1. 狂死郎2030
徳弘さんのギャグは苦手なんだけど、これに関してはかなり引き込まれた。 たぶんセックスを前面に押し出したことが功をそうしたのだと思う。狂死郎と志乃はバーチャルリアリティの世界で出会って愛し合うようになるものの、どんなに求め合っても結局はバーチャルでしかなく、生身では触れ合うことができない。セックスはできるのに、満たされているようで満たされていない。快楽を重ねるごとに誤魔化せない寂しさと空虚感が積みあがる。お互いにさんざんひどい目に遭っても助け合うわけにも行かず、独りではないとわかっているのにどうしようもなく独りだ。だからこそ死地を乗り越えて志乃に会いにいく狂死郎の愛が、切実なまでに真に迫ってくる。大筋ではお涙頂戴のラブストーリーでしかないはずなのに強い説得力があり、ほとんど息苦しいほどだ。 下品なギャグがてんこもりだから楽しく読めるけど、実はとんでもなく切ないラブストーリー。これでシリアスタッチだったら読むのも辛かっただろう。徳弘正也以外には誰にも描けない、唯一無二の傑作恋愛漫画だ。 9点(2007-11-29 01:45:01) |
2. 君に届け
《ネタバレ》 とても評判がいいので読んでみました。初めの方こそ風早くんのキャラにちょっと引いてしまったけれど、だんだん面白くなってくる。とくに二巻のクライマックスなんかはもう、涙腺がやばい。 君に届けというタイトルは何も恋愛に限った話じゃなくて、不器用すぎる主人公が頑張って人と絆を繋いでいこうとする姿に重ねているんですね。爽子の真っ直ぐさがあまりにも健気で痛々しく、切ない。見た目がどうであれ、実は爽子という名前はこの子にぴったりなんだよね。明るくて誠実で、純粋すぎるくらい純粋で。 いかにも女子に嫌われそうなタイプのライバルも登場するけど、しまいには全然憎めなくなってしまうのがいい。こういうキャラクターにも愛情を持って公正に描いているところに、作者の人柄を感じる。 8点(2008-01-05 00:30:23) |
3. 寄生獣
《ネタバレ》 視覚的なインパクトだけでも充分すごいのに、高い娯楽性もテーマの奥深さも持ち合わせている、という奇跡的な作品。 普通はアイディアからして単なるスプラッターホラーとなるわけで(それも悪くないけど)、ここまで普遍性のある物語を紡ぎだせるというのは驚くほかない。設定も構成も徹底的に考え抜かれた上で構築され、読み応えのある骨太の作品となっている。 個人的に印象深いのはクライマックス近くのパラサイト掃討作戦の、合理的かつ現実的な戦闘場面。クリーチャーを題材にした物語は数あれど、ここまで生々しく、リアリティを追求した例は珍しいと思う。 8点(2007-10-28 01:08:41)(良:2票) |
4. 金田一少年の事件簿
《ネタバレ》 『占星術殺人事件』よりこちらを先に読まされてしまったクチなので、遠慮なく0点を付けさせてもらう。単純なトリックをアレンジして利用するくらいなら問題にはならないが、よりによってオールタイムベスト級の超名作のトリックを、そのまんま盗用するとは……バカか? どんな作品でも多少なりとも過去の作品の影響が見られるのは当然だが、これに限っては完全に一線を超えている。 しかもトリックの使い方が下手。ミステリのネタというのはそれ自体の出来と同じくらい、どう見せるかという演出方法が大切だ。島田荘司氏の小説ではあれほど衝撃的だったトリックが、どうしてこんなしょぼい話になるのだ。ほんとうにバカ。パクるにしても劣化し過ぎなんだよ。 シネマレビューの方でも0点をつけたことがないのだが、評価の範囲外ということで。オリジナルのネタの中にはよくできたものもあるし、『コナン』に比べれば荒も少ないだけに、残念ではある。 0点(2008-05-20 14:58:26) |