1. フラグメンツ
正直にいうと山本直樹はたまに――しばしば自分の読解力を超越しているのであまり堂々とは語れないんだけど、『フラグメンツ』に関してはやっぱり好きだ。ファンタジーというのはためらわれるけれど、リアルというのとも違う雰囲気からしてなんともいえない。普通に足を踏み出したつもりなのに、靴底が地面から一センチほど浮かんでいたみたいな、微妙な浮遊感が。収録されている「別章」も無関係なようでどことなく共通した空気が通っている。リアルじゃない場所でリアルなものを探している人たちの寂しさが伝わってくる。 9点(2007-11-08 21:26:43) |
2. ブラックブレイン
知る人ぞ知る怪作。どこからこういった変態アイディアが浮かんでくるのか? なんでまたそれを作品として形にしようなんて血迷った決断をしたのか?? 異様に素人くさい絵柄のため、グロ描写の衝撃はかえっていい意味で半減しているが、エロい場面の効果は悪い意味で半減している。毎回毎回敵キャラの設定が秀逸(というか、なんというか)で、個人的には過激フェミニズム団体の敵が大好きだった。意外にもストーリーの骨子は普通の娯楽作なので、ある程度感覚のチャンネルを切り替えることができれば普通に面白いかもしれない。十年位前に一度読んだきりだけど忘れ難い、というか忘れたくても忘れようがない強烈なインパクトがあった。 7点(2008-04-14 13:12:03) |
3. BLEACH
ベタ過ぎる展開もあるし、中だるみ感も否めないよなあと思いつつ、ジャンプを手に取るとつい真っ先に開いてしまうマンガ。 ときどき洋楽を絡めた英語の章題や、単行本の表紙のセンスが好き(そもそものタイトルがNIRVANAなのが個人的に超好印象)。他の方も言及なさっているように「卍解」の視覚的なインパクトが強烈で楽しい。 ただ、物語が進む毎に戦闘描写がどんどん派手になっていくので、この調子だとそのうち怪獣大戦争になっちゃうんじゃないかと不安になる。話を無闇におっきくしないで、適度なところでまとめてくれると嬉しいなと思う。 7点(2008-01-08 14:24:11) |
4. ブラッドハーレーの馬車
実力のある作家が深く考えずに手癖だけで描き上げてしまったという感じの、凡作。 無駄に残酷なだけで、それを通して何を伝えたいのかさっぱりわからない。凄惨な題材を選べばそれだけで深いドラマが描けるというわけではないだろう。自分は暗い系統の作品が好きなのでそれなりに知っている(マンガに限らず)方だと思うが、これはその中でもできの悪い部類に入る。 画は相変わらず上手い。しかし設定は強引でリアリティに欠け、何よりあざとい。ストーリー展開は予想通り、人物にも台詞にも血が通っていない。ほんとうに沙村広明がこれを描いたのかと疑うほど、薄い。 著者あとがきに自分でもなにがしたいのかわからなくなったとあるが、読んでいてそれがよくわかる。これならいっそ、サディスティックな成年漫画を真剣に描いた方がよかったと思う。 3点(2008-05-19 19:40:10) |