Menu
 > レビュワー
 > 六本木ソルジャー さんの口コミ一覧
六本木ソルジャーさんの口コミ一覧[この方をお気に入り登録する

プロフィール
コメント数 823
性別 男性

表示切替メニュー
レビュー関連 レビュー表示
レビュー表示(投票数)
その他レビュー表示
その他投稿関連 名セリフ・名シーン・小ネタ表示
キャスト・スタッフ名言表示
あらすじ・プロフィール表示
統計関連 製作国別レビュー統計
年代別レビュー統計
好みチェック 好みが近いレビュワー一覧
好みが近いレビュワーより抜粋したお勧め作品一覧
要望関連 作品新規登録 / 変更 要望表示
人物新規登録 / 変更 要望表示
(登録済)作品新規登録表示
(登録済)人物新規登録表示
予約データ 表示
【製作年 : 2000年代 抽出】 >> 製作年レビュー統計
評価順1234567891011121314151617181920
2122232425
投稿日付順1234567891011121314151617181920
2122232425
変更日付順1234567891011121314151617181920
2122232425
>> カレンダー表示
>> 通常表示
1.  アバター(2009) 《ネタバレ》 
お世辞抜き、文句なしの満点作品。全てがあまりに完璧すぎて涙が出そうになった。 人間が製作できるレベルを超えている映画。ジェームズ・キャメロンは不可能を可能にしたといっても過言ではない。圧倒的な才能を持つ者が尋常ではない努力を重ねた成果に生まれた作品であり、凡人にはもはや到達できない地点に達している。 映像については、CGとは思えないリアルで違和感のないデキとなっている。最初は3Dにアタマと眼が慣れていないためか、「こんなのゲームムービーじゃないか」と思っていたが、あっという間に世界観にリンクできる。映画館にいるというよりも、パンドラという星に実際に立っているかのような気分になれるほどだ(六本木ヒルズの映画館の高性能のおかげもあるが)。 映像だけではなくて、ストーリーも恐ろしくデキがよい。ストーリーが非常にナチュラルに流れていき、世界観に調和している。また、伏線やエピソードも全てを拾いきっており、全てが何かに活かされている。本作に描かれていることで無駄なものなど何一つもないといえる完璧な脚本。 さらにメッセージにも溢れている。『異文化との交流』『自然破壊・自然との共存』『戦いの悲惨さ』など時事にマッチングしたものばかりだ。ジェイクとナヴィ族の女性との交流が、実に穏やかでリアルかつ自然に描かれていることが非常に好感をもてる。彼らが豊かな時間を共有することで二人に“絆”を築かれていき、観客である我々もナヴィ族という異文化を理解する助けになっている。最初はジェイクや他の地球人同様に、野蛮で醜い下等な生物かエイリアンと思っていたはずなのに、次第に彼らは我々と近い存在と思えるような感情となり、見ている我々にも“友情”のようなものが育まれていく。ジェイクの行為は、地球人を裏切るようなものなのかもしれないが、彼の裏切りが理解でき、共感できるものとなった。我々にとっては単なる巨木・単なるモノなのかもしれないが、彼らにとっては生命そのものといえるほど非常に神聖なものということを理解させてくれる。自分の利益を追求し、従わない者を服従させることばかりではなく、お互いを知り理解し尊重することが共存に繋がるということをキャメロンは本作を通して伝えたかったことだろう。 最先端の映像技術の素晴らしさを体験するだけではなく、メッセージに溢れた作品であり、現代の我々が見るべき映画に仕上がっている。
[映画館(字幕)] 10点(2009-12-23 17:14:32)(良:3票)
2.  グラン・トリノ 《ネタバレ》 
まさに“傑作”だ。 見事に“生と死”が描き込まれている。 このような難しいテーマを肩肘張らずに、平然かつ軽妙にやってのけてしまうことに、イーストウッドの恐ろしさを感じる。 ベテランの卓越した味というよりも、何かを悟ってしまったかのような境地に到達してしまったのではないか。 「生きるとは何か、死ぬとは何か」ということをイーストウッドは我々に教えてくれたばかりではなくて、「“男”とは何か」ということまでもが描かれている。 タオや神父同様に、半人前だった自分が本作を見ることでちょっとだけ一人前の“男”に近づいたような気がした。 本作風にいえば、イーストウッドに対して“とんでもねえ、ジジイだ”と最大の賛辞を与えたいところだ。 「チェンジリング」の際にも触れたが、イーストウッドのことはそれほど好きではなかった。 本作を見るのがこれほど遅くなったのも、強いて見たいとは思わなかったからだ。 イーストウッドの作品は、どれもこれも素晴らしい映画だとは思うが、自分にはその良さが素直には理解できなかった。 何度か見れば良さは徐々に分かってくるが、初見では何も感じられないことが多く、苦手としている超一流監督の一人だった。 自分が変わったのか、イーストウッドが変わったのかは分からないが、「チェンジリング」のときから、彼の素晴らしさがだんだんと分かるようになってきた。 他のレビュワーも語っているが、恐らくイーストウッドが変わったのではないか。 本作は「許されざる者」と“対”になるような作品と思われる。 完全には覚えいていないが、似たような展開のような気がする。 しかし、“結末”が大きく異なっている。 “年齢”や“時代”とともに彼は変わっていったのではないか。 イーストウッドだけではなくて、本作のコワルスキーも徐々に変わっていったことがよく分かる。 蔑視していた隣人や青二才の神父を受け入れるようになっていった。 誰もが変わることができる。 コワルスキーはあのチンピラギャングたちでさえも変わることができると思ったのかもしれない。 もちろん、我々も「イーストウッドが教えてくれたような男」に変わることができるのではないだろうか。
