意も、心配も制止もいらない。台風や浸水に対する危機感も不要。ピンクや黄色がきらきらしてたり、ぬばあっとしたのがぷるぷる動いていればそれだけで楽しい。ただおかあさんがいなくなるのだけはやばい。一大事。あとトンネル怖い。そんな感じ。ひたすら幼児の目線に立ち、いらない要素はバッサリ切り捨てて、幼児が楽しめるように特化した映画です。ジブリ印なのでお母様方も安心してお子様にお見せできます。私は幼児ではないのでどうしても点数は低くなりますが、一定のお客様に向け真摯に作られた映画だと思います。 [映画館(邦画)] 6点(2012-10-10 23:21:24) |
12. クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶモーレツ!オトナ帝国の逆襲
《ネタバレ》 子供のころは何にでもなれると思っていました。念じればテレパシーが使えると信じていたし、当然平凡なサラリーマンなんて縁のない将来だと思っていました。だから、この映画を初めて見た中学生の私は、そんな希望に満ちた未来を必死で取り戻そうとするしんちゃんに胸が熱くなりました。そして今、成長し、自分にはテレパシー能力どころか非凡な才能の類が全くないことを悟り、就活の末に見事平凡なサラリーマンになった私は、あの時は何も感じなかったヒロシの回想シーンで号泣してしまいました。ヒロシの人生のなんとすばらしいことか。凡庸な人生のなんと特別なことか。先の知れた人生を恥じ、どこかで悔いていた私は、その当たり前のことが衝撃で、救われた思いでした。今から未来を生きるのが楽しみです。そして、もう少し人生を進んだら、またこの映画を見たい。すごい映画です。 [DVD(邦画)] 9点(2012-10-10 22:44:37) |
13. 名探偵コナン 漆黒の追跡者
《ネタバレ》 あの予告CMを見た人は誰しも思ったでしょう。「夢オチに違いない」と…。私も完全にそう思い込み、どうせ予告詐欺だ、むしろ黒の組織なんてほぼ絡んでこないんだろうな程度の期待度で映画館へと足を運びました。いや、まさかまさかのおもしろさ!まあ予告カットはやっぱり夢オチだったんですが(笑)、その後の、組織がじわじわとコナンに迫る展開はスリル満点でした。また、見知った刑事たちの中に黒の組織がいるというサスペンスフルな展開も今までにない感じでよかったです。そして、最後はド派手に東都タワー爆撃!!あの黒の組織があんな目立つことを…とか考えたらダメなんです。あれはなかなか進まない組織との対決にマンネリしているファンへのサービスなんです。一回でいいから推理も腹の探り合いもなくただドンパチやってる絵が見たいんです。少なくとも私は大興奮でした。そしてコナンがサスペンダーで応戦!!ダメなんです。あれ実際やったらゴムの反動でブリンッてなるよねとか考えたらダメなんです!いやー、楽しかったです。せっかくの劇場版、原作から離れたところでできるギリギリのラインで目一杯派手にやってくれました。好感が持てます。 [映画館(邦画)] 7点(2012-10-10 02:42:44) |
14. アフタースクール
おもしろかった!!10分単位で目まぐるしく変わる状況が楽しいです。そのたびに驚いて、そういえばと伏線を思い出し、それならばと今後の展開を予想し…常に頭はフル回転。さしずめ頭のジェットコースタームービーといったところでしょうか。すごくおもしろかったです。また会話もセンスが良くおもしろいし、ラストも後味が良く、とても良質なエンターテイメントでした。自然と2回目を見てしまいます。 [CS・衛星(邦画)] 9点(2012-10-10 02:24:41)(良:1票) |
15. 月に囚われた男
内容はSFにSFを重ねたかなり突拍子もない話なのですが、そのSF要素を総動員し、ひたすら一人の男の苦悩や感情・心の触れ合いを描いていて心に迫ります。感情移入しまくりでした。静かですが熱い映画です。『月に囚われた男』というタイトル、見る前はキャッチーな印象を与え、見た後にはこれしかないってくらいぴったりなタイトルだということがわかる、すばらしい邦題です。原題は『MOON』ですか。邦題つけた人いい仕事しすぎ! [CS・衛星(字幕)] 8点(2012-10-10 01:57:00) |
