121. 宇宙戦争(2005)
《ネタバレ》 生と死、明と暗を切り取った構図が素晴らしい。宇宙人が始めて襲来する場面では、車の中と外。暴徒と化した民衆に車を奪われるシーンでは店の中と車の中の対比。レイチェルが始めて死を目の当たりする川の場面。船に乗れなかった者と乗れた者。 生と死は常に隣り合わせにあり、それは紙一重である。また危機的状況では、日常生活以上に選択と結果が不可分であり、それは不条理であるという事を、映像を通して、明確に説得力を持って表現している。 それまで、徹底的に生の側にいて、死から逃れ続けようとしていたトム・クルーズ一家の息子が始めて意を決して、船から落ちそうな者を死から生へと救おうとする。その息子を見上げる父親。 そして、草原でついに息子は父親を振り切り、逃れる民衆(生)から軍隊(死)の中に自ら進んでいく。 若さゆえの行動ともとれるが、息子が父親をある側面では越えた瞬間をあらわしていたと思う。 父親にとって大切なものは人類でも英雄的な最期でもなく家族。どちらの行動が正しい、優れているとはいえない。しかし、最後の最後でトム・クルーズはレイチェルを助けに宇宙人に立ち向かい死に向かう。 圧倒的で理不尽な暴力の前で宇宙人(外から来たもの)によって人間の本質が問われていた。 [DVD(字幕)] 8点(2014-12-25 14:45:13) |
122. 寄生獣
《ネタバレ》 新一が始めて自分自身の手で他者を殺めるシーンも、母を自ら殺めるシーンも肝心なその瞬間を写さず、カットを割っているので、その行為の重さがしっかりと伝わってこない。また、一つ一つのシーンを余韻なく切り、直ぐに次のシーンへと切り替えるので、ただの短い映像の連続を見せられているようで、映画を見ている感覚にならないし、物語の余白も感じられない。 ミギーもポップに描かれていて、始めから新一の親友にしか見えないので、他種族との共存というテーマもぼやけてしまっていると思う。 マンガだから成り立つ表現方法をそのまま踏襲し、説明台詞を多用したり、心情を口に出させてしまうので原作に漂う寂寥感も全く感じられなかった。 全体を通して、原作にある場面を主張し続けるBGMとスタイリッシュな映像に合わせて過不足なく見せようとしているだけにしか思えなかった。 [映画館(邦画)] 4点(2014-12-16 01:41:59) |
123. 舟を編む
いい人たちがひたすら素敵なことをする。ただそれだけで、何も魅力を感じないし、人間が生きてるようには見えなかった。 [DVD(邦画)] 4点(2014-12-15 03:05:03) |
124. マネーボール
《ネタバレ》 元プロ経験者が引退してからそのスポーツの監督やコーチになると経験や勘や情を重視するというイメージがあった。しかし、このビリー・ビーンという人はそことは真逆で選手の価値を数値化することで客観的な視点で選手を評価することをしている。最後には金より情でチームに残る事を選んだり、すぐに感情的になったり、ジンクスを信じていたりと客観的というには程遠い行動も取るというグレーな存在であるからこそここまで魅力的で求心力のある人物になったのではないかと思った。 [DVD(字幕)] 7点(2014-03-21 20:10:10)(良:1票) |
125. ヒーローショー
子供の頃はみんなヒーローに憧れていた。いつからヒーローが非現実的で滑稽な存在だと見えるようになったか。現実の社会ではちょっと悪役の方がモテるし、かっこよく見えたりする。 それでも自分は辛くてシビアな問題ばかりの現実社会でダサくても惨めでもヒーローのようにあろうとするリストラされた独身の夢見るおじさんを馬鹿にするような人間にはなりたくない。 [DVD(邦画)] 6点(2014-03-13 21:23:02) |
126. ブギーナイツ
