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プロフィール
コメント数 2008
性別 女性
自己紹介 周りに映画好きな人があまりいない環境で、先日はメリル・ストリープって誰?と聞かれてしまったりなのでこのサイトはとても楽しいです。
映画の中身を深く読み解いている方のレビューには感嘆しています。ワタシのは単なる感想です。稚拙な文にはどうかご容赦を。  

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181.  シンプル・プラン 《ネタバレ》 
やっぱり、肩入れしたくなるのはB・B・ソーントン演じる冴えない兄貴。自分でも負け人生を自覚していて、良心のとがめにふらふら優柔不断で危なっかしいねえ。ああ、こんなのが仲間にいたらうまく行きっこないぞう、と予想できちゃう。その弟夫婦、一見、世間的にはまっとうなこの人たちがかなりの曲者。けっこうな小ずるさを正論で糊塗するハンクも嫌いだけど、欲に遠慮の無い鬼嫁ブリジットが怖い。ことごとく裏目に出る彼女の計画ったら冷血だわー怖いわー。ついにはヨメよりはるかに小心の主人公、札束焼却にて証拠隠滅。しかしヨメとの溝はもはや埋め難く残ったであろう。手に入らなくとも大金とは人生を狂わせるものなのね。
[CS・衛星(字幕)] 7点(2013-11-08 00:30:37)(良:1票)
182.  アメリカン・スナイパー 《ネタバレ》 
凄惨な戦場での体験が退役後も兵士の心を蝕むというテーマの作品はこれまでいくつも観てきました。主人公らは皆心を再生不能なまでに壊され、その再起のいかに困難なことかを思い知らされるものが圧倒的に多かった気がします。 本作の主人公カイルは伝説のスナイパー。160人を殺めてきた彼もPTSDに悩むことになりますが、回復がかなり早く描かれているのにちょっと驚きました。このことは彼が幼少の頃から受けてきた「番犬であれ」という教育が大きく影響しているのかなと思いました。番犬たること、「悪」である狼を退治することは神の意に添った「善」である。この岩のような信念がカイルをして「人殺しの理由を神に説明できる」と言わしめ、心の回復を早めたのでしょう。そしてこの「米国は世界の警察」な意識はアメリカ人の平均的な考え方であるとずっと感じてきたことでもあります。自らの価値観を善だと信じ、他国の紛争に手出し口出ししてきた結果、大使館爆破も9・11も誘発したのだとは彼らは考えない。同胞が攻撃されている、そのショッキングな映像に奮い立ち、戦場に自ら向かうクリスは極めて普通の感覚のアメリカ人です。 しかし非米国人の私は、他国の兵士に家に踏み込まれ、あげく凶暴なテロリストらに蹂躙されるイラクの一般市民の痛みの方に強く共感します。戦地で生きる市民にとって、禍の度合いはテロリストも米軍も大差ないのだよと冷徹に描かれており監督のフラットなバランス感覚がうかがえます。 けれど人間が戦場で心を喪うということ、その惨たらしさについてはイーストウッドといえども同テーマの他作品より抜きん出ているとは言い難く、平均的な出来の作品と思いました。
[DVD(字幕)] 6点(2019-03-16 15:17:32)(良:1票)
183.  女神の見えざる手 《ネタバレ》 
終盤に、激震を起こして逆転してみせるヒロインが実に鮮やか。もうびっくりでした。とにかくモーレツなキャリアウーマン・リズにJ・チャステインがばっつりハマっています。見るからに「才女」な冷たい美貌と口を挿ませぬ早口弁論。真っ赤なルージュは彼女の戦闘メイクのようにも見えます。劇中のフェミニストが指摘したように、彼女は男みたい。エスコートを買って性欲を処理するなんざ、まんま男性脳のヒトです。実際、リズのキャラは従来男性のキャスティングが多かった。彼女も本当に男だったらこんなに嫌われることもなかったでしょう。デキる女はおじさん達にとって脅威かつ超ウザいんでしょうね。 銃規制法案をめぐるロビー活動と世論の動き、擁護派vs反対派の暗闘といったメインの流れも息つかせぬ展開ですが、横糸として張られるリズの人格描写も上手いです。右腕だった若いアシスタントが造反したとみるや冷酷に切って捨て、同じチームのスタッフを人身御供としてマスコミにさらす女。