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まいかさんの口コミ一覧[この方をお気に入り登録する

プロフィール
コメント数 213
性別 女性
ホームページ http://plaza.rakuten.co.jp/maika888/
自己紹介 正直、生まれは平成じゃないです。かなり、昭和なムード。昔みた映画を思い出しながらレビューしますので、記憶がずいぶんあやふやかも。なにか変なところがあったら、http://plaza.rakuten.co.jp/maika888/のほうにツッコんでおいてください。

好きな女優
 「或る夜の殿様」の山田五十鈴、「近松物語」の香川京子
好きな男優
 「お茶漬けの味」の佐分利信
好きなキャラクター
 グレムリンちゃんとマシュマロマン

☆評価基準
10点:超絶。ほとんど奇跡。
9点:傑作。かつ大好きなんだもーんッ!
8点:傑作だし、好きデス。
7点:素晴らしいです。好みの映画です。
6点:まあ、悪くないと思います。
5点:なにか気になるものはあります(~~;

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61.  座頭市喧嘩旅 《ネタバレ》 
GYAO の無料動画で視聴。「大魔神」「眠狂四郎魔性剣」に続いて安田公義は3本目。すっかりファンになってしまった。ちなみに勝新の座頭市はこれが2本目です。だいぶ前に三隈研次による第一作を見て、そのシャープな画面とファンタジックな演出に興奮した記憶があるけど、レビューは書いてなかったみたい。 今作は「座頭市を抱き込んだヤクザ」と「お姫様を人質に取ったヤクザ」の大喧嘩という設定。黒澤明の「用心棒」の2年後に作られていて、砂埃の道を縦にローアングルで撮るなどのパロディっぽい要素も見受けられる。「大魔神」よりも3年前ですが、障害物をなぎ倒すように敵を追い詰めていく姿や、四方八方からの荷車攻撃にもビクともしない姿などは、ほとんど大魔神さながらに見えてしまいました。 脚本にはちょっと嫌なところもあって、目当ての娘を手籠めに出来なかった腹いせに家来に追っかさせて殺そうとするバカ殿を叩き切れなかったのも不満だし、バカ殿から離反した家来がその後どうなったか描かれないのも不満だし、疑うことを知らないウブなお姫様と色欲に目が眩んだっぽい市がちょっとイイ感じになったりするのも気持ち悪い。また、CGを凌ぐほどの神懸った勝新の殺陣には若干の恐怖さえ覚えます。 しかし、それでもやはり安田公義の様式美の魅力がすべてを包み込んでいるし、上記の欠点を補ってなおお釣りが来ます。竹林の中を歩くシーンや水辺でお握りを食べるシーンには「羅生門」や「雨月物語」のような神秘性を感じるし、夜の駕籠屋の入口を撮った画面の絵画的な美しさにもウットリします。もはや安田公義に7点以下はつけられない感じがしてきました。 追記:(考えてみたら当時の勝新は結婚したばかりの32才ですごく若いのですが、劇中の設定は「でっぷりした中年男」となってるのですね。藤村志保は当時24歳ですが、映画を見ると十代の生娘のようにも見えます)
[インターネット(邦画)] 8点(2023-01-16 09:47:34)
62.  思い出のマーニー 《ネタバレ》 
なるほどね。とても良く出来ている。大林宣彦の「さびしんぼう」の物語に似ていますが、大林のほうがこの原作を読んでいたのかしら? さらにこのアニメは宮沢賢治も引用して、より普遍的な構造に組み立て直したのでしょう。ついでにいえば、じつは松田聖子も引用されてる感じ(笑)。そこらへんの話は長くなるので自分のブログにでも書きますが、簡単にいえばイマジナリーフレンドとの交流がもたらす成長物語なのですね。基本的には反復されてきたモチーフの組み合わせでしょうけれど、とても綺麗にまとめられているし、作画や音楽の美しさにも不満がありません。8点です。
[地上波(邦画)] 8点(2023-01-14 00:18:24)
63.  眠狂四郎 魔性剣 《ネタバレ》 
