21. 13階段
サスペンスものとして気楽に観ようと思ったのだが、余りにもシリアスな題材、人間ドラマの深さに思わず引き込まれてしまった。確かにサスペンスだけを捉えるのなら腑に落ちない点はあるし、ラストも都合が良すぎるように思える。だがしかし今作は痛切に人間の生き方を訴えてくる。泣かせる演出もいつもなら興ざめしてしまうのだが、テーマがテーマなだけに今回ばかりはすんなり入り込むことができた。単なる死刑廃止論を唱えているように見えるその裏側に、人の生き様を問う熱い何かがある。恨みは輪廻するものであり、犯人が死んでも消えるものではないのだろう。苦しみや悔いを抱えながら生きていく事こそが、本当の報いと償いなのではないだろうか?久々に原作を読んでみたくなった映画である。別の角度からみると大御所役者陣の安定した演技に加え、反町の新たな演技の開拓、宮迫の意外な演技力、脚本家・宮藤官九郎の役者としての一面が見られる点が興味深い。 9点(2004-02-05 02:32:55) |
22. トゥルー・ロマンス
豪華な出演陣、脚本はタランティーノ、音楽に定評のあるハンスジマー。これらを抜きにしても楽しめる痛快なアクションは何度観ても楽しめる。盛り上がっていくワクワク感、それをきちんと消化してくれるラスト。観た後にとても満足できる映画だ。 9点(2004-02-02 21:33:21) |
23. Love Letter(1995)
《ネタバレ》 ロマンチックなストーリーと岩井監督らしい映像美、切ないピアノ曲が見事に融合した傑作。ノスタルジーを撮らせたら右に出る者はいない、と個人的には思っているのだが中でもこの作品は別格である。全体的にゆったりと流れていくのだがハラハラさせられる場面も盛り込んであり飽きずに観ることができる。酒井、柏原の両者が中学時代のリアルな初々しさを好演している。ひとつ残念なのは、中山美穂が一人二役の為、冒頭の部分がわかりづらい点。もう少しわかりやすく差別化したほうが良かったと思う。しかしラストのオチは何度観ても心を揺さぶられるほど素晴らしい。本のタイトルが「失われた時をもとめて」だったのは今作のテーマを隠喩しているのだろう。 9点(2004-02-02 19:14:04) |
24. ドラえもん のび太の海底鬼岩城
小学生時代、映画といえばドラえもんだった。毎年新作を楽しみにしていたものだ。その中で私が最も印象深いのは本作である。魔界大冒険も素晴らしいのだが、神秘的な雰囲気とバミューダ海域がネタに出てくるところが当時は怖くて面白かった。ドラえもんシリーズが一番脂の乗って調子が良かった頃に生み出された傑作である。子供向けアニメといえど侮ってはいけない。ハリウッドの粗末なB級冒険映画よりもずっと面白いのだから。 9点(2004-01-27 19:25:18)(良:1票) |
25. 禁じられた遊び(1952)
子供の視点から見た戦争がいかに残酷であるか。彼らが純真であればあるほどその重さがずしりと心にのしかかる。観ていてとてもつらく悲しくなる。何度も観たいと思わせる娯楽要素はまったく皆無だ。しかしひたすら静かに訴え続ける映画であり、一度観ただけでも一生忘れることはないだろう。映画史に残る衝撃作であり名作。 9点(2004-01-27 15:21:10) |
26. タイタニック(1997)
泣きどころが幾つも盛り込まれているのでどこで泣くかは人それぞれだと思うが(特に男女間で泣きのツボが違うようだ)、この映像と音楽の素晴らしさには心の底から感服である。それに付け加えセットの細かさ、衣装などチープさが微塵も感じられない。ロマン派・完璧主義のキャメロン監督の真骨頂といったところか。三時間という大作のせいか中盤で少々間延びしている点が惜しい。やむなく運命に引き裂かれた悲恋物語は手垢がつくほど作られてきたが、今作は堂々と王道をいっているし終わり方も綺麗。 9点(2004-01-27 05:02:12)(良:1票) |
27. バックドラフト
よくあるパニック映画なのだが、兄弟愛というテーマが映画の質を底上げしたように思う。前妻とのゴタゴタは余計。しかしながら消防士を凛々しく描いた点と音楽が素晴らしい。火の迫力も満点。 9点(2004-01-27 03:50:38) |
28. バトル・ロワイアル 特別編
通常バージョンと両方観たが、こちらはバスケの試合シーン等を挿入し、情緒的にまとまっている感がある。もちろん原作小説は素晴らしいのだが、映像化することによって良くも悪くも生々しくなっている。BRの世界は空想の中に投影した現実社会だ。その危うい崖っぷちの世界の中でもしBR法が出来たら城岩中学の生徒のように我々は友人に刀を向け、銃を発射するだろう。誰だって自分が一番かわいい。しかし同時に「この人だけは守りたい」と思うかもしれない。その葛藤がとても人間くさくて共感を覚える。この映画は中学生同士が殺しあうという一見非現実な設定でありながら、人間のエゴイズム、弱さや脆さと同時に懸命に生き抜くことの必要性を強く訴えているのである。日々の生活に疲れた時にこの映画を観れば、おのずと答えが見つかるのかもしれない。 9点(2004-01-27 00:04:41) |
