Menu
 > レビュワー
 > サムサッカー・サム さんの口コミ一覧
サムサッカー・サムさんの口コミ一覧[この方をお気に入り登録する

プロフィール
コメント数 211
性別 男性
年齢 34歳
自己紹介 日本は公開日が世界的に遅い傾向があるので、最近の大作系は海外で鑑賞しています。
福岡在住ですが、終業後に出国して海外(主に韓国)で映画を観て、翌日の朝イチで帰国して出社したりしています。ちょっとキツイけど。

Filmarksというアプリでも感想を投稿していますので、内容が被ることがあるかもしれません。ご了承ください。

これからも素晴らしい映画に沢山出会えたらいいなと思います。よろしくお願いします。

表示切替メニュー
レビュー関連 レビュー表示
レビュー表示(投票数)
その他レビュー表示
その他投稿関連 名セリフ・名シーン・小ネタ表示
キャスト・スタッフ名言表示
あらすじ・プロフィール表示
統計関連 製作国別レビュー統計
年代別レビュー統計
好みチェック 好みが近いレビュワー一覧
好みが近いレビュワーより抜粋したお勧め作品一覧
要望関連 作品新規登録 / 変更 要望表示
人物新規登録 / 変更 要望表示
(登録済)作品新規登録表示
(登録済)人物新規登録表示
予約データ 表示
評価順1234567891011
投稿日付順1234567891011
変更日付順1234567891011
>> カレンダー表示
>> 通常表示
1.  トランスフォーマー/ビースト覚醒 《ネタバレ》 
久しぶりのTF超大作。 本作はベイ監督の5作とは異なる世界線の「バンブルビー」の続編、かつ2007年に公開された「トランスフォーマー」の前日譚に当たるという立ち位置の良く分からない作品だ。(一応ラストでベイ時代の音楽と終了フォーマットを踏襲している。)  とはいってもベイが監督した5作品の時点で矛盾も多く、良く分からん世界観だったのも事実。 もう、TFはそれでいい。 今回も出されたTFを余すことなく楽しもう。  本作はタイトル通り、TFのアニメシリーズであるビーストウォーズをフィーチャーする。 ビーストのアニメは空前の大ブームとなったので、これは当時の子供たちにも刺さるだろう。  感想としては個人的には大いに楽しめたが、色々と歪な面も感じる。 再撮影や、カットされた多くのシーン、TFとしては短い上映時間… 本作が色々な思惑の元、当初の予定とは異なる形で世に出たことは想像に難くない。 結果から言えば、作風や上映時間の調整が行われており、ドラマの性急さ、ルール説明の曖昧さを感じたことは事実だ。  本作はオプティマスがリーダーシップを取り戻すまでの物語が主軸。 監督も言及してたが本作のオプは、鋼鉄の判断力と思慮に富んだいつものオプではない。 実際、あまりに怒りっぽいオプの姿に驚く。故郷へ帰ることができず、仲間への責任を背負い込んでいるのだ。  これは面白いと思うが、正直なところセリフベースの説明では物足りなさを感じるところでもあり、実際、本作にはカットされた異なるオプ主体のオープニングもあった。(Youtubeにあります) やはりセリフでの説明では、最低状態のインパクトが薄く、成長物語であればこそ、変化の緩急は強調してほしいものだ。  他にもテンポのよさの弊害として、トランスワープキーやユニクロンについても説明が曖昧に感じる部分があり惜しいと感じた。 しかしながらこの辺り、ドラマや設定は頭の中で補足していけば楽しめると思う。  他に本作の長所もたくさんあった。  ノアとミラージュの友情が熱い。  弟に付与した設定も良い。 ソニックとテイルズ(当然ゲームが元ネタだ)という名前を与え、本作のキーワード=チームを連想させる。困難なクッパ(この時代のGBには登場しないと思うが)の攻略に挑む姿はそのまま闘病と重なり、ノアの知る以上のガッツを描写する。 モア・ザン・ミーツ・ジアイ=目に見える以上の力、すなわちTFシリーズが秘めるメッセージだ。  エレーナとエアレイザーの絆もいい。 エレーナの才能を、翼をもった隼が外の世界へと解放していく。 ノアとミラージュ程あからさまなパートナーとしては描かれないが、明らかに二人が意識しあっていることが分かるのが良い。  ちなみにホイルジャックとの合流場所はサクサイワマンという遺跡だが、これは「満腹の隼」の意。遺跡の名はビーストが古代人に与えた影響の名残なのだろうかと、とんでもない考古学を考えてしまったりする。  一番良かった点、これはTFのカッコよさに尽きる。 オートボッツのデザインは過去イチで好きかもしれない。 「バンブルビー」とベイ作品の移行期のようなデザインが良い。  アーシーは格段に可愛くなっているし、F1に変形しない(一瞬しますが)ミラージュも鑑賞してみれば魅力的に見えた。 ホイルジャックに関しては前作でアニメ準拠の姿で登場したのに、なぜ今作で南米かぶれメガネになったのか謎。  その出自が全く語られなかったスカージにはびっくりだが、初戦でオプを圧倒する悪役ぶり痺れた。他のテラーコンズの面々もヴィランとして映画を存分に盛り上げてくれた。  惜しいのはユニクロンか、せっかくの惑星捕食がほぼないため、設定以上の怖さが感じられない。さらには援軍要請にクソザコサソリ軍団を投入するポンコツぶりで、結局テラーコンズは実質3人でTF達の連合軍と戦う羽目になっているから可哀そうになる。(モブ軍団が弱いの)  ユニクロン少々は残念だが、TFのカッコいいいシーンはたくさんあるし、オートボッツ集合シーンは、まるで実写一作目を観た時のようなワクワクを感じた。大人になったビースト世代だけでなく、本作が初めてTFに触れる子供の心に残ってくれると嬉しい。   本作は監督が本来取りたかった映画とは違う状態かもしれないが、夏の大作としてはテンポの良い本作が正解にもなるのかもしれない。 つるべ打ちのアクションに彩られた一大冒険活劇、その中に活写されるトランスフォーマーたちのカッコよさ。 実写版1作目の精神へと繋がっていく久しぶりのTF映画は、子供たちの期待を裏切らないだろう。
[映画館(字幕なし「原語」)] 7点(2023-08-04 02:59:10)
2.  1917 命をかけた伝令 《ネタバレ》 
「全編ワンカット」がどう定義されているかはよく知らないが、本作は長回しを用いた複数のカットをつなぎ合わせたものである。 故に編集後の本編はワンカットのように見える。その撮影や編集方法については、近作で言えばイニャリトゥの「バードマン」を彷彿させる。  個人的には撮影方法や撮影アイデアが前面にフィーチャーされた作品はあまり好みではない。 主観視点だとか、長回し多様だとかの「独自ルール」的なものが逆に仇となり、物語の面白さをむしろスポイルしている作品は多いと思う。 そういったワンアイデアはYoutubeの5分程度の動画なら楽しめるだろうが、90分以上くらいは時間をとる映画では「慣れ」と「飽き」の時間の方が多くなってしまう。  対して前述した「バードマン」は賞レースでも大健闘した。この作品には、ハリウッド対ブロードウェイ(娯楽VS芸術)というテーマ、そしてドラマをじっくり描いており、撮影方法は虚実入り混じる不思議な世界観をサポートする役目に徹していたのだ。 そしてこれは「1917」にも通じている。 「1917」は名匠サム・メンデスが監督したことがしっかりと感じ取れるドラマに秀でた一作に仕上がっていた。  邦題にもあるが、戦争映画において「伝令」に着目した点が良い。 伝令とは、面と向かって相手に言葉を届けることとは少し違う。自分が受け取った情報、思い、人生を遠くの誰かに伝えることだ。  例えばカエサルの「来た、見た、勝った」という今も残る簡潔な文体。またはマラトンの戦場からアテナイまでを走破し、勝利を伝え絶命したエウクレスの逸話(諸説あります)。或いは文豪ユゴーの世界一短い手紙のやり取りか。  「伝令」が生むドラマはいつの時代も人を惹きつけてきた。 まして電話一本、いや指一本で地球の裏側まで瞬時に思いを伝えらる時代である。今一度、「伝令」の尊さを噛みしめらる「刺さる」テーマである。  また疑似ワンカットの映像も「戦場の臨場感云々」という宣伝文句以上の効果を発揮する。 戦闘が終わった後の中間地帯、その惨たらしい傷跡。空に消え、再び画角に現れる照明弾の降下。町を焼く炎に揺らめく人影。印象的な映像は多角的に戦場を考察していく。 メンデス監督は「スペクター」冒頭でも超ド級の長回しを披露していたが、本作の長回しはより情報整理やドラマ性に長けており、野心的な方向に進化しているといえる。  ドラマもメンデス監督らしい。 「俺に話かけ続けてくれよ」から「この子に話しかけて続けて」という記憶の再構築。 今まさに逝こうとする友達の言葉が、これからの未来を生きる希望へ向ける言葉としてウィリアムの脳裏によぎる。 時を告げる鐘の音が疲労困憊の彼を奮起させる。  控えめな演出ながら、しっかりと登場人物の気持ちを変化させる事柄がしっかりと描かれていて良い。 思えば「スペクター」や「スカイフォール」「レボリューショナリー・ロード」でも、いやいや「アメリカン・ビューティー」まで遡っても、メンデスの作品では確実な人間描写が生きていた。  繰り返し強調される「全編ワンカット」という側面も確かに度肝を抜く完成度であるが、やはりメンデス監督の人間描写やテーマ性も骨太な見どころとして鑑賞したい。