[映画館(字幕)] 10点(2009-06-14 03:00:25)(良:3票)
3.  ダークナイト(2008) 《ネタバレ》 
“完璧”としか言いようがない作品に仕上がっている。 たったの2時間30分で本当にこれほどヴォリュームある内容を詰め込めことができるのかというほど充実したものとなっており、なおかつストーリーが無理なく流れている。 「悪者を懲らしめる」「地球の危機を救う」という単純なヒーローモノとは一線を画しているのが特徴。 「正義とは何か」「善と悪との表裏一体性」「復讐と正義」などを観客に真摯に問いかけている。 トゥーフェイスを通じて、高潔な人間でも簡単に悪に染まるという“人間の弱さ”を描き、一方で二つのフェリーに託された起爆装置やバットマンの姿を通して、自己を犠牲にしても厭わないという“人間の強さ”を描いている点を評価したい。 殺しあうのも人間の本能だが、他人を守ろうとするのも人間の本能ということか。 簡単に悪に染まりもするが、簡単に悪に染まらないのも人間ということを描きたかったのではないか。 また、バットマンもジョーカーも、確かに一歩間違えればやっていることは同じことなのかもしれない。善良な人間を無差別に危険に陥れるのがジョーカーならば、悪人を無差別に倒すのがバットマンともいえる。彼らの姿は表裏一体のところがある。 しかし、バットマンは怒りに任せてジョーカーを殺そうとはしていない。 正確には覚えていないが、劇中で誰も殺していないのかもしれない。 バットマン自身も愛する者を失ったにも関わらず、「復讐と正義」の一線を超えようとはしておらず、“ゴッサムシティを守るため”という大義名分を守り続けている。 バットマンの姿を通じて、「正義とは何か」を問いかけている。 復讐することは正義ではなく、復讐は暴力の連鎖しか生まないと訴えているようにも思える。 このシリーズのバットマンは影が薄いが、今回はジョーカーに完全に食われることなく、真の意味では主役であったと思う。 最後まで見れば、タイトルに込められた想いが深く噛み締められる。 ヒーローとして賞賛されることが真のヒーローではない。 悪に負けないこと、正義を守り抜くことがヒーローということを伝えようとしている。 ジョーカーはあくまでも人間の弱さの象徴であり、自分の弱さに付け込まれたマフィアや汚職警官たちが本当の意味での敵だったのかもしれない。 ただのヒーローモノというよりも、奥深いメッセージが込められた作品である。
[映画館(字幕)] 10点(2008-08-04 23:24:44)(良:4票)
4.  007/カジノ・ロワイヤル(2006) 《ネタバレ》 
この映画で号泣するとは思わなかった。悲しすぎるボンドの原点をポールハギスが詳細丁寧に描き込んだ。終盤まで残るボンドの「甘さ」が消えて、誰も何も信じない冷酷で非情な諜報員になる過程が実に見事だ。 ラストの「あの裏切り女は死んだ」というクレイグのセリフはしっかりと聞き取れなかったが、「ビッチ」という言葉も聞こえてきた。愛した女性をこう呼ばざるを得なかった悲痛がクレイグの全身から伝わってくる。 ピアースを非難するつもりは全くないが、本作を描くためにはクレイグでなくてはならなかっただろう。ピアースは既に「完全体」のボンドゆえ、この「不完全体」のボンドを描くためには、新しくかつ内面の演技ができる俳優である必要があった。 クレイグのボンドは、本当に荒々しく、しかも甘さが目立つ。 Mの言うことは聞かず、大使館で監視カメラに映るという失態も犯す、毒を盛られたり、大事なゲームにも敗退する。「裏」を読み込めずに、感情に流されて、職を辞すると言い出す始末だ。 ポーカーに敗れた後に「マティーニはシェイクか、それともステアか」と聞かれ、「どっちでもいい」と怒鳴った挙句に、ナイフを手にするシーンは、人間的にも諜報部員的にも未熟さや余裕のなさが窺われる。 だが、これらの経験が、我々が知る「ボンド」を形作ったかと思うと、なかなか面白い。 ラストにおいてホワイトを殺さなかったのも秀逸だ。ホワイトを殺せば、ただの「私怨」を果たしたに過ぎない。まだヴェスパーに未練があることが分かる。 「組織」のために生け捕りにすることで女王陛下のための完全な諜報員が誕生したことがよく分かる。決め台詞のタイミングも完璧だった。 ヴェスパーの人間像もしっかりと描きこまれている。首飾りをキーアイテムにして内面を描いている。恋人を裏切ることも、本気で愛してしまったボンドも裏切ることもできない。そのような苦しみが随所に感じられる。シャワー室で震える姿の意味も後から考えればより深まるようになっている。 演出面においてもキレがあったと思う。肝心のポーカー対決も見応えはあり、拷問シーンもなかなかのものだった(クレイグのユーモアも垣間見れるよいシーン)。 冒頭の追いかけっこにおいても、視覚的に観客を楽しませるのと同時に、圧倒的身体能力の差にある者に対して、ボンドの機転や大胆さや度胸でその差を埋めていっているのがよく分かるシーンでもある。
[映画館(字幕)] 10点(2006-12-11 21:17:55)(良:5票)
5.  トゥモロー・ワールド 《ネタバレ》 