29. 青い春
まさに青春である。青い春である。暴力高校という一般的には馴染みの薄い設定であるが、その裏に隠されているのは将来への不安、現実での葛藤という十代なら誰しもが抱える鬱憤の日々である。それを象徴的に表しているのが主題歌だ。ロックとはそもそも世の中に対する自己主張を表現する手段だった。それらが融合し観た者に深い感動を与えてくれる(私は特別ミッシエルガンエレファントのファンというわけではないが)。音楽と映像が見事にマッチした秀作。刹那さが心地よい傑作である。 9点(2004-01-23 16:19:02) |
30. 日本沈没(2006)
オリジナル版未見、原作未読。確かにハリウッドの災害パニック物を要所要所で拝借している感はあるが、そもそもパニック映画というものは良作も駄作もそれぞれ似たり寄ったりなのでさほど気にはならなかった。邦画としてみると最近のものではきちんと手間隙をかけて作られている印象を受けた。さすがにアルマゲドン等には劣るが、その他上映が終わればすぐに忘れられてしまうようなハリウッドの駄作的パニック映画に比べたら今作品のほうがずっとマシである。なにより、日本人による日本人のためのパニック映画である。日本人である我々が観ずして誰が観る?NYの自由の女神が災害によって破壊されてもいまいちピンとこないが、京都の五重塔が壊れてしまう様は日本で生まれ育った者からすればリアルに恐怖を感じる。邦画のパニック物はどんどん進化している、と感じさせてくれる力作だった。中途半端につけたしたような恋愛要素ではまったく感情移入できなかったが、火山・地震など日本ならではの災害が起こる様子は見ていて気持ちがいいぐらい。やはりパニック映画は大画面・大音量の映画館で観るべき。ちっちゃなテレビ画面で観ても今作品の醍醐味は味わえない。 [映画館(邦画)] 8点(2006-07-18 06:31:39) |
31. ローレライ
二時間以上もある大作ではあるが、展開が早いせいか飽きなかった。しかしそれだけに走りすぎている感もある。艦内で次々と起きるハプニングなどエピソード自体は悪くないのだが、人物同士の絡みが少ないため感動が薄い。CGは確かにリアリティが感じられないが、深海の神秘的な雰囲気は伝わってきた。戦闘シーンにもう少し迫力がほしいところ。音楽は文句なし。BGMやパウラが歌う透き通った歌声は小説では得られない、映像ならではの味わいがある。音楽も映画の大切な一要素であることを痛感した。役者も豪華な面々をそろえており、大御所や流行りの若手俳優のみならず、ピエール瀧やKREVAなど意外な人物が出演している点が興味深い。号泣するというより迫力や展開を楽しむ系統の娯楽に徹した映画であり、歴史的背景や辻褄など細かな点は目を瞑ったほうが楽しめる。当時の思想を今改めて振り返り、生きることの大切さを訴えようとする良作であると感じた。但しCGの安っぽさはどうしても目につくので、できれば映画館で鑑賞することをお勧めしたい。 8点(2005-03-09 15:31:11) |
32. キル・ビル Vol.1(アメリカ版)
下手糞な日本語、ユーモアにあふれる人物設定、こだわりの選曲、笑えるぐらいベタな映像、どこをとっても面白く観られる。タランティーノが日本を最大にオマージュした作品とあればおのずと期待してしまうが、予想以上の面白さだった。ストーリー性などは皆無といってもいいほど軽視されているが、この作品はおもしろおかしい日本を堪能する作品だからこれで良いのだと思える。むしろ無闇にストーリーなど飾らないほうが無難であろう。気楽に楽しめる娯楽映画。ただ血しぶきが苦手な人には向かない。 8点(2004-09-15 18:38:30) |
33. アイデン&ティティ
これは観る者を非常に選んでしまう作品だろう。或る者には陳腐な青春群像劇としか映らないだろうし、また或る者にとっては共感を呼びノスタルジーに浸らせ、涙を誘うパワーがある。つまりは今から約十数年前に起こった空前のバンドブームに対するオマージュ作品なのである。当時とある深夜番組でバンドの勝ち抜きコンテストが行われていた。これをきっかけに、バンドブームが日本中に巻き起こった。当時十代・二十代だった若者は誰もが何かしらの形で熱をあげていたものである。(これは作中にもちらりと登場するビデオ画像、友情出演者、はたまたコメントを寄せた人間たちのリストを見れば、この番組がいかにとてつもない影響力をもっていたかが窺える)しかしブームというものはどんなものでもいつかは終焉を迎える。いいようにメディアに利用され、利用価値がなくなった途端捨てられたバンドマンたちは一体どれぐらいいるのだろうか? ただの一ファンだった私ですらそう思うのだから、当人たちは胸が痛くて見ていられないだろう。もしくは「あんな頃もあったな」と笑っていえるのだろうか? ロックとはそもそも反骨精神に満ちた音楽だった。それが商業化され、ビジネスとなった時、ロックの精神は死滅する。同時にロックを愛する者のアイデンティティはぐらぐらと揺らいでいく。真のロックとは何なのか? それをこの映画はスピードウェイという架空のバンドを通し、我々に訴えているのである。軽いようで奥の深い作品。構成面ではややダレる部分があるものの、かつてのバンドブームが思い出の一部である者にとっては忘れ難い一作となるやに違いない。 8点(2004-08-29 23:55:38) |