(というイメージが制作&リズの戦略のうち、というのが分かるラストもまたスゴイ) 役者の表情も一つ一つに説得力がありました。スタートから仕掛けられていたリズの計略が明らかになった時のマーク・ストロングの呆然とした顔。「なんて女だ」といったところでしょうか。畏れすら抱いているような。観てるワタシも同じ顔してましたわ。 喚問されたエスコート氏が不都合な事実を証言しなかった、そのときのリズの表情も劇中一度だけのもので、印象的です。おそらく勝負師の世界でのみ人生を送ってきた彼女にとって、己の不利益を顧みず庇ってくれる人間に出会うのは初めてだったのではないかな。 全く想定外だったエスコート氏の男気には痺れました。池に落ちた犬に石をぶつける行為はしたくなかったのか、客の秘密は守るという仕事上の矜持を守り抜きたかったのか、そこは判然としないのですが。 偽証罪という法律上のペナルティを被っても己の道徳心に従った彼の天晴れな姿勢も、ラストに引き金を引くリズの背を押したのでしょう。 間違いなくJ・チャステインの代表作になるであろう、見ごたえ充分の一本です。
[CS・衛星(字幕)] 8点(2019-12-15 23:42:06)(良:1票)
184.  チューリップ・フィーバー 肖像画に秘めた愛 《ネタバレ》 
フェルメールの画から着想しました、と言われなくても気づくであろうほどにザ・フェルメールな光と影カットがてんこ盛り。17世紀オランダの世相や風俗の再現にも全精力を注入した見事さで、アリシア・ヴィキャンデルの纏う衣装の美しさと同時に、庶民の雑然とした暮らしぶりや公衆衛生観念から程遠い社会の姿も描かれています。お産で命を落とす女性が多かったのもうなずけます。この背景が物語の重要な起点にもなっていますし。 小顔のアリシアは17世紀コスプレもよく似合って、「画」にこだわる制作側の熱意に良く応えています。 美術は素晴らしい。けどヒロインの心変わりについての描きこみがほぼ無しなのが不可解です。チューリップ相場の暴落と合わせて主人公の熱も一緒に冷めたような描き方ですけど。いや、なんでよ?棺桶に入っていた数時間で一生モノの約束を反故にされては男の方もたまりません。 豪商C・ヴァルツはお手伝いの娘に屋敷を丸ごと譲って(そんなことあるかい)誰にとっても都合の良いことに外国へ去ってしまうし、ラストに来ての強引な話の畳み方が減点となりました。
[CS・衛星(字幕)] 6点(2020-11-01 23:25:59)(良:1票)
185.  ペンタゴン・ペーパーズ/最高機密文書 《ネタバレ》 
何度も映像化されてきたニクソン政権の政治スキャンダルを、M・ストリープとT・ハンクスの二大スターの安定感と演技力でしっかりした骨格の娯楽作に仕上げています。人物らの立場説明が簡略にして明快なので、事件そのものに疎くても理解が容易です。 クライマックスの盛り上げ方も巧いなあ!受話器を握りしめるストリープの、決断を迫られた緊迫感あふれる表情にこちらも手汗がにじみます。 また、この脚本は横糸として当時の世相であった女性軽視の視線をだびたび挟みます。ポスト紙社主のケイは「女が社主なんて」という目で見られている描写が多々あり、またストリープも随分と物腰柔らかな女性としてケイを演じます。それだからこそ、ヤマ場での経営者としての腹のくくり具合は大変に立派で胸を打つのでした。 ケイの置かれた厳しい立場を誰よりも理解していたのがハンクス演じるキャップの妻(彼女もまた大事な情報を伝えてもらえないという形で軽んじられています)というのも、皮肉が効いているなあと思いました。
[CS・衛星(字幕)] 7点(2022-11-18 18:32:35)(良:1票)
186.  スウィッチ 《ネタバレ》 
ヒロインは親しみやすい容貌の美人さんだし、導入部から外国で殺人犯にされてしまうあたりまではなかなか引っ張ってくれるんですけども。だんだん、お話を派手に盛ろうとする無茶なチカラ技にやや辟易しますね。人一人の存在を無かったことにするなんざ、旧ソ連の諜報機関レベルの大技。これを一般の女子一人でやるなんてやっぱ無理でしょ。「そんな馬鹿な」と客に思わせないための工夫がしてあるとは言い難い。 犯人の計画もつっこみどころ満載。無駄が多いしアラも沢山。そもそもヒロインが”部屋交換”にノラないかもだし、違うサイトを使うかもしれないし、友人と一緒に旅行しちゃうかもだし、ひょっとしてパスポートをこれから申請したりしたら時間がかかっちゃって、入れ替わり予定の解凍死体が腐っちゃうかもよ?って、ここまでイチャモンをつけることもないわけですが。
