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プロフィール
コメント数 127
性別 男性
ブログのURL https://www.jtnews.jp/blog/23806/
年齢 41歳
自己紹介 多少の恥は承知の上で素直に書きます。

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1.  おやすみプンプン
今さらながら漫画という表現の奥深さを思い知らされた。一見して超シュールな世界観でありながら、突き刺さるようなリアリティがある。とくに2巻、もはや切ないという言葉で語り尽くせる次元じゃない……。  まだまだ序盤のようですが、完全にノックアウトされました。
10点(2008-04-20 13:08:46)
2.  よつばと! 《ネタバレ》 
夏休み初めからの一日一日を余さず綴っていく日記のような趣向で、ありふれた(??)日常を重ねていくだけなのに、飛びぬけたエンターテイメントとなっています。  非現実的にはならない程度に個性的なキャラクターたちがみんな魅力的。今のところ「現在」を丁寧に汲み取っていくだけで回想シーンをまったく混じえずに展開しているので、よつばや父ちゃんのバックグラウンドもほのめかされるだけでほとんどわかっていない。これもちょっと珍しい趣向だと思う。  ストーリーも絵も素晴らしいし、さまざまな伏線をどのように収束させていくのかも興味の尽きないところです。
10点(2007-11-01 21:58:41)
3.  うしおととら 《ネタバレ》 
つい最近読み終えたのだけれど、少年時代に読まなかったのが本気で悔やまれる。  とにかく、熱い。うしおはいかにも少年マンガ的な主人公に輪をかけたような性格で、明るくてバカで乱暴で、真っ直ぐで正義感が強くて、絶対にあきらめない不屈の意志を持っている。しかし典型的なキャラクターであるようでいて、不思議と厚みがあり、ひとりの人間としての存在感がある。台詞もまたびっくりするほどきれいごとばっかりなのだが、なぜか鼻で笑ってすませることのできない説得力を持っている。  これはきっと作者が、ほんとうに胸の底から湧き出てきた自分の“声”を作品に乗せているからだと思う。エピソードのなかには明らかにご都合主義のものも散見されるんだけど、それを許せてしまうだけのほとばしるようなエネルギーがある。作者が心血を注いで描いたものだということがはっきりと感じ取れる。  そして何よりラストに向けて収束していく物語展開が素晴らしい。当時全盛だった少年ジャンプの連載が編集部の意向でだらだらと延ばされていったのに対して、本作はあらかじめ予定されていた大団円を迎える。この最終回、涙をこらえるのは難しい。しかも作者があとがきで「このあと登場人物たちはみんな幸せになりました」と断言。これは反則だっ(泣笑)。  明日を信じること、人を信じること、正義を追い求めること。少年マンガのもっとも素朴なテーマを嫌味なく、完璧に昇華させている。こんなに強くてあったかくて、気持ちのいいマンガはない。
10点(2007-10-26 00:37:12)
4.  リバーズ・エッジ
たぶん人生でいちばん好きなコミック。描かれたのは十年以上前だけれど、これほど現代に特有の空虚さ、乾いた絶望感を的確に捉えた作品は他にないんじゃないだろうか。生きているということにリアリティがない感じというか、日常におけるあっけらかんとした絶望を巧みに描き出している。登場する少女、少年達には拠り所にできるようなものがまったくなくて、ただ痛みだけが確かなものであるかのようにすら見える。唐突に引用される詩の効果も抜群で、一度読むと忘れがたい。「平坦な戦場で生き延びること」、その難しさ。きれいごとを一切抜きにして、日々を生きていくことの意味を問う。ポジティヴなメッセージはほとんどないけれども、この切実さが、不思議と読む者に力を与えてくれる気がする。  好き過ぎてあまり語るとわけわかんなくなりそうだからここらへんでやめとくけど、間違いなく、大傑作です。
