101. スティール・ボール・ラン
《ネタバレ》 前作でシリーズに大きな区切りを付け、スタンド概念も微かに変わった?模様です。実在した大陸横断レース、キャノン・ボール・ランを元に構想されたそうだけど、舞台が斬新な割りにやっていることはやはり変わらない。ただもちろん、質も下がっていない。とくに単行本表紙のイラストレーションは、シリーズ中最高といってもいい流麗な仕上がりとなっている。敵役にアメリカ合衆国大統領を据えるという大胆不敵なチャレンジもあり、物語にどのように決着をつけるのか、今から楽しみだ。 7点(2007-11-02 00:14:32) |
102. レベルE
《ネタバレ》 豊富なアイディアとよく練り込まれたプロットで、短いながらも読みごたえがある秀作。ただプロットに特殊なところがあって、読者をいい意味でも悪い意味でも裏切ってしまう。話を転がして大風呂敷を広げ、わくわくしてきたところで唐突に話をぶった切る。 広げた風呂敷をあっさり破り捨ててしまうので、リアルタイムで連載を追っていたときはほんとうに唖然とした。今であれば反応が違ったかもしれないが、子どもだった当時は全力で肩透かしを食らっていた。もちろん意識的な試みであることはわかっていたけれど、だからどうしたんだよ? という気持ちを拭いきれなかった。こうしたストーリーはコロンブスの卵だけど、だからといって潰れた卵が不恰好であることに変わりはないんじゃないの? なんて思った。それでも下手な凡作よりは遥かに面白いんだけど、当時の正直な感想を反映させるとマイナス1点しないわけにはいかない。 ところで、王子の作ったゲームに無理やり組み込まれる子どもたちの奮闘を描いたカラーレンジャー編は、『H×H』のGI編に繋がる要素を多分に含んでおり、また結末のアイディアはキメラアンツ編に結実しているように思う。そういう意味では、『H×H』は『レベルE』で中途半端に放り出していたネタをまっとうに熟成させた作品だといえるわけで、個人的には少年期の不満を補ってもらっている気がしてとてもうれしい。 7点(2007-11-01 23:01:14) |
103. ジョジョの奇妙な冒険 Part6 ストーンオーシャン
ほぼ全編に渡って刑務所が舞台、という少年誌としては非常に意欲的な試みの第六部。初めて女性の主役を据えたのだが、第一話で「ちっきしょ~看守に○○見られちまったよ……」といきなりド下品発言から開始。この女は普通のマンガの美少女とは違いますよ、「萌え」どころか男も踏んづけるようなやつなんですよ、という作者の宣言のように思えた。 刑務所だけに、キャラクターも猟奇的な殺人者からカルト集団の教祖まで、癖のありすぎる連中ばかり登場する(それはいつもか……)。また舞台はかなり限られているのだが、荒木飛呂彦の想像力はいつも以上に自由だ。無重力空間での攻防があったと思えば「透明なゾンビ」という異様な敵に襲われ、さらには空から降ってくる毒ガエルの雨、植物化、カタツムリ化する人間達……奇想天外なイメージの奔流に感動すら覚えた。 ところがクライマックスが近づくに連れて荒(?)が目立ち初め、しかもまったく想像外の結末を迎える。面白いのは確かだが、シリーズ中最大の異色作といってもいいだろう。こんなにマッチョな女性ばかり登場するコミックもめずらしい。 7点(2007-11-01 02:12:56)(良:1票) |
104. 幽☆遊☆白書
小学生の頃大好きだった、思い出深いコミックです。最初の二巻くらいは淡々としていて、やがて普通のバトルマンガになったかと思うと、だんだんと暗い雰囲気が色濃くなり、終盤には現在の『HUNTER×HUNTER』に通じるような凄惨な作風が前面に出てくる。通して読むと作者の成長具合が目に見えてわかり、違った意味で面白い。当時はすごく好きだったけど、今読み返したらそんなでもないのだろうか? 7点(2007-10-28 18:10:49) |