GYAOの無料動画で視聴。以前から興味はあったけど、眠狂四郎シリーズの作品をちゃんと見たのは初めて。 とても面白かったです。ひたすら様式美だけを楽しむ映画かと思っていましたが、けっこう敵味方の入り乱れる複雑なお話で、予想以上に渋い内容。結局、悪女のおりんさんは狂四郎に惚れてしまうのですね。 不思議なエキゾチズムにエロとグロが混じり合って奇天烈かつエグい世界観を作っていますが、けっして湿っぽいのではなく、むしろドライな印象を受けました。ひとつひとつのカットも構図が美しく、説明的な描写を排除して、75分という手頃な長さに内容が充実している。 キリシタンが弾圧されていたはずの時代に、江戸の大奥と転びバテレンの黒ミサが癒着していて、それを金儲けに利用している家老が幕府に黙認されている…、という巨悪の構造はよく分かりませんでした。もうすこしシリーズの他の作品も見てみないと、物語の構造や背景が分からないのかもしれません。
[インターネット(邦画)] 8点(2023-01-10 00:22:37)
64.  8 1/2 《ネタバレ》 
GYAOの無料動画で視聴。たぶん2度目の鑑賞だとは思うのですが、ほとんど理解できなかったせいで1度目の記憶がほとんどありません。ようやくちゃんと観た…という感じです。 映画についての自己言及的な映画。全編が映画の魅力に満ちあふれていますが、けっして「映画賛歌」だとは思えない。むしろ映画作家の独裁的なエゴイズムを暴露し、幻想をフィルムに定着させることの欺瞞性をみずから告発した「映画批判」のように見えます。本来ならば取捨選択によって排除されるべき被写体をも画面のなかに招き入れ、それら(=とくに女たち)によって映画作家が逆襲される様を描いている。人生は祭りだ…とのセリフもありますが、それをもって「人生賛歌」と解釈できるわけでもなく、むしろ痛烈なアイロニーのように映ります。 これが映画作家としての誠実さの行き着く先であり、これによって映画そのものを終わらせたとも思える。この作品がつくられた1963年の時点で、すでに映画は行き着くところまで行ったのだなと感じました。
[インターネット(字幕)] 8点(2022-12-10 00:58:02)
65.  エディット・ピアフ~愛の讃歌~ 《ネタバレ》 
GYAOの無料動画で視聴。 わたしはとくにピアフの歌が好きなわけでもなく、映画に対する期待値も低かったのですが、予想をはるかに上回る素晴らしい出来だったので驚きました。あとで調べてみたら、思った以上に若い監督だったのも驚きです。 すくなくとも中盤までは文句のない内容だったし、余計な解釈を加えず断片的な事実だけを切り取っていく手法も説得力がありました。前半部のフランスの描写と後半部のアメリカの描写の切り替えも映像表現として素晴らしかった。 ただ、残念なのは、肝心の恋人の死の場面で幻影が現れる演出がさほど効果的ではなかったこと(その前のボクシングの試合もやや冗長でした)。そして、その後の複雑な時系列の入れ替えが分かりにくかったことです。たぶんラストシーンで「Non, je ne regrette rien」を聴かせるために、そこから逆算して時系列を操作したのだろうけど、かえって感情移入の妨げになったのは否めない。恋人の「マルセル」と娘の「マルセル」を重ね合わせるような演出もかえって混乱を助長しています。これらの終盤部分さえ上手く編集しなおせば大傑作にもなりうる内容と思えるだけに惜しい。伝記映画をミラクルな物語に仕立てるのは難しいことなのだろうけど、かなりいい線までは行ってた気がします…。 物語の始まりは第一次大戦中(冒頭のテロップは「1918」となってますが、実際は「1916」ぐらいのはず)。ベルエポック期の表社会の華やかさとは裏腹に、とんでもなく汚くて貧しいフランスの裏社会が描かれています。ユゴーが描いた100年前の「レミゼ」の悲惨さと大差ないほど劣悪な境遇。実際、母に捨てられる少女の描写は「レミゼ」を意識して作ってる感じもある。大道芸人の世界など当時のフランスの社会風俗が見れるのも興味深い。 ビリー・ホリデイとの共通性は以前から感じていたことだけど、両者が同い年で、ピアフ自身がホリデイのことを強く意識していたとは初めて知りました。ピアフの歌もある種のブルースなのですよね。