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ゆきさんの口コミ一覧[この方をお気に入り登録する

プロフィール
コメント数 614
性別 男性
自己紹介  洋画は字幕版も吹き替え版も両方観た上で感想を書くようにしています。
 ネタバレが多い為、未見映画の情報集めには役立てないかも知れませんが……
 自分と好みが合う人がいたら、点数などを基準に映画選びの参考にしてもらえたら嬉しいです。

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121.  ブリジット・ジョーンズの日記 きれそうなわたしの12ヶ月 《ネタバレ》 
 前作が「これから面白くなりそうって所で終わる映画」だったもので、自分としては嬉しい続編映画。   元々、ラブコメ映画の続編って代物自体が珍しい訳で、そういう意味でも新鮮でしたね。  映画一本分をかけて結ばれた背景があるもんだから、前半部分にてブリジットとマークがイチャついている様も、とても微笑ましく感じられて良かったです。   ジェーン・オースティンの「説得」が下敷きだったり、マークが濡れたシャツ姿を披露したりと、基本的には「元ネタありきの映画」なのですが……  個人的には、元ネタを知らずとも充分楽しめるんじゃないかと思えましたね。  例えば、タイの刑務所にて女囚達と一緒にマドンナの曲を歌う場面なんかも、原曲を知らずとも十分に楽し気な雰囲気が伝わってくると思いますし。  前作は「高慢と偏見」ありきの映画だな、って印象でしたが、本作に関しては「元ネタよりも面白い映画」とすら思えちゃいました。   妊娠検査の最中に、二人が喧嘩しちゃう件なんて、特に面白い。  ここ、ほんの数分間なのに「二人の価値観や、育った環境の違い」が如実に伝わる作りになってるんですよね。  ラブラブな二人だったのに、徐々に擦れ違いが生じて喧嘩別れしちゃう流れに、自然に繋がっていたと思います。   他にも「そろそろ不幸じゃない事が起こるはず」と言った途端に、ブリジットが空港で逮捕されちゃうとか「引きずり出せるならどうぞ」と挑発したダニエルを、マークが本当に引きずり出して外で喧嘩しちゃうとか、台詞の使い方が上手いんですよね。  前作以上に「ブリジットがダニエルを選ぶ訳無い」「マークと結ばれるに決まってる」と分かり切ってる内容なのに、それでも楽しめたのは、こういう細かい部分が面白いお陰だと思います。   新キャラとなるレベッカも、非常にキュートで良かったですね。  「ブリジット→マーク←レベッカ」という関係と思わせておいて、実は「マーク→ブリジット←レベッカ」という関係だと判明する件は驚きましたし、ストーリーの面白さにも凄く貢献してる。  色んな映画に出てくるレズビアン女性の中でも、五指に入るくらい好きなキャラになりました。  妙な仮定になりますけど、もし自分がブリジットだとしたらレベッカを選んだかも知れないな……って、そう思えたくらいに可愛かったです。  煙草を吸う理由は「もっと悪い事が起きる前に死ねると思うと、心が安らぐから」と語るブリジット父も良い味出してましたし、前作以上に脇役の魅力が光ってた気がします。   そんな本作の難点としては……  タイの女囚達に見栄を張る形で「マークには酷い事された。暴力を振るわれたり、薬漬けにされたり」と嘘を吐く辺りは、流石に引いちゃった事。  あとは、中盤にてマークに部屋の鍵を渡すのが伏線かと思いきや、全然違ってて拍子抜けしちゃった事とか、そのくらいかな?   ブリジットを主役にした映画は現在三本ありますが、自分としては本作が一番好きですね。  作中の台詞にある通り「ハッピーエンドの、その先」を描いた映画として、しっかり楽しむ事が出来ました。
[DVD(吹替)] 7点(2020-11-11 10:22:20)
122.  アフリカの女王 《ネタバレ》 
 呑気な川下り映画というイメージだったのですが、久々に再見してみて、序盤は意外と陰鬱な事に吃驚。   ヒロインの兄が精神を病んで死ぬ場面とか(あれ、こんな映画だったかな……)と戸惑っちゃうくらいでしたね。  この辺りは、やはり戦争を扱った映画なんだなと、しみじみ感じさせるものがありました。   とはいえ、川下りが始まってからはイメージ通りの「呑気さ」に溢れており、ホッと一安心。  一応、道中では色んな災難に見舞われて苦労するんだけど、それもお約束の範疇というか、安心して観ていられる感じなんですよね。  裏を返せば「緊迫感に欠ける」って事でもあるんですが、自分としては長所に思えました。   現地人の描写とか、蚊の大群が合成丸出し(ヒロインが「こんなに刺されて」と主人公を気遣うけど、刺された痕なんて全然分からない)とか、現在の観点からは気になる点も多いんだけど、まぁ御愛嬌。  舟を止めて水浴びしたり、雨が降ったら狭い屋根の下で男女同衾したりと「ラブコメ映画」としての魅力を備えている点も、良かったですね。  最初は兄にさえ「器量が悪い」なんて言われていたヒロインのローズが、どんどん綺麗に見えてくるし、ボガート演じる主人公も髭を剃ったら二枚目だしで、観ているこっちとしても、主人公カップルの好感度が徐々に上昇していく様が気持ち良い。  アフリカが舞台って点を活かし、色んな動物を拝ませてくれるし、急流の場面は迫力あるしで「旅映画」「アドベンチャー映画」としての魅力も、文句無しでした。   ただ、これは勿体無いなと思えたのは……  ちらちらワニの存在を匂わせておきながら、結局ワニとの戦いになる場面が無かった事ですね。  流石のジョン・ヒューストン監督も、後の「ワニ映画」需要までは予見出来なかったのでしょうか。  もしワニと戦う場面があったら「川下り映画の元祖」というだけなく「ワニ映画の元祖」としても語られたかも知れないし、つくづく惜しいです。   最後は目的通り「ルイザ号」の爆破に成功し、アッサリ終わるんだけど……  なまじ爆破後も長々と尺を取っていたら(ご都合主義過ぎる)って印象が強まっていたでしょうし、スパっと終わらせて正解だったんでしょうね。  死刑執行直前に主人公カップルの結婚を認めたりと、ルイザ号の船長も良い人だったので、船が爆破されても生きてる描写を挟んであるとか、そういった細かい配慮にも感心させられました。   昔の名作映画って、格調が高い代わりに「一度観たら充分」って気持ちになる事も多いんですが……  これは例外的に、また忘れた頃にでも観返したくなる。  そんな味わい深い一本です。
[DVD(字幕)] 7点(2020-10-14 19:09:22)(良:1票)
123.  タッチ CROSS ROAD 風のゆくえ<TVM> 《ネタバレ》 
 これ、結構好きです。  少なくとも「タッチ」のアニメとしては、劇場版三部作&テレビスぺシャル二本の中でも最も綺麗に纏まっているし、面白かったんじゃないかと。  冒頭に流れる歌も哀愁があって、異国の地で一人ぼっち夢を追いかける主人公に合ってるし、この度久し振りに鑑賞して(良い曲だなぁ……)と、しみじみ浸っちゃったくらい。   それと、本作のストーリーラインについては人気野球ゲーム「パワプロ10」でもオマージュされているんですよね。  「日本の若者が一人渡米し、金髪そばかす娘とロマンスを繰り広げつつ、マイナーリーグからメジャーへの昇格を狙う」って話の流れは、文句無しで魅力的だし、これを殆どそのままゲーム中に流用したスタッフの気持ちも、良く分かります。   ただ、そんな「パワプロ10」に取り入れられなかった部分「主人公達也と、ヒロイン南との遠距離恋愛」については……正直、蛇足に思えちゃいましたね。  原作が「タッチ」である以上、この二人のロマンスは外せない訳なんだけど、今回はそれが枷になってた気がします。  そもそも南が新体操を辞めてカメラマン目指してるって設定自体、劇中の人物同様に「なんで?」と戸惑っちゃうし……  南に「自立した女性」的な魅力を与えようとした結果、空回りしてるように思えました。   他にも「ライバル打者のブライアンが凡退する場面が多過ぎて、凄みが薄れてる」「達也とホセが終盤に和解する流れが唐突」などの作り込みの甘さに「バンクシーンや曲の使い回しが多い」という、アニメとしての根本的なクオリティの低さも見逃せないし……酷評しようと思えば、いくらでも出来ちゃう品なんですよね、これ。  ただ、それでもなお自分は好きというか……粗削りだけど、光る部分も多いんです。   現地娘のアリスは可愛らしくて、南より魅力的に思えたくらいだし、オーナー夫妻も良い人達なもんだから、主人公チームの「エメラルズ」を、自然と応援したくなるんですよね。  「かつては名門チームだったが、今は没落している」「球団の解散が決まった事を知った選手達が奮起し、快進撃の末に優勝する」などのお約束展開も、王道な魅力があって良い。  町から町へ、オンボロバスで移動しながら野球するという、マイナーリーグらしい描写もしっかり挟まれていたし、開幕戦ではガラガラだった客席が、最終戦では満員になっていたのも、凄く気持ち良かったです。   