1. period
《ネタバレ》 帯には「美しすぎる暴力」とあるけれどこれは間違いで、暴力自体もあまり詳細に描写されるわけではない。実際には拠り所のない暴力的な運命を辿りながらも確固たる意志で生きようとする、健気な強さが美しいのだと思う。幼い兄弟の視点で進むのだが、とくに愛らしい弟のほうが怒りに捕われているだけに危うく、見ていて痛々しい。ある場面で、彼がある人物を指して「地獄へ行く」と平然と言い放つくだりがある。子どもにこんな言葉を言わせる家庭とはなんなのだろうか。冷静に綴られる台詞がフィクションとは思えないくらい、心に刺さる。真に子どもらしくあることを許されない子ども達の日々。これから明るい展開があるとは思えないが、祈るような気持ちで最後まで読むだろうと思う。 9点(2007-11-04 03:04:29) |
2. 百鬼夜行抄
《ネタバレ》 ほぼ一話完結で、毎回毎回入り組んだプロットを組み上げているのがすごい。マンガなのに叙述トリックまで取り入れているという巧みさ。幻想ホラー風味ではあるけれど、個人的には恐怖のツボが合わない感じなので純粋にミステリとして楽しんでます。凛とした風情の画もなかなか。作者の浮世離れを反映してか、現代を舞台にしているのになぜか全然そんな気がしないという独特の空気感が面白い。 8点(2008-04-14 13:44:53) |
3. ヒストリエ
古代オリエントの智将エウメネスの成長を描く歴史冒険譚。壮大な歴史ドラマはもちろん、エウメネスがいかに知恵を練って難局を打開していくかという知的な楽しみを追うだけでも充分に読ませる。とくに侵略者から村を守るくだりには心が躍った。武器と戦略の変遷は、そのまま歴史の変遷に直結する。紀元前のギリシアなんてまったく興味の範囲外の世界だったけど、遠い時代の遠い国の人々が、この作品では非常に生き生きと動いていて距離を感じさせない。連載がなかなか捗らないのがもどかしくてならない。 8点(2007-11-06 01:10:48) |
4. 漂流教室
《ネタバレ》 人、死にすぎ。まだあどけない小学生の死体が累々と積み重なっていくさまに、開いた口が塞がらない。殺人鬼と化す大人たち、砂漠から現れる異形の怪物、狂ったコンピュータに支配される遊園地、鉄砲水から黒死病まで、ありとあらゆる災難が子ども達に襲いかかる。まあ人がたくさん死ぬ話ならそう珍しくはないのだけれど、年端も行かない子どもばかりがこんなにも大勢、容赦なく殺される作品は後にも先にもない。かつてはホラーの分野でも幼い子どもの死を描くのはタブーとされた時代があったはずだし、そうでなくとも無意識のうちにブレーキをかけるのが普通の感覚だと思うんだけど、そこが天才楳図かずおのすごいところであり、怖いところでもある。そういう意味では連載当時は残酷描写が騒がれたそうだけど、連載されているのがたとえ現代だったとしても衝撃的なのには変わりなかっただろうと思う。 たとえば鉄砲水が校舎を襲うエピソードで、戸を押さえていた女の子の手首が激しい水流のためにあっさり千切れてしまう場面がある。これを普通に描けてしまうのは、語弊があるのを承知ではっきりいえば、頭がおかしい。登場人物に対して容赦のない作家は大勢いるけれど、楳図かずおの場合、それがあまりにも普通だ。上手い言い方が見つからないが、これが平凡な作家ならどこかしら「ほうらすごいだろ、こんなに残酷だぞ」という気負った感じがするものだが、対する楳図氏は至極冷静に、平然とやってのけてしまう感じがする。 野暮な突込みをさせてもらうと、現実の小学生がこうした状況に置かれたとしてもけっしてこのマンガのようには行動しないだろうとは思う。またクライマックスでIQ230の天才少年が「学校がタイムスリップしたのは、ダイナマイトのために光の速さで校舎が揺さぶられたからだ!」と説明したのには腰の骨がこんにゃくになった。しかし楳図氏の天才思考回路に異を唱えても無益というもの。おそらくは作者当時のアイディアのありったけを注ぎ込んだに違いない、常軌を逸した世界。読んでよかったと思う。こういうぶっ飛んだ漫画も、一度体験しておいて損はない(害はありそうだけど…)。 6点(2007-11-25 01:16:51)(良:1票) |
5. 彼岸島
《ネタバレ》 絵、下手。人体がリアルじゃない画でグロ描写されても、なんかなー、微妙なんだよなー。しかも途中からバトルものになってきて、真面目に読めなくなった。嫌いではないけれど、なんとも言い難い。とりあえず続きを読む気は失せた。 4点(2008-04-12 23:08:08) |