[CS・衛星(字幕)] 5点(2018-05-25 17:28:43)(良:1票)
187.  ブルックリン 《ネタバレ》 
これから社会に巣立ってゆく女の子たちにぜひ観て欲しい一本。ヒロインと笑い涙し、勇気を共に振り絞る経験ができるでしょう。 美少女だったS・ローナンはすっかり大人になりました。アイルランド出の野暮ったさをすっぴん顔で上手く表現できている前半と、垢抜けてゆく中盤以降の変身ぶりも印象的です。 都会に出たての心細さや、虚勢張りやホームシック、それをサポートする周囲との関わりといった彼女の生活が丁寧に描かれ、エピソードの一つ一つが胸に溜まります。船で出会った赤い服のアドバイザーや寮の先輩達、職場の主任、皆気の良い性質なのだった。初めはコワイけれど。 そして、場が急転換する第二部帰郷編。これがもう、胸がざわつく大変なことになるんだ。ええー、どうする?とワタシが苦悩しちゃったよ。なにしろ旅立つ前と状況が違いすぎる。一会社の事務を任せてもらえるし、以前は相手にもされなかった上層ランクの男子と親密になるにつれ、周囲まで期待を寄せてくる。なんと運命はズルイのか。故郷ってこんな風に絡め取ってくるものなのか。 彼女は決断します。エイリシュ、ああ、もちろんそれしかないよね。だってNYのそこは貴女が自ら切り開いた居場所なのだから。姉の後釜となって故郷に残るより、ずっとローズも喜んでくれると思う。
[DVD(字幕)] 8点(2018-01-22 00:11:20)(良:1票)
188.  セックスと嘘とビデオテープ 《ネタバレ》 
自分の心を正しく掴むことのなんて困難な時代であることか。登場人物の一人は自分を偽った副作用で不能を患うし、主人公はセラピー通いだ。他者や自分に嘘をついている4人の男女。ビデオカメラを介して己を客観視することで体裁を繕っていた心の防御壁が崩れる、そのアイデアといい、それぞれの人物の内面描写の巧さといい、当時26歳のソダーバーグは凄い脚本を書いたものだ。 ”カメラを向けられる”というのは自分をさらけ出すように感じるものなのですね。グレアムは撮られる側になった途端、狼狽して拒否した。彼のキャラクターが長くはない上映時間の中で実に巧みに描写されていて見事です。他者との深入りを避けて生きてる彼は車で放浪中。着るものは自分を護る黒。家を探して落ち着くのかと思えば、一ヶ月更新に契約したり、どうにも不安定さが伺える彼。電話は引かず他者とは希薄なスタンスを取ってはいるけど、でもドアはいつでも開いている。 役者4人皆良いけれど、やはりグレアム役のJ・スペイダーが凄くて。グレアムの繊細な内面が仕草や困惑した表情に滲み出てくるようで、複雑で屈折した難役を完全に自分のものにしています。 圧巻は終盤。直接の性的な接触でなくとも、心が絡み合ったその場の空気は酔ってしまいそうなほどに濃密。そう、女は心が求めていれば、相手の掌が触れるだけでも「達した」表情になれるものです。何故ソダーバーグはそんなことを知っているのだ。 封切当時と現在では感じ方が少し違って驚いた。むしろ経験を経た今の方が深く心に響くものがあり、時の流れで色褪せない、つまりこれは傑作といっていいのだろうな。
[映画館(字幕)] 10点(2011-09-13 16:59:19)(良:1票)
189.  ジュラシック・ワールド 《ネタバレ》 
いやこれワタシ良くできていると思います。これは今の子どもらの「ジュラシック・パーク」なんですよ。30年前にジュラパを経験した大人にはそりゃ当然物足りない。同じだもの。 でも「ワールド」が恐竜ムービー初体験だったら、そんな10才が私はとても羨ましい。映画ってすごいな楽しいなと思うだろうな。まず訪れたテーマパークの造型が素晴らしいじゃありませんか。客を飽きさせない最先端の観光地。千葉にディズニーランドができるずっと前、少女雑誌でフロリダのディズニーランドの記事を読んだ時に感じたときめきを思い出しました。行きたいなあジュラシック・ワールド。お土産たくさん買ってしまうだろうな。もっとも、本物を再現できるのに恐竜のホログラムはいるのか?とは思いましたが。 肉食恐竜のおっかなさを余すところ無く描き、子どもにはちょっと刺激が強いくらい。人がなかなかえげつない死に方しますよね。いい塩梅にユーモアも散りばめてますし、娯楽大作の看板に偽りなしです。