「弟の代わりに投げた」発言からすると、本作は「背番号のないエース」から続く時間軸なのでしょうが、原作漫画しか読んでない人でも、そこまで混乱しないよう配慮した台詞回しになっている事にも感心。  キャッスルロックという地名が飛び出す小ネタなんかも、ニヤリとしちゃいましたね。  「頑張って夢を叶えようとしたら、その過程で他の選手の夢を奪ってしまった」場面を挟み「優し過ぎる兄貴」だった達也に相応しい苦難を用意しているのも、原作漫画が大好きな身としては、妙に嬉しかったです。   そして何といっても、ラストシーン。  達也が最後の一球を投じる直前に「和也……見てるか!」と胸中で叫ぶ場面には、本当にグッと来ちゃったんですよね。  思えば原作においても「好きなんでしょ、野球」「和也くんと、ずっと同じ環境に育ってきたんだもの」という台詞がありましたが、そんな達也の「野球を好きな気持ち」を、とうとう素直に表せる場所に辿り着いたんだという充足感、そしてそんな自分の姿を「和也に見せてやりたい」と思った達也の心意気に、もう観ていて心を鷲掴みにされちゃったんです。  そんな独白の後、幼い和也と達也とがキャッチボールしてる場面が回想で流れるもんだから、もうたまらない。  ここのワンシーンだけでも、本作は観る価値があったと思います。   欲を言えば「和也の力を借りない、達也と新田の真剣勝負」も見せてくれたら文句無しだったんだけど……  まぁ、それは本作から数年後、メジャーリーグの舞台で実現したんだと、妄想で補いたいところですね。   それと、恐らく本作のアリスは新田の妹である由加ちゃんが原型なのでしょうが「達也が好き」「そばかす属性」「一人称オレ」「ピッチャー」って共通点がある事を考えると、吉田君もモデルの一人だったのかなって、そんな事が気になりました。  他にも、あだち漫画で見た事ある顔が、色々と登場していたりするので……  その「元ネタ探し」をしてみるだけでも、それなりに楽しめちゃう一品だと思います。
[DVD(邦画)] 7点(2020-07-25 05:54:50)
124.  アメリカン・パイ in バンド合宿<OV> 《ネタバレ》 
 アメリカン・パイシリーズの四作目にして、主人公達も世代交代を果たした、仕切り直しの一作目。  8でジム達が復帰するまでの4~7に関しては、外伝色の強い内容だし、予算面でも見劣りする感じなのですが……  意外や意外、この4に関しては、前三作に決して見劣りしない出来栄えなのです。   1や2では子供だった「スティフラーの弟」ことマットが成長し、立派に主人公を務めているというのも、シリーズのファンとしては嬉しかったですね。  まるで親戚のおじさんのような目線で(大きくなったなぁ……)と感じ、微笑ましい気持ちになっちゃいました。   元々アメリカン・パイシリーズの魅力って、そういう微笑ましさというか「主人公の若者達に対する、優しい眼差し」にあると思うんですよね。  その象徴がジムの父親であり、たとえ世代交代しようと彼だけはレギュラーとして出演させ続ける事にしたのは、もう大正解だったんじゃないかと。  実の息子相手でなくても、悩み多き若者には優しく接し「ピントがズレているけど有益」という独特なアドバイスをしてくれる姿が、本当に良かったです。   その一方で、兄のスティフラーに関しては「みんな彼を嫌ってた」という発言が飛び出し、ちょっと可哀想になるんですが……  実際、彼が「良い奴」になったのは3以降の話だから、高校時代はジム達から嫌われてたってのも、間違いではないんですよね。  上述のジム父といい、学校のカウンセラーになってるシャーマンといい、過去キャラの扱いに関しては、概ね良かったんじゃないかと思います。   それと、本作は主演のダッド・ヒルゲンブリンクも、良い味を出していましたね。  主人公のマットって「如何にも頭の軽い体育会系」に思わせておいて「実は真面目な好青年であり、兄の真似をして悪ぶってるだけ」と途中で明かされるという、非常に難しい役どころなのですが、見事に演じ切っている。  これに関しては、彼個人の演技力だけじゃなく、演出というか、監督の構成も良かった気がしますね。  最初の内こそ(なんか……ショーン・ウィリアム・スコットに比べると、無理して「スティフラー」を演じている感じだなぁ)と違和感を抱かせていたのに、実はそれが伏線であり「本当に、無理して演じていただけ」と分かる形になっているんだから、もう脱帽です。  そういった仕掛けが施されている為、主人公のキャラクター性にも説得力があったし、彼が改心して「良い奴」になる展開も、自然と応援する気持ちになれたんですよね。  もしかしたら、作り手にそんな意図は無く、偶々そういう形になっただけなのかも知れませんが……  もしそうだとしたら、かなり幸運な偶然だったんじゃないかと。   バンド合宿にて同室になった眼鏡少年と、少しずつ仲良くなっていく様も微笑ましかったし、ヒロインのエリスとの関係性も良かったですね。  エリスに関しては、これまでのシリーズには無かった「幼馴染」型のヒロインであり、新鮮な魅力を放っていたと思います。   そんなエリスと一緒に寝そべって、雲を眺める場面。  少しずつバンド仲間と打ち解けていた中で、つい強がって「体育会系のスティフラー」を演じてしまう場面。  エッチな盗撮映像なんかより、仲間達と過ごした時間の方が、ずっと大切だったと気が付く場面。  どれも忘れ難い味があり、本作を良質な青春映画に仕上げていたと思います。  最後は、しっかり演奏シーンで盛り上げて、ヒロインと結ばれるキスで終わるのも、文句無し。   この後、シリーズは更なる世代交代を重ねつつ続いていく訳ですが……  (マットやエリス達の物語も、もっと見たかったな)と思えるような、そんな一品でありました。
[DVD(吹替)] 7点(2020-05-16 08:46:11)
125.  アメリカン・パイ3:ウェディング大作戦 《ネタバレ》 
 ラブコメというのは基本、主人公とヒロインが結ばれて「めでたし、めでたし」で終わるものだから、そんなラブコメのその後、二人が結ばれた後の結婚式まで描いた本作は、とても貴重だと思います。   前二作を鑑賞済みの身としては、ジムとミッシェルに思い入れたっぷりなもので、そんな二人が結婚するというだけでも、感慨深いものがありましたね。  アメリカン・パイシリーズでは「前作まで付き合っていたカップルが、別れてしまっている」というパターンも珍しくないだけに、シリーズ中で一番好きなカップルの二人が結婚してくれた事が、もう小躍りしたくなるくらいに嬉しい。  結果的に「1で二人が出会い、初体験」「2でカップル成立」「3で結婚式」という流れになった訳で、ここまで丁寧に結ばれる過程が描かれたカップルって、映画史においても稀な例となるんじゃないでしょうか。    本作においてはシリーズ恒例の「パーティー描写」が「独身さよならパーティー」となっている訳だけど、ここの件も凄く面白い。  特に、ゲストのストリッパー達がメイドと婦警のコスプレをしていた辺り(米国だろうと日本だろうと、男の好みなんて大して変わらないんだな……)って思えて、興味深いものがありましたね。  そんな二人が花嫁の両親に見つかってしまい「本物のメイドさん」「本物の婦警さん」と言って誤魔化そうとする流れも秀逸であり、コント的な魅力があって楽しかったです。   出演者達に関しては、これまで脇役だったスティフラーが主役格となっているのが嬉しい一方、オズをはじめとした面々が多数欠席しているのが寂しいんですが……  まぁ、それに関してはカメラに写っていなかっただけで、本当は彼らも結婚式に招待され、二人を祝福していたんだと思いたいですね(「結婚式に行けなかった」と8で明言されているオズも、ビデオメッセージか何かは送ったはず)   ジムの父親も、相変わらず魅力たっぷりであり「困った時は何時も父が助けてくれた」というジムの言葉を聞いて、嬉しそうにする時の表情なんか、もう最高。  (本当に息子想いの、良い父親だよなぁ……)って思えて、微笑ましくて仕方無かったです。   「チョコ」の件は流石に引いちゃったとか、ダンス対決を見せられた際は(えっ、これってそういう映画だったの?)と戸惑ったとか、欠点と呼べそうな部分も色々あるんだけど……  シリーズに共通する「登場人物に対する、作り手の優しさ」「下品なギャグだけでなく、真面目な感動もあるバランス」が、しっかり踏襲されていたので、決定的な違和感にまでは至りませんでしたね。  「真面目な感動」に関しては、ジムが仲間達に感謝を述べる場面が顕著であり「トラブルが起きても何とかなったのは、何時も皆が助けてくれたからだ」「ありがとう」という言葉には、本当にグッと来ちゃいました。  実際に、前二作にて「何とかなった」のを見守ってきたからこその感動があり、シリーズ物の強みを存分に活かした台詞だったと思います。   二度ある事は三度あるとばかりに、最後はスティフラーのママが登場して〆るのも最高。  結果的には、この後に五本も続編が作られている訳ですが、作り手としても一旦はコレで完結という事を意識した内容だったんじゃないか……って気がしましたね。  そういう意味では「三部作」の最後を飾る品として、見事な出来栄えだったんじゃないかと。   「シリーズに興味はあるけど、流石に八本も観るのは大変」って人も、とりあえず3までは観て欲しいなと思える、そんな節目の一本でありました。