[映画館(字幕なし「原語」)] 8点(2020-02-09 23:09:01)
3.  ペット・セメタリー(2019) 《ネタバレ》 
本作は去年の春に世界的に公開され、日本では例によってやたらと遅れて劇場に到達。 日本公開日の時点で、海外Netflixでは配信も始まっており、VPNを変えれば日本のご家庭でも鑑賞できるという…。 この公開日の遅延、どうにかならないものか。いやビデオスルーにならずに、劇場で観られるだけでも良かったか。  さてオリジナル版のネタバレを避けたいので細かいことは言及しないが、自分は前情報をほとんど入れずに鑑賞したため、本作での改変はに思わず「!?」と目を疑うものがあった。 これ以降、エリーちゃんのフィジカルを活かした攻めのペット・セメタリーへと舵が取られるが、これはこれで楽しめた。 マイナーな変更点としては、パスコウ君の出番が大幅に抑えられたことで、ファンタジー感を削り、よりダークなホラー映画に近づけようとする動きもうかがえた。(ちなみにパスコウ君は人種も変わった)  また、オリジナルでは、愛ゆえに自然の理に挑む人間が哀しさが印象に残ったが、本作は死者の怒りという面にもフォーカスすることで、ホラー映画的な間口の広さを確保できていたと思う。 死後の世界はあるの?どんな感じなの?いやないだろうよと議論を繰り広げた3人。彼らがまとめてペッセメ送りされてしまうという意地悪な脚本が良い。一体どんな答えを見たのだろうか。  しかしながら、事の発端となるチャーチの一件まではオリジナルとほぼ同一内容で進行してくため、いかに攻めた展開にしようと、しっかりとしたドラマが息づいているのもいい。 加えて、レイチェルのお姉さんの話も深く掘り下げており、これはびっくり箱的な恐ろしさを演出すると同時に、「生」という観点における人の無力さ・運命の不公平さを感じさせるエピソードになっている。  結局、生者である僕たちにとっては、「生」と「死」の謎というものは計り知れないものだ。 すべての生き物に公平にありながら、その形や時間はそれぞれ不公平なまでに異なっている。これは自然の理であり、それがどんなに苦痛だとしても、変えることはできない。  大事な人、身近な存在を亡くす悲しみ。子供であろうと大人であろうと、世界の不公平さを受け入れるのはとても難しいものだ。 でも、もしもその理を超える力があるなら。悲しみを癒す力があるなら。 ずっと一緒にいたいと思うのが人間だろう。  しかし、この「ペット・セマタリー」もまた魔法ではなく呪いであった。 悲しくて悲しくて仕方がない。  とんでもないホラー映画ながら、終わってみれば、やはりオリジナルと同じ悲しさが胸中に広がるのを感じた。 そしてオリジナルとまた同様に、軽快なエンディングテーマが余韻をぶち壊していくのを感じた。
[映画館(字幕なし「原語」)] 7点(2020-01-17 00:34:40)
4.  スター・ウォーズ/スカイウォーカーの夜明け 《ネタバレ》 
紆余曲折の末、J.J・エイブラムスにメガホンを戻して遂にスクリーンに登場した完結編。 謎には適切な回答が示され、愛すべきキャラクタ達のドラマもあるべき場所に落ち着いた。そして、とんでもなく面白い。  賛否を呼んだ「最後のジェダイ」。個人的にはその革新性と娯楽性の高さは大いにアリなのだが、今回はオーディエンスのフィードバックを適宜に反映したことが見て取れる。 かといって媚びすぎることもなく、いやむしろ予想の上を行く展開には、やはりエイブラムスの細やかな配慮と制作陣の気概を感じられる。  最初に3作全ての脚本を完成させずに、1作ごとにアイデアを出し合って作られてきた今回のトリロジーの制作スタイルの影響もよく出ている。  新たな脅威としてのパルパティーンの復活、そして何者でもなかったはずのレイの血筋の再考がそれに当たるだろう。  それ故に序盤こそ世界観の説明に時間をとってしまったが、しかしウェイファインダーを探す旅に入れば、途端に冒険活劇の色が濃くなる。 そこには呼吸を忘れる程に壮絶なアクションシークエンスがあり、感情を揺さぶるドラマもある。  複雑化したベンの心情も、しっかりとした救済の道を与えた上で退場させてくれたのも良かった。「フォースの覚醒」からも言及されていたが、彼が最後にハンと向き合う勇気を手に出来たという落としドコロは、確実にカイロという悪役とベンという青年の魅力を押し上げた。  散々伏線を張っておいたフォースの繋がりからの、兄弟ライトセーバーの受け渡しは最高にアツい見せ場になっていたと思う。  そしてやっぱりずーっと「スター・ウォーズ」が大好きだったこともあり、エモいシーンがバシバシキマる最終決戦はもう涙である。隣で観てたおっさんも号泣である。  新三部作を支えたポー、フィン、レイの抱擁にもまた涙。伝説の幕引きに相応しい一作だ。  また、個人的に気になっている事なのだが、「映画」はいま確実に変化の中にあると思う。 スコセッシの大作も、ベイのドンパチも(一部除き)映画館を介さずにネット配信される時代になった。自分もこういったサービスを映画館に通いつつも重宝してるので、映画、そして映画館のあり方の変化に戸惑っている。  それでも今日は最速の上映会ということもあり、映画館は満員で、ファンの間で交流があったりもして、映画館が映画を超える体験を提供してくれたと思う。  このレベルの盛り上がりを見せる場面は今後そう簡単に出会えるものではないかもしれないな。ネット配信が全盛を迎えていくだろうが、「スター・ウォーズ」と映画館の思い出はいつまでも大事にしたい。と言いつつ、新作「マンダロリアン」を見るためにディズニーの配信サービスに加入するのであった。
[映画館(字幕)] 9点(2019-12-19 23:46:10)(笑:1票) (良:3票)
5.  ゾンビランド:ダブルタップ 《ネタバレ》 