10点をつけざるを得ない超絶神映画。 常人のセンスを遥かに越えた監督と撮影監督の手腕と想像力には脱帽せざるを得ない。 普通の映画とはまさに一線を画すモンスター映画だ。 本作を有楽町「日劇1」という1000人程度のキャパの映画館で観れたことは、自分にとって誠に貴重な体験となった。 映画の中の世界を、まさに「体験」したと言っても言い過ぎではないだろう。 終盤の8分長回しが話題になっているが、凄いのはその8分だけではなく、冒頭からずば抜けている。この映画のカメラの動きを考えながら観ていたら、武者震いが止らなくなった。あまりに凄すぎて圧倒されっぱなしで、観ている自分は終始半笑い状態だった。 まばたき一つするのが惜しいほどだ。少しでも油断したら「やべぇ、今どうやって撮ったんだ」と後悔してしまう。 監督に負けず劣らずクライブオーエンもよい演技をしている。 子どもが産まれなくなった世界で、アイロニカルながらもとても情熱的な男を演じきった。 ジュリアンが死んで木陰で泣き崩れる姿、ジャスパーが死んでミリアムに「触るな」と怒鳴る姿、怒鳴った後にキーに「大丈夫だ」という姿、ラストの船の上で「ゲップさせてやれ」とアドバイスを送って(自分の過去の経験が活きているのだろう)、「本当に良かった」とつぶやいて息を引き取る姿、どれも素晴らしいものだ。 そして何よりも本作の世界がクライブオーエンが知り得た情報のみで成り立っているのも面白いところだ。 情報不足・説明不足という批判を承知で、あえてそういうモノ作りを試みている。 「子どもが産まれなくなった理由」や「ヒューマンプロジェクトとはどういう組織か」などはあえて描かなくてもよい。むしろ本作ではこれらについても十分過ぎるほど情報が与えられていると思う。 ストーリーがないという批判を受けるかもしれないが、ストーリーも十分すぎるほど描かれていると思う。これ以上描いたら「蛇足」になってしまうかもしれない。 ストーリーにおいても、映像においても、メッセージ(子どもを観て皆戦いを止め、道を開けるシーンは映画史に刻まれてもよい)においても文句の付け所のない完璧な映画と思う。 映画の見方・作り方、映画に真摯に向き合う姿、映画の面白さを教えてくれた本作には感謝したい。
[映画館(字幕)] 10点(2006-11-20 23:54:47)(良:3票)
6.  カーズ 《ネタバレ》 
映画を観終わって、これほど清々しい気分になったことはあっただろうかと思ったほど、素晴らしい映画だった。 今までのピクサー映画の印象は悪くはないけど、個人的にそれほどハマッてはなかった。今回も正直言って全く期待しておらず、クルマは所有しているものの、クルマやF1などにはほとんど興味がないという状態。 それにも関わらず、なぜこれほど感動できたかを考えると、マックイーンは自分に似ているからなのだろうと思う。マックイーンは勝つことだけを考えて周りを信用することなく、なんども一人で自分の力を信じて、自分の能力だけで済まそうとしている。 自分も日々の仕事を終電がなくなるまでガムシャラに頑張るものの、あまり他人を信用することなく、協力して仕事をするのではなく、自分の力だけで仕事をこなしていたように思える。ちょうど最近自分の仕事に対する姿勢に疑問を抱き、仕事に対する情熱に陰りを見せ始めていたところだった。 それがこの映画をみて何か変わったように感じた。特に、他のレビュワーには不評の途中の中だるみのシーンを観て、自分の中で何か変わったように思えた。見方によってはなんということもないシーンなのかもしれないが、大した事のないエピソードの積み重ね、美しい風景によって、心が徐々に洗われる感触を覚えた。とげとげしかった心が徐々に丸くなっていく感覚、まさにこれこそ心の洗濯なんだろうなと感じた。 そして主人公とともに気づいていく。自分一人で生きているのではない。周りの人に助けられ、または助けながら、共に生きているということを。 ラストのマックイーンの行為には涙なしには見れない。勝負に勝つことも大事かもしれないけど、それ以上に大事なことがある。卑怯なことをしてただのカップを得ることよりも、あの行為は、共に戦かったライバルを敬い、彼の家族を救い、そして過去にとらわれていたドックハドソンをも救うことができる行為である。 この映画は、子ども達が観ても楽しめる映画であるが、もっと大人の人達にも観てもらいたい。失った何かをきっと発見できるのではないか。
[映画館(字幕)] 10点(2006-07-10 22:02:26)
7.  クローサー(2004) 《ネタバレ》 
他のレビュワーの評価はあまり芳しくないけど、非常に楽しめた作品。四人の会話は非常に面白く、かつ深みもある。またそれぞれによって繰り広げられる恋愛模様は、痛々しくも、なにか心に突き刺さる感じを受けた。しかし、この映画の男女の関係がリアルとは思わない。むしろ少なくとも日本人の我々にとってみると、この関係は非現実的だろう。誤解や反論のある表現だとは思うが、我々は、男女の関係にある程度の嘘があることを知っており、嘘だと思っていても、一定程度、黙認し、許容している部分がないだろうか。したがって、修正不可能な場合でない限り、あえて真実を知ろうとして、それによって関係にわざわざヒビを入れようとしない。特に「過去」に関しては。しかし、この映画の世界がリアルでないとしても、ある意味「現実(リアル)」を抽象化し、それを再びモデル的に具象化したように思われる。この世界には、リアルではないものの「真実」が隠されていると思う。 特に自分が男だけあって、ジュードロウにはある意味共感できた(絶対にジュードロウのように「真実」をあえて探ろうとはしないが)。彼は男女の関係の中に「嘘」がない関係を「真実」の関係と捉えている点がなんとも痛々しすぎる。真実を知りたい、もしくは真実を知っていても、相手を信じたいという男の哀しい性を感じる。その性が二人の女性を失わせることになる。 一方、女性は全く違う行動を取っている。ジュリアロバーツは、自分からは「真実」を白状しないが、どことなく嘘のない関係を拒んでおり、態度で「真実」を醸し出して、相手に気づかさせ ている。ナタリーポートマンは、あえて現実の世界に嘘の世界を作り出しているように思える。彼女は、男女の関係に必ずしも真実は必要ないと分かっているのではないか。もしかすると、彼女にとっては、男女の関係が嘘の世界であり、ストリッパーの世界が現実の世界と感じているのかもしれない。ともあれ、4人の中で非常に大人の人間だ。 クライヴオーウェンは、GG賞を取っただけはあって、粗野で、自己中心的、かつ狡猾な男という性格を感じさせる演技をしていた。最初ジュードロウに手玉に取られていたはずが、最後には手玉に取っているあたりが人間観察に優れた医者という設定に合っていると感じる。 ある意味、これほど人間、男女関係を、軽くかつ深く描いた作品はお目にかかれない。