[DVD(吹替)] 7点(2020-05-16 08:42:12)(良:1票)
126.  アメリカン・パイ 《ネタバレ》 
 冒頭、主人公のジムが自慰してる場面から始まる訳ですが、そこで脱落しちゃう人には時間を取らせなくて済むし、そこで耐えられた人には概ね楽しい時間を提供してくれるしで、とっても親切な映画ですね。  最初にインパクトのある映像を用意して、観客を惹き付けると同時に「篩に掛ける」効果もあったという訳で、上手いやり方だと思います。   仲良し四人組が「プロムまでの三週間で、童貞卒業する事」を誓うところから物語が動き出し、そこから群像劇というか、オムニバス的な魅力を持った内容となるのも良い。  コーラス部に入ったり、噂を利用したり、学校に代々伝わる「性書」に頼ったりと、それぞれのやり方で頑張る様が、観ていて楽しいんですよね。  結果的に、四人中三人が童貞卒業出来たので達成感があるし、唯一童貞のままなオズも「初体験の思い出なんかより、ずっと大切なものを手に入れた」という形で、一番幸せそうに描かれているくらいなので、観ているこっちまで嬉しくなっちゃう。  似たような青春映画としては「グローイング・アップ」(1978年)という先例がありましたが、あちらが堕胎などの重いテーマも匂わせていたのに比べると、本作は徹底的に明るく「健全なエロティック青春ドラマ」って感じに仕上げており、それが独自の魅力に繋がったんじゃないかな、と思います。   性に大らかなジムの父親に、愛嬌たっぷりなスティフラーと、脇役が魅力的な点も素晴らしい。  この手の青春映画だと、父親はとことん地味なまま終わるし、スティフラーのような「ヤリまくりの体育会系」は単なる憎まれ役で終わるってのが、お約束になっていますからね。  それだけに、本作には特別感があるし、印象にも残り易い。  後の外伝でも「ジムの父親」「スティフラーの血縁者」が名物キャラとなっているくらいだし、本作が人気シリーズになれたのは、この二人の力が大きかった気がします。   スティフラーの母親や、幼い弟もキュートな存在であり、特に前者が主人公の一人であるフィンチと結ばれる場面なんかは、凄く好きですね。  「友人の母親と結ばれる」っていうのは、男の浪漫ですし、たとえコメディタッチでも興奮を誘うものがある。  そこで流れる曲が「ミセス・ロビンソン」っていうのも、ベタだけど嬉しくなっちゃう選曲でした。   その一方で、後にジムと結ばれるミッシェルは出番が少なく、単なるヤリマン女みたいな描かれ方だったのは……ちょっと、残念かも。  本作を観た限りでは、彼女が将来的にジムと結婚する事になるだなんて、全然予測出来ない感じなんですよね。  自分は「アメリカン・パイ」シリーズは概ね好きなんだけど、初代が一番の傑作とは思えない理由としては、この「ミッシェルの扱いが中途半端」って点が挙げられそうなくらいです。  あとは「女性の裸をオカズに、女性が自慰する場面」があるんだけど、それがさも当然のように描かれてるのが気になったとか、盗撮されたナディアへのフォローが弱いとか……欠点と呼べそうなのは、それくらいかな?   皆で祝杯を挙げるラストシーンにて「人生で一番楽しいのは、今だよ」と語る台詞があるのも、今となっては興味深いですね。  実際には、映画はココで終わらず、その後の主人公達の「夏休み」「結婚式」「同騒会」も続編で描かれている訳ですし。  少なくとも、シリーズ全作を鑑賞済みの自分としては、彼らにとって「一番楽しい時間」とは「高校時代」ではなく、後に描かれた日々の方じゃないかと思えたので、興味がおありの方は、是非続編とセットで楽しまれて欲しいです。 
[DVD(吹替)] 7点(2020-05-16 08:28:53)
127.  ハングオーバー! 消えた花ムコと史上最悪の二日酔い 《ネタバレ》 
 既に三部作を鑑賞済みで再見した為 (1は意外と出だしがシリアスで、サスペンス物にも思えるような作りだ) (この頃はダグも主人公の一人だし、チャウは端役でしかなかったんだな……)  といった具合に、色んな発見があって面白かったですね。  本作の場合「新郎のダグは、何処にいるのか?」という謎がキーとなっているので、その答えを知っている状態で観たら楽しめないかもという不安もあったんですが、それを見事に吹き飛ばしてもらえました。   あと、1の時点だとアランの駄目人間っぷりも控えめで、観ていて不愉快に思える場面が無かった事も、非常にありがたい。  三部作の中では本作が最も優れていると思うんですが、その理由としては「長所が多い」という以上に、後の二作よりも「短所が少ない」という事が挙げられそうなくらいです。   特に感心したのが「昨夜の出来事を何も憶えていない」という設定にも「酒の飲み過ぎ」だけで済まさず「ドラッグの効果」という理由まで付け足し、リアリティを補強している事。  そして「ドアは開けておけよ」という、序盤の何気無い一言が伏線になっている事ですね。  後者は短いながらも印象的な場面ですし、真相が判明した際(そうだ、屋上のドアは中からじゃないと開けられないんだ)と観客に思い出させる効果があるしで、とても良かったです。  こういう部分がしっかりしていないと「設定に無理がある」「伏線が弱い」っていう欠点に繋がってしまう訳で、本作はそういう欠点を生まないように、丁寧に作られているのが窺えました。   足を引っ張ってばかりのアランが、実はカードカウンティングが可能な天才だったと判明する流れも、非常に気持ち良い。  三部作の中では、本作が最もアランの主人公っぷりが薄いんですが、活躍度では随一だったと思いますね。  義兄となったダグを「お兄ちゃん」と呼んでハグする場面も、幼い男の子なら感動的になりそうなんだけど、実際は髭っ面の良い歳した男性なのでシュールな絵面にしかならない可笑しさがあったし、自分としては本作のアランが一番好きです。   「虎」「赤ん坊」「パトカー」といった謎掛けアイテムの数々も魅力的だし、車を飛ばして結婚式場に向かう場面はカーチェイス的な魅力もあったしで「掴み」と「盛り上げ方」が上手かった点も、お見事。  「屋上での乾杯から記憶を失う」「実は、ダグの居所も屋上」っていう構成になっているのも、凄く良いですね。  盲点を突かれたというか「答えの場所を予め示しておいた」というフェア精神のようなものが感じられて、観ていて心地良かったです。   そんな中、数少ない欠点を挙げるとしたら……  フィルが生徒達から金を騙し取り、ベガスで遊ぶ為の資金にしている冒頭部分が、不要に思える事(カードカウンティングの際の資金にしたのがコレと示すとか、予想以上に儲けたので生徒達に豪華な見学旅行をプレゼントする後日談を付け足すとか、もっと上手い活かし方があったはず)  次作以降で明かされる「アランは歌が上手い」「スチュはジェイドと結ばれない」などの情報とは、矛盾した描写が目に付く事とか、そのくらいかな?  勿論「無茶をやり過ぎ、車の修理費だけで凄い額になる」とか「鶏は虎の餌にする為に連れてきたの?」とか、細かいツッコミ所や疑問点はあるけど、観ている間は気にならなかったです。  「その後のシリーズと比べると矛盾がある」って点に関しても、コレ単体で評価する限りでは欠点とは言い難いですし、本当に良く出来ていると思いますね。   「実際には、どんなパーティーだったのか」を明かしてくれるエンドロールに至るまで、楽しい時間を過ごせました。
[DVD(吹替)] 7点(2020-04-16 17:25:04)(良:2票)
128.  極道めし 《ネタバレ》 
 刑務所+グルメ物という事で、どうしても「刑務所の中」(2002年)と比較してしまうのですが……  「刑務所の中」のような乾いたシニカルさとは真逆の、湿っぽい人情路線が、独自の魅力に繋がっていましたね。  ・出所後に意中の女性を訪ねるも、彼女が別の男と結ばれているのを見て、そのまま立ち去る。 ・作り話だと強がった後に、実は本当の話であった事を窺わせる。   といった原作の名場面の数々を、少しずつ作中に取り入れ、別の話として再構成しているのも上手い。  「マカロニをストロー代わりにして牛乳を飲む」「看守がビールを飲む話をして、満点を叩き出す」等の小ネタも再現されているんですが、それらが原作と同じ流れで出てくる訳じゃないので(ほほう、ここでコレを出してきたか……)といった感じに、観ていてニヤリとさせられるんですよね。  たとえ原作をそのまま映像化した訳じゃなくても、原作のファンが満足するような品に仕上げる事は出来るんだなって思えて、嬉しくなっちゃいました。   「上を向いて歩こう」「待つわ」「さよなら」などの曲の使い方も巧みだったし、それより何よりも「ちゃんと美味しそうに食べる役者さんを選んでる」って点が、素晴らしいですよね。  メインとなる五人組の内(この人の食べっぷりは微妙だな)と感じるような人は一人もいなかったし、この原作を映像化する上で最も大切な点を、きちんとクリアしていたと思います。   主人公とヒロインの幸せな日々の中で「いただきます」をちゃんとしなきゃダメと要求するヒロインの姿が印象的であり、別れのラーメンを振舞った際にも「いただきます」してくれなかった主人公を、寂し気に見つめていた演出なんかも、良かったですね。  モノローグこそありませんでしたが(この人には、私の言葉は届かないんだ……)と、しみじみ感じていたように見えましたし、その後に二人が破局する結末に、自然と繋がっていたと思います。  出所後に再びラーメンを食し、泣き声の代わりのように麺を啜り、涙を飲み干すようにスープを飲み干す主人公の姿も、非常に味わい深い。   不満点としては……主人公と母親との別れの件が、ちょっと不自然だった事。  最後に子供が風船を渡すのは、わざとらしく思えた事。  作中で満点を取った「すき焼き」は確かに美味しそうだったけど、お肉が今時のスーパーで買った代物にしか見えなくて、今一つノリきれなかった事とか、そのくらいかな?   自分としては「すき焼き」よりも「パイナップルの缶詰」そして「黄金飯」の方が美味しそうに思えちゃったくらいですね。  もし、作中に出てきた料理で一番を決めるなら「黄金飯」に一票入れさせてもらいたいです。