10点(2007-10-25 00:40:34)(良:1票)
5.  アオイホノオ
まだ一巻しか出ていないので感想を書くのは時期尚早という気もするけれど、好きなので。八十年代の、本気で漫画の世界に取り組もうという大学生の青春が相当リアルに、かつ笑いをまじえて展開される。『めぞん一刻』の連載開始に、「騙されんぞ高橋留美子……高橋留美子!!」と一人で意気込む場面には相当笑った(個人的にはこれがきっかけで『めぞん一刻』にも手を伸ばした)。若き日の庵野秀明のエピソードも強烈だが、たぶん誇張はないんだろうな。作品全体に流れる、ノスタルジックな空気がまた素晴らしい。
9点(2008-06-19 22:44:22)
6.  群青学舎
この素晴らしさを、どう言葉で表現すればいいのかわからない。懐かしいようで新しい、温もりのある画と、なんてことのない素直な物語を宝石にしてしまう、鮮やかな語り口。これで「新鋭」? だとしたら、入江亜季さんには語り部としての天性の才能があるのだろう。  国や時代を超えたさまざまな舞台で描かれるヴァリエーション豊かな短篇集で、一篇一篇が楽しい。まぶしいほどに青々とした青春もの、台詞のない秀逸な幻想譚、なぜか一巻に一話は入っている囚われのお姫様を題材としたファンタジー、どれも切り口は違えど、確かに群青色がかって見える。  自分も「薄明」がいちばん好きです。無理にベスト3を決めるとしたらこれと、「待宵姫は籠の中」「時鐘」、でしょうか。「ニノンの恋」や「赤い屋根の家」なども愛らしくて捨てがたい。(ていうかタイトルの付け方も絶妙だなあ。)
9点(2008-05-23 12:10:36)
7.  新吼えろペン
破天荒さとリアルさがちょうどいいバランスになって、最高に面白い。それを言っちゃお終いだよ、ということを毎回のように言ってくれるのが気持ちいい。その点では前作を遥かに凌駕していると思う。
9点(2008-05-05 03:04:48)
8.  大原さんちのダンナさん――このごろ少し神経症
エッセイマンガが増殖する中、ひときわインパクトが強かったのがこれ。潔癖症から縁起恐怖までさまざまな神経症を抱えたダンナさんとの日々を、変に深刻ぶらずに愉快に綴る。シンプルでしっかりした絵柄も可愛らしく、読みやすい。  ダンナさんの強烈なキャラクターのおかげで単純に読み物として面白くって、それでいて読み終えた頃にはやんわりと価値観が変えられている。こういう生き方も、ありなんだなあと。いやー、こんなダンナさんみたいな人が身近にいたら楽しいだろうなあ。変人といえば変人だけど、言い方を変えれば恐ろしく感受性が鋭くて、才能豊かな人だと思う。あと、何気に著者自身のキャラクターもかわいい。  唯一気に入らないのが、家庭科の教科書みたいに華のない装丁のデザイン。ちょっと地味すぎて、インパクトのある内容に相応しくない。帯に載っていたせっかくの推薦文も効果的に使われているとは言い難く、すごくもったいない。こんなにいい作品なんだから、もっと上手にプロデュースしてあげてほしい。
9点(2008-01-01 21:48:23)
9.  SUGER
新井英樹が描くだけあって、他に観たことのないような斬新なボクシングものになっている。キャラクターもそうだけど、単純に表現として衝撃的な手法も多くて、読んでいて驚かされることもあった。  主人公の石川凛はボクサーとしてはまごうかたなき天才で、でも超おしゃべりのお調子者で、あほで……というかなり片寄った人物。ようするに才能としてはずば抜けていても性格的には並、というかそれ以下のところもそなえている普通の少年が、誰にも予想のつかない形で成長していく。才能に振り回されているだけだったのが重い授業料を払って、いつしか真の能力を覚醒させていく。天才の成長譚という、『はじめの一歩』とはまったく違った作品となっている(まあこれは考えすぎかもしれないけど、一時期の『一歩』は意識していたんじゃないかという雰囲気があった)。  ちなみに個人的には凛より中尾会長の救いのないキャラクターが大好きです。