[映画館(字幕)] 10点(2005-06-06 22:36:54)(良:1票)
8.  ロード・オブ・ザ・リング/王の帰還 - スペシャル・エクステンデッド・エディション -
東銀座の東劇にて観てきました。 インターミッション(城門を破るための秘密兵器「龍の頭」が出てきた辺りで一旦休憩)を含む 4時間超の旅。 しかし全く長さを感じさせない、むしろあっという間に終わったという感じだった。 エンドクレジット中「INTO THE WEST」を聴きながら、これだけ充実した旅ももう終わるのかと思うと、何か心に隙間ができたような想いを感じた。 個人的に感動したシーンはなんといっても、全員でホビット達に頭を下げるところだろう。 いくら感動しても滅多に涙を流さない自分ですら、自然と涙が頬を伝わった。 剣術もそれほど上手くもなく、矢も撃てるわけでもない、もちろん魔法なんて使えない、 そんななんの取り柄もない種族ホビットに頭を下げるのには理由がある。 それはどこの誰よりも彼らには勇気があり、平和を愛する心があり、友情があるからだろう。 この映画で一番伝えたかったのは、この三つを持つことではなかっただろうか。 それだけそれらは尊重されるべき尊いものと感じた。 そして、旅から帰還してフロドが眼を覚ましたときの皆の笑顔も忘れられない。 演技を感じさせない何かを成し遂げた顔。 ボロミア以外の旅の仲間が再結集したとき、非常にいい顔をしていたのが印象的だった。 戦いのシーンも非常に満足。 やっぱり死者の軍隊にはしびれるね。 海賊を襲うシーンや船から降りてミナス・ティリスの戦いにあっという間にケリをつけるシーン など鳥肌が立つ。 あれほど圧倒的な戦力でありながら誓言の約束通り魂を解放させるアラゴルン、そして黒門で皆に言葉を掛けるアラゴルン、エオウィンの傷を癒すアラゴルン、歌は微妙だったが「王」にふさわしい振るまいだった。 やはり、SEEと比較すると残念なことに劇場版はかなり必要なシーンがカットされてしまっていると言わざるを得ない。 これを観ないと旅は終わらないというのはまさにその通りだろう。
10点(2005-02-27 00:48:34)
9.  アメリ
この映画は本当に人生って良いなと思わせる良さがあると思う。 幸せは自分の身近にあるもので、それを得られるチャンスが来たら思いきって飛びこむチカラを与えてくれる映画だと思う。 たとえぶつかって心が粉々に砕け散ったとしてもまたいくらでも軌道修正は出来るのではないか。 ジュネが創り出した世界観は見事としか言いようがない。 その世界観に色付けした色彩感がまた独特であり、世界観にいい影響を与えている。 この調和の取れた世界観に生きるそれぞれのキャラクターの描き方も見事の一言。 それぞれのキャラも細かく設定してあり、キャラがそれぞれ活きているとはまさにこの事だろう。 そのキャラクターに肉付けしていったトトゥの演技も素晴らしい。 アメリという人物を完全に演じきっているというか、成り切っているといえるだろう。 アメリは他人の人生の軌道修正をしているだけでなく自己の軌道修正を迫られている。 メインストーリーは自分の人生を変えたいけどなかなか変えることの出来なかったアメリの成長を描いていると思う。 几帳面で自己の殻に閉じこもりがちな元軍医の父と情緒不安定で神経質の元教師の母に育てられ、心臓病の誤診のおかけで友達と接することなく過ごし他人とどう向き合って良いのか分からなくなった幼少期。 幼少期から空想の世界に逃避せざるを得なく、現実と向き合えなくなったまま大人になった女性の今の世界から飛び立ちたいけど飛び出せないもどかしさが描かれている。 ニノに対してああも回りくどい方法を取らざるを得なかったのは、どう向き合って良いか分からないためであり、カフェで声をかけたくてもかけられず水のように溶けてしまったCGも見事にアメリの内面を表現している。 ニノとアメリは本当に似たもの同士だと思うが、彼らのようにちょっと内向的で特殊な方法で自分の心を癒している人々は現在の世の中に多いのではないか。 そんな人達に人生はもっと楽しむことができるということを教えているような気がする。 ドワーフネタは確かに良いのだが、アメリが駅付近で拾った写真集に夢中になっていてちょっとほったらかしになっているドワーフもなかなかツボにはまりました。
10点(2005-01-01 20:47:18)(良:1票)
10.  Mr.インクレディブル 《ネタバレ》 
文句のつけようがない大満足の大傑作。 かなり練られた脚本とテンポの良さとそれぞれのキャラクターが生きている点が素晴らしい。 ストーリーは計算されつくされており、全てに繋がりがあり全く無駄がない。張ってある伏線も出来がいい。 インクレディブルとモードとの会話で「マント」ネタはどこかで使ってくると思ってたら、やっぱり生かされているし。 弟がジャングルで朝起きた時に姉ちゃんが近くにいてゲンナリするシーンがあったが、銃で襲われる姉ちゃんをカラダを張って助けるシーンに大きな効果を与えている。 普段は喧嘩をしたり嫌っているように見えても、実は内心大切に想っているという気持ちがゲンナリシーンがあったためより一層伝わる。 それが後半ではバリアで弟を逆に助けるシーンにも活きてくる。 またキャラクターにはそれぞれの長所や性格があり、その長所が存分に映像に活かされている。 特に体が伸びる奥さんが敵基地に潜入する場面は秀逸だろう。 弟の疾走感も見事に映像化されていた。 奥さんや弟などは、さすがアニメのチカラを感じる。 姉ちゃんも気持ちの変化というか成長は見逃せない。 始めは内気すぎてちょっと怖い感じがする上に貞子みたいだし、パワーも使いこなせないどうしようもないキャラクターだったが、前半のヘタレぶりが効果的だったために、後半での活躍ぶりは見事に感じる。 飛行機のシーンでは姉ちゃんがバリアを張れなかったため、奥さんがカラダを張って子ども達を助けていたが、あの時の陸にあがった時の疲労感も効果的だ。 疲労感がより描かれることにより、自分に疲労感があっても疲れた息子を誉めることを忘れないという奥さんの性格と子どもへの愛情が垣間見れる。 この映画は、家族愛が描かれているだけでなく、ヒーローモノとしても、スパイモノとしても、色々なタイプの映画を楽しめるように出来ている点も良く、子どもだけでなく大人も間違いなく楽しめるオススメの作品だ。