[DVD(邦画)] 7点(2020-04-09 14:55:09)(良:1票)
129.  ゾンビランド:ダブルタップ 《ネタバレ》 
 大好きな「ゾンビランド」の主人公四人組が、十年後も家族であり続けたという、それだけでも嬉しくなっちゃう映画。   家族ともなれば当然、意見が合わなくて喧嘩別れしちゃう事もあるんだけど、最後は元の鞘に収まり仲直りっていうのも気持ち良かったですね。  誰か一人くらいは死んじゃう可能性もあるかもって警戒していただけに、そんな懸念を吹き飛ばして全員生存エンドを迎えてくれたのも嬉しかったです。   監督も主要メンバーも同じ顔触れが揃っており、前作が好きな人なら安心して楽しめる内容となっているんですが……  「終盤の展開が雑」っていう欠点まで前作と同じだったりして、ちょっと困っちゃいましたね。  「ゾンビも進化して、更に厄介な敵となった」という伏線があったのに、それに殆ど意味が無かったという肩透かし感も寂しい。  「高さ」を利用してゾンビ達を一斉に退治するクライマックスも、中々痛快ではあったんだけど、上述の設定があるせいで (これなら敵は普通のゾンビのままで良かったな……)  って考えがチラついてノリ切れなかったし、典型的な設定倒れに思えちゃいました。  「二度撃ち」でも倒せない新型ゾンビって印象は強烈だっただけに、もっと上手く活用して欲しかったですね。   勿論、長所も色々あるというか、どちらかといえばそちらの方が多かったくらいだと思います。  ホワイトハウスを「我が家」にして四人で生活する様も楽し気で良かったし、人気漫画「ウォーキング・デッド」を読んで「全然リアルじゃない」と感想を漏らすのも、実際にゾンビ世界に住んでいる主人公達ならではって感じがして、面白かったですね。  すっかり豊満な女性に成長したリトルロックが、反抗期を迎えてしまい、それに他の三人が振り回される展開になるのも、ファミリー映画らしい魅力があって良かったです。  新キャラのマディソンを殺す場面をハッキリ描かなかったから (実は彼女は生きていて、ゾンビ化した彼女と再会する事になるんだろうな)  とばかり思っていたのに (……生きてるだけじゃなくて、ゾンビ化すらしてなかったよ!)  ってツッコまされた辺りも、程好いサプライズ感があって好き。   他にも、リトルロックの彼氏を「胡散臭い」と観客に感じさせる流れも自然で (なんだ、この彼氏って良い奴かと思ってたのに、実は嫌な奴だったのか)  と失望させたりしないバランスに仕上げてあるんですよね。  かなり早い段階で、有名なボブ・ディランの曲を「自分の曲」と言ってリトルロックに聴かせる場面が挟まれており「こいつは信用出来ない」と印象付ける事に成功している。  こういった形の、さり気無い人物描写が上手い監督さんなのだなと、改めて感心させられました。  モンスタートラックや「誕生日プレゼントの銃」の使い方も巧みだし、人間をゾンビと勘違いして殺す事を「マーレイしちゃう」なんて表現するセンスにも、クスっとさせられましたね。   終わり方に関しては、前作と同じ「家族エンド」であり、予定調和な心地良さがある一方で、ちょっと物足りないとも感じていたのですが……  エンドロールの後、ビル・マーレイの大暴れを描いてくれた事には、もう大満足!  もし「ガーフィールド3」ならぬ「ゾンビランド3」があったら、再びエンドロール後には「ビル・マーレイが生きていた頃の話」を流して欲しいな、と思えたくらいでしたね。  完全なコメディパートかと思わせ、観客を油断させておき、意表を突いて格好良いゾンビ退治に突入する流れが、本当に面白かったです。   「ゾンビ世界を生き抜く為のルール」ならぬ「ゾンビランドを楽しむ為のルール」を作るとしたら、そこには是非「エンドロール中に席を立ったり、停止ボタンを押したりしてはいけない」って一文を付け加えたいな……と、そんな風に思えました。
[DVD(吹替)] 7点(2020-03-04 23:41:12)(良:1票)
130.  10日間で男を上手にフル方法 《ネタバレ》 
 ドナルド・ペトリ監督作のラブコメって「女性が観ても、男性が観ても楽しめる内容」な事が多い気がしますが、これもまたそんな一本。   男の自分としては「住んでる部屋が煉瓦の壁でオシャレ」「職場にビリヤード台があるなんて羨ましい」と思えて、主人公のベンの描写は観ていて気持ち良かったですし、恐らく女性が観ても、ヒロインであるアンディの「仕事が出来る、自立した女性」って描き方には好感が持てるんじゃないかな、って気がしました。  それと、ベンには「料理が得意」アンディには「スポーツ観戦が趣味」って属性が付与されており「女性にとっても魅力的な男性像」「男性にとっても魅力的な女性像」が、自然に描かれている辺りも上手い。  これらの属性を「せっかく料理を作ったのに、菜食主義者の振りしたアンディに突っぱねられてしまう」などのコメディタッチな場面で、自然に描いているもんだから、全く嫌味に感じられないんですよね。  これって、一歩間違えれば「ラブコメらしい、男に都合の良いヒロイン像だ」「女に都合の良い主人公像だ」なんて印象に繋がってしまいますし、それを感じさせずに仕上げてみせた手腕は、本当に見事だと思います。   主人公のベンが「バイク乗り」という伏線が、序盤から張り巡らされている事。  相手の嘘を見破るゲーム「馬鹿こけ」が効果的に活用されている事など、脚本も丁寧で良かったですね。  ラブコメではお約束の、ハッピーエンド前の喧嘩についても「互いの文句を、替え歌で熱唱する」って形にしており、重苦しい印象を与えず、笑って観られるような感じに仕上げてある。  その一方で「やっと目論見通りに別れられるとなった際に、寂しそうな顔になるヒロイン」の場面ではグッと来るものがあったし、そういった「決めるべきところは決める」作りなのも心地良かったです。  クライマックスにて、アンディを追っかけバイクで街を疾走する場面も良かったし、予定調和なハッピーエンドに着地してくれるしで、終わり方も文句無し。   よくよく考えてみたら「こんな相手の心を弄ぶような賭けするのって、どうなの?」という疑問も湧いてきたりするんですが、観ている間はスピーディーで楽しい作りゆえに、全く気にならなかったんですよね。  中には上司の悪口を言ったりする場面もあるんだけど、そこも陰湿な印象は受けなかったし、やはり監督の魅せ方、役者の演じ方が上手かった、って事なんだと思います。   それでもあえて不満点を述べるなら……ヒロインのアンディが職場でハンバーガーに齧り付いてる時に見せる「髪を後ろに結んだ姿」が非常にキュートだったので、出来ればアレをメインの髪型にして撮ってもらいたかったとか、そのくらいかな?   ラブコメ好きには安心してオススメ出来る、良質な一品でした。
[DVD(吹替)] 7点(2020-02-20 14:20:10)(良:2票)
131.  シモーヌ 《ネタバレ》 