34. 下妻物語
漫画が実写化された映画、そう考えたほうが良いだろう。テンポもよく笑いのツボも押さえている。個性的な役者たちをうまく使っており、適材適所といった印象。 深田恭子の棒読みな台詞がやや気になったが、ロリータ少女役は見事にハマっていたし、土屋アンナのヤンキー役もなかなか堂に入っていた。映像もなかなか綺麗に撮れていたように思う。ストーリー展開に捻りは無いが、設定や映像で魅せる作品となっている。 8点(2004-06-02 01:51:34) |
35. HEAT 灼熱
コミックが原作だが、なかなか忠実に作られている。起用俳優が若干イメージと異なるものの大きく期待を裏切られることはない。若手俳優が主人公であり、その仲間も若いという点が従来のやくざ映画と比べて珍しい点でもある。原作を知っている方は御存知かと思うが、主人公の唐沢辰巳はアウトローな身分でありながらも非常にヒーロー然している。仲間を見捨てず、性根の腐った相手を容赦なくぶちのめし、キメ台詞を吐く。実はこの設定は昔から日本人に好まれてきた勧善懲悪スタイルであり、展開はまるでアウトローな水戸黄門。だからか暴力描写があっても安心して観ていられる。やくざ映画の入門編としては文句なし。映像がやや粗雑なのがマイナス要素ではあるが。 8点(2004-05-29 05:07:45) |
36. 世界の中心で、愛をさけぶ
泣ける映画は好きだが、これはどうしても「こうやったら日本人は泣く」というツボを心得すぎていて、その手法をあざとく使いまくっている印象がある。泣きどころのエピソードもどこかで見たような気がするものばかり。そんな泣かせ攻撃を並べただけなら私は駄作の烙印を押したであろう。そもそも十代の暴走愛に悲劇という後ろ盾があれば泣いて当然。しかしそこでこの作品が一歩踏み出したものとは何か?それは要所要所での小物使いの巧さである。カセットテープ、写真、台風、婚姻届、遺骨。これらの使い方が非常に巧かった。大沢たかおは泣く演技がなかなか達者である。そして山崎努はとても重要な存在感を放っていた。映像的にも80年代半ばの流行をよく研究しており、現在20代後半~30代前半の者にとっては懐かしい感傷にかられることは間違いない。悲劇的でありながら鑑賞後の後味も良い。少女漫画風味であることは否めないが、逆にいえば少女漫画における恋愛物語で育った者には好まれる内容であることは確か。私ももちろんその一人である。 8点(2004-05-25 04:08:42) |
37. シックス・センス
一度目はオチに気付かず「そうきたか」という驚きがあり、二度目はオチを知っているから数々の計算された伏線に頷きながら楽しめる。謎が気になってひきつけられることは間違いないし、サイコホラー的なゾクゾク感もある。そういったミステリーホラーでありながら感動の要素も忘れておらず、様々な層に受け入れられる作品である。 8点(2004-02-24 23:16:05) |
38. 打ち上げ花火、下から見るか? 横から見るか?(1993)<TVM>
これほどまでに小学生の視点で世界観が描かれていることに素直に驚く。そして時代の空気を切り取るのが非常に上手い。「スタンド・バイミー」に近い秀逸なノスタルジームービーと言えるだろう。誰もが自分の小学生時代を思い起こすに違いない。時間的にも一時間未満と手ごろなので、もう一本借りたいけど長いのはちょっと・・・という時にもお薦めである。岩井氏の感性が合う人にはたまらない作品。 8点(2004-02-17 23:27:55)(良:1票) |
39. チャイルド・プレイ(1988)
シリーズの中ではやはりこれが一番だろう。ホラーとしては観てはいけない。これはサスペンス仕立てのコメディなのだ。チャッキーというキャラクターをこの世に生み出しただけでも充分評価に値する作品である。生意気そうな顔をして人を殺す人形、という設定自体がファンタジック。チャッキーの動きがチープであるほど愛らしく思えてしまうほど、内容云々よりキャラが勝った映画。 8点(2004-02-02 20:54:36) |
40. エイリアン2
エイリアンシリーズはそれぞれが個性を放っているが、個人的には2が一番面白い。ふんだんにエイリアンが登場しても映像がちゃちくないのはさすがこだわりのキャメロン監督。エンターテイメントをよく理解している。シガニーウィーバーがとてもかっこよく撮れているし、彼女の演じる戦う女戦士はターミネーター2のリンダハミルトンを彷彿させる。 8点(2004-02-02 20:07:50) |