ゾンビ映画あるあるというメタ的ユーモアが話題となった「ゾンビランド」、10年ぶりの新作。  これだけ間が空いたにもかかわらず、オリジナルメンバー(+ビル・マーレイ)が集結したことがまず嬉しいところだ。  10年というのは結構長い。 前作の公開当時、ロックボトムを演じるアビゲイル・ブレスリンが既に大物子役として大成していたこともあり、丁度人気が出始めた辺りのエマ・ストーンは少々知名度に劣ると言った印象だった。しかし今では4人の中で唯一のアカデミー賞受賞を達成し、大女優になりながらもこのコメディ映画に帰ってきた。 ウディ・ハレルソンは「スリー・ビルボード」などの良作で確実に円熟味を増し、名優として扱われることが多くなったいたが、タラハシーの様なイカれた役を待っていたファンも多いのではないだろうか。ナチュラルボーンにクレイジーなウディも僕は好きである。 子供だったアビゲイルちゃんは妙にリアルに成長。劣化とか言ってはダメだぞ。ちなみに「マギー」でゾンビ役をやってたりもする。 ジェシーについては、前作が昨日公開されたんじゃないかってほどそのままで、なんか面白い。  さて、世界観の方にも続編らしい新設定が加えられた。 ホーマー、ホーキング、ニンジャ、T-800という強化ゾンビたちの出現だ。 しかしながら実はこれらが物語に強く影響することはなく、ギャグの幅を広げるために用意されているのが上手いところだ。 つまり、10年経った続編ながらも、いい意味で代わり映えがしない。  新キャラにしても、マディソンは話を動かす仕掛け&ギャグ要員としての役割に終始し、必要以上に内面が描かれることはない。「バカキャラ」で全てが完結できるようになっており、人気上昇中のゾーイ・ドゥイッチの可愛さとバカ演技で強引に押し通してくる。 他にもアルバカーキやフラッグスタッフといった面々が出てくるが、これらもギャグ+アクションで沸かせた後は意図的に退場させており、スケールを保っていることが分かる。(ルーク・ウィルソン、トーマス・ミドルディチ、ロザリオ・ドーソンなどサブキャラのキャスティングが異常なほど豪華である)  本作は相変わらず4人にまつわる話なのである。 リトルロックの反抗期、ウィチタとコロンバスの痴話げんか、タラハシーの子離れ。 サザエさんの予告みたいになったが、「ダブルタップ」で描かれるのは、数年を経て絆を強めた家族のホームコメディだ。 新キャラも設定もゾンビも、彼らのドラマ以外は全部ゆるーいギャグでいい。 そして「家」を探す旅路は、ホワイトハウスであれキャデラックであれ、家族が揃う場所なのだという答えにたどり着く。 ゾンビだらけの終末世界ながら、のほほんとした「らしい」終わり方が良いではないか。  映像が豪華になり、世界観が拡大されても、描くべき部分やオーディエンスが期待する部分をしっかり見定めており、「ダブルタップ」は非常に心地の良い続編になっていると言える。そしてもちろん存分に笑わせてくれる良作だ。   そういえば、マディソンがゾンビ化する前にコロンバスが手を打とうとするシーンは、2度撃ちということもありコーエン兄弟の傑作を思い出す…とコロンバスやフラッグスタッフ的な想像をしてみる。あと最後のビル・マーレイはズルいだろう(笑)
[映画館(字幕なし「原語」)] 7点(2019-12-02 12:23:31)(良:2票)
6.  ドクター・スリープ 《ネタバレ》 
そもそも傑作の呼び声高いキューブリックの「シャイニング」は、キングの原作小説とはかけ離れた終焉を見せ、原作者自らに「俺は映画版は認めん」と言わしめた代物だ。 おかげで本作は「映画版の続編」でありつつ、かつ、原作小説の続編として執筆された「ドクター・スリープ」の映画化でなければならない。 ややこしいが、とっても脚色が難しそうだということである。  しかしながらマイク・フラナガンは映画版と小説版との噛み合いを上手く調整し、キングお墨付きの「ドクター・スリープ」を完成させた。 ここで留意して欲しいのは、「ドクター・スリープ」は「シャイニング」の続編であることは間違いはないが、「シャイニング」を下敷きとして、世界観を発展させた別の作品であるという事だ。 宣伝やコピーを見る限り、成長したダニー坊やが例のホテルに戻って恐怖に見舞われる…というような印象を受けるが、本作は原作の時点で「シャイニング」とはまったくの別物であり「ドクター・スリープ」としては、これは正解なのである。  初見では続々と出てくる新キャラや、世界観の広さに面食らうだろう。 しかし、印象操作のせいで「シャイニング2を観に行ったら、X-MENっぽいバトル映画だった。ナニコレ思ってたのと違うから受け付けねぇ」と早々に本作を切り捨てるのはあまりに勿体ない。 「ドクター・スリープ」は、手に汗握る攻防や、前作から発展したドラマを内包した素晴らしいエンターテインメント作品だ。  孤立と閉塞の前作から一転、追跡と逃避の目まぐるしいスリリングな展開が良い。 「子どもの誘拐」というアメリカに蔓延る闇を足掛かりにし、彼らに対する凶悪な拷問シーンで敵軍の狂気を強烈に印象付けたのも上手い。(「ワンダー 君は太陽」「ルーム」のジェイコブ君のリアルな演技に、レベッカ・ファーガソンも恐怖を感じたとのこと) ローズ・ザ・ハットやらスネークバイト・アンディやら、とんだ中二病軍団と思わせながら、その実態は危険なカルト教団である。若く正義感に溢れるアブラが怒りをぶつける相手として不足はない。  他にも、前作とまったく異なるジャンルでありながら、「シャイニング」の世界観を上手く匂わせている点も楽しめる。 あくまでも前作の延長線上にあるからこそ、狂戦士として登場するオーバールックホテルにも熱い必然性が出る。 これぞワイルドカード。 毒を以て毒を制す、活劇の締めはこうでないとつまらない。  また、エンタメ方向に走った本作が、それでも大人の鑑賞者に静かな余韻を与えるのは、本作が扱う(特にアメリカで顕著な)諸問題の内包に他ならない。 「これは…薬なんだよ」 実際に中毒から立ち直ったキングの経験則もあるのだろうか、悪夢的なジャックの登場は空気の重さが違う。 また先に述べた子供の誘拐にも関連するが、子どもに対して大人たちがどのように接するのかという点にも踏み込んでおり、ダニーの成長、ひいてはシャイニングの謎にまで昇華させているのが素晴らしいところだ。  酒をかっ喰らった挙句、斧振り回して追い掛け回すなど持ってのほか。実は誰もが持つシャイニングという個性を、大人たちは守り、道を示してあげねばならない。 それが悪夢を呼ぶのなら、悪夢を閉じ込める箱を与え、それを振りかざす者があれば、身を守り闘う方法を共に考える。 ディックがダニー坊やを導いたように。  バッグス・バニーの決まり文句「ワッツアップドク?(どったのセンセー?)」の通り、ドクター・スリープへと成長したダニーもまた、アブラの良きメンターとして彼女を導いていくのである。 キングが込めたヒューマン・ドラマがしっかりと息づいていることを感じた。 (この人オビ=ワン・ケノービみたいなことやってるなと思ったら、たしかにオビ=ワン・ケノービでしたわ)
[映画館(字幕なし「原語」)] 8点(2019-11-21 16:01:01)(笑:1票) (良:1票)
7.  エンド・オブ・ステイツ 《ネタバレ》 
「フォールンシリーズ」(邦題ではエンド・オブ~で統一されている)の3作目。 よくこんな脚本でGOサインが出たなという極めて凡庸な作風。とても好意的に言えば、安定感のある出来か。  過去二作には、テロリストによる制圧作戦のシミュレーションという軍事的な側面が取り入れられており、また、それに対抗したプロフェッショナルの仕事を楽しむという見方が確立されていた。 本作では、現代における大統領暗殺という課題にドローン攻撃という一つの回答を提示して、シリーズのアイデンティティを保っている。  それにしてもドローン軍団の凄まじさたるや、一騎当千が束で襲ってきたレベルの絶望感。無理ゲーである。 あの爆薬の量は映画的な誇張にしろ、実際にやられたらヤバいだろうという恐怖が伝わってきて良い。 軍事的な利用でも成果を挙げているドローンだが、パレードや空港での使用禁止が周知される程に身近な側面もあるので、なかなか良い題材ではないかと思う。  しかしながら全体としてはかなりアイデアに乏しい印象だ。 戦闘狂が戦争を継続するために暗躍するというよくある展開に、主人公が容疑者になって追われるというよくある濡れ衣モノ、さらに回を重ねたシリーズによくあるお父さんネタが詰め込まれた手垢のついた映画である。  また、キャラクター主体のストーリーに走り過ぎているため、リアルな戦闘シーンの魅力が削がれてしまったのももったいない部分か。 森に仕掛けた爆弾で追っ手を殲滅(みんな丁度良い位置にいるんだこれが)するなど、おバカすれすれのマッチョイムズアクション映画の芸風である。ノリノリのニック・ノルティが見られるユーモラスな一面もあるが、全体としては統一感に欠ける。  ぽっと出のダニー・ヒューストンについても黒幕感が酷い。ジェラルド・バトラーと飲みながら語らうシーンなど、これから裏切ることが透けて見え、もはや様式美といった趣だ。  このシリーズ三作目がよくあるアクション映画の流れに乗ってしまったことはそれほど問題ではない。 このシリーズのコンセプトは、よくある作風の中でも差別化を図れるポテンシャルを内包していたはずだ。 逃亡・捜索・挟撃などの要素を、シリーズ独自の目線で展開していればもっと別の評価になっただろうと思う。