10点(2004-11-28 03:15:38)(良:3票)
11.  アンブレイカブル
冗談抜きにして感動して泣きそうになってしまった。 自分の存在理由を見出せない二人の男。 一人は毎朝、言い知れぬ悲しみとともに目が醒める。 そしてもう一人は、自分の生きる意味を問いかけていた。 一人は愛のためにフットボールを辞め、やるべきことが分からずに毎日を無気力に生きる。その無気力さがやがて徐々に愛を失いかけている。 警備員をやりながらフットボールの思い(冒頭での女性との会話も注目)を捨てきれてないウィリスは中々いい感じだったし、罪を犯した奴を見抜くという力と絶対に怪我をしないという力という自分の真の力を使って、つたないながらもヒーローとしての一歩を歩み、息子に黙って新聞を差し出すシーンなんてとても良かった。少し距離があった二人の距離が近く感じたシーンでもある。 また同様に、いつからか別々に寝ていた嫁ハンを夜ベッドに運ぶシーンも、この映画が実は失いかけていた愛を取り戻したがっていた二人のラブストーリーでもあったとも気づかされるし、実はかなり深い映画だと思う。 そして対極にいるもう一人の男は、耐えがたい苦しみに生きる目的・希望を失っていた。精神を病んでいたと一言では片付けられないのではないか。本当に病気に苦しむ人間はそういう悩みは抱えているだろうし、死ぬまで怯えて生きていかなくてはならない逃れられない恐怖から「自分」が生きている意味、答えを見出そうとした哀しい男がちゃんと描かれていたと思う。 現実はコミックではないという視点もラストの結末には描かれていたし評判が悪い理由がよく分からないけど、見ててハゲは病気ではないのかとか、ヒーローも悪役も水が苦手って、水が苦手な宇宙人もいたけど、この監督、水になんか恨みでもあるのかと突っ込める楽しい映画でもあるし、冒頭のウィリスが振られる列車での長回しのシーンも結構見応えがあり面白く撮れていると感じた。
10点(2004-09-18 18:53:58)(良:7票)
12.  HERO(2002)
ただのアクション映画ではないです。 美意識の高い映像の美しさと中国ならではの迫力。奏でられる音楽に酔いしれながら、「動」と「静」が見事に融合した素晴らしい演出。 「剣」と「書」という中国の文化を描きながらも、この映画の根底に流れる平和の思いは、今のこの時代にも相通ずるものを感じさせずにいられない。 この映画の出演者全てが英雄だとは思うが、残剣と秦王こそ英雄の中の英雄だと思う。 残剣が願った飛雪と故郷で平和に暮らせる世であって欲しいという思いとそれがもはや、かなわない夢であるため、死を選んで自分が愛する人に教えるしかないという哀しさ。 また、秦王の為政者としての誰にも理解されない孤独と真の理解者が現れた時の心が晴れた潔さ。 ラストもこれから天下統一を図るためにも自己の制定した法を破れば部下に対しての示しがつかないのを悟り、苦渋の選択をしなければならない姿には感動した。時間が短い割にはこれほど中身が詰まった映画も珍しい。 自分の命を賭しても伝えたいそれぞれの想いに胸を熱くせざるを得ない。
10点(2004-06-25 15:47:39)(良:4票)
13.  ビッグ・フィッシュ 《ネタバレ》 
この映画を観る前と観た後ではモノの見方や考え方が変わってしまうと思えるほど素晴らしい映画だと思うし、観た事を自分の財産にしたくなるような映画だ。自分に息子ができたらこんな父親になりたいと、この映画を観た男の多くはそう思うのではないだろうか。 大切なのは「偽りのない真実」を語ることなのではない。大きな人生を望む「気持ち」や大きなものに手を伸ばすという「志」こそが大切なのだということをこの映画から教わった気がする。 「金魚蜂が大きいと金魚は2~4倍にも成長する」というのは、この映画を端的に表するいい例え話だ。もっとも「小さな池のデカイ魚は海に出ると溺れることもある」とセリフも、これもまたいい例え話だけど。 このような大きな考え方だけでなく、この映画の素晴らしい点は父と息子の関係だ。 息子の「本当の父親の姿を知りたい」「父親のことをよく分からない」と苦悩する気持ちも痛いほど理解できる。 そして、父親の全てを伝えたはずなのに伝わらないというもどかしい気持ち、一番理解してもらいたい人に理解してもらえない哀しい気持ちも痛いほど理解できる。 この二人の微妙に交差しない気持ちを観客が充分に理解することによって、映画のラストに向けて大きな効果・感動をもたらしているように思える。 大きな人間になるという気持ちや志の素晴らしさを息子に伝えたいと想う父親の愛情と、その大切な気持ちと父の愛情に気づいた息子の父親に対する愛情のベクトルが向き合ったときに息子が語る「奇跡なようなストーリー」には感動という陳腐な表現はしたくないけど、感動して涙が流れた。 また、エドワードがサンドラを想う純粋な気持ちにも胸が熱くなる。あまりストレートには描かれなかったけど、サンドラがエドワードを想う気持ちもバスタブ辺りのシーンでは充分に感じられた。 ところで、往年のバートンファンは本作をどのように思うのだろうか。バートンらしいけどどこかバートンらしくない映画に仕上がった気がする。「シザーハンズ」のように恋人を殺してしまうような、バートンらしさはあるけどやはりどこか毒気が抜かれている。ファンタジーなんだけど、バートンらしいファンタジー感も影を潜めている。しかし、本作は嘘か現実かなのかが分からないことを踏まえて、ややバートンらしさを押さえているのかとも思われる。 