 こんな映画、シモーヌを演じる女優さん次第では観ていられない代物になりそうなのに、ちゃんと「世界中が熱狂するほどの美女」としての説得力があって、立派に作品として成立しているんだから凄いですよね。   シモーヌ役のレイチェル・ロバーツは、現在アンドリュー・ニコル監督の妻となっているそうで、結果的に親馬鹿ならぬ「旦那馬鹿」的な映画となっているのも、何だか面白い。  撮影当時から恋仲だったかどうかは分かりませんが、そんな関係性の二人だからこそ、監督側は「シモーヌ」を魅力的に描き、女優側は艶やかに「シモーヌ」を演じる事が出来たんじゃないかな、と思いました。    勿論、主演のアル・パチーノも良い味を出しており、実在しない女優に振り回される映画監督の役を、見事に演じ切っていましたね。  特に終盤、シモーヌ殺害容疑で警察の尋問を受ける件なんて、演技一つで作品のカラーをがらりと変えてしまったかのような迫力があり、流石だなと感心。  個人的には、ここの主人公が追い詰められる件は無理矢理過ぎるというか(ハッピーエンドの前振りとはいえ、悲壮感を出し過ぎたんじゃない?)と、少々気持ちが冷めてしまったりもしたんですが……  それでも決定的な違和感を抱くに至らなかったのは、やはりアル・パチーノの演技力あってこそ、なのだと思います。   あとは、ラストの「政治家を目指す」オチが微妙に思えた事。  シモーヌに黒子(?)を付け足す場面が伏線かと思ったら、そうでもなかった事。  日本の新聞記事だと「シモン」になってたのが気になる事とか、難点はそのくらいでしょうか。   ニコル監督の作品らしく、ビジュアルセンスも光っていたし、脚本についても御洒落な笑いが散りばめられていて、面白かったですね。  シモーヌを消去する場面での「主人公が泣いているからこそ、シモーヌも泣いている」場面にはグッと来るものがあったし「たった一人より、十万人を騙す方が簡単だ」という台詞や、シモーヌが唄う曲の歌詞なんかも、皮肉が効いていて素敵。   また、このストーリーの場合「シモーヌの元々の開発者はハンクなのに、主人公は手柄を一人占めにした」という印象を抱いてしまいそうなのですが、ちゃんと随所に「ハンクに感謝する場面」が挟まれており、反発を抱かずに済むよう配慮されているのも嬉しかったです。  こういう「主人公を嫌な奴にしない」バランス感覚って、映画作りではとても大切だと思いますからね。   自らが生み出した存在に、段々と恐怖を抱いていく「フランケンシュタイン・コンプレックス」も丁寧に描かれていて説得力があったし、皆がシモーヌに夢中になる中「シモーヌよりもパパの方が好き」というスタンスだった娘が、最後の最後で主人公を救ってくれる展開なんかも、実に気持ち良い。   (ラストシーンの後は、シモーヌの可愛い「坊や」が成長し、子役や男優になって世界を虜にするのかな?)  (父親がシモーヌを演じたように、娘が彼を演じてみせるのかな?)  なんて妄想まで出来ちゃう、楽しい映画でありました。
[DVD(吹替)] 7点(2019-12-10 02:36:38)(良:1票)
132.  忠臣蔵(1958) 《ネタバレ》 
 自分は「忠臣蔵」(1990年)の項にて「一番面白い忠臣蔵だと思うけど、捻った作りなので初心者には薦め難い」と書きましたが「じゃあ、初心者に薦め易い忠臣蔵は何?」と問われた場合、本作の名前を挙げる事になりそうですね。   とにかく分かり易いというか「忠臣蔵の映画をやるなら、これは外して欲しくない」という部分が、きっちり盛り込まれている辺りが見事。  自分が特に好きな三つのエピソード「畳替え」「大石東下り」「徳利の別れ」を全部やってくれてる映画って、意外と珍しいですからね。  特に「畳替え」の件はダイナミックに描かれており、序盤の山場と言えそうなくらい力が入ってるのが嬉しい。  「朝までに仕上げねばならん、頼んだぞ!」と職人達を激励する浅野家臣の姿も、実に良かったです。  それによって、浅野家に「庶民と力を合わせて頑張る武士集団」というイメージが生まれますし、彼等を善玉として描く上で、非常に効果的な場面だったと思います。   対する吉良方が「庶民の敵」である事を、徹底的に描いている点も良いですね。  どうしても「斬り付けた浅野が悪い。吉良は被害者」ってイメージが拭えないのが忠臣蔵の弱点なんですが……  本作は、その点でもかなり頑張っていたんじゃないかと。  とにかく吉良方が庶民を虐めてる場面が繰り返し挿入されるもんだから、観客としても自然と浅野方を応援しちゃうんですよね。  討ち入りの際にも「女子供は逃げろ」と言ったりして、徹底して「正義の赤穂浪士」として描いている。  「浅野殿、田舎侍を御家来に持たれては色々と気苦労が多う御座ろうな」と吉良が嫌味を言ったりして、内匠頭が怒った理由に「自分だけでなく、家臣も馬鹿にされたのが許せなかった」という面を付け加えている辺りも上手かったです。   また「斬られたのは吉良の方なのに、吉良に仇討ちするのは筋違い」という事が劇中で何度か言及されている点も、バランスが良かったと思います。  観客に(そういえば、その通りだ……本当に、浅野側が正しいのか?)と考えさせる余地を与えており「視点を変えれば、赤穂浪士は正義にも悪にも成り得る」という事を教えてくれるんですよね。  そういう意味でも、初心者にも安心というか「はじめての忠臣蔵」に丁度良い品であるように思われます。   そんな本作の欠点としては……  「忠臣蔵お馴染みのエピソード」を描いた場面は凄く良いんだけど「この映画でしか拝めない、オリジナルのエピソード」はイマイチだったという点が挙げられそう。  京マチ子演じる「女間者 おるい」の存在が特に顕著であり、どう考えても浮いてるというか「大スターの為に無理やり女性のメインキャラを追加しました」って印象が拭えなかったんですよね。  一応、女間者が絡んでくる忠臣蔵としては「大忠臣蔵」(1971年)などの例もありますが、連ドラではなく映画でコレだけ尺を取られてやられると、ちょっと辛い。  しかも彼女ときたら「恐ろしいほど美しい姿でした」なんて感じに、主人公を賛美する台詞を延々吐く役どころなもんだから、贔屓の引き倒しに思えちゃって、観ていて居心地が悪かったです。   元々本作における大石内蔵助って、登場時から「有能な家臣」であり、敵からも散々「大した奴」と褒められる役どころで、自分としてはどうも胡散臭いというか……  正直、あんまり魅力を感じない主人公なんですよね。  頭脳も人格も最高の超人であり、夜道で襲ってきた刺客を撃退したり、斬り掛かろうとした相手の体勢を扇子で崩したりして、剣士としても一流の腕前ってのは、流石に盛り過ぎだった気がします。  かつては細身の女形だったとは思えないほどに丸々と太り、貫禄たっぷりな長谷川一夫の演技力ゆえに、嫌悪感を抱いたりはしなかったし「恋の絵図面取り」に対して「引き出物」を渡す場面や「残りは四十七名か」と呟く場面なんかは、とても良かったんですけどね。  個人的好みとしては、もうちょっと隙が多い内蔵助像の方が嬉しかったかも。   後は、大映制作らしい怪獣映画のような音楽。  切腹までは描かれていない為(もしかしたら、この映画の中では赤穂浪士達は助かったのかも?)と思えて、ハッピーエンド色が強い結末だった辺りも、忘れちゃならない魅力ですね。   自分としては「初心者にオススメ」「色んな忠臣蔵を観賞した上で観返すと、ちょっと物足りない」という、良くも悪くも優等生的な作品という印象なのですが……  「色んな忠臣蔵を観たけど、やっぱり王道なコレが一番!」という人の気持ちも分かるような、そんな一品でした。
[DVD(邦画)] 7点(2019-10-18 13:02:48)(良:1票)
133.  タッカーとデイル 史上最悪にツイてないヤツら 《ネタバレ》 
 イーライ・クレイグ監督のデビュー作にして、現在僅か二本しかない監督作の内の一本。   本当、こう書いていて自分でも「何故?」と戸惑っちゃうくらいですね。  これだけ面白い映画でデビューを飾った監督さんが、七年後に発表した「リトルデビル」(2017年)を除いては殆ど仕事していないだなんて、全くもって不思議。  名優サリー・フィールドの息子さんだし、経済的にも余裕があって、無理して働く必要は無いって事なのかも知れませんが……  自分としては「もっと色んな映画を撮って欲しいなぁ」って、切実に思っちゃいます。   で、この度、感想を書くに当たって久々に観賞したのですが、初見の衝撃を抜きにしても、やっぱり面白かったですね。  スラッシャー映画をパロった内容なんだけど、既存のスラッシャー映画を馬鹿にして笑いを取るような真似はせず、むしろ愛情を感じる作りになっているのが、実に嬉しい。  例えば、タッカーがチェーンソーを振り回す場面は「悪魔のいけにえ」(1974年)が元ネタだろうなと思えるし、唯一生き残った女性を殺人鬼が妊娠させるというのは「罰ゲーム」(2006年)が元ネタだったりするのかなぁと思えるしで、古今東西、メジャーからマイナーまで幅広く色んな品を研究して作ったのが窺えるんですよね。  作り側と観客側とで「オタク心の共有」「仲間意識」のようなものを感じられて、観ていて楽しかったです。   残酷な場面も多いはずなのに「よそ見して走ってたせいで串刺しになる男」にも「ウッドチッパーに自分から飛び込む男」にも、思わず笑っちゃうようなユーモアを感じられて、不愉快にはならないというバランスに作ってある点も凄い。  本作は「色んなスラッシャー映画を観ている人」ほど楽しめるように作られている訳ですが「殆どスラッシャー映画を観た事が無い人」が観ても、意外と楽しめるんじゃないかなぁ……って思えるくらい、その辺りの配慮が上手かったです。   本来なら主人公になってもおかしくない「キャンプにやってきた学生達のリーダー格」であるチャドが、殺人鬼に変貌するという捻った脚本なのに、裏切られた感じがしない点も良いですね。  序盤から「田舎者を見下す」「ヒロインに無理やり言い寄る」などの場面を描いておき、チャドが「嫌な奴」である事を匂わせておいたからこそ、急展開になっても納得出来た訳で、本当に丁寧な作り。   