[DVD(字幕)] 7点(2019-03-07 17:19:06)(良:1票)
190.  ワイルド・スピード/MEGA MAX
公道を法規違反しながらぶっとばしていたチンピラな面子だったのに、ここにきて王道のアクション大作にまで成熟しました。車や人が吹っ飛ぶ派手なアクションには普通に目を見張るし、ブラジルのスラム街の危険なオーラには普通にビビるし、どんでん返しな展開には普通に驚いた。どのパートも一定水準以上の仕上がりではあるのですが、どうしても既視感がついてまわってしまうのはいかんともしがたい。そういうのも込みで楽しめるFFファン向けの作品です。 しかしなんだってハゲのマッチョをもう一人出してきたかなー。この二人の友情が熱く育まれる、そこんとこに、来る人にはぐっと来るんだろうが、暑苦しくて私は笑ってしまった。
[CS・衛星(字幕)] 6点(2016-07-27 00:23:14)(良:1票)
191.  誰よりも狙われた男 《ネタバレ》 
フィリップ・シーモア・ホフマンは当代最高峰の役者の一人だと思っている。彼の遺作となった本作を、多大な喪失感を抱きながら観賞した。 ル・カレ原作らしい重たさと切実な空気の中、ホフマンは身体つきそのままに、どっしりと緩慢に動く。ストレスや苦悩をぜい肉として纏っているかのようだ。部下に指示を出す時の動作や電話を取るしぐさ、おっさんジョークを飛ばす時の表情。バッハマンという一人の人間が完璧に造形されていて、もう私は目が釘付けになった。 「個人」を救いたい女弁護士と、全体像を見据えて国および地域の安全を担保したいバッハマンとは利害が必ずしも一致しない。彼女をアメと鞭で懐柔する時のプロの凄み。そしてプロ同士、すなわちCIAとの一騎打ちも冷ややかに尖っていて見ごたえがある。 物語は「大樹」であるところのCIAにバッハマンは鼻を明かされて終わる。「組織」の非情さと人間への不信感で言葉も出ないラストであった。ここのホフマンの仕事は誰ができるだろう。憤怒に身体を貫かれたようなその後姿。ああ彼がCIAらに一矢報いるような続編が見たいと心から思う。もう叶わない。とても悲しい。
[CS・衛星(字幕)] 8点(2016-11-28 18:07:59)(良:1票)
192.  エアベンダー 《ネタバレ》 
これは、つまらないよ シャマラン基本的に好きだけどこれはいただけない。展開の雑さといったら前代未聞。ざくざく話は進むけど誰にも肩入れできずじまい。早い、早いよ。王女様なんて、登場→主人公兄と恋仲に→精霊を助けるために死亡、の流れがほんの数カット分で終了。ざ、雑すぎる・・。火の国の王子の苦悩もぶっつりと描き止め。そしてなんといってもあのボウズに気持ちが入らない。この子を応援せにゃならんの? CGも哀しいかな、目が慣れちゃって驚きも少ない。与えられすぎて、想像力を失う。画面が素晴らしすぎて、逆にそう思う。
[CS・衛星(字幕)] 4点(2013-12-02 23:17:07)(笑:1票)
193.  ノマドランド 《ネタバレ》 
「圧倒的」、この映画を表現するならこの言葉です。広大でむき出しなアメリカの原風景、孤独、フランシス・マクドーマンドの演技。 定住する家を持たず、自動車生活を余儀なくされている人々。もちろん社会問題として捉えることもできるのですが(初めはそっち系の話だと思っていた)、監督の意図するところはそこではないみたい。 人が生きること、その原点・あるべき心の整理をマクドーマンド演じるファーンを通して私たちは見るのです。ファーンはじめ、同じ境遇の季節労働者の人たちは平均年齢が高く、皆痛みや喪失を抱えて生きています。人との関わりは保ちながら、でも結局は一人で死ぬのだと腹を据えて日々を重ねているその表情は諦念というのでもなく、静かにきっぱりと‶受け入れている”ようでした。 マクドーマンドの乾いたノーメイク顔はもうそれだけで演技を超越しています。ドキュメンタリーと言えそうなほどです。 ノマドの果てに生を終える人、ノマドをやめて屋根の下で暮らす人、それぞれです。過去を大切に抱きしめながら一人きりで大地を踏みしめるファーンの後ろ姿は決して哀れではないけれど、彼女の抱く喪失の悲しみ、痛みが少しでも和らいでほしいと切に願いました。