ジャン・コクトーやマレーネ・ディートリヒとの交流について知ることが出来たのも収穫。 ピアフの母親はイタリア系で父親はアルジェリア系だそうですが、これほどピアフが愛されたのは、フランス社会が抱えるそのような「実存」の部分を余すことなく体現していたからなのだろうと思います。ちなみにこの映画を観ると「Non, je ne regrette rien」の邦題は《悔いはない》とすべきであって、《水に流して》という従来の邦題があまり適切ではないように思えてきます。また「愛の讃歌」について、日本では岩谷時子の訳詞に対する賛否両論がありますが、恋人の生前にピアフが書いたものだと考えると、岩谷時子による曲の解釈もけっして間違っていないと感じます。
[インターネット(字幕)] 8点(2022-10-26 04:12:51)
66.  幕末太陽傳 《ネタバレ》 
GYAOの無料動画で視聴。これが2度目の鑑賞です。前回は画質や音質が悪くてよく分からなかったけど、今回はデジタルリマスター版とあって内容は理解できました。 たしかにとても良く出来た映画で、これなら国際的な評価にも値するだろうと思ったけど、残念ながら、のめり込むほどの魅力は感じられなかった…。あまりにも緻密に作り込まれた結果、かえって明快さに欠ける気もするし、結末のカタルシスにも乏しく、墓場から去っていくラストシーンもちょっと寂しいですね。スタジオセットから飛び出して現代を走り抜けるラストなら、だいぶ印象は違ったかもしれません。
[インターネット(邦画)] 8点(2022-09-27 02:51:59)
67.  竜とそばかすの姫 《ネタバレ》 
困りましたねえ(笑)。つい、スピルバーグの「レディ・プレイヤー」を思い出してしまいました。設定は面白いし、映像表現も素晴らしいのだけど、物語が致命的につまらない! 何故つまらないかといえば、思想が浅いからですね。この設定から起こりうる物語の可能性を、突き詰めて極限的に構想することができていない。だから、どんなに設定だけをバージョンアップしても、結局のところ幼稚で陳腐な物語にしかならない。そういうところが、悪い意味でスピルバーグと同じなのです。映画を作りたい気持ちが先走ってるだけで、これといって描くべき内容をもっていない。それが毎度毎度露呈してしまう。 映像はほんとうに素晴らしいし、音楽もほんとうに素晴らしいし、(設定上の疑問は数多くあるものの、そんな疑問点も含めて)展開には変な面白さもある。これまでの細田作品のなかでは、これが最良だという気持ちもあります。ただただ、核となる物語だけがつまらなくて底が浅いのが悲しい。 きっと同じ題材を使ってもっと突き詰めた世界を構想できるクリエイターはいると思いますので、とりあえずこの題材を提示したことと映像表現を極めたことだけを評価して8点を献上します。
[地上波(邦画)] 8点(2022-09-24 00:18:13)(良:1票)
68.  花筐/HANAGATAMI 《ネタバレ》 
GYAOの無料動画で視聴。 最晩年にこれだけ瑞々しいアマチュアリズムと実験精神を炸裂させる自由度はなかなかスゴイ。黒澤明のカラー作品のようでもあり、鈴木清順の大正シリーズのようでもあるけれど、書き割りっぽい合成映像を多用した画面やポリフォニックな音響はかなり演劇的であって、むしろ寺山修司の映画を思わせるところがある。 20才の矢作穂香から42才の長塚圭史までを「同年代の若者」とした大胆な試みにも違和感はなく、それぞれのキャラ立ちもしっかりしていて、そこには大林宣彦の俳優起用の巧さをあらためて感じます。音楽の使い方にも彼流の美学が徹底している。 戦争の予感のなかで死んでいく若者たちを描いていますが、反戦色が強いというよりも、むしろ破滅の美学のなかに陶酔しているように見える。そういう傾向も鈴木清順や寺山修司に近似しています。
[インターネット(邦画)] 8点(2022-08-22 02:04:21)
69.  暗殺のオペラ 《ネタバレ》 