[映画館(字幕)] 10点(2004-06-25 14:27:40)
14.  コララインとボタンの魔女 《ネタバレ》 
満点にしてもいいくらいの作品。子どもだましのアニメ作品とは一線を画す芸術的ともいえる高レベルのものに仕上がっている。「ナイトメアー・ビフォア・クリスマス」の監督ということしか知らなかったが、優れた才能にはただただ圧倒されるだけだ。個人的には「ナイトメアー・ビフォア・クリスマス」よりも本作の方が好みかもしれない。 誇張なしにして、まさに幻想的かつ魅惑的な世界に放り込まされるような感覚に陥る。 現実世界ともう一つの世界を繋ぐ通路の“ぐにょぐにょ”した感じが非常に心地よい。 アニメはそれほど好きではないが、実写とは異なる独特の世界観を構築できるので、アニメ作品の可能性は改めて広いとも感じられた。 また、恐らく3Dでなくとも素晴らしい作品だと思うが、3Dの利点を活かされた作品ともいえる。昨今は何でも3D作品にしていく傾向がみられるが、他の作品は本作を見習って欲しいものだ。 さらに自由自在に描くことができるCG作品(本作も一部使用しているが)とは異なり、制約のかかるストップモーション作品であることをまるで感じさせないほどの手間の掛け方にはただただアタマが下がる想いだ。 大したストーリーがなく、非常に狭い世界を描いているにも関わらず、ほとんど飽きることがないというのは世界観や各キャラクターにそれだけ魅了されたということだろう。ストップモーション作品であるにも関わらず、各キャラクターの豊かな表情には驚かされるばかりだ。 「閉じ込められた親を助ける」「幽霊たちの眼を探す」「魔女を倒す」といったメインストーリーもあり、この辺りの展開については多少中途半端かつあっさりした感じもあるが、そういったことにはほとんど気にならないほどの仕上がりとなっている。ストーリーには多少物足りなさがあるが、“親に甘えたくても、素直に甘えられない少女の気持ち(一人寂しくてベッドで涙するシーンが良い)”“少年や猫や隣人たちとの友情”といった要素もみられる。“最後まで諦めない気持ち”や“勇気”や“少女の成長”辺りの要素ももっと加えて欲しいところだが、世界観で圧倒しているので、過大な要求をすべきではないか。 字幕版を鑑賞することとなったが、ダコタ・ファニングのノリがなかなか良く、コララインというアメリカ人らしい少女に生命感を与えている。 ストップモーション作品であることに、違和感を覚えさせないほどマッチしていた。
[映画館(字幕)] 9点(2010-03-08 22:31:03)(良:1票)
15.  (500)日のサマー 《ネタバレ》 
監督のマーク・ウェブは「スパイダーマン」の新シリーズの監督に抜擢されるだけのことはある。既存のルールや公式には従わずに、自由自在・変幻自在に演出を試みて、自らの豊かな才能を発揮させている。いったり来たりと目まぐるしいのは男女の関係でもよくあることであり、カレンダーどおりにストーリーを展開させない演出は上手い。 ストーリーは多くの人が経験あるような事柄が描かれており、共感を得られることだろう。 なんだかんだで最後は二人が結ばれるというカードの偽善的な言葉のような結果にはならず、“現実”がきちんと描かれているのは評価したいところ。自分の中ではこれこそ最高のハッピーエンドだった。自分も若かりし頃に一目見ただけで“運命の女性”だと信じて、無謀とも思える戦いを挑んだことがあったのを思い出した。二人で食事をしたり、映画を見たり、ドライブしたり、旅行したりできるまで関係を膨らませることはできるけど、どうしても“友達”という一線を相手は超えさせようとはさせなかった。自分自身が大したことがないということが大きな理由だが、本作を見ると「それだけではないのかな」という気がする。『運命ではなかった』という言葉の重みが自分にはずしりと響いた。 鑑賞後、「面白かったけど、そんな運命の出会いなんてないよな」といったことを思いながら席を立とうとしたら、すぐ傍に若い女性モノの定期入れが落ちているのを発見した。「しばらく待っていたら本人が戻ってくるんじゃねえの?ひょっとしてこれが運命の出会いか」というようなことをリアルに一瞬思ったけど、面倒くさいので係員に渡して帰った。この辺りが“現実”と“映画の中の世界”が違うところ。しかし、実際の出会いはなかったけど、現実でもこういう偶然や奇跡のような出会いのようなものが溢れているのかもしれないと、ふと感じられた。“現実”と“映画の中の世界”の違いは、実際に一歩踏み出すかどうかの違いなのかもしれない。本作のラストにおいても、いったんは何のアクションもせずに面接に向かおうとするところを主人公は立ち止まっていた。一方、女性の側もいったんは誘いを断ろうとしていた。躊躇してしまうというのは実際にもよくあることであり、躊躇いながらも一歩踏み出そうとしている点は、現実に即しながらもキレイにまとめあげている。自分も一歩踏み出してもいいかなと思える非常に好感のもてるラストだった。
[映画館(字幕)] 9点(2010-01-23 12:56:22)(良:1票)
16.  手紙(2006) 《ネタバレ》 