[映画館(字幕なし「原語」)] 5点(2019-11-13 15:15:29)
8.  ターミネーター:ニュー・フェイト 《ネタバレ》 
「ターミネーター」ほど歪な続編を持つシリーズもないだろう。 有無を言わさぬ完成度を誇った2の呪縛。以降、毎回続編は「なかったこと」にして新たな3を作り続けている。  正統派の「3」、未来の戦争の「サルベーション(4)」、新たな三部作を目指した「ジェニシス」と、個性的な続編が続いたが、今回はシュワちゃんのみならず、リンダ・ハミルトンまで引っ張り出した「正統な続編」とのこと。  特徴は役者の年齢を加味して、作品内でも時間が流れていることである。 別のターミネーターにジョンが殺害され、どんな変化が起きたのか。  しかしながらプロットとしては、未来の要人を敵から保護するといういつものやつである。ジョンの死や強化兵士の投入など工夫がみられたが、冒頭~中盤はマンネリ気味に思えた。 またカーチェイスも迫力は満点だが、凡庸なものになっており少し残念である。音楽の変調などは「2」のチェイスを彷彿とさせるが、物量に任せた大味なシーンに感じた。  「2」では、不気味な敵、ハーレー FLSTF ファットボーイの存在感、そして片手装填のレミントンなど、プラスアルファとなる熱い驚きに満ちていた。 「3」でもクレーン車を利用した度肝を抜くチェイスが用意されていたので、ここでもっと頑張ってほしかったなと思った。  しかしながら中盤以降、シュワちゃんが登場してからは凄まじい盛り返しだ。 (監督のT・ストーリーが適切に演出できているかは、いささか疑問ではあるが)中盤以降に明かされるJ・キャメロンがに作り出した「設定」の上手さには舌を巻く。  協力者はなんとジョンを殺害したターミネーター。 しかも人間性が芽生え、カールおじさん史上最強のカールおじさんとして生活しているのである。 しかしこれは「2」の「理想の父親像」の発展として捉えられることができ、正当な続編という実感が沸く。 人が涙を流す理由を学ぶように、この個体も人の愛を数年かけて学んでいったのだ。 ちなみに犬が懐いている点からもカールおじさんの人間性が伺える。(REV-9は犬に吠えられている)  またシリーズのテーマである「運命」への言及も巧い。 「サラ、お前は運命を信じるか?」 任務を完遂したターミネーターは、贖罪の念とともに生き続け、結果としてジョンを失ったサラに生きる理由を与えた。 心の奥にジョンという傷を抱えた二人が邂逅し、今、目の前には新たなジョン、ダニーがいる。 これを運命といわずなんというか。  「サルベーション(4)」では蘇ったマーカスが「セカンドチャンス」という言葉を使ったが、彼らにとってのそれはまさに運命が与えた救済なのだ。 ターミネーターをも運命に抵抗する戦士として登場させたアイデアには感服である。  シュワちゃんの猛ブーストはアクション面でも活きており、空から水中へのダイナミックな構成がキマる。(ちなみに劇中で活躍するハンヴィーだけど、シュワちゃんの要望で民生化してハマーH1が生まれたんだよ) 今回、人間として暮らす元殺人ロボットを演じたシュワちゃんだが、その演技は円熟味を見せており、本当にいい役者だなぁという面白みもあった。 欲を言えばグレースのドラマもしっかり時間をかけて欲しかったが、それでも「ニュー・フェイト」は感情面ににも訴えかけてくる良作に仕上がっている。  あえて「2」をなぞる構成も、このドラマを見れば納得できる仕掛けだ。 戦いを終え、ダニーは今度こそグレースを救うのだと異なる未来への思いを語る。今までシリーズを観てきた僕が一つだけ言えることは、「恐れるな、未来は変えられる」ということだ。
[映画館(字幕)] 8点(2019-11-09 21:05:44)
9.  クロール -凶暴領域- 《ネタバレ》 
「クロール」は、ハリケーンとワニというフロリダを悩ます自然の脅威がタッグを組んだサバイバルスリラーだ。 カトリーナの被害が残るニューオーリンズを舞台にした「バッド・ルーテナント」にも、妙なところでワニが出ていたように、この2つのアイコンだけでアメリカ東南部を強く意識させることができる。本国に住んでいる人たちにとっても、地域色の強さが出た興味深い組み合わせかもしれない。  しかしながら去年は去年でハリケーンと強盗(ヘイスト)を組み合わせた「ハリケーン・ヘイスト(邦:ワイルド・ストーム)」なるトンデモ映画が作られていたが、ハリウッドではビーストと自然災害とのマッシュアップが流行り始めているのだろうか。まぁ本作「クロール」の中でも火事場泥棒が出るあたり、ハリケーン・ヘイストも含んでいるが。  さて、主演は「メイズランナー」シリーズで快走を披露したスコデラリオだ。 腹ばいで迫る(クロール)ワニの群れに、華麗なクロール泳法で挑む。この人、泳ぐのも速いんかい(笑)  全体的には面白さがあっていいと思う。題材は奇抜であるが、悪い意味でのバカっぽさはぎりぎり感じられない。 ただドラマ面に偏重している分、テンポを損ねたかという印象か。  また、同じく可憐な女の子がサメに挑むサバイバルスリラー「ロスト・バケーション」で見られるような切迫感を醸す工夫は少なく感じた。 資材が多すぎるのである。発煙筒にしろ銃にしろ、弾薬少なく後生大事にしまっておいて、ここぞというときに使うからこそスリルがでる。 水の増加によって舞台が変わってくというシチュエーションがなかなか面白かっただけに、攻略法についても工夫があれば良かったなと思う。  ちょっと面白かったのはバリー・ペッパーが演じたお父さんか。 「ワニは金属音を嫌う」「ワニは脳みそちっさい」「ワニは飛沫の音に寄る」などと微妙なワニトリビアを並べ立てた挙句、後は頼んだだの、(ワニの中を)泳げだのと、ハチャメチャな注文を投げかけてくる。 わざわざワニだらけの中をボートで移動すると言うもんだから、どんなすごい鉄砲水が来るのかと思ったら、そこそこの威力で拍子抜けしてしまった。最初から自分の家の高所に非難するのはそんなにリスキーだというのか。 大体の見せ場はこのワニトリビアおじさんが招いていないか。  ともあれ、ワニは強くて大満足。 以前ワニ釣りができるという文句に釣られ、ベトナムのスイティエン公園というヘンテコなテーマパークを訪れてみたが、飼いならされているからか、そこのワニさんはホノボノ穏やかだった。 なのでワニには満足なのである。こういうワニが見たかったんですよ僕は。怖いワニ。デスロール!   ちなみにエンディングテーマは「シーユレイター・アリゲイター(またね、アリゲーターの意)」という洒落た選曲である。 この曲が由来である「シーユレイター・アリゲイター」という表現は、英語話者がたま~に使う別れ際の挨拶のことで、レイターとアリゲイターをかけたダジャレのようなものだ。 では、実際にネイティブにこう言われたら何と返すか。 そんな時には、ワイルとクロコダイルをかけて「アフターワイル・クロコダイル(またね、クロコダイルの意)」と笑顔で応えよう。 どうですお父さん、僕のワニトリビアも中々のものでしょう。
[映画館(字幕)] 6点(2019-10-23 22:59:24)(笑:1票) (良:1票)
10.  IT イット THE END “それ”が見えたら、終わり。 《ネタバレ》 