[映画館(字幕)] 9点(2021-06-06 18:02:47)(良:1票)
194.  ボヘミアン・ラプソディ 《ネタバレ》 
とても話題になった本作ですが音楽バンド映画として観るならとても凡庸な出来です。平均点ど真ん中くらいです。おそらくクイーンの楽曲が感動の底上げに三役くらい買っているのではないでしょうか。 クイーンの20年間を2時間に収めるのはたしかに難しいけど、どんな種類の伝記映画も抱える課題を克服できていません。各エピソードの羅列にとどまっており、フレディの内面を推し測るにはBSで放送していた英国製のドキュメンタリーを見た方がよほど有効です。 ライブ・エイドでのステージをクライマックスに持ってきたのにはなるほど、と思いました。当時わたしもテレビの中継にかじりつき、VHS3本に録画を収め、ラジオの音源も録音したものでした。お目当てのミュージシャンはクイーンではなかったのですが、しかし彼らのステージは間違いなくライブエイドにおける№1のパフォーマンスでありました。フレディの圧巻の熱量、声量、肉体の躍動には頬をひっぱたかれたかのような衝撃を覚えたものです。 そのライブを完璧に再現したという評価の本作。セットの細部やメンバーの動作など、確かに完コピできているとは思います。 でも、でもフレディじゃない。ラミ・マレックは誠実にフレディ・マーキュリーを演じたと思うけれど、そしてこれは彼にはどうにもできないことだけど、ラミにはフレディのような体格が無いのです。あのステージ映えする八頭身、長い脚、厚い胸板、頭部の小ささ。彼が舞台に仁王立ちして腕を高々と突き上げた時の筋肉美。他を圧倒するあの立ち姿をもってして、フレディはフレディ・マーキュリーたりうるのです。 汗光りしながら、マイクコードを華麗に脚でさばきつつステージを縦横に駆ける往時の「本物」の映像と比べると、最後まで涼しげにパフォーマンスを終えるラミ・マレック版ではフレディのオーラもナルシズムも感じることはできませんでした。 ブライアンやロジャー、ジョンが錯覚しそうになる位本人とソックリの役者さんなので、余計にラミが浮いて見えてしまいました。
[CS・衛星(字幕)] 6点(2021-07-17 00:07:25)(良:1票)
195.  スティング
一昔前のスターってなんでこうみんな顔に深みがあるんでしょう。美醜の問題ではなく、美女が一人もいないのに男も女も端役もいい顔揃い。いわば顔の厚みに寄りかかって安心して観られる心地よさ。仕掛けの大掛かりなことに心奪われ、はらはらし、大団円でほこっと笑う。けだし名作。
[映画館(字幕)] 8点(2011-12-27 02:13:59)(良:1票)
196.  インフォーマント! 《ネタバレ》 
マット・デイモンの怪演のすんごいこと。彼のパブリックイメージから、マット=好青年との思い込みで観始めるとえらいことになる。M・デイモンの起用は観る者に目くらましをかける効果があっただろうな。すっかり騙された・・マークにもソダーバーグにも。 何しろこの男はおそらく良心の無いタイプの人格障害と思われる。周囲の人間はことごとく傷を負う。人を傷つけているのに良心が痛まないから、表情は平板で謝罪の言葉を並べながらけろりとしている。 この、”ああ言えばこう言う”輩に翻弄されるFBIのブライアン捜査官が私は気の毒で仕方なかった。FBIに同情することなんてほとんど無いのだが。いかにマークが怪物か。あまつさえ、出所後はまたどこぞの企業のCEOに納まってるとは空恐ろしい。 犯罪話なのに音楽はコミカルで全編軽いタッチで描かれる。マークが棲むのがそもそも清廉でもない巨大企業だからか。この男の素性と事件の全体像をちょっとずつ小出しにしてゆくソダーバーグ十八番の展開が見事に効いている。 ラストに明かされる、一番(?)大きい真実ときたら。あいつヅラだったのか。あーあ。こんなことにまで騙されるとは。ワタシもブライアンと一緒に引きこもりたくなっちゃった。