105. トーマの心臓
正直、よくわからなかったんですよ……。だって普通に少年同士で恋愛しているところからして違和感ありまくりだし、最後に明かされる衝撃の真実も全然共感できないしで、ちょっとキャパシティを超えている部分が多過ぎた。 もっとも絵や台詞の精度の高さに驚いたのも事実で、非常に完成された作品であるのもわかるし、そんじょそこらの凡作に比べたら遥かに楽しめるのは確か。ただこの世界に没入するには、感性に隔たりがありすぎた。 7点(2007-10-28 02:06:17) |
106. 殺し屋1
《ネタバレ》 目を背けたくなるのと同じくらい、目を離せずにはいられなくなる――そんな苛烈な暴力描写が特徴的。作中の垣原の言葉を借りれば普通の人間は「S」と「M」の両方の要素を持っているわけで、自分のなかの両方の要素が反応しているからこんな矛盾した気持ちになるのかな? ただ、最後まで読んで不思議に思ったのは、結局作者がいちばんやりたかったのは何なのかという点。単なるバイオレンスアクションの割には途中妙に感動的な台詞があったり、ラストは蛇足としかいいようのないミステリー風味だったりと、やや歪な感じがする。九割方は単純な展開なんだから、最後までつっぱしればよかったんじゃないの? あるいは読んでいるだけで痛くなるほどの表現力があるんだから、暴力に関してもう少し突き詰めた考察を示してくれてもよかったとも思う。なんかどっちつかずな感じがするんだよなー。 7点(2007-10-28 01:38:42) |
107. りびんぐゲーム
《ネタバレ》 やきもきさせるエピソードを重ねつつ、最後にはどうにかなるんだろうなという予感が常について周るタイプの、安心して読めるラブコメ。良くも悪くも逸脱したところはない。絵柄が愛らしいのもあって読みやすかった。 6点(2008-05-20 15:08:45) |
108. 虹ヶ原ホログラフ
著者のファンではあるけれど、この人の場合は構成に凝った作品ほどつまらなくなるというのが正直な感想。あと、やたらと「世界の終わり」や「神様」といった言葉を散りばめると、中二病っぽくていやだ。書いている側は気持ちいいのだろうが。蝶の群れのシーンだけはいいと思った。 6点(2008-05-17 13:05:54) |
109. デビルエクスタシー
できごころで登録してしまったが、冷静に考えるとどうコメントしていいのかわからない。なんとも異様な味わいで、インパクトだけは強かった。 6点(2008-05-14 07:30:16) |
110. 多重人格探偵サイコ
《ネタバレ》 プロローグ的な最初の数冊は面白いが、SFの度合いが強くなっていくにつれてどんどんつまらなくなった。田島昭宇のスタイリッシュな絵柄は非常に魅力的だが、ストーリーは微妙。個々のアイディアは良いのだが、ろくに煮詰めないまま適当にお話に組み上げてみましたという程度のできに留まっている。また登場人物が全然生きていないので、全体的にスカスカな感じがして、読んでいて心を動かされることがあまりない。暴力的描写が話題になることも多いが、これだけ残酷なのにまったく痛みが伝わってこないというのは、すごいのかすごくないのか……。 6点(2008-05-14 07:22:20) |
111. め組の大吾
どこに行っても何かしらの災害に遭遇するご都合主義ぶりにちょっと笑ってしまうけど、題材の目新しさには目を見張った。でも同じ天才を主役にした作品でも『昴』とかに比べると主人公のキャラクターがいまいち、説得力を持っていなかった。レスキューの天才ゆえに抱えるジレンマも語られるんだけど、これまた微妙。わかり難く、感動しにくい。そこらのアクション映画でも敵わない救出シーンの迫力はすごかった。けれども人間ドラマとしては、正直たいして印象に残っていない。 6点(2008-02-01 01:26:55) |
112. 封神演義