GYAOの無料動画で視聴。 非凡でした。これまで観たものはイタリア国外を舞台にした作品が多かったので、あまりベルトルッチに「イタリアらしさ」を感じていませんでしたが、本作では存分にイタリアらしさを味わえました。奇天烈なユーモアとバイタリティ。支離滅裂なエロスの匂い。そこはかとない暴力性。なぜかドキュメンタリーのようになる会話。そして画面が美しいので、いちいちそれに目を奪われて困ってしまいます。 密告・裏切り・陰謀が渦巻き、誰もが加害者にならざるをえないファシズム時代の小さな町の過去へ沈潜していく内容ですが、殺人手法はヒッチコックの「知りすぎていた男」みたいでした。まるで日本の夏のように、蚊取線香が出てきたり、やたらとスイカを食べたりするところも興味深かった。
[インターネット(字幕)] 8点(2022-05-25 05:50:23)
70.  エール! 《ネタバレ》 
GYAOの無料動画で視聴。とても良い映画! 社会的弱者を必要以上に美化することなく、安易なセンチメンタリズムや扇情的な演出にも溺れず、あえて露悪的なほど俗っぽく滑稽に描いていますが、それがかえって好感触。フランスらしさはあるけれど、フランス映画っぽい難解さや気取ったところはなく、気安い海外ドラマのような演出がむしろ功を奏しています。父親も母親も、まるで子供みたいに感情むき出しだったりしますが、そこにもオーバーアクションにならざるをえない聾唖者特有の必然性とリアリティを感じる。大袈裟なサクセスストーリーではなく、ささやかな巣立ちの物語になっているのも良い。 歌唱シーンで無音になる演出には、困惑するほど複雑な思いを呼び覚まされました。親自身は子供の能力を理解できないのですよね。実際のところ、障害があろうとなかろうと、世代間の価値観の違いから子供の能力を理解できない親は世間にありふれているわけだから、その意味ではとても普遍的な物語になっています。 主人公は16才の高校生なのですが、学校が自由な雰囲気だし子供たちも大人っぽいので、初潮の話が出てくるまではてっきり大学生かと思いました。家族や友人とあけすけにセックスの話をしたり、男女で抱き合って激しい内容のラブソングを歌ったり、幼い弟がセックスをはじめたりするのにも驚きます。日欧の文化の違いを痛感しました。
[インターネット(字幕)] 8点(2022-05-11 07:18:57)
71.  崖の上のポニョ 《ネタバレ》 
まったくの幼児向け作品だと思って何の予備知識もなく観たのですが、実際にはトトロ以上に難解な要素をはらむ内容でした。端的にいえば、トトロが「森」の物語であり、ポニョが「海」の物語ですね。人間は、切り開かれた陸上世界にしか関心をもちませんが、トトロを見た子供はきっと「森」のことを考えるだろうし、ポニョを見た子供はきっと「海」のことを考えるでしょう。フジモトは人間を憎んでいましたが、意外なことにグランマンマーレは人間に寛容だった。グランマンマーレがリサに何を助言したのか分かりませんが、おそらく彼女の目的は、宗介とポニョを通して、人間と海を調和させることなのでしょうね。 アンデルセンの人魚姫を下敷きにしていますが、あえて「人魚/マーメイド」などの言葉は用いずに「人面魚/半魚人」といったバケモノを意味する日本語を使っています。ここにはおそらく2つの意味がある。ひとつめは、ポニョの存在がたんなる空想ではなく《魚類⇒両生類⇒哺乳類》といった生命史を内在させている点で人間と同じだということ(そのためポニョが人間になる過程でカエルのような形状になります)。ふたつめは、アンデルセンの人魚姫が最終的に「人間」になるのに対して、ポニョはあくまでも「半魚人(半分が魚)」だということ。宗介はそのことを理解するようにグランマンマーレから要請されます。この結果、宗介は、もはや海を「他人ごと」でなく「自分ごと」として捉えねばならなくなる。ここに本作のもっとも重要なメッセージが感じられます。 宮崎駿の諸作品を考えるうえで興味深いモチーフもたくさん散りばめられています。フジモトとポニョの物語は、父を否定する娘の物語であり、これはどちらかといえば宮崎吾朗の作品に共通している。フジモトは地球の生命史を原初からやり直そうと試みていますが、ここには「ナウシカ」との関連性がうかがえます(フジモトはなぜ日本人の名をもつのでしょうか?)。