ホラー映画としては異例のメガヒットを飛ばしたITの続編。 90年に制作されたテレビシリーズも前後編に分かれており、初の劇場版シリーズの本作も、90年版と同様のプロットを辿るが、その構成は大きく異なっている。  90年版は子ども編と大人編が交互に挿入される。どの少年/少女にどのような特徴があり、その結果どんな大人になったかが分かりやすく説明されるため、早くからキャラクタに感情移入しやすい。 前後2作の長丁場もダレずに演出できる工夫が凝らしてあると言える。 実際、日本では前後編をまとめ3時間の映画として扱っているので、偶然ではあるが効果的な手法に思える。  対して劇場版シリーズでは、独立した映画2本という体制を活かし、子ども編と大人編をきっちりと分けた真っ向勝負で挑んでくる。 とは言っても、本作だけでも90年版の2作を足した上映時間に匹敵する長尺を誇っており、ホラー映画としては異質の存在である。  前作から(観客にとっての)時間が経過したことが懸念されるが、適宜、子供時代の描写を挿入することで、観客が記憶をサルベージ出来るようになっているので安心だ。 本作では、失った記憶が徐々に戻ってくるという設定があるので、劇中人物と観客との記憶の再構築がリンクするという面白さもある。  前作での人間関係も大体は盛り込まれているので、ぶっちゃけたところ、これ一作でもITの大部分を補完できてしまうほどのボリューム感がある。前作未見の人にも易しい作りだ。(本作の存在意義が薄れる本末転倒な部分でもあるが)  スティーブン・キングのITとは、ホラーと人間ドラマの2つの柱を持つ物語であるが、惜しむらくはホラー部分がビックリ箱的な見せ方になってしまった点か。 3時間に届こうかという長尺ゆえ、視覚効果を効かせたハイテンションなホラー描写が散見される。 多くの年齢層が楽しめるように考えられた妙案ではあるが、大人の観客にとっては「ビックリするけど怖くはない」という感想になってしまうかもしれない。 この辺りは見る世代によって満足度も変わり、調整が難しい部分である。賛否あるだろうが丁寧に健闘している点は評価したい。  面白いなと思ったのは視覚効果の使い方である。 異なる方向に目玉を向けるペニー・ワイズが印象に残ったが、何とこれは演じるビルくんがCGナシで実際にやっているという。さすが超人だらけのスカルスガルド一家の末弟、妙な特技を持っている。 逆に、子供たちをCGで若く見せているという点もまた面白い。 長期撮影期間に、子役たちがグッと成長してしまったことをカバーするための施策だが、言われてみるまで全く分からなかった。 単にクリーチャーを創り出すだけがCGの仕事ではないようだ。  また「シャイニング」の名せりふを言わせたり、「クリスティーン」のプリマスのナンバープレートが登場したりとフフっとなる小ネタも楽しい。  話がそれたが、、、 最も素晴らしい点は、「スタンド・バイ・ミー」もホラー版とも言われるITにおいて、ノスタルジックな人間ドラマをしっかり描けている点だ。 マカヴォイとチャスティンという、数か月前まで超能力で殺し合っていた二人の再共演だが、チームの中心的な役割を担っており、安定感がある。 ITを倒した後にもしっかりと人間描写が描き込まれるのもいい。 この優雅なフォロースルーでは、長い冒険が終わるという充足感、そして大作映画を観たという満足感が確かにある。  27年後にデリーの街に集ったルーザーズの面々は確かに変わってしまった。もう一緒にいられなくなった仲間もいた。変わらないものなどないのだ。 出来事は全て記憶になっていき、それを思い出すことしかできない。  この映画を観た少し前、僕はちょうど友人の結婚式で旧友達と再会し、朝まで騒いだばかりだった。 大人になるにつれ、皆それぞれの人生を歩みだし、今はこういう席でしか集まることはないが、それでも一緒にいると楽しかった。  変わらないものはない。 でも、お店のガラスに映ったルーザーズは確かに昔と同じような記憶を共有していたのだと思う。  思い出の中にある悲しさや儚さ、青春時代のきらめき。色んなキラキラした思いが胸に込み上げ、なんだか切なくなっちゃう「IT」なのでした。
[映画館(字幕なし「原語」)] 8点(2019-10-09 18:24:25)
11.  ジョン・ウィック:パラベラム 《ネタバレ》 
キレッキレのキアヌが観れるシリーズ三作目。 「ジョン・ウィック」シリーズは2014の登場以来、5年で3作を展開させてきたが、軸をブレさせずにどんどん面白くなっている。  短いスパンで3作も作るとなると、マンネリ打破とか、新たな展開とかで、そもそものアイデンティティを失って自爆してしまう例は多い。近年で思い出されるのは、誘拐の解決が見せ場だったのに、ただの濡れ衣サスペンスになった「○○時間」、記憶が飛ぶほど飲んだ翌日のドタバタのない「●●●オーバー」などだろうか。  変わって本作は、右肩上がりに批評家・観客の評価を得続けているのが凄いところ。 少なめだった予算も、作品の成功と共に少しずつ拡大されている。つまり、初期コンセプトの範囲内で、「出来ること」が単純に増えていき、面白いアクションシーンをどんどん実現できているのではないか。  もちろん派手になったからと言って、大味な部分はない。個々のアクションシーンのアイデアや徒手格闘の練度には驚嘆すべきモノがある。  もうね、笑っちゃうんですよ。 キアヌがめっちゃ頑張ってて、半笑いで応援するしかないんですよこれ。  キアヌがちょっと街を流しただけで、刺されるわ殴られるわ車に跳ねられるわと、序盤のテンションから既にぶっ飛びすぎだろうと。 ニューヨークの治安はどうなってんだと。 馬の蹴りとか、キアヌちょと気に入ってるし。  話も単純というか潔い作りで。行きたい場所に移動して、戦って、、、でもハル姐さんとワンちゃん部隊とか、要所で素晴らしいアイデアが炸裂してて面白い。これは良い。唐突なにんじゃりばんばんも良い。  終盤に至っては、ガチなシラット勢に囲まれボコられる我らがキアヌ。 これはヤバイ(笑) キアヌさんってこんなに雑に壁にぶつけても良いの?良いんです。   観た後は「え、キアヌ…死んでないよな」という心配がよぎるほど、体を張ったキアヌが観れる本作。 面白かった。  続編を匂わせる終わり方で、まだまだジョン・ウィックの受難は続きそうだけど、 頑張れキアヌ、おまえがナンバーワンだ。
[映画館(字幕なし「原語」)] 8点(2019-08-26 18:09:58)
12.  トイ・ストーリー4 《ネタバレ》 
これ以上ない形で幕を下ろした「トイ・ストーリー」、まさかの続編。 なぜ今更かとも思いつつ、しかし実際に見てると、今だからこそのメッセージが詰め込まれた素晴らしい傑作だ。  まず、本作はファミリー映画として、とても良質。 トイの性質を活かした見せ場は目を見張るものがあり、洗練された脚本と相まって異次元の面白さに昇華している。  大人の観客にとってはドラマパートも骨太で見ごたえがある。 様々なキャラが、おもちゃの人生(?)の多様さを浮き彫りにし、ウッディの「内なる声」に影響を与えていく。  おもちゃの一般的な幸せを改めて提示するギャビー。さらには、価値観のまるで違う新入り・フォーキー、そしてワイルドな変貌を遂げたボー。 奇しくもシリーズと一緒に成長してきた僕は、今では平々凡々と仕事をこなしてきたわけだが、本作の彼らには見覚えがあるような気もした。  世の中にはいろんな人がいて、色んな道がある。 会社の主力として実直に頑張る人もいるし、世代の異なる新人が風変りに見えたこともある。 独立したり、まったく別のことを始めたりした人もいた。   ときおり、別の生き方が頭をよぎることもある。 自分は、自分が思うよりももっと別の人生を送れたり、思いもよらないような別の生き方もあるのではないか。 今まさに人生の岐路に立っているわけではないけども、人にもおもちゃにも選択の瞬間は訪れるものなのだと思う。  だからこそ最後のウッディの決断は、胸にこみ上げるものがあった。 今度は離さないと、最愛のボーの手を取ることがウッディの答えなのである。 「好きな人といたい」。小さな子供にもわかるようなアプローチだが、シンプルで、優しくて、感動的だ。  その決断に戸惑いながらも、ウッディの背中を押して送り出したギャングたち(ウッディの仲間たち)の一幕も心に残る。 悲しい別れもあるが、人生には、希望と幸福に満ちた「旅立ち」という別れもあるということだろうか。  さらにギャビーが見せるドラマも、大人のお友だちにとっては勇気づけられるメッセージとなっているのも良い。 おもちゃにとっての普通に焦がれること。 「普通」と言うとなんだか当たり前なこととして受け取られがちだが、おもちゃにとっての「普通」とは何だろうか。 もしそれが、子供たちを楽しませ、心に寄り添い、勇気づけてあげることだとしたら、「普通」でいることはどれだけ素晴らしく、素敵なことなのだろうか。  この物語は、特別とは違う皆に向けた優しさをも内包しているのだ。 普通でもいい、できることをやっていけばいい。 自分が何者かは置いといて、何になりたいのかに耳を済ませればいい。 「何で生きてるの?」なんてその時まで分からないのだから。   繰り返しになるが、本作はシリーズの例に漏れない最高に楽しいファミリー映画だ。 そして、あの素晴らしい前作から数年を経た今だからこそ、僕にとって本当に観て良かったと思える作品になっていた。