9点(2007-12-06 02:38:47)
10.  どうにかなる日々
マンガエロティクスFに連載されていたバラエティ豊かなシリーズ。お得意の同性愛ネタから幽霊もの、主婦や子どもが主役の割と地味なお話まで、どれも面白い。長編もいいけど、この連作短篇はいろんなアイディアで自由に遊んだおもちゃ箱のような印象で、作者自身もきっと楽しんで書いたんだろうなという感じがする。志村さんは短編作家としてもとても秀でていると思う。  ちょっとHな部分も全然エグくなく(第一話は別か?)、むしろ可愛らしい。登場人物の営みとして素直に受け止められた。物語は常にやんわりと着地する。ときにはつげ義春の某有名短篇を思い出させるような気の抜けた感じで。とくにしんちゃんとみか、志乃と民子のカップル、あとひとりで悶々とするゲイの高校教師のエピソードが好きだ。  長編連載を追うのもいいけれど、こういう質の高いコレクションもまたそのうち読んでみたい。
9点(2007-12-04 03:44:34)
11.  狂死郎2030
徳弘さんのギャグは苦手なんだけど、これに関してはかなり引き込まれた。  たぶんセックスを前面に押し出したことが功をそうしたのだと思う。狂死郎と志乃はバーチャルリアリティの世界で出会って愛し合うようになるものの、どんなに求め合っても結局はバーチャルでしかなく、生身では触れ合うことができない。セックスはできるのに、満たされているようで満たされていない。快楽を重ねるごとに誤魔化せない寂しさと空虚感が積みあがる。お互いにさんざんひどい目に遭っても助け合うわけにも行かず、独りではないとわかっているのにどうしようもなく独りだ。だからこそ死地を乗り越えて志乃に会いにいく狂死郎の愛が、切実なまでに真に迫ってくる。大筋ではお涙頂戴のラブストーリーでしかないはずなのに強い説得力があり、ほとんど息苦しいほどだ。  下品なギャグがてんこもりだから楽しく読めるけど、実はとんでもなく切ないラブストーリー。これでシリアスタッチだったら読むのも辛かっただろう。徳弘正也以外には誰にも描けない、唯一無二の傑作恋愛漫画だ。
9点(2007-11-29 01:45:01)
12.  風の谷のナウシカ 《ネタバレ》 
ジブリアニメというのは良くも悪くも純粋な少年少女が平和と自然を守るお話であって、親が子どもに見せたくなるような優等生的な作りになっている。でも実は宮崎駿の頭の中にはもっと複雑で一筋縄ではいかない、大人も価値観を揺さぶられるような突き詰めた思索がある。それが盛り込まれているのは、アニメ映画ではなくこの長編漫画作品の方だ。  映画版ナウシカは原作漫画の本の一部でしかなく、慈愛心の強い少女でしかない。しかし遥かに長大な原作では、ナウシカはさまざまな試練を越えて、善悪をも超越した場所にたどり着き、登場人物の台詞を借りれば「破壊と慈悲の混沌」となる。こういう言い方をすると怒られるかもしれないけど、アニメ版とは深さがまったく違う。手塚治虫の『火の鳥』に並べても遜色のない、名作中の名作です。
9点(2007-11-20 01:46:26)
13.  夕凪の街 桜の国
この作品に関しては、上手く語る言葉を持たない。不用意に「感動した」なんていったら申し訳ない気がする。  原爆で亡くなった女性と、後遺症を受け継いだ世代の物語を、何のてらいも交えずに、ただ静かに描く。イデオロギーとも戦後教育とも距離をおいて、あの時代に生きた人とその血を継ぐ人々をごく普通の人間として、ありのままに語る。  やや話が飛ぶようだけど、たとえば誰かから相談ごとを受けているときや重い打ち明け話をされているとき、自分は単純に励ましたり、通り一遍の言葉で応答しないようにしている。それどころか相槌も満足に打てず、黙って話を聞くことしかできないことが多い。