16. ドッペルゲンガー
注意してほしいのは、これはドッペルゲンガーという現象を描いたホラー映画ではなく、ドッペルゲンガーを一材料として使い、「自分を見つめなおす」とか「自分の本当の欲求とは」とかそういう他のメッセージを描いているシュール系B級映画ということです。なにせ、“ドッペルゲンガーを見た人は死ぬ”というルールがまずあやふやです。私これ本当に驚きました。本作品のドッペルゲンガーは人を呪い殺したりといったことはしません。ただ現れ、ただやりたいことをやっていくだけです。これを念頭に置いて鑑賞しないと肩透かしを食らいます。これから見る人は注意してください。※ただし、これを念頭に置いて鑑賞しても面白いかは正直疑問です。 [CS・衛星(邦画)] 4点(2012-10-10 01:33:19) |
17. キラー・ヴァージンロード
《ネタバレ》 岸谷五朗初監督作品。印象としてはちょっと中島哲也監督を思わせるカラフルハイテンションギャグで、岸谷五朗ってこういうの撮るんだ!と意外でした。さて内容ですが、、、基本的にボケ倒す作風の中、おじいちゃん云々で無理に泣かせに走るもんだから、そこだけが浮きまくって全体的にアンバランスな仕上がりになっています。ダメダメな主人公が遺体処理の過程で自分の価値に気づくという軸はいいのに、惜しいです。あと最後、主人公が笑って終わりって完全にダメでしょう。今人殺したんだよね?ちょっと神経疑います。しかしこの映画、友人とわいわい言いながら見ていたので、結果的にはすごく楽しめました。木村佳乃なんかすごすぎてみんなで爆笑。暇な日に、みんなで集まっておバカ映画でも見ようかーってなったら、あまりに本物(シベ超とか)見ると場が凍りますので、この作品あたり見るといいんじゃないでしょうか。 [DVD(邦画)] 5点(2012-10-10 00:39:13) |
18. スウィーニー・トッド/フリート街の悪魔の理髪師
ティム・バートンらしいダークホラーですが、思っていた以上にグロいです。ていうかエグいです。そして、ティム・バートン作品に珍しく(と私は思うのですが)、登場人物に魅力が感じられません。ティム・バートン作品は、魅力あふれる独特のキャラクターによってブラックな世界をダークファンタジーへと押し上げているのが売りだと思うのですが、今回はそれがないのでエグさがダイレクトに伝わってきます。とはいえ、人間ドラマ自体は悲しく見ごたえありますし、ミュージカル風に仕立ててみたりと娯楽性も多少は演出されていますので、ティム・バートンファンは一見の価値ありではないでしょうか。 [CS・衛星(字幕)] 5点(2012-10-09 23:52:35) |
19. おくりびと
主人公は成り行きで納棺師になりますが、それに対しての広末の「汚らわしい」という台詞、急によそよそしくなる友人、「死体でメシ食ってるんだろう」という台詞など、少々大げさな描写が目立ちます。そして、そのわだかまりが解ける様子も大げさにわかりやすく描写されています。童話だと思えば受け入れやすいかと思います。 [映画館(邦画)] 6点(2012-10-09 23:26:23) |
20. ダイヤルMを廻せ!
おもしろかった!コメディ映画かってくらい笑いました。「完全犯罪なんて不可能ですよ(笑)」というミステリー作家の言葉がまるで呪いのように主人公の前に立ちはだかり、次々と完全犯罪計画が狂っていく様子がたまらなくおもしろい!しかしそこはキレ者の主人公、冷静を装いながら臨機応変に対応していくさまも素晴らしいです。流れるような、一切の無駄のない展開は見ていて気持ちがいい(序盤の夫と大佐の会話はちょっとだれるかも…)。すばらしい傑作です。しかし、みなさんのレビューを読むと、夫に肩入れしている方が多いようで驚き。そりゃ浮気するほうが悪いけど、結局夫も財産目当ての犯行なわけで、どっちもどっちだと思うのですが…。 [CS・衛星(字幕)] 9点(2011-08-31 23:21:53)(良:1票) |