[映画館(字幕なし「原語」)] 9点(2019-07-10 18:13:53)
13.  X-MEN:ダーク・フェニックス 《ネタバレ》 
20世紀FOX最後のX-MEN。(延期中の「New Mutants」はどの位置づけなのか) 同時にシリーズの最終作。  海外での低評価に加え、興行的にも敗北した本作だが、映画は観てみるまで分からない。 ヒーロー映画として相当ヤバい領域に踏み込んではないかという衝撃を受けた。  監督は同じくダーク・フェニックスを扱った「ファイナル・ディシジョン」からシリーズに携わり続けているサイモン・キンバーグだ。 「ファイナル・ディシジョン」といえば、シンガー版を継承したブレット・ラトナーにより、壮絶なバトル大作へと変貌を遂げた快作だ。対して本作はシンガー版の陰鬱さを更に掘り下げたような暗い作風が特徴である。(両作ともジーンの実家にX-MENが押しかけるシーンがあるが、作風の違いが出て興味深い)  ちなみに監督更新に伴い、音楽のジョン・オットマンは降板。残念ながらアガるテーマ曲&OPはオミットされた。代わりに、ヒーロー映画卒業を宣言のハンス・ジマーが担当している。  作品の方は、監督によればリアルさとダークさを突き詰めたとのこと。思うに狙った着地点には到達できているようだ。 本作には一線を超えてしまった描写が散見され、ガチで恐怖を感じた。 それは悪役が強すぎて怖いとのレベルじゃない。  例えば、ジーンがエリックに殺人について相談するシーン。 「悪役を殺害すること」についてフォローのないヒーロー映画が少なくない中、彼を大量殺人者と明確に言及した点に恐ろしさを感じる。  中盤ニューヨークのシーンもヤバい。 ジーンは葛藤したくないからと、全ての力を吸収させることを選ぶ。責苦から逃れるべく自殺を図る心境など辛すぎる。  またここでのチャールズへの仕打ちは恐怖しかない。 「歩いて来なさいよ」と冷酷に言い放ち、身障者を無理矢理歩かせるなど残酷極まりない。こんな非道な拷問を誰が平然と見れようか。 その痛々しい映像と「お願いだ、やめてくれ」と懇願するマカヴォイの熱演が恐怖と悲しみに拍車をかける。  終盤では、マグニートーが敵を車両ごと潰すという恐ろしい大技まで繰り出してしまう。ふっ飛ばして画面から退場とかではない。 敵は性質上から擬態するため、ハタから見れば一般人であり、その画作りがマグニートーの明確な殺意に凄みを持たせた。  荒唐無稽ながら、その中で描けるリアルさ、ダークさは一線を超えたと言える。怖すぎるのだ。  ノーラン版「バットマン」や「ローガン」など、大人向けな内容を含んだアメコミ映画は確かにある。 問題は、これらはハナから「いつものアメコミ映画じゃないよ」という雰囲気なのに対し、本作はいつものX-MEN映画のツラをしながら、その中に凶暴な演出を内包している点だ。  個人的にはこういう尖った部分は評価するが、やりすぎなのでは?という気持ちもあった。 多くの観客がその陰鬱さににたじろぐのも理解できる。  マンネリを感じさる構成もマイナスか。 ジーン対Vuk、吸収系の能力との闘い。 シリーズ内で思い付くだけで、ショウ対ダーウィン、ビショップ対センチネルがある。 ジーンが自分から回答を示すように工夫されただけ良かったが、新鮮味はない。 エリックについては、またも大事な人を奪われブチ切れパターンである。流石に既視感は禁じ得ないか。  更にはいくつかのエピソードもウヤムヤに解決されてしまい、全体的に歪な印象は否めない。 レイブンとチャールズの確執や、調子乗りチャールズの件はしっかりと解決させて欲しかったところか。   90年代を俯瞰できる強みを活かしきれなかったのも惜しいか。リブート版は「実際の出来事の裏でのミュータントの活躍」が面白い点であったが、前作「アポカリプス」同様にここは残念だ。 (シリーズ内で30年経過してるのに、誰も老けてないのは苦笑だが)  また、最終作なのにシリーズとの連携が疎かになっているのも物足りない。 サイロック、ストライカー、モイラなど、決着をつけるべき部分が沢山放棄されてしまっている。  とはいえ最終的にはシリーズ共通のテーマである「希望」を絡めて無難にまとめ上げられている。これからの未来に希望を持たせられるような余韻のある幕引きだ。  アクションも地味目で数も少ないが力強さはある。各々が能力を発展させて繰り出す奇想天外な見せ場はまさにX-MENの真骨頂。複雑な思惑が絡んだバトルが熱い。エモい。  X-MENを支えてきたキンバーグが演出する本作は、公開後数日で「失敗」と位置づけられ、監督自らが「私の責任」と公言する事態を招いている。確かに残念な点は多いが、ダークな描写のパンチ力は本物である。印象に残ったことは事実だ。
[映画館(字幕なし「原語」)] 7点(2019-06-12 21:21:39)
14.  アベンジャーズ/エンドゲーム 《ネタバレ》 
前代未聞のエンディングを迎えた前作から1年。 巷では、指パッチンの力でサノス自身も消え去っていた説や、サノスのケツの穴から侵入したミクロ化アントマンが体内で巨大化してサノス爆殺説など、興味深い(?)考察も見られたが、遂に!遂に決着!  「インフィニティ・ウォー」はバトルに次ぐバトルで突っ走る、それはそれは凄まじい1本だった。しかし回答編である本作は、前作とは打って変わってしっかりとストーリー展開に時間を振ってくる。  その運びも衝撃的だ。何しろ怒りをぶつけるべき相手が、ヘロヘロの隠居生活でご飯を作っているのだから。  サノスを倒しても手遅れ、記録的大敗ムードに拍車をかける鬱展開。さらにそのまま無慈悲にも5年もの時が経とうとは、誰が予想し得ただろうか。  中盤のタイムトラベルもありがちに見えて実はトガっている。 某ユニバースでは「全部無かったコト」として新たな時間軸を生成した例もあったが、「アベンジャーズ」では都合の良い改変はできないらしい。サノスによって奪われた者を取り返すことはできるが、その前に死んでしまえばゲームエンドである。鑑賞者からすれば、ソウルストーンのもたらす確実な死を意識させるサスペンスフルな設定だ。  同時に、今まで何作と関連作を作り続け、おびただしい数のキャラを輩出してきたMCUだからこその重厚な見せ場としても機能している。 ロバート・レッドフォードやらフランク・グリロがまた出るとは… 個人的にはヒドラ万歳と耳打ちしたり(「ウィンター・ソルジャー」では、キャップはエレベーターで暴れている)、「一日中だってやれるからな!」を言わせる辺りが面白かった。  そんな魅力的なヒーローが大挙して押し寄せる最終決戦も文句なしの盛り上がりだ。今までタメにタメた「アッセンブル…!」もキマっている。 もうキマりまくって何が起きてるかよく分からんほどのヒーロー量。それでも、それぞれの見せ場も細やかに設けてあって嬉しいのなんの。  飛んでるヤツ、魔術を使うヤツ、さらには巨大化するヤツ 全軍が猛チャージでなだれ込む画の凄まじさったらない。 これが「アベンジャーズ」だぁ! 文句ナシに過去最大級のパワーで魅せてくれる一遍。  しかしながら、トニーやスティーブを中心としたアベンジャーズは終了してしまう。 映画史に残る一大エンターテイメントの1つの終焉に寂しさを感じる一方、エンディングの映像を眺めていたら、感謝の気持ちが湧いてきた。  思えば高校生の頃から観てきたのだ。 時に深い作品で、時に笑える作品で、時に熱い作品で。ずっと僕を楽しませてくれたMCU、そしてそんな作品を製作してきた現実のスーパーヒーロー達には感謝しかない。  3000回ありがとう。
[映画館(字幕なし「原語」)] 9点(2019-04-26 00:18:01)(良:9票)
15.  シャザム! 《ネタバレ》 