[CS・衛星(字幕)] 7点(2017-02-15 18:12:18)(良:1票)
197.  ソウ
肉体的な痛みに弱い人には不向き、私のことですがあああーほんと早く終わってくれぇーと思った。こわいこわい。グロい殺人描写が懇切丁寧なうえ、生理的嫌悪感をもよおす小汚いトイレが舞台ときてセブンや羊のような映像美は皆無。しかしながら終始緊張感を切らさない展開や人を食ったようなラストなど、サスペンスとしてはAクラス。
[CS・衛星(字幕)] 7点(2011-10-05 16:05:24)(良:1票)
198.  ウエストワールド 《ネタバレ》 
すんごく先進的な、逆に50年経った現在の方がより身近な恐怖に感じるテーマですね。 AIの暴走といえば1968年のSF金字塔キューブリックの「2001年宇宙の旅」を思い起こしますが、本作はテーマパークで起こる殺人事件という気楽さですので、件の名作が提起していた哲学的命題の解釈に悩むことは一切無く、見やすいです。 アメリカって73年当時で「テーマパーク」という娯楽施設のコンセプトがこうも進んでいたんですね。日本の地方都市に住んでいた子どものワタシにとって、当時娯楽施設は動物園に併設された遊園地かせいぜいデパートの屋上くらいのもの。ディズニー・ランドの情報を少女雑誌で読んでまさに夢の国だと圧倒されていた、そんな時代に今でも実現すれば大当たりしそうな過去世界体験型のテーマパークを(映画の中にしろ)創り上げ、それだけに留まらずコンピュータが人間の手を離れる恐怖をも織り込んだとはこりゃすごい。 やりっぱなしで後片付けせず、なラストもオチの無い怪談を聞かされたような恐さの余韻が残ります。 ユル・ブリンナーがターミネーターの原型だったとは知らなかったなあ。
[CS・衛星(字幕)] 7点(2021-05-22 23:18:42)(良:1票)
199.  007/ノー・タイム・トゥ・ダイ 《ネタバレ》 
ダニエル・ボンド最終章にふさわしい派手さと華やかさ。けっこうな長尺ですが、飽きさせずに引っ張る演出はさすがです。序盤から一級のサスペンス演出で見せる殺人者の登場、蜂の巣にされる車内の緊迫感(すっごい防弾力だ)。技術もアイデアも出し惜しみせずにガンガン来る贅沢さ。 ただ、キレた演出ぶりは中盤のキューバ潜入パーティでピークを迎えた感があり、話が進むにつれてラミ・マレックの悪役度も銃撃戦のヒリヒリ感もパワーダウンしちゃったのは残念。 とにかくも、今作の目玉はパロマを演じるアナ・デ・アルマスの鮮やかさ。美しくキュートでアクションのキレも申し分なく、見惚れてしまいました。ボンドに捨てられてうじうじしているレア・セドゥがせっかくの演技力を腐らせているのに比べて、新生ボンド・ガールのなんと素敵なことか。出番が少なくて嘆いているのは世界中で私だけではないはず。 そして007シリーズも時代の流れで変わっていくものなんだなあと感慨深かった。だってジェームズ・ボンドが妻子持ちになるなんて。マイホームパパになってしまっては世界観がひっくり返りますもんね。 なんにせよD・クレイグには素敵なボンド像をありがとうと言いたいしQファンのわたしは今作自宅に招かれて(?)とても喜ばしかったです。インターホンでボンドの姿を認めた時のいやそーな顔がたまりません。
[映画館(字幕)] 7点(2021-11-18 23:32:57)(良:1票)
200.  カリフォルニア・ドールス 《ネタバレ》 
コロンボ警部でも、孫に物語を聞かせる祖父でもないP・フォークが口八丁のマネージャーを好演、実にしっくりきてます。ほぼ無名の女優二人のプロレスラー、ドールズの懸命さも良く伝わる人物描写のおかげで、ラストの大一番の大会までにはすっかりドールズびいきになってしまう。ここでがぜん輝くのが海千山千のP・フォークの根回し演出。投資とばかりに札びら切って、反則すれすれのヤラセ応援あり、過剰コスチュームあり。いや楽しい楽しい。資金源がイカサマ博打(とカツアゲ)というのもいかがわしくて良いですな。ストーリー展開は王道なれど、茶目っ気あふれる逸品であります。
[CS・衛星(字幕)] 8点(2014-05-06 00:21:55)(良:1票)

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