陸上では、港町に暮らす船乗りの家族の生活が営まれてており、ここには「コクリコ坂」との関連性がうかがえます。グランマンマーレは「granma(太母)」と「mare(海)」の造語だと思いますが、ディズニーの「モアナ」に出てくる《テ・フィティ》に似ていますし、これが日本の《観音》に比定されるのも興味深い。冒頭の海中シーンは、まるでヨーロッパのアニメーションのように幻想的でしたが、半神半人の川の女神《ワルキューレ》を描いたワーグナーの歌劇を海に置き換えた感じもあります。 2008年の映画ですが、まるで大震災の死者からのメッセージのように読み取れてしまうのは予言めいていて驚きでした。波の描写は、北斎の《Great Wave》を思わせます。
[地上波(邦画)] 8点(2022-05-08 16:36:17)
72.  風花(2000) 《ネタバレ》 
「あ、春」の最後でヒヨコを孵化させたように、この映画の最後でもカエルが冬眠から覚めます。しかしながら、そんな暖かいエンディングとは不釣り合いなほど、そこにいたるまでの物語にはただならぬ寂しさがある。黒沢清の「岸辺の旅」が本作を意識しているようにも感じます。 「雪の断章」にしろ「風花」にしろ、何故その原作を選んだのか、その動機がよく分からないのだけど、たんに個人の人生を描きたかったのではなく、むしろ物語の舞台である北海道に対する個人的な愛憎や、あるいはローカルな感傷や、あるいは鎮魂めいたものを表現したかったのじゃないかと思えてくる。開拓から「120年」というセリフが執拗に繰り返されたりしますよね。相米慎二にとっての(実質的な地元である)「北海道」が、何かとてつもなく寂しくて悲しい場所のように感じられます。 「翔んだカップル」や「台風クラブ」や「ションベンライダー」は純粋に"文体の面白さ"を語ることのできる映画であり、それゆえに評価が高いのだろうけれど、「雪の断章」や「風花」は"文体"という観点では語りにくい部分がありますよね。逆にいうと、相米個人の本質に触れる内容であればあるほど、純粋に"映画の文体"だけを追求することができなかったんじゃないかしら? わたしは「雪の断章」や「風花」について考えるとき、相米映画を"文体"だけで語るのは限界があると感じます(→この件については、黒沢の「岸辺の旅」との関係もあわせて、ブログのほうで詳述することにします)。 やさぐれた男女の物語ですが、美男・美女の主演ということもあって、映像だけ見るとまるでトレンディドラマのように"キレイ系"の作品に仕上がっているのは意外。美しい映画といえないこともないけれど、これも叙情が先行してしまった結果のように見える。なお、大友良英の音楽は「これでいいのかな?」と感じるほど主張が強かったですね。
[インターネット(邦画)] 8点(2022-04-30 06:35:09)
73.  希望のかなた 《ネタバレ》 
GYAOの無料動画で視聴。カウリスマキの映画は30年くらい前に何本か見たけど、今の彼がこんなアクチュアルなテーマに取り組んでいたとは知りませんでした。クールなユーモアは健在だけど、内容的にはかなり熱い。 世界的な監督が「自由」という普遍的正義をシンプルに信じていること自体に希望を感じますし、世界中のアーティストが怯むことなく、こういう姿勢に勇気づけられるべきだと思う。
[インターネット(字幕)] 8点(2022-04-30 00:56:19)
74.  寝ても覚めても 《ネタバレ》 
怖い。どちらが現実でどちらが夢なのか分からない。くっついたり離れたりする恋愛ドラマはテレビにありふれてるけど、こんなにリアルで怖い話は見たことがありません。この映画には「2人の東出昌大」が登場します。でも、ほんとうに重要なのは「2人の唐田えりか」。英語のタイトルは「Asako I & II」です。 はたして震災前と震災後の世界は、どちらが夢でどちらが現実なのか? 震災後のどんよりした世界は、まるで黒沢清の「回路」や「トウキョウソナタ」みたいに薄暗くて不気味であり、ほとんど悪い夢のように思えてしまうけれど、それが現実であるならその世界を生きるしかありません。子供のようにはしゃいでいた渡辺大知は寝たきりになっているし、汚い川は水かさを増してアパートを呑み込みそうになっている。