原作未読。邦画も捨てたものではないと感じさせる傑作。映画を見て、ほとんど泣くことのない自分でも泣けた。特に減点すべきところもないので、10点満点と評価してもよい作品だ。ただ泣けるだけではなくて、『犯罪者の弟としての苦痛・苦悩』、『手紙のもつチカラ』がきちんと描かれている点を評価したい。作り物とは思えないほど、心に響いてくる作品だ。 “答え”のない難題にチャレンジしておきながら、一定の“答え”を出しているという非常に“深み”のある映画に仕上がっている。 「犯罪」というものは誰もが本能的に忌み嫌うものであり、「犯罪者」「犯罪者の家族」というレッテルを剥がすことは決してできないだろう。 我々としても、「犯罪者」に対して“差別”をするという意識がなくても、無意識的な“差別”なしに対応することはできないのではないかと思う。 ただ、本作を鑑賞することによって、そのような“差別”に対して、何かを感じ取ることや何かを考えることはできるという思いを強くすることができる。 結婚して子どもができたところで『これでエンドかな』と一瞬でも思ったことが、愚かともいえるほどの展開が待ち受けていたことが驚きだった。 本当のストーリーがここから始まるといっても過言ではない。 手紙を書くことで事件から逃げていた加害者、手紙を代筆させることで事件から逃げていた加害者の弟、手紙を無視(返事を書かない)することで事件から逃げていた被害者の息子、この事件はそれぞれの中では決して終わることはなかった。 自分の手による本音の手紙を書くことで事件に向き合う加害者の弟、手紙を書かないことで事件に向き合う加害者、たとえ読んでいたとしても半ば無視していたであろう手紙と本当に向き合った被害者の息子、事件から逃げずにそれぞれがきちんと事件に向き合うことによって、事件はようやく決着するのかもしれない。 『逃げちゃダメだ』という言葉は簡単に言えるかもしれないが、本当に逃げずに向き合うことはこれほど過酷なものとは思わなかったと感じさせるだけのパワーがあるラストだった。 事件は誰の心からも消えることはないのかもしれないが、繋がりを再認識して支え合うことによって乗り越えることはできるのかもしれない。 血縁者だからこそ苦しみも受けるが、血縁者だからこそ出来ることもある。
[DVD(邦画)] 9点(2009-10-24 22:17:19)(良:3票)
17.  スラムドッグ$ミリオネア 《ネタバレ》 
最近には見られなかった直球の映画。クイズという形を借りて、彼の生き様を描き、彼の生き様を通して“夢”や“愛”を手に入れるという単純なハッピーエンドムービーを単純に楽しめことができた。スラムの負け犬でも、諦めなければなんとかなる、思い続ければなんとかなるという“甘い”ストーリーは非常に好みだ。本作は、社会派の映画でもなければ、リアルなインドの実態を描いた映画でもないだろう。ましてや、教養のない人間が、難問のクイズに答えられるはずもない。リアルティのある作品ではないが、そういうことはでうでもよくなるほどの出来栄えだ。 インドが舞台であることが、本作の勝因ともいえる。 この舞台がアメリカや日本だったら、全く面白くはないだろう。 出来すぎたストーリーに嘘っぽさを感じてしまうはずだ。 アメリカにはもはや「アメリカンドリーム」はないかもしれないが、発展を続けているインドには「アメリカンドリーム」があると感じさせるパワーやパッションの溢れる街であるというように魅力的に描かれている。 また、クイズを絡めて、一人の男の生き様を語るというのは素晴らしいアイディアだ。 普通に描けば、大して面白くないストーリーでも、この手法によりダイナミックさが加わった。ストーリーに飽きることがなく、画面に集中させる効果も非常に高いといえる。 個人的には、最後の問題をジャマールは回答できなくてもよかったのではないかと思う。ジャマールにとっては、“愛”さえ手に入れれば、“金”などどうでもいいもののはずだ。「三銃士」の三番目と命名したラティカ自身が分からない「三銃士」の問題を間違えるというのも面白い運命とも思ったが。もともとゼロからのスタートなのだから、ゼロの状態からジャマールとラティカがスタートする方がもっとイマジネーションは膨らむと思う。あの二人にはむしろ“大金”は不要ではないか。 さらにレベルの高い演出をするのならば、司会者が正解かどうか答える瞬間に画面が切り替わり、駅のシーンへ移行してもよかったかもしれない。彼が正解できたかどうかを、観客の心に委ねてもよいだろう。 ただ、最後のエンドクレジット中のダンスはややマイナスといわざるを得ない。 ダニー・ボイルはインド的なものを取り入れようとしたのかもしれないが、せっかく気持ちよくさせてもらったのに、あれで“夢”から一気に冷めてしまった。
[映画館(字幕)] 9点(2009-05-10 21:44:04)(良:2票)
18.  チェンジリング(2008) 《ネタバレ》 
イーストウッド監督は、正直言ってそれほど好きではない。たんたんとストーリーが流れていき、初見では何を伝えたいのかが理解できないことが多い。世間一般では評価されているが、苦手としている監督の一人でもある。 イーストウッド監督に対して苦手意識を持っている自分であっても、本作は“素晴らしい”と認めざるを得ない作品に仕上がっている。今まで観てきた映画とは“次元が異なる”と言っていいほどの完璧なデキには驚きを隠すことはできない。 まず、全体に漂う“空気感”が他の映画とはまるで異なる。張り詰めた緊張感は切れることなく持続しており、映画内の世界に完全に引きずり込まされる。あらゆる意味において“現実”よりもリアルさを感じられる。 ストーリーについては、通常のイーストウッド監督作品同様に、たんたんと流れていく。ミスを認めようとしないLAPDを過度に非難するような感情は込められていない。犯人に対する憎悪のような感情も深くは込められていない。クリスティンに対しても、哀れみを誘うような過度な感情も込められていないと思う。 そのような感情は深くは込められてはいないが、被害者の子どもたち、加害者の子どもを含めて“子ども達に対する深い愛情”が注がれていることに気付かされる。 そしてLAPDを非難することよりも、子どもに会いたい、子どもを捜して欲しいという“母親の愛情の強さ”がしっかりとした基盤となり、彼女の強さや行動に対する原点になっていることに気付かされる。 アンジェリーナ・ジョリーの演技はまさにパーフェクトだ。セリフだけではなくて、表情が素晴らしい。表情だけで何もかも語っているほどのレベルになっている。 彼女に対してセリフを語っている者の表情よりも、セリフを聞いている彼女の表情に深く魅入られてしまったほどだ。彼女だけではなく、すべての演者がパーフェクトとしかいいようがないほどのキャスティングには脱帽だ。 ラストに関してもまさに秀逸だ。残酷なストーリーかもしれないが、本作にはきちんと“希望”が描かれている。クリスティンは永遠に“希望”を持ち続けることができたと感じられるものとなっている。救いのあるラストには、まさに“映画らしさ”を感じられる。そしてイーストウッドの映画に対する愛情もまた強く感じられる。 10点を付けられないのは、受け手である自分の未熟さの問題であり、映画自体は満点といっていい。