《ネタバレ》 世間的に見れば落伍者の集まり。子供に会わせて貰うことも叶わず、ポルノ映画に関わっているという事で融資を受けることも出来ない。一歩外に出れば後ろ指をさされるような人生。人間的にも真っ当な人間とは決して言えない。 でもそこにはプライドがあり、夢がある。みんな誇りを持って人生を生きている。誰にそれが馬鹿に出来ようか。 それぞれが手にしたものは大きな成功ではなく、ささやかであるが新たな人生の始まりの予感や自分の居場所。でもみんながみんな本当に人生を楽しんでいるように見えた。笑えて、泣けて、ハラハラできて一度に何度もおいしい素晴らしい映画だった。 [DVD(字幕)] 9点(2014-03-08 20:22:48) |
127. ヘルボーイ/ゴールデン・アーミー
《ネタバレ》 1作目のヘルボーイ自身の自己葛藤という内界の物語から他種族との共存はできるのかという外界との葛藤の物語になっていた。人間を守る価値はあるのかという問題に対する明確な答えは最後まで提示されない。そして人間から蔑まれた英雄達は人間の世界を去る。答えは人間自身に任されたのだと自分は感じた。 前作からも感じたが、多くの言葉を交わさずとも分かり合える男同士の友情の描き方がとてもよかった。 そしてあらゆる映画への愛も感じられる独特の世界観とビジュアルの構築は素晴らしかった。 [DVD(字幕)] 7点(2014-03-08 05:35:11) |
128. ヘルボーイ
《ネタバレ》 ヘルボーイは地獄で生まれた悪魔の子であり、性格からも人間にとって善悪どちらでもなり得る危うい存在。生まれの境遇やヒーローにはあるまじき他者からの不遇な扱いを考えれば、いつグレたっておかしくない。それでもヘルボーイは悪魔の象徴である角を折り、人間として人を守る事を選んだ。 人間は心の中に悪魔と天使がいて、様々な境遇の中で日々悪魔と戦っている。この物語はヒーローと呼ぶにはあまりに泥臭い一人の男の生き様を見せることで、自分のような一市民を勇気付け応援してくれているような気がした。 [DVD(字幕)] 6点(2014-03-05 12:08:28) |
129. ホステル2
《ネタバレ》 前作と比べ組織の裏側や殺す側の人物像を見せることで未知なものへの恐怖や面白さが減った。全世界を股に掛ける組織という設定には、前作にあったいい意味での閉塞性や陰険さが失われ、開放的でライトな印象を受けてしまった。 [DVD(字幕)] 5点(2014-03-03 19:28:21) |
130. 拝啓天皇陛下様
《ネタバレ》 悲劇の中で喜劇を見せる。チャップリンの映画に通じるものを感じた。他人が見れば辛い状況でも間違いなく山田は人生を楽しんでいた。それは性格や環境のおかげともとれるが、結果が全て。人生において何が大切かを改めて教えてもらった。 また戦後の山田と棟本の姿から天皇陛下への手紙で締めくくるラストは戦争への流れは戦いが終わっても続くという事を端的かつ痛烈にあらわす見事なシーケンスだった。 [DVD(邦画)] 7点(2014-03-01 02:27:51) |
131. ホステル
外観は綺麗でも、ぎっしりと詰まった建物が閉鎖された空間である村をうまく表現していた。 [DVD(字幕)] 5点(2014-02-26 03:54:10) |
132. 疑惑(1982)
《ネタバレ》 法の善悪と倫理の善悪のねじれ、矛盾。事実や法のみを信じる律子と自分の欲求を満たす事のみを求めて生きる球磨子。社会道徳的には決して良しとされない二人の勝利(無罪)という形で終わる。しかし、二人は勝利の宴をあげるわけでもない。お互いを罵り合い、血(ワイン)を浴びせながら、自分を宣言して別れる。その馴れ合わずそれぞれの人生に歩み行く姿には、社会道徳という大義のもとでぬくぬくと生きている自分にはない強さ、たくましさ、潔さを感じた。 [DVD(邦画)] 8点(2014-02-22 16:30:05) |
133. 鬼畜