面白すぎる。 完全勝利のDCEU最新作。  個人的には今年最大のアメコミ大作「アベンジャーズ/エンドゲーム」より100億倍楽しみにしていた一作。 劇場で「シャザム!!!!!」と叫んでチケット購入する日をどれだけ待ったことか。(なお自動券売機で静かに購入した模様) ともかく待望の実写化なのだ。  さて、本作はティーンエイジャーを主役に据え、大切な人達とのドラマをどこまでも明るく陽気に描き出していくのが特徴的。 大人に向けた難しい作品が増えた昨今、「シャザム!」はアメコミ映画を子供たち、そして一緒に映画館に出かける保護者=家族のもとに届けてくれる何気に希少な一本だ。  いや~全編通して笑った。 ザッカリー・リーヴァイのコメディアンっぷり、ナイス。 「マイティ・ソー」シリーズのファンドラル(2作目からリキャストされ参加)役だった時は、ほとんど存在感の無かった彼だがここまで面白いとは。 黒髪スリックヘアでスーパーマンとほぼ変わらないのに、溢れ出るコミカルさがもうスゴかった。なんなんだその笑顔は。  ギャグはキレッキレ。マーク・ストロングがなんか言ってるけど遠すぎて全然聞こえない件については変な声が出てしまった。スーパー聴力は備わってなかったのね、いやいや面白い。  (そういえばマーク・ストロングは同じDCヒーローの「グリーン・ランタン」にも出演しているが、これはDCEUにはカウントされず、今後グリーン・ランタンはリブートして合流予定らしい。ライアン・レイノルズがやらかした件で単体作品はスキップされるかと思ったが…。 また、ザッカリーもそうだけどウィザード役のジャイモン・ハンスゥもMCUとDCEUの両方に出演してて、いかに選手層の厚いハリウッドと言えど、ダブりが出るほどアメコミ映画が作れられてるんやなぁとしみじみ考えたりする。)  話を本編に戻して、この映画の素晴らしい点は、ヒーローのオリジン・ストーリーなのにメチャメチャ面白いってところだ。 ドラマも説明もめいっぱい詰め込んでるけど、破たんもなく、悲惨さもなく、とてつもなく楽しく仕上げられているのがスゴイ。  ティーンエイジャーという設定を活かし、スーパーパワーを笑いと共に展開させる小気味の良さ。フレディの仕掛けるサディスティックなイタズラも光る。  ヴィランを通したドラマの展開も秀逸だ。 実はアメコミの敵は、主人公と似たモノ同士として描かれることが多い。 本作も例に漏れず。シヴァナはウィザードと遭遇しながら、ビリーとは違う方向に堕ちてしまった悪役である。  2人を比べると、ビリーは一見、試練ナシでシャザムの力を受け継いだように見えるかもしれない。 しかし彼もまた、探し続けた家族との悲しい別れに打ちのめされるのである。  だがビリーはケンカしていたフレディに電話できた。 彼には喜びや悲しみを共有してくれる人がいた。  一人でつらいなら、だれかが助けてあげればいい。例えスーパーパワーを持った超人だとしても、大切な人からまた別の力を受け取ることもある。  シヴァナとの対比は、チャンピオンのピュアな資質をより明確に表現する。 ヒーローとは傷ついてもなお、与え、そして分け合うことができる者のことだ。  終盤、ついにビリーはその本質を見極め、シャザムの力を文字通り分け与えるのである。 作品の持つメッセージ性と、熱いアメコミのスピリットが見事に合致するファンタスティックな一幕である。笑いつつ感動。 (実は原作でのシャザムが単体ヒーローではないと知りつつ、しかしこの設定は2作目以降だろうと踏んでいたので尚更ビックリ。予告でもでないしね。)  ラストはビリーとフレディの友情や家族の絆にウルっとさせられ、スーパーマン登場からのご機嫌なエンディングを迎える本作。 最強に面白い。 フィラデルフィアに現れたロッキーに次ぐニューヒーロー、スーツは絶妙にダサいがバズると良いなぁ。
[映画館(字幕なし「原語」)] 9点(2019-04-16 22:03:24)(良:1票)
16.  キャプテン・マーベル 《ネタバレ》 
キャプテン・マーベルといえば、DCコミックスに在籍するキャプテン・マーベル、AKA=シャザムを思い出す人もいるだろうが、本作はMarvelコミックスの女性の方のキャプテン・マーベルである。 (シャザムはシャザムで来月「シャザム!!」でDCEUに合流する)  さて、衝撃的な形で参戦が決まったキャプテン・マーベルだが、MCU初の女性ヒーローの単独主演作として制作されている。 マーベルスタジオ社長の発言や主演ブリー・ラーソンのストロング・パーソナリティも相まって、公開前からコントラバーシャルな一面が強調されたのも話題となっているようだ。 といったものの、僕個人はアメコミ映画を観に来たただのおっさんなので、そいうった論争には加わらず純粋に作品を楽しむことにする。  まず、ブリー・ラーソン。 可愛いじゃないですか。アカデミー賞も受賞し、その演技力は言わずもがなだが、ここにきてこんな素敵な笑顔を披露するとは嬉しい驚きである。 そして最新技術で若返ったサミュエル・L・ジャクソン。 「アベンジャーズ」では強キャラ感を醸し出してるが、本作では愉快なおじさん。シリーズを追いかけているとこういうギャップも楽しめて面白い。 フューリーのアイパッチの理由の酷さよ。  ジュード・ロウが敵で、ベン・メンデルソーンが味方という配役も意表を突く。スクラル達を「一見したところ間違いなく悪者」と思わせるから、終盤の彼らのぐう聖ぶりが本作のメッセージ性を強めた。戦争という難しい局面を絡めて、ヒーローが追及すべき正義を考えさせてくれる。見た目で判断してスマン、タロスご一行。  余談だがタロスは、メンデルソーンがオーストラリア出身ということもあり、オーストラリア英語しゃべっていたが、変身したらしっかりアメリカ英語になっててちょっとおもしろかった。   話を戻すと、本作はいわゆるヒーロー誕生映画である。 ヒーローものに不可欠であるが故、既視感バリバリの危険なパートとも取れるが、本作は打開策としてミステリ映画的なアプローチを試みている。  謎が解ける過程で、「何も知らずに使われてきた者が、真実を知ったうえで自分の判断を下す」というテーマや、「強い女性」を表現することに繋がる仕掛けも良い。 面白さとメッセージ性を両立できている。  印象的に用いられる90年代設定も、他作品との差別化になるいいスパイスになった。 店舗型レンタル店の時代に、Netflixを圧倒していたブロックバスターに墜落する辺りから面白い。 アメリカにおいて「今では見かけないけど当時は当たり前だったもの」を最初に引っ張り出してきて、一気に空気感を伝えてくれる。 Windowsのローディングのあの遅さも今となっては笑い話か。   もちろん、ある種インフィニティウォーの答えとも取れる位置にある本作は、壮大なMCUの世界観の面白さも全面に押し出してくる。 先にも述べたニック・フューリー以外にも、「ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー」での大ボスが本作にも登場するなど、シリーズファンなら尚更楽しめる作りだ。  惜しい点としては、これらの要素が上手くまとめられていないため、全体としてみると少しバランスが悪いところか。 ミステリ展開で仕掛けてきた割に、敵がクリーと分かったとたんに普通のアクション映画の趣になってしまったり、90年代とSF映画のミスマッチな雰囲気も中盤以降は弱くなったりと、全体としての統一感に欠ける印象だった。  同じく地球文化とSFの両方を扱い、さらにシリアス・ギャグ・アクションの調和を満たす「ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー」の好例があるので、少し厳しくなってしまったかもしれないが。   演出についても力が入り過ぎな印象。マリア・ランボーの庭での会話シーンは、環境音・BGM・役者の演技がどれも全面に出てきてしまい、逆に発信する力が散漫に感じた。 終盤では「何度挫折してもその度に立ち上がってきたキャロル」をカットとブリー・ラーソンの演技だけで表現するなど、キラリと光る部分もあったので、こういう部分でも差別化していけると良かったと思う。 削ることによって、より印象的に伝わることもあるものだ。  脚本は「スクラル人説明下手か!!」というツッコミに尽きるが、大目に見よう。構成や演出に精細を欠く場面もあったが、MCUのパワーで最終的には満足させてくれる。次作への布石も挿入され、まだまだ目が離せないシリーズである。  それにしてもキャプテン・マーベルの強さは何だ。「エンドゲーム」ではまさにゲームチェンジャーを担うのだろうが、体当たりで戦艦を破壊するようなヤツと闘わないといけないサノスさんが逆に心配でしょうがないのだが。