[映画館(字幕)] 9点(2009-02-22 21:26:36)(良:3票)
19.  崖の上のポニョ 《ネタバレ》 
宮崎駿という監督をそれほど高くは評価していなかったが、鳥肌が立つほど宮崎駿の恐ろしさを味わった。 本作を作ることができるのは、恐らく世界を探しても宮崎駿一人しかいないだろう。 ひょっとしたら子どもには作れるかもしれないが、大人には作れない映画だ。 何かを悟ってしまったかのような境地だ。 CGアニメが精緻にリアルに描かれた西洋の油絵ならば、手書きのアニメは日本の水墨画のような仕上がりだ。 CGアニメは画面から得られる情報しか与えてくれないが、手書きのアニメはシンプルではあるが、見たものの想像を駆り立てるチカラを持っている。 西洋の美術は全てを描こうとするが、日本の美術は全てを描くことをあえて止めて、「余白」を上手く利用して、見たものに奥行きを与えている。 どちらが優れており、どちらが劣っているという問題ではないが、本作は非常に日本的な味わいが感じられる作品に仕上がっている。 手書きスタイルだけではなく、ストーリーにおいてもこの「余白」的な仕上がりを感じられる。余計なストーリーを一切廃しており、恐ろしいほどのシンプルさが逆に凄みを感じる。余計なストーリーがないというよりも、ストーリーらしきストーリーも存在しないが、それでも全く飽きることがない。 そういう映画を作ることははっきり言って難しいと思う。 映画に毒されている人ならば、ソウスケとポニョを引き離そうとする父フジモトの悪だくみを描いたり、ポニョを人間にするためにソウスケに試練を与えようとするだろう。 そういったことをあえて描こうとしていないのが恐ろしい。 この描き方は、観た者の想像力を喚起させるのではないか。 本作に描かれているのは、ソウスケがポニョを想う気持ち一つだけだ。 宮崎駿は鑑賞してくれた子ども達に特別なことは必要ない、気持ち一つで十分とでも言っているのだろうか。 また、誰も死なない、誰も傷つかない(ソウスケがガラスで指を切ったのは除外)、人間の悪意がほとんど描かれていない(ゴミで汚れた海は描かれているが)、優しさに満ち溢れた映画である。 これほど澄んだ映画が、他にはあっただろうか。心が洗われる想いがした。 子どものために、子ども目線で作られている映画であり、宮崎駿はストーリーよりも何か別のものを重視したのかもしれない。
[映画館(邦画)] 9点(2008-07-21 00:49:52)(良:3票)
20.  クローバーフィールド/HAKAISHA 《ネタバレ》 
もはや映画鑑賞というよりも、疑似体験に近い作りとなっている。「これは凄い!」と唸らざるを得ないほどの驚異的な映像だ。恐怖を感じるとともに、よくぞここまでのものを作ったと呆れるほど感心した。 何も解決しておらず、すべては“謎”で終わっているのかもしれない。見る人によっては、ストーリーなど何もないと憤慨するかもしれない。 しかし、個人的には怪獣の出生や、怪獣が最後どうなったのかなど、まったく興味が沸かず、ただただ逃げ惑うしかない人たちと共に時間を共有できたことが非常に有意義だった。 脚本もそれほど悪くない。大怪獣あり、小怪獣あり、ウィルスあり、トンネルあり、乗り物ありとほとんどフルスペック仕様のパニック映画だ。ちょっと盛り込みすぎじゃないかと思うほど練られている。 人間関係もしっかりと描かれており、主人公と恋人との関係を軸に、兄弟、友人など上手く関係線を伸ばしている。パーティーに出席したメンバーというアイディアも分かりやすく、まったく無理がなく、ナチュラルすぎるほど練られている。 通常の“公式”に則らないのも目新しい手法だ。 主役級をあっさりと退場させる辺りはとても面白い。登場人物が銃をぶっ放して、小モンスターを殺すような展開にもならず、大モンスターを倒せる武器が見つかったり、弱点が発見されるようなことなども当然ない。 怪獣パニックモノにおいて、アンハッピーエンドというのもかなり珍しいのではないか。この“公式”の裏切りがとてもユニークだ。 未知なモノに対して、人々が逃げ惑い、アメリカの圧倒的な武力も役に立たないという展開は、深読みだが“テロリストへの脅威”を想起させられるものとなっている。 普通の怪獣パニック映画は巷に氾濫しており、普通に作りこめば「悪くない作品だね」で終わると思う。 しかし、「ブレアウィッチ」の手法を取ることにより、臨場感溢れる傑作が生まれた。 リアリティが追求され、通常の“公式”に則らなくても自然に受け入れることができたのは、この手法を取ったことによる恩恵だ。 「バンテージ・ポイント」など、最近のハリウッド映画は知恵を巡らして、工夫を施すようになっている。その手法に対しては、当然賛否があると思うが、賛否があることによってマンネリ化が打破され、活性化していくのではないか。 今後もこのような賛否あるアイディアが溢れた作品が登場することを期待したい。
[映画館(字幕)] 9点(2008-04-06 22:54:05)(良:3票)
全部

■ ヘルプ
© 1997 JTNEWS