《ネタバレ》 利一の全てを達観したような冷めきった目、崖に立ち自殺するのではないかとすら感じさせる悲しい後ろ姿を見ると、自分が子供のとき子供らしくいられたことへの感謝の気持ちとそれがいかに幸せなことであったのかということを感じた。 利一の「父ちゃんじゃないよ、知らない人」という言葉は、宗吉が父であることへの否定、拒絶と最後まで父をかばったというどちらとも取れる展開。どちらにしてもこれほど哀しい結末はない。 [DVD(字幕)] 7点(2014-02-18 16:15:46) |
134. マーダー・ライド・ショー
一瞬で殺される事が幸せとすら錯覚してしまうほどの恐怖。精神的な恐怖をどこまで与える事ができるのかを追求していた。 [DVD(字幕)] 5点(2014-02-18 03:33:12) |
135. ある戦慄
《ネタバレ》 人間誰しも他人に犯されたくない弱い部分、大切にしているものがある。それを土足で踏みにじられたとき、立ち上がる事はできるのか。それでも見てみぬふりを決め込めるのか、お前もこいつらと同じじゃないかと画面の向こうから、知的な狂人ジョーとアーティが問いかけてくる。 密室、無音、モノクロという下地の上で絶対領域に踏み込まれる恐怖と誰もが潜在的に抱いている日常に潜む不条理な恐怖が描かれていた。 [DVD(字幕)] 7点(2014-02-13 16:00:48) |
136. 仁義の墓場
《ネタバレ》 力夫に感情移入できるわけないし、同情も出来ない。ただの狂っている男にしか見えない。そこには、ギャング映画のようなスタイリッシュさもないし、滅びの美学もない。ひたすら惨めで、悲惨でしかない。暴力の果てにあるものを飾らず、目をそらさず、誠実に描ききっていた。 [DVD(字幕)] 7点(2014-02-11 13:34:18) |
137. キャビン
《ネタバレ》 アメフト部とイケてる女子たちが別荘に遊びに行くというホラー映画のおきまりの展開。こんなありがちな設定で素直に話が進むわけないと思うとそういう事かと納得。 話しの仕掛け人である、管制室の人達は、自分なのではないかというぐらい考えや気持ちがリンクしていた。それはいつも自分がイケている人達をこのように見ているのだという、メタ認知に繋がった。徐々にそんな管制室=自分に対して嫌悪感が沸き、愚者と処女を応援している自分に気付いたとき少しスカッとした。 [DVD(字幕)] 6点(2014-02-10 04:00:26) |
138. ファントム・オブ・パラダイス
《ネタバレ》 自分が愛し魂を注いだもの(音楽、女性、声)は全て奪われ、死ぬ自由すら奪われた。しかし、最後にフェニックスはスワンではなく、醜い姿も行動も全てをさらし、何も残っていないウィンスローを選んだ。愛する人を守り、これほどまでに悲しく美しく幸せな死に際なら人生悪くない、そう思えました。そして自分が求めている愛とか恋はきっとここにあるような気がしました。 エンディングの歌詞も含め、本当に悪趣味で露悪的で最高な熱い映画です。 [DVD(字幕)] 9点(2014-02-07 20:49:52) |
139. 東京物語
《ネタバレ》 映画史上に残る名作である本作。それがゆえ今まで自分にはまだ観るのは早いと心が自然に作品と向き合えるようになるまで避けてきていました。 そしてある転機をきっかけに鑑賞をしたのですが、両親とも元気に生活している自分であるにもかかわらず、気がつくと今まで見た映画の中で最も涙を流していました。それと同時に登場人物の心の機微を感じることが出来る喜び、日本人に生まれこの作品に出会えてよかったという思いを強く抱きました。 [DVD(邦画)] 10点(2012-03-05 20:17:26) |
140. 松ヶ根乱射事件
《ネタバレ》 突然思い出したように申し訳程度に銃を撃たれても…。つかみどころのない不思議な映画でした。 [DVD(邦画)] 6点(2012-02-27 17:59:35) |