「水かさが増してる。…汚い川やで」「でも、綺麗」…それが現実なのですよね。 唐田えりかは、この撮影の後、ほんとうに夢から抜け出せなくなってしまったのでしょう。どちらが現実でどちらが夢なのか分からなくなってしまったんだと思う。それを思うと、彼女の没入感もまた怖いのです。「オーロラ。あのCMの。ほんまに見たん?」「うん。見たよ」「空が海みたいやった?」「うん。そう。なんだか夢見てるみたいやった」「そっか。私は、まるでいま、夢を見てるような気がする。…違う。今までのほうが全部長い夢だったような気がする。すごく幸せな夢だった。成長したような気でいた。でも目が覚めて、私、何も変わってなかった」…でも、長い夢のように思えた世界こそが、ほんとうは現実だったのです。
[インターネット(邦画)] 8点(2022-04-16 05:20:02)
75.  フェリーニのアマルコルド 《ネタバレ》 
GYAOの無料動画で視聴。このニーノ・ロータの曲は好んで聴いてたけど、映画を観たのは初めて。予備知識なく見始めて、最後まで何の話なのか分からないまま、ワケワカランと思いつつも面白いので見てしまいましたが、要するに家族とご近所のエピソードを綴った回想録なんですね。「春の火まつり」「教室の悪戯」「食卓の喧嘩」「教会の懺悔」「ファシストの拷問」「国王のホラ話」「木登り叔父さん」「アメリカの客船」「霧の朝」「煙草屋の女」「大雪の日」「母の死」「グラディスカの結婚式」…と、およそ2時間で全13話くらいのエピソードが描かれてるので、一話につき10分くらいの「サザエさん」的な笑話集だといえます。ノスタルジックではあるものの、1930年代の北イタリアを描いたこちらの映画は、1960年代の東京を描いたサザエさんに比べて一つ一つのエピソードがかなり過激で下品で濃厚ですけど(笑)。 平均点は低いだろうかと思いきや、すごい高評価なのにびっくり!たしかに、すごく映画らしい映画だと思います。このレビューサイトはスピルバーグ好きが多いという印象だったけど、こんなにフェリーニ好きが多かったとは新たな発見です。
[インターネット(字幕)] 8点(2022-03-30 12:55:01)
76.  アポロンの地獄 《ネタバレ》 
GYAOの無料動画で視聴。パゾリーニを見るのはたぶんこれが初めて。かなりヘンテコな映画だけども抗しがたい魅力を感じる!本来なら繋がるはずのないカットが無理やりに繋がってるし、ギリシャ神話なのに日本の雅楽が流れてくるし、文法的な常識をめちゃくちゃ逸脱してるけど、まるで夢を見てるようなデジャヴに襲われてるうちに、奇天烈なイメージの連続で脳天が麻痺してきて、あれよあれよと最後まで押し切られてしまいました。デタラメな文法がかえって神話の説得力を増してる感じ? このぐらい力技があったら、もう文法とかどうでもいいんだなあと思わせる説得力があります。これぞイタリア映画ってな濃厚な作風に痺れました。
[インターネット(字幕)] 8点(2022-03-29 23:49:23)
77.  リメンバー・ミー(2017) 《ネタバレ》 
非常に良くできている。往年のディズニー映画にも引けを取らない完成度。スペクタクルもサウンドもメキシコらしさをよく表現していて魅力的。その生と死が交錯する世界をユーモラスな想像力で美しく映像化しています。伏線の回収の仕方も緻密で隙がなく、脚本がしっかり立体的に構成されているのが分かるし、総じてクオリティが高い。ガイコツの擬人化はもちろん、民芸品のアレブリヘ(Alebrije)をキャラクタライズするなどの発想も目配りが効いている。 欲をいえば、物語の帰結があまりに王道的にすぎて、やや批評性に乏しいところでしょうか。中盤まではシンデレラやラプンツェルのように「毒親から解放される子供の物語」かと思っていたので、最終的にごく良識的な「家族主義」におさまってしまったのはかえって肩透かしでした。たしかに「家族で安心して楽しめるファンタジー娯楽作品」としては満点の出来ですが、引っかかる要素がなさすぎて、ジブリなどの日本のアニメに比べると、あまりに結論が良識的かなあという気もします。