おちゃらけたノリがどうしても好きになれなかった。普通に面白いんだけど。とくに登場人物が「このマンガの連載が~」なんてふうにメタ的な台詞を吐いちゃうのが、どうしても許せない。そういう要素があると真剣な下りでも白けて読んでしまうのは自分だけだろうか? あと作品の性質上仕方ないかもだけど、人の命が軽すぎる感じもいやだった。絵柄はとても斬新で面白いと思うのだけど、自分のなかではとても微妙な作品。むしろその後の完全にふざけきった短期連載作品のが、開き直った感じがして好きだったなあ。 6点(2008-01-08 14:28:12) |
113. LA QUINTA CAMERA ~5番目の部屋~
個性的な絵柄がいいですね。でもエピソードによってあたりはずれがあって、面白いものもあれば当たり障りのないものもある。最近大人気のオノナツメさんだけど、個人的には物足りなく感じることが多いです。もう一歩、なんだよなあ。 6点(2008-01-01 21:01:05) |
114. 未来日記
未来予知の道具を与えられた12人が、最後の1人になるまで殺し合う、というサドンデスゲーム。それぞれの予知能力が持つ異なる特性を利用して互いに知略を巡らせる、というアイディアは面白いんだけど、『デスノート』や『ジョジョ』のあとに読むと二番煎じという印象も否定はできない。 けれどこの作品にはもう一点面白いところがある。それはヒロイン由乃の、完全にイッちゃってる人物設定だ。強力な能力であるはずの未来予知をも、彼女の狂った発想が上回ってしまう。予知能力ですら狂人の思考回路についていけない、というのがなかなかに痛快だ。 リアリティを拒否するような作風がちょっと苦手(十八歳少女の爆弾テロリストが出てきた時点でひいた)だけど、こういうノリじゃなかったら矛盾点に突っ込みたくなったかもしれない。細かい荒はマンガらしい良い意味でのいい加減さ、として受け流そうと思う。 今のところ人に薦めたくなるほど良い作品だとは思わないが、どうやら作者はラストまで明確な構想があるようだし、このイカれた女の子にどんな着地点を用意しているのかによっては、現時点より点数を上げてもいいなーと思っている。 6点(2007-12-09 21:24:19) |
115. うたかたの日々
実は岡崎作品のなかではあんまり好きじゃありません。岡崎さんが原作に共鳴したのはわかるけど、あまり漫画化した意味が見い出せない。原作を読めばそれで充分、というのが率直な感想です。 6点(2007-11-29 01:03:40) |
116. 漂流教室
《ネタバレ》 人、死にすぎ。まだあどけない小学生の死体が累々と積み重なっていくさまに、開いた口が塞がらない。殺人鬼と化す大人たち、砂漠から現れる異形の怪物、狂ったコンピュータに支配される遊園地、鉄砲水から黒死病まで、ありとあらゆる災難が子ども達に襲いかかる。まあ人がたくさん死ぬ話ならそう珍しくはないのだけれど、年端も行かない子どもばかりがこんなにも大勢、容赦なく殺される作品は後にも先にもない。かつてはホラーの分野でも幼い子どもの死を描くのはタブーとされた時代があったはずだし、そうでなくとも無意識のうちにブレーキをかけるのが普通の感覚だと思うんだけど、そこが天才楳図かずおのすごいところであり、怖いところでもある。そういう意味では連載当時は残酷描写が騒がれたそうだけど、連載されているのがたとえ現代だったとしても衝撃的なのには変わりなかっただろうと思う。 たとえば鉄砲水が校舎を襲うエピソードで、戸を押さえていた女の子の手首が激しい水流のためにあっさり千切れてしまう場面がある。これを普通に描けてしまうのは、語弊があるのを承知ではっきりいえば、頭がおかしい。登場人物に対して容赦のない作家は大勢いるけれど、楳図かずおの場合、それがあまりにも普通だ。