このマンガを読んでいるときの気持ちはそんなときに似ていた。  戦争を扱った作品に接するとき、とくに日本人であれば「反戦」や「平和」といった言葉を使わずに感想を語ることは少ないだろう。もちろんそれが間違っているとは思わない。  けれどもこの作品から感じ取れるのは思想という形をとる前の体験であり、普通の生活を送る人としての感情だ。そうしたものを受け取ってしまうと、実感したこともない決まり文句で感想を述べるのは、難しい。まずは黙って話を聞いて、その気持ちを少しでも共有しようとする、素朴な聞き手でいたいと思う。  肉体的に残酷な描写がないだけに、精神的な痛みが染み入るように伝わってくる。それでいて後味は優しく、朗らかだ。折に触れて読み返したい。読み返さなければならない気持ちがする。それでなにが変わるでもないとしても、彼女達のことを知らなければならないような気がしてくる。そんな作品だ。
9点(2007-11-18 00:50:20)
14.  ザ・ワールド・イズ・マイン
阿部和重、伊坂幸太郎と帯に並ぶ名前が異様に豪華ですが、実際これほど衝撃的な読書体験は小説の世界でもなかなかない。  殺人鬼“モン”の理屈もなにもない狂気じみた台詞が奇妙な魅力と説得力を持って、読むものの倫理観を揺らがせる。殺人鬼をヒーロー扱いする世相の描写もリアルで、現代における倫理の頼りなさを巧みに伝えている。一方で、対するマリアやユリカンの唱えるきれいごとが不思議なほど感動的に響く。類型的な人物やありがちな台詞といったものは皆無に等しく、登場人物は皆尋常ではない人間臭さと存在感をもって話しかけてくる。  賛否両論分かれたラストについてはどちらかというと否定派につきたいが、それを補って余りある内容だと思う。暴力の恐怖と魅力、倫理のもろさと力強さ、命と善悪をめぐる相反する側面が力強く活写されている。終盤には作者の自己陶酔や意味のわからないぶっ飛びすぎた展開が増えてやや残念なところもあるけれど、とくに前半は文句なく素晴らしかった。  名作だと思います。……たぶん。
9点(2007-11-17 23:42:14)
15.  監督不行届
もはや異次元の領域にある夫婦生活。アホと天才は紙一重というけれど、庵野秀明はもうなんていうか、真っ直ぐにアホだ。議論の余地なくアホだ。アホの中のアホ。でもすごく楽しそうで、うらやましいアホでもある。二人の生活は大変そうだけど、とても幸せそうだ。  惚気の要素がまったくないのにも関わらず、夫への強い愛情が明らかに読み取れて、読んでいるこっちが気恥ずかしいほどでもある。まるまる一冊夫のネタで描いてしまうなんて、そりゃ愛してなきゃできませんよね。巻末付録の庵野監督自らによる解説も、奥さんに対する尊敬の念が素直に伝わってきて微笑ましい。  こんな夫婦の間で育つのはどんな子どもなんだろう? 日本一のオタク・サラブレットが――続編の育児マンガを、今から勝手に楽しみにしています。 
9点(2007-11-15 01:54:36)
16.  天使な小生意気 《ネタバレ》 
不良が喧嘩ばっかりしてるマンガって苦手なんだけど、これはとっても面白かった。何より笑いのセンスがかなりキてる。旅館のエピソードなんて何度読んでも笑ってしまう。  あとこのマンガってギャグだけじゃなくて、真剣な決めの場面に対しても、「かっこいいぜ…」「決まった…」と突っ込み(客観視)の台詞が入る。たぶん西森さんは自作に対する客観性がものすごく強い人で、まじめなことを書くとすぐ照れてしまうんだと思う。  客観的な視点は創作全般においてはもちろん、一人でボケと突っ込みを兼ねなければいけないギャグ漫画家にとっては絶対に必要な力。そういう意味では西森さんはずば抜けていて、たとえ小ネタであっても全然すべらない安定感を持っている。そして実はすごくかっこいい連中ばかりを描いているのに、全然嫌味がない。この辺りも優れた突っ込み力の賜物だろう。  結末に向けてちゃんと伏線を張っているのも良い。気楽に読める作品でも、やっぱりプロットががっちりしてると満足感が違う。欲をいえば最終話近くが急ぎ足になって、わずかに伏線を拾い損ねているのがもったいないかな(たとえば魔本の起源はほのめかすだけに終わってるし、藤木が闇夜の谷川に飛び込めたのは例の河童のおかげなんじゃないかと思うんだけど説明はなし)。  とはいえ読後の爽快感は最高だった。全体を通して暗い要素は薄く、敵役ですらラストの行動は清々しい。読んでいてすごく気持ちのいいエンターテインメントに仕上がっている。