[地上波(字幕)] 8点(2022-03-29 13:15:22)
78.  Wの悲劇 《ネタバレ》 
GYAOの無料動画で視聴。昔観たつもりだったけど、これまたちゃんと観たのは初めてだったかも(笑)。 じつによく出来た映画です。脚本も素晴らしいし、蜷川幸雄による劇中劇も美しいし、演技も申し分ない。原作は読んでいませんが、武井咲のTVドラマなどで内容はおおむね分かっていたし、やはり原作を分かってるほうが、この脚色の妙をいっそう楽しむことができると思います。 強いて欠点を言うならば(蜷川の演技がいちばん下手クソだったのはご愛嬌として)、一般に名場面として知られているラストの「泣き笑い」のシーンが、わたしには、ちょっとクサいかなあ、と思えました。嘘の人生に耐えられなかった男と、嘘の人生を引き受けようとする女の対比というコンセプトが、このラストへと帰結する必然性は理解できるのだけど、それだけに無理やり押し込んだ観念的なラストのように見えます。わたしとしては、世良公則が刺されてすべての嘘がバレてしまうもっとも哀れな場面で終わったほうが良かったと思う。 いずれにせよ、澤井信一郎については、さらなる再評価があっていいのになと感じました。
[インターネット(邦画)] 8点(2022-03-21 22:52:24)
79.  蘇える金狼(1979) 《ネタバレ》 
GYAOの無料動画で視聴。鈴木清順や森田芳光の文芸映画は見ていましたが、村川透のアクション映画で松田優作を見たのはこれが初めて。予想以上に面白かった!もっと血生臭くて陰鬱な内容かと畏れていましたが、かなりスタイリッシュで軽快だし、スケール感もあって見ごたえがありました。物語はまあ荒唐無稽ですけど、大映時代劇に優るとも劣らぬアクションの美学を十分に楽しめる。 とくに優作の狂気をはらんだ意味不明な動きは不思議なくらいにカッコいい。一般には、太陽にほえろの「なんじゃこりゃあ!」が有名ですが、本作での死に際のよろめきは舞踏のように美しかったです。この点では、ジャン・ポール・ベルモンドやブルース・リーをも凌ぐような唯一無二の輝きがあると感じます。クラーク・ケントみたいな「変身前」と「変身後」の落差も魅力的だったし、飛行機の中でキューブリックのSFみたいなことを呟いて終わる不気味でシュールな感覚も洒落ていました。 ちなみに原作では、風吹ジュンのことを無慈悲に殺して逃げおおせるらしいけど、やはり優作の場合は最後に死んでこそ真骨頂なのでしょうね。むしろ風吹ジュンを殺したことのほうが腑に落ちなかったです。
[インターネット(邦画)] 8点(2022-03-16 21:12:21)
80.  スパイの妻《劇場版》 《ネタバレ》 
ベネチアでは演出のほうが評価されましたが、この作品が優れているのはむしろ脚本だと思います。もともと黒沢清は「ジャンル映画」(要するに通俗映画)の作家を自称しているので、この作品も「サスペンス・ロマンス」の体裁で作られていますが、濱口竜介と野原位の脚本は「不可視のものを映像化する」という政治的な課題に取り組んでいます。 この作品が10年前の「金子論文」の発見に触発されたのは明らかですが、731部隊の「細菌戦」の真実はそれでもまだ全貌が闇に包まれています(映画が公開された2020年にも新資料が見つかっています)。したがって、この映画も「いまだ目に見えないもの」を描くという政治的な課題を負っています。主人公・福原優作の機密漏洩の企ては未遂に終わり、真実は闇に葬られたまま戦争が終わり、結局のところ、あのフィルムに何が映っていたのかも分からない。そういう物語なのですね。 黒沢の「ジャンル映画」としてなら7点、濱口と野原の「政治映画」としてなら9点。そのあいだを取って8点の評価にします。ただし、わたしが見た1月10日のNHK放送はおそらく「劇場版」でなく「TV版」なので、映像のテイストがいかにもNHKの歴史ドラマ風でした。「劇場版」だったら、演出に対する印象がもっと違うのかもしれません。
[地上波(邦画)] 8点(2022-01-12 09:07:31)
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