上手い言い方が見つからないが、これが平凡な作家ならどこかしら「ほうらすごいだろ、こんなに残酷だぞ」という気負った感じがするものだが、対する楳図氏は至極冷静に、平然とやってのけてしまう感じがする。 野暮な突込みをさせてもらうと、現実の小学生がこうした状況に置かれたとしてもけっしてこのマンガのようには行動しないだろうとは思う。またクライマックスでIQ230の天才少年が「学校がタイムスリップしたのは、ダイナマイトのために光の速さで校舎が揺さぶられたからだ!」と説明したのには腰の骨がこんにゃくになった。しかし楳図氏の天才思考回路に異を唱えても無益というもの。おそらくは作者当時のアイディアのありったけを注ぎ込んだに違いない、常軌を逸した世界。読んでよかったと思う。こういうぶっ飛んだ漫画も、一度体験しておいて損はない(害はありそうだけど…)。 6点(2007-11-25 01:16:51)(良:1票) |
117. MIND ASSASSIN
短期間で連載終了してしまったのに、とりわけ深く記憶に刻まれている作品。人の記憶、または精神を破壊することのできる超能力者を主人公としたサスペンスで、繊細だけど力強い絵が印象的だった。 いくらでも広げようのある良いアイディアだったと思うのだけど、作者がデビューしたてのためかストーリーのワンパターンが目立ち、またジャンプらしからぬ大人向けの題材が多かったのもあって、人気を保ち続けることができなかった。しかし女性作家ならではの繊細な語り口が魅力で、連載当初から個人的なお気に入りだった。 充分な熟成を待たずに打ち切られてしまったのを残念に思う。大きな可能性を持っていた、惜しい作品だった。 6点(2007-11-01 00:21:29) |
118. 11人いる!
普通に面白いです。でも普通以上のものはなく、手塚治虫のSFを読んでいるようで萩尾望都らしさは若干薄いかもしれない。ミステリー的な結末も、ちょっと擦れたミステリ好きなら予想の範囲内でしょう(発表された年を考えるとすごい?)。いちばん衝撃だったのはフロルというキャラクターの特異な設定で、これは萩尾望都以外の作家が書くとつまらないギャグになりかねない(ていうか普通思いつかない)。愛らしいんだけど好きだといわれるのはためらわれる、ちょっと不思議なキャラクターでした。 6点(2007-10-30 16:34:55) |
119. ONE PIECE
《ネタバレ》 登録しといてなんだけど、苦手です。連載当初から、なにが面白いのかわからなかった。 少年ジャンプの悪しき伝統に乗っ取って、必要以上にバトルものの要素が濃い。お互いの技を見せっこして、結局は根性で敵の攻撃を耐え切って勝利という、駆け引きも何もあったもんじゃないパターン。毎回律儀に仲間の数と同数の敵キャラクターを用意して、全員を一対一で戦わせ、全員が勝つ。味方の側にはまず死人が出ないので、緊張感は薄れる一方。尾田さんには戦いを面白く描く才能が、欠けている。 人間ドラマを展開する力はあるし、ディティールにこだわった絵は見ていてとても楽しい。戦いの要素を減らして、もっと人間ドラマ、冒険物語としての純度を高めるべきだと思う。悪魔の実などの設定は浅はか過ぎるし、キャラクターの設定なんかはあとから足しているのが見え見えで白ける。ついでにギャグも寒い。 なんというか、尾田さんの他に脚本や設定に関するブレーンがいたなら、傑作になっていたと思う。 5点(2007-11-30 00:22:29) |
120. 花とみつばち
《ネタバレ》 安野さんにしては切れ味に欠けている感じ。さくさく読めるんだけど、冴えない男が頑張っているというだけで話に深みがなく、ギャグについても無駄に下品なだけで普通。ラストに至っては登場人物が勝手に動いてしまったのかあるいは強引に終わらせたのか、完全に普通のラブストーリーになってしまった。きっとこのテーマではストーリーを広げるのも深めるのも難しかったんじゃないかと思う。 5点(2007-11-15 01:00:21) |