9点(2007-11-15 00:46:27)
17.  フラグメンツ
正直にいうと山本直樹はたまに――しばしば自分の読解力を超越しているのであまり堂々とは語れないんだけど、『フラグメンツ』に関してはやっぱり好きだ。ファンタジーというのはためらわれるけれど、リアルというのとも違う雰囲気からしてなんともいえない。普通に足を踏み出したつもりなのに、靴底が地面から一センチほど浮かんでいたみたいな、微妙な浮遊感が。収録されている「別章」も無関係なようでどことなく共通した空気が通っている。リアルじゃない場所でリアルなものを探している人たちの寂しさが伝わってくる。
9点(2007-11-08 21:26:43)
18.  行け!稲中卓球部
久々に読み返してこの漫画が現在の自分を形成するかなり重要なファクターとなっていることに気づき、暗澹たる思いになる。前野や田中という主役級キャラのフルネームが明かされないなど、著者のドライっぷりにはびっくりだ。この地獄のようなくだらなさ、今の十代が読んでも普通に笑えるんじゃないかな。  小林よしのり氏がゴー宣で「わしは稲中卓球部に挑戦する」とかいっていたけど、正直大敗というか、誰も挑戦していたことに気づかなかったくらいの圧倒的戦力差があった。よしりんが悪いんじゃないよ、古谷さんが最高すぎたんだよ。  いまだに都合が悪くなると「いいよねどうせ人類なんて滅びるし」とかいっちゃうのはこのマンガのせいです。十点にしようとして理性に止められ、九点。
9点(2007-11-06 01:38:02)
19.  放浪息子
女の子になりたい男の子、二鳥くんと、男の子になりたい女の子、高槻さんの緩やかな成長を綴る青春もの。志村貴子さんの絵柄は丸っこくてかわいらしくて、たとえ深刻な展開であってもなごめるのが良いです。そして題材の割にはいたずらに深刻にならないのがまた良い。人物描写にも説得力があって、脇役の千葉さおりという子がとくに実在感があって面白い。かわいいんだけど感受性が強すぎて、悪意はないのに結果的に自己中心的になってしまって、同性からは嫌われる――いるよなあ、こういう子。どのキャラクターも類型にはまらない個性があって、楽しいのです。物語もやんわりと読者の予測を裏切り、淡々としているようでとてもドラマチック。志村貴子はもっともっとメジャーになってしかるべきだと思うんだけど、それは個人的な贔屓目に過ぎないんでしょうか?
9点(2007-11-04 17:16:45)
20.  period 《ネタバレ》 
帯には「美しすぎる暴力」とあるけれどこれは間違いで、暴力自体もあまり詳細に描写されるわけではない。実際には拠り所のない暴力的な運命を辿りながらも確固たる意志で生きようとする、健気な強さが美しいのだと思う。幼い兄弟の視点で進むのだが、とくに愛らしい弟のほうが怒りに捕われているだけに危うく、見ていて痛々しい。ある場面で、彼がある人物を指して「地獄へ行く」と平然と言い放つくだりがある。子どもにこんな言葉を言わせる家庭とはなんなのだろうか。冷静に綴られる台詞がフィクションとは思えないくらい、心に刺さる。真に子どもらしくあることを許されない子ども達の日々。これから明るい展開があるとは思えないが、祈るような気持ちで最後まで読むだろうと思う。
9点(2007-11-04 03:04:29)
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