冒頭の「殺人鬼が暴れる後日談」にて、火傷したチャドの顔を見せておき、別荘が焼け落ちてチャドが火傷した場面にて(あぁ、あの殺人鬼はコイツだったのか……)と観客に覚らせる構成なのも、上手かったと思います。  彼の父親も武器を投げて獲物を仕留めるスタイルだった為、作中にてやたらと「チャドが武器を投げる場面」が挟まれていた事も、正体判明シーンへの、良い繋ぎになっていたんじゃないかと。   そんな殺人鬼側の描写だけでなく、主人公となる二人組「タッカーとデイル」の描き方も、凄く良かったですね。  巨大な鎌を持ったままで女の子に話し掛け、怯えさせちゃう場面とか「見た目は怖いけど、中身は純朴」と、観客に納得させる力がある。  「駄目男なデイルを、タッカーが色々フォローしてあげている」という二人の関係性を描いておいた上で、タッカーがデイルに「お前は本当は凄い奴なんだ」と諭し、奮起させる展開に繋げるのも上手かったです。  ボーリング場にて、デイルの知人であるB.J.も美女とトラブルを起こしてしまい(デイルみたいに、これがキッカケで彼女と結ばれるのでは?)と予感させて終わる辺りも、良い〆方でしたね。  ・「聞いたことは全部覚えちまう」というデイルの特技が「お茶の成分で急性アレルギーを引き起こさせる」くらいの使われ方しかしなかったのは残念。 ・チャドというキャラクターが「蛙の子は蛙」「殺人鬼の子は殺人鬼」というメッセージ性を秘めているように思える辺りは、観ていて居心地悪い。   といった感じに、気になる点もあるにはありましたが……まぁ、この辺りを突っつくのは「不満」「文句」というより「贅沢な要求」って感じですね。   そんな本作が「殺人鬼の子は殺人鬼」という形で終わってしまった事は、監督の次回作「リトルデビル」にて「たとえ父親が誰であれ、人はなりたい自分になれる」というテーマを扱っている事と、無関係ではないのかも知れません。  興味がおありの方は、是非「リトルデビル」も観賞して、その辺りについても確かめて欲しいものです。
[DVD(字幕)] 7点(2019-10-01 18:50:50)(良:2票)
134.  エスター 《ネタバレ》 
 「オーメン」という有名過ぎる先例がある事が、良い目晦ましになっていましたね。  それによって、悪役であるエスターの勝利エンドとなる可能性もあるのでは? と思えたし、最後まで結末を読めないまま楽しむ事が出来ました。  この映画が2009年製であり、三年前にあたる2006年には「オーメン」のリメイクが公開されていた事を考慮すると、作り手側も意図的に「オーメン」とは異なる「悪が退治されて、めでたしめでたし」エンドを選んだんじゃないかな……って気がしますね。  DVD特典の未公開エンドでも、エスターが逮捕される事を示唆する終わり方でしたから。   そんな具合に、基本的には「面白かった」「充分に楽しめた」という一本なのですが、ちょっと気になる点もチラホラ。  まず「襲われるかと思ったら、実は大丈夫だった」という肩透かし演出を何度も繰り返す点に関しては、正直キツかったです。  作り手の意図としては「本当に襲われちゃう場面」の衝撃を強める為、あえてブラフを重ねておいたのかも知れませんが、流石にこれだけの頻度でやられると(もういいよ……)とゲンナリしちゃいましたからね。  この辺りの「ハッタリの積み重ね」を、もっと少なめにしてもらえたら、より自分好みな映画になっていた気がします。   エスターのジョンに対する愛情が、本物だったのかどうか曖昧なのも、クライマックスにおける集中力を削ぐ効果があって、勿体無かったです。  「エスターなりに本気でジョンを愛していた」でも「単なる性欲に過ぎなかった」でも、どっちでも構わないから、ハッキリした描き方をして欲しかったんですよね。  仮に前者の場合なら、エスターが彼に惹かれるキッカケを丁寧に描くべきだったと思うし、後者の場合なら、彼に拒まれた際にあんなに泣く事は無いだろうと思えるしで、どうも中途半端でした。    翻って、良かった点はといえば……やはり、エスター演じるイザベル・ファーマンの熱演が挙げられそう。  劇中における「三十三歳の素顔」は特殊メイクなのでしょうが、本当にそちらが素顔なんじゃないかって思えるくらい、劇中のキャラクターと一体化していましたからね。  ジュースを欲しがって、それを拒否されたら寂しそうに俯き大人を騙す場面や「殴る?」と挑発する場面など、幼い子供という立場を活用する「狡い大人」としての姿に、真に迫った説得力があったんだから、お見事です。   そんなエスターの正体が明かされていく流れを、丁寧に描いている点も素晴らしい。  最初の出会いや、養子としてコールマン家に貰われていく序盤の段階では「天使のような良い子」という印象を与えた上で、少しずつ「この娘、どこかが変だ」と思わせていく構成になっているんですよね。  特に感心させられたのが「パパに構って欲しがるダニエルと、そんな彼に見せ付けるようにパパに抱き付き甘えるエスター」という場面。  ここって、普通に考えれば「子供っぽい独占欲の発露」でしかないはずなのに、観ていて微かな違和感を覚えちゃうっていう、そのバランスが絶妙なんです。  ブレンダを突き落とす場面や、尼さんを殺害する場面で一気に衝撃を与える形ではなく、事前にそういった伏線を張っておき、猜疑心や恐怖心を徐々に高めていく形にしたのは、本当に上手かったと思います。   ケイトがアルコール依存症、マックスが聴覚障碍者であるという設定に、きちんと意味のある脚本だった点も良いですね。  特に前者は「ケイトが酒の誘惑に打ち勝った事を観客は知っているのに、酒を飲んだんだろうとジョンに責められてしまう」という展開への繋げ方が上手くて、本当にやるせない気持ちになるし、その分だけケイトを応援したい気持ちにもなる。  また、それによって「妻のケイトはエスターを疑っているのに、夫のジョンはエスターの言う事を信じている」という状況設定にも、説得力を与えていたと思います。   エスターが細かく肉を切り分けて食べる事すら伏線だった(歯がボロボロだから細かく切る必要がある)のには感心しちゃったし「薔薇のプレゼント」「万力で自らの腕を折る」場面なんかも、ショッキングで良かったですね。  白い雪原に、黒いコート姿のエスターが立っているコントラストの美しさには見惚れちゃったし「光を当てる事によって、絵の中に隠された別の一面が見えてくる」場面の衝撃も、忘れ難い。   自分は冒頭にて「オーメン」を「有名過ぎる先例」と評しましたが、この「エスター」もまた、今後「悪の子供」をテーマにした映画が製作される度に引き合いに出されるような……  そんな、スタンダードな品になっていく気がします。
[DVD(吹替)] 7点(2019-09-27 12:03:22)(良:2票)
135.  ネイバーズ(2014) 《ネタバレ》 
 バットマンといえば「クリスチャン・ベール」世代なテディと「マイケル・キートン」世代なマックとが仲良くなって、喧嘩して、仲直りするという、とても楽しい映画です。   一応、本作の主人公がどちらかといえば、太り気味のオジサンなマックとなるはずなのですが……自分としては、マッチョな若者のテディの方に感情移入しちゃいましたね。  大学では皆のリーダーでも、社会に出たら学力不足の落ちこぼれに過ぎない。  成績優秀な親友だけが立派な会社に就職して、自分は取り残されてしまう。  そんな若者特有の切なさを、ザック・エフロンが鮮やかに演じ切っており、敵役であるにも関わらず共感を抱かせてくれたんだから、お見事でした。  「赤ん坊が生まれた結果、若い頃のようにパーティーに参加出来なくなったマック達は、テディの事が羨ましかった」 「テディはマック達のような大人になりたくなかったから、現実逃避の意味を込めて嫌がらせしていた」  等々、作中に出てきた「心理学を専攻している学生」よろしく「両者の対立の原因」について推理するのも楽しいのですが……  そういった難しいアレコレを考えなくても、シンプルに面白い映画だったと思いますね。   とにかく分かり易く、丁寧に作られており、序盤で(この二階に置いてある花火が伏線なんだろうな……)と思ったら、本当にそうだったりするのが気持ち良い。  視覚的にも派手な「エアバックの悪戯」には笑っちゃったし、デニーロの物真似をはじめとして「元ネタを知らずとも面白いし、知っていたらニヤリと出来ちゃう」小ネタが散りばめられているのも、楽しかったです。   それと、これが一番大事だと思うんですが、本作は序盤にてテディとマックが意気投合する描写に、ちゃんと説得力があったんですよね。  大人になりきれない二人が、世代の壁を越えて「男友達」になる一夜を、丁寧に描いている。  だからこそ、観客としても(この二人は本来、物凄く気の合う奴らなんだ)と理解出来る訳だし、ラストにて二人が「仲間のハグ」を行うハッピーエンドも、笑顔で祝福する事が出来たんだと思います。   テディが仲間を庇って逮捕される場面では、ちょっとした感動を味わえたりもして、程好いサプライズ感があったのも嬉しかったですね。  楽しい映画だし、それ以上に、好きなタイプの映画でした。
[DVD(吹替)] 7点(2019-09-18 07:37:21)(良:2票)
136.  ロマンティックじゃない? 《ネタバレ》 
 作中にて幾つかのラブコメ映画の名前が挙げられている訳ですが、その殆どを観賞済みな身としては、とても面白かったです。   主演のレベル・ウィルソンは太っているけど、美人でチャーミングな存在だし「ラブコメとしての見栄え」という点を考えても、充分に満足出来るキャスティング。  それに対し、彼氏役のアダム・ディヴァインも「美男子ではないけど、愛嬌があって優しい男」を好演しており、凄くバランスが良かったと思います。  「単純な美男美女ではないけど、魅力的な主人公カップルの映画」という形であり、作中で「美男美女が織りなす、王道なラブコメ映画」をパロっている事と併せて考えても、非常に相性の良い組み合わせだったんじゃないかと。   仕事中にラブコメ映画ばかり観てる同僚のホイットニーに、アパートの隣人なゲイ男性など、脇役がキュートなキャラクター揃いだった点も嬉しい。  この「キュートな脇役」達の中に、後に本命彼氏となるジョシュが自然と紛れ込んでいる形なので、お約束のはずの「親友と結ばれるエンド」に関しても、適度な意外性を味わえたんですよね。  「親友のジョシュを愛するべき」→「いいえ、やっぱり本当に愛すべきなのは他人ではなく自分」という、自己啓発的なエンドかと思わせておいて「でも、やっぱりジョシュが好き!」という三段仕掛けオチになっていたのも、上手い構成だったと思います。   ただ、終わり方に関しては「脱け出したと思ったラブコメ映画の世界から、実は抜け出せていない」というオチにも思えてしまい……そこが、ちょっと気になりましたね。  「汚い言葉を使おうとするとピー音が入る」という伏線があった為、ヒロインが汚い言葉を使えるようになったのは、現実世界に戻った証だとも思えるのですが、最後の歌って踊る展開は完全に「ラブコメ映画の世界」そのままなんです。  推測するに、ヒロインが迷い込んだ世界は「PG13指定の、健全なラブコメ映画」で、元いた世界は「大人向けの、普通のラブコメ映画の世界」だったと、そういう事なのでしょうか?  自分としては「結局ラブコメの世界から抜け出せていない」というバッドエンドではなく「実は元々ラブコメ映画の世界にいて、それに気付いていないだけだった」という、ハッピーエンドなのだと思いたいところです。   それと、本作は「王道なラブコメ映画」をパロってるというか、茶化して馬鹿にしているようなテイストもあるんだけど、そんな「王道なラブコメ映画」らしい場面を、ちゃんとロマンティックに、魅力的に撮っているというのがポイント高いんですよね。  ゲイの隣人にスクーターに乗っけられ、出勤する場面なんかは凄くオシャレだったし、音楽の使い方なんかも洗練されてる。  花びらに書かれた電話番号を繋げてみせる場面には感心しちゃったし、夜のアイス屋に忍び込んで二人で盗み食いする場面なんかも良い。  「君の目には愛が映らない」というジョシュの台詞には切なくなったし、窓の外の広告に見惚れてばかりいると思われた彼が、本当はずっとヒロインを見つめていたんだと分かるシーンも、実にロマンティック。   つまり「ラブコメをパロった映画」としての面白さと共に「王道なラブコメ」の魅力も同時に味わえる形になっている訳で、これは非常にお得感がありましたね。  皮肉な目線を備えつつも、ちゃんと「ラブコメを愛する気持ち」があるからこそ作れた映画なんじゃないかな……と、そう思えました。
[インターネット(吹替)] 7点(2019-09-18 03:49:12)(良:1票)
137.  なんちゃって家族 《ネタバレ》 
 こんなタイトルとあらすじである以上、結末は「なんちゃって家族が本物の家族になる」しか有り得ない訳ですが……  その予定調和っぷりも含めて、充分に楽しむ事が出来ましたね。   主人公一家となる四人は全員魅力的だったけど、自分としてはジェニファー・アニストン演じるローズのキャラが、特にお気に入り。  「本業はストリッパー」であり「なんちゃって妻」であり「なんちゃって母親」でもあるという、とても複雑な存在のはずなのに、非常にシンプルで女性的な魅力が伝わってくるんですよね。  ちょっと生活に疲れた感じとか、ストリップで生計を立てているけど売春はやらないという明確な線引きを行っている辺りとか、とても良かったと思います。   喧嘩ばかりしてた一家が歌を通じて仲良くなるっていうのも王道な魅力があるし、その一方で、スレた態度の「なんちゃって娘」が花火にはしゃぐ姿が可愛らしいとか、適度な意外性を与えてくれる場面があるのも、良いバランス。  息子の恋路を応援したり、娘の彼氏候補に質問責めしたりと、主人公とヒロインとが段々「父親」と「母親」らしくなっていく様も、実に微笑ましかったですね。  クライマックスにて、主人公が敵役の銃の前に立ち「家族」を守る為に立ち向かう姿にも、グッと来るものがありました。  ・冒頭で金を奪ったチンピラ連中に罰が当たらないまま終わるので、スッキリしない。 ・キャンピングカー好きとしては、主人公達が乗り込む際に車内がどんな構造なのかも映し出して欲しい。 ・「ビビった時は三つ数えてから実行しろ」っていう父から子への助言が、殆ど役に立たないまま終わるのは拍子抜け。   等々、欠点やら不満点やらも色々見つかるんだけど、まぁ御愛嬌。  ラストシーンにて、互いに愚痴りながら「家族」としての生活を続けてる姿で終わるっていうのも、良いまとめ方でしたね。  (そんなこと言って、本当は家族になれて嬉しいんだろう?)と、観終わった後にも口元が綻ぶような、後味爽やかな映画でありました。
[DVD(吹替)] 7点(2019-08-26 07:29:26)(良:2票)
138.  ジャスト・マリッジ 《ネタバレ》 
「愛し合ってるだけで充分幸せだったのに、なんで俺達、結婚なんてしちまったんだろう?」  という台詞が印象的。   実家の経済格差やら何やらが原因となり、愛し合っていた新婚夫婦が破局を迎えそうになる話……と書くと、何やらシリアスな恋愛映画のようにも思えますが、基本的には「トラブル続きの新婚旅行」を面白可笑しく描く事に終始しており、リラックスして楽しむ事が出来ましたね。   旅行パートが始まる前の「二人の出会い」終わった後の「二人の和解」も非常にシンプルな描き方で、手短に纏めている辺りも好印象。  そこを長々やられるとダレてしまいそうだし、変に凝った内容にしたりせず、ラブコメ映画の王道的な「良くある出会い方」「良くある和解の仕方」にして時間短縮してみせたのは、正解だったんじゃないかなと思います。   それと、元々自分は主演のアシュトン・カッチャーが好きなので、そういう意味でも満足度は高めでしたね。  セクシーな美男子なのに、不思議と親しみやすい雰囲気があって「等身大の、どこにでもいそうな兄ちゃん」に思わせてくれるという彼の魅力が、如何無く発揮されており、自然と感情移入する事が出来ました。  妻が他の男とキスした現場を目撃し「落ち付け、俺に怒る権利は無い……」と自分に言い聞かせていたのに、いざ妻と会ったら「このアバズレ!」と我を忘れて怒鳴っちゃう場面なんかは、特に可笑しくって、お気に入り。  相方となるブリタニー・マーフィも、お嬢様ヒロインなサラを嫌味なく演じており、もし女性が観たら、自分がアシュトン・カッチャーに抱くのと同じような親近感を彼女に対して抱くのではないかな、と思えました。  ・主人公のトムがラジオ局で働いているって設定を活かし切れていない。 ・妻の「酔った勢いで一度だけ浮気した」という秘密に対し、夫の秘密が「飼い犬の死に責任がある」ってのは後者の方が酷くて、バランスが悪い。 ・英語を「アメリカ語」と言っちゃうとか「本場中国のカラテをマスターしてる」発言とかの国際的なギャグは、ちょっと微妙。   等々、不満点も多い映画なのですが……  それが然程気にならなかったのは「散々な新婚旅行だったけど、それでもやっぱり彼(彼女)が好き」という主人公達の気持ちと、映画を観ている自分との気持ちが、上手くシンクロしてくれたのが大きいんでしょうね。   観ている間は、物凄く面白かったという訳じゃないのに、今思い出すと「雪に埋もれた車から抜け出せた場面の爽快感が良かった」とか「飛行機の中で二人が痴話喧嘩を終えると同時に、機内の客が揃って拍手する場面が良かった」とか、そんな「良い思い出」ばかりが鮮明に蘇ってくるんだから、不思議なものです。  「サラを幸せにする為には、分厚い財布なんか必要無いんだ」と我が子を諭すトムの父親に、最初は「負け犬」呼ばわりしていたトムの事を何だかんだで認めてくれるサラの父親の存在なども、良い味出していましたね。  彼らを「夫側の家族の代表」「妻側の家族の代表」として分かり易く描き、二人の仲が家族からも認められ、祝福される事になるハッピーエンドに、最短距離で繋げてみせた辺りも、お見事でした。    そんな「分かり易さ」と「手短さ」を重視した結果なのか、ラストシーンは少しアッサリ気味に感じられ(もうちょっと長く「寄り添う二人の姿」を見たかったな)と思ったりもした訳だけど……  そんな風に思う時点で、自分はこの映画と、この映画の主人公達に魅了されちゃったって事なんでしょうね。   色んな不満もあったりするけれど、なんだかんだで好きな映画です。
[DVD(吹替)] 7点(2019-07-22 21:19:27)
139.  2番目に幸せなこと 《ネタバレ》 
 「ヒロインにはゲイの男友達がいる」というのはラブコメ映画のお約束ですが、本作はそんな「男友達」にスポットを当てて主人公として描いたという、とても珍しい映画。   前半は如何にも軽いノリのラブコメという作風であり、後半のシリアスな親権争いとのギャップが大きくて、その辺りが本作を「評価の分かれる映画」にしてしまった気がしますね。  主人公とヒロインだけでなく、血縁上の父親であるケヴィンまで乱入し、三つ巴の争いになった挙句に明確な結論を出さないまま終わってしまうというのは、とても褒められた事ではないと思います。  「完成度が低い映画」「作りが散漫な映画」という非難の声が上がるのも、至極もっともかと。   それでもなお、自分はこの映画が好きというか……もう本当に「良い映画じゃないか」って、しみじみ思えるくらいに感動しちゃったんですよね。  とにかく主人公が息子のサムを想う姿に胸を打たれて、裁判における「私は保護者なんかじゃない、父親だ」と主張する場面にも(その通りだ! 良く言った!)と拍手喝采したくなったくらい。  「本を読む時に逆さまにしたがる」「ローストビーストの日」などのキーワードを巧みに活用し、父子の絆を丁寧に描いている点も良かったです。    また、本作は今から二十年近く昔の映画なのですが、現在よりも同性愛者に対する風当たりが強かった時代である事が、分かり易く説明されている点なんかも良かったですね。  親権争いの際には「ゲイの父親の立場は弱い」と弁護士にもハッキリ言われちゃうし、葬式の際にも同性愛者は差別を受け、死者の望み通りの式にしてもらえないという場面なんかも、情感たっぷりに描いている。  そういった部分がキチンとしているからこそ、二十年後の今観ても、自然に映画の世界に入っていけたんじゃないかなって思えます。   主人公のロバートは男性的なマッチョマンなのですが、ヒロインの元カレを懲らしめる為、如何にも「オカマ」的な恰好をして彼の職場に押し掛け「彼とは男同士のカップルだった」と思わせ嫌がらせをするなど「同性愛への差別意識が今より強かった時代」だからこその際どいネタなんかもあり、そういう意味でも面白かったですね。  創作物においては、どうしても「差別は良くない」というメッセージだけに終始してしまいがちですが、本作においては「差別意識を逆手に取って復讐する」という場面が描かれている訳であり、凄く新鮮に感じられました。   悩める主人公に対し「子供を持つのは、世界一素敵な事」「だって私は、貴方を産んで本当に良かった」と言って応援してくれる母親の存在も良かったし、それまで不仲だった父親が、ロバートの為に裁判の資金援助を申し出る場面も、凄く感動的でしたね。  本作には「父子の絆に血縁なんて関係無い」という主張が込められている訳だけど、その一方で、実の親子であるロバートと両親の絆も忘れずに描いておくというのは、凄くバランスが良いというか、作中の主張が歪んだものではない、真っ当なものだと感じさせる説得力があったと思います。   自分としては大いにロバート側に感情移入しちゃった訳だけど、ヒロインであるアビーの気持ちも(まぁ、分からないではない……)と思わせてくれた辺りも、嬉しかったですね。  ロバートが「息子の父親」ではあっても「自分の夫」ではない事を悲しむ気持ちが分かり易く描かれており、彼女を一方的に悪役と断じる事も出来ないという形。  弁護士が裁判に勝つ為、何とか有利な材料を集めようと「彼女は性的に淫ら? 情緒不安定?」などと問い掛けた際に、馬鹿正直に「そんな事は無い」と否定しちゃうロバートの姿など、この二人が「良い人間」「良い友達」であった事を示す場面が随所に挟まれているのも、映画に深みを与える効果があったんじゃないかと。   上述の通り、本作は裁判の結果を明かさないまま、親権の行方も不確かなまま、尻切れトンボな結末を迎える事になります。  それでも、ラストシーンにて、嬉しそうにロバートに抱き付くサムの笑顔と「パパは一人でいい」という台詞を考えれば(サムの父親は、間違い無くロバートだ。彼は立派な父親だ)と、そう断言したい気持ちになるんですね。  色々と投げっぱなしのまま終わってしまった、不親切な映画ではあるけれど「サムの本当の父親は誰なのか?」という命題については、きちんと答えを出してみせた、真摯な映画であったと思います。
[DVD(吹替)] 7点(2019-07-16 16:50:19)
140.  カランジル 《ネタバレ》 
 実際に囚人虐殺事件が起こったカランジル刑務所を舞台にして撮影されており、ラストはその刑務所が爆破される場面を映し出して終わるという、凄まじい映画。   そんな「本当に事件が起こった刑務所で撮影している」という強みゆえか、劇映画とは思えないほどのリアリティを感じ取る事が出来ましたね。  特にラスト30分の虐殺風景は圧巻の一言であり、観ている間、単純な嫌悪感だけでなく「ここまで凄い映像が撮れるものなのか」という、恐怖なのか感動なのか良く分からない感情まで芽生えてきたくらいです。  ・収容可能な人数は四千人の刑務所に、七千五百人もの囚人が押し込まれている。 ・選挙が近いから、警察側は暴動を徹底的に鎮圧して政治的アピールを行いたかった。 ・囚人にはエイズ患者が多数存在しており、鎮圧部隊には彼らに対する差別意識と偏見があった。   などなど「虐殺が起こった理由」について、丁寧に描いている点も上手い。  その為、観ている間も「どうしてこんな事が起こってしまったんだ……」という戸惑いに包まれる事も無く「これは、起こるべくして起こった悲劇なんだ」と納得した上で、より深く諦観と絶望を味わう事が出来たように思えます。  囚人のカップル(両方とも性別は♂)の結婚式を描き、幸せなムードに浸らせた後、囚人同士の殺人事件→暴動→虐殺と、段階を踏んで観客を負の世界に誘っていく構成になっているのも、お見事でした。   聖書とイエスの肖像画を手にして無抵抗だった男が躊躇なく射殺される場面も印象的でしたが、その一方で「息子に似ているから」という理由で警官に見逃してもらえた囚人や、咄嗟に死体の振りをして助かった囚人など、虐殺の中にも微かな「救い」があるというか「何とか助かった人もいるという安堵感」を与えてくれる作りになっているのも、嬉しかったですね。  特に、上述の「結婚式を挙げたカップル」が助かった事には心底ホッとさせられましたし「生存者となる人物を予め重点的に描いておき、観客に少しでも救いを与えるようにする」という作り手の配慮が窺えるかのようで、凄くありがたい。  「実際に起こった虐殺事件だから」と開き直り、ひたすら陰鬱で救いの無い話に仕上げる事だって出来たでしょうに、そこを踏み止まって「奇跡的に生き延びた喜び」も感じられる作りにしてくれた事には、大いに拍手を贈りたいです。   人間の死体まみれな刑務所の中で、犬と猫とが静かに見つめ合い「犬と猫は種族が違えど争ったりしないのに、同じ人間同士で虐殺を行っている」という皮肉さを醸し出している場面なんかも、実に味わい深くて良いですね。  「鎮圧部隊、万歳!」と連呼させながら囚人達を中庭に連れ出し、全員を裸にして整列させる場面なども圧倒されるものがあり、ここまで来ると一種の「悲惨美」すら感じちゃうくらいです。  比較するのは適当では無いかも知れませんが「虐殺を芸術的なまでに凄惨に描いた」という意味合いにおいては、かの高名な「オデッサの階段」に近しいものがあるんじゃないか、とすら思えました。   ただ……そんな「オデッサの階段」を描いた「戦艦ポチョムキン」と同じように、本作にも「虐殺の場面は衝撃的だが、映画全体としては退屈な場面も多い」という欠点があるように思えて、そこは残念でしたね。  虐殺が起こるまでの「刑務所の日常」が長過ぎて、二時間近くも「前振り」を見せられては流石に飽きて来ちゃうし、主人公である医師が不在の間に虐殺が起こる形になっているのも、ちょっと拍子抜け。  後者に関しては「実話ネタだから仕方無い」「その医師の著書が原作なんだから仕方無い」って事は分かるんですが、やはり映画として考えるとマイナスポイントになっちゃうと思います。    「囚人達の多くは、少しも罪悪感を抱いていない」と分かった上で、それでも医者として彼らを救うべきかと悩む姿などは良かったですし、診察の合間に囚人から身の上話を聞く件なども面白かったので、医師を主人公に据えたのが間違いって訳じゃないんでしょうけどね。  (出来れば医師の他にもう一人、虐殺の現場に立ち会う主人公格のキャラクターを配置しておくべきだったのでは?)と、そんな風に考えてしまいました。   そういった諸々を含め、総合的に判断すると「面白い映画」「好きな映画」とは言い難いものがあるのですが……  本作が「一見の価値あり」な映画である事は、間違い無いと思います。
[DVD(吹替)] 7点(2019-06-11 00:56:22)(良:1票)
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