[映画館(字幕なし「原語」)] 7点(2019-03-08 13:43:33)(良:1票)
17.  バンブルビー 《ネタバレ》 
これは泣いた。もうガチで泣いた。 小学生の頃からトランスフォーマーで遊んできたけど、これは僕がずっと観たかったトランスフォーマーだった。  本作はベイ版の前日譚とのことだが、過去作との矛盾が散見され、実はリブートとの噂まで出ているので、シリーズファンすら混乱気味である。気にせずに楽しもう。(そもそもベイ版ではビーは既にWW2でナチス相手に暴れていた設定)  トランスフォーマーはベイを監督に据え、5作品が制作されきたが、もはや何をやっているのか分からないほど散らかっており、映画として誉められる出来ではなかっただろう。(個人的には大好きだが) しかしトラビス・ナイト版はベイとは対照的にコンパクトにまとめられ、チャーリーとビーの絆を丁寧に追っていく。 エモーショナルなアクションは、ファミリー映画を逸脱せぬようにとても見やすく、変形ギミックを活かすアイデアに満ちている。  まず映像が良い。複雑なキャラデザだった過去作では、もはや変形はほとんど描かれなくなってしまったが、今作では80年代という舞台を加味し、当時のG1世代を思い起こさせるレトロで簡素なデザインが採用されている。(サイバトロン星のトランスフォーマー達に興奮するファンも多いだろう。)  彼らが現実のトイのようにガシャンガシャンとパーツを移動させて変形すれば、否が応でも子供心がくすぐられるというものだ。 実際、チャーリーがワーゲンの下にビーの顔を発見するシーンは、ある種のメッセージだろう。多くの車型TFトイは車体下部にロボットの顔が配置されることが多いのだ。これは僕が親しんできた、あのおもちゃの映画なのだ。   もちろんただの回顧主義だけではなく、シンプルなデザインの恩恵で、アクションはとても見やすい。 変形ギミックも、作中至る所で活かされており、今更ながら他のSF作品との違いを見せつけてくれる。 例えば、チャーリーとメモの距離をぐっと近づけたチェイスシーン、或いは吹き飛ばされた勢いそのままにに変形し、継ぎ目ない攻撃を見せる戦闘描写、そしてビーのお茶目な一面をのぞかせる感情表現として。敵のトリプルチェンジャー(三段変形)もせわしなく変形し、見せ場を盛り上げてくれる。  またクライマックスでは、同時進行するイベントをワンショットで処理するなど、ナイトはアクションの見せ方もずば抜けている。 アニメ作品で鳴らしてきた彼だが、実写でもその技巧やセンスを遺憾なく発揮したといえるだろう。 主要キャラを黄色、赤、青と特徴づけたり、小さな子供に分かりやすいような配慮も優しくて好きだ。  そんな本作の最も良い点は、他のどのTF映画よりもドラマ性とメッセージ性に長けている点だろう。 ほんの数年前に、本作とほぼ同じプロットのSFファミリー映画が制作されいるように、話自体は有りがちだ。 しかしチャーリーとビーの交流は、丁寧な人物描写に裏打ちされ、爽やかな感動をもたらしてくれる。  日本公開時に字幕が出るか不明だが、チャーリーを映して去るカマロのミラーには「ミラーに映る物体は、実際には見えている場所よりも近くにあります」という旨の注意喚起が表記されている。(アメリカでは安全面からこの表記が義務付けられているのである)  「世界を救え!!」と訴え続けてきたベイ版とは、全く別のアプローチがここで結実している。  大好きだったお父さんも、遠くに行ってしまったようで今も一番身近な心にいるということ。 心が離れてしまったようでも、家族の愛はいつもチャーリーを見守っているということ。 それはきっとバンブルビーにとっても同じ。  傷ついた二人が絆を深め、お互いに再生を促していく。 EDテーマの歌詞(主演のヘイリーちゃんが作詞して歌っている)に、「一人では見つけられなかった気持ちを君がくれたんだよ」とあるように、目に見える以上の力がチャーリーやビー、そして家族を繋げているのである。 これぞまさにトランスフォーマーシリーズに受け継がれる「モア・ザン・ミーツ・ジ・アイ」の精神ではないだろうか。  子どものころ、おもちゃで遊びながら「彼らと友だちになりたいな」と空想したものだが、「バンブルビー」はそんな僕が本当に観たかったトランスフォーマー映画であり、号泣ファミリー映画に仕上がっていた。  余談ですが僕は「トゥルー・グリッド」以来、ヘイリーちゃん追い続けています。初期は「存在感あるなぁ」的な感じで見てたのですが、今では曲を発表すればヘビロテし、海外でヘイリーちゃん似を見つければ必ずナンパするなど、半ば変態じみた目線で彼女を見ています。そんで今回のヘイリーちゃんなんですが、もう可愛くて可愛くて…はい満点。 ※映画も良かったです。
[映画館(字幕なし「原語」)] 10点(2019-03-04 15:23:53)
18.  スパイダーマン:スパイダーバース 《ネタバレ》 
アニメのことはよく知らないのだが、凄まじい映像に圧倒され「とにかく面白いスパイダーマンを観たぞ!!」という満足感で劇場を後にした。  実は鑑賞したのは去年なのだが、数週間くらいしてから不意に「冒頭でマイルス君がいい感じの曲(Sunflower)を聴いていたな」と思いだし、何となくYoutubeでMVを検索してみた。 …やはりとても良いじゃないか! メロディも良いけど、(個人的な解釈ではあるが)ピーター・BとMJの関係を想起させるような詩もグッとくる。そんなこんなで本作「スパイダーバース」に思いを馳せながらヘビロテしていると、「あの映画…めっちゃ面白かったなぁ」と改めて実感。なんか余韻があるのです。 (他の曲もめっちゃかっこいいのでオススメ)  「スパイダーバース」と言えば、今まで途方もないアダプテーションを経たスパイダーマンというヒーローが一堂に会すぶっ飛んだシリーズだ。コミックスでは東映版のスパイダーマッ!やボンボンで連載されていたヤツまでもが出てきて日本でも話題になった。  さてそんな超絶変化球を原作とした本作だが、奇をてらう場所はしっかりかき回し、しかし描くところはド直球。 そんな計算されつくした作りがとても良い。  色んなスパイダーマンが出てくる独特の世界観はもちろんこの映画の特徴、そして面白さに直結する。 そしてピーター以外がスパイダーマンになるというプロットを用い、スパイダーマン誕生譚というマンネリを上手く打破出来ている。 そればかりではない。「クモの下り何回やるねん」というメタ的なユーモアとしても面白いし、予測不能のスパイダーマンが多数出るからこそ「ヒーローとは?」というテーマを明確に炙り出していく。  伝え方も上手い。 実は「スパイダーバース」には奇抜なスパイダーマンが多く出るものの、スパイダー・ハム、ペニ・パーカー、ノワール(ニコラス・ケイジの声がいい)は「同じ次元に来た」こと以外には、まったくと言っていいほど、話の動きには絡んでこない。彼らを強烈な世界観を醸成するサポートに徹しさせているのである。 「ヒーロー誕生」を描くに当たりコレは絶妙の采配である。メンターにピーター・B、サポートにグウェン。彼らが未熟なモラレスを導いていく。あれだけのスパイディに色々と口出しさせたり、トラブルを起こさせていたら、これほど締まった脚本にはならなかっただろう。ぶっ飛んだ世界観ながら、マジメで実直な構成を貫けている。  では「スパイダーマン」とは何か。答えはクライマックスに最高の形で気付かされるように用意されていた。 マイルズの父と共に、観客が拳を握りしめて「立て!がんばれ!」と心からの声援を送る人物。それこそが親愛なる隣人の姿である。  凄い映像に熱いストーリー、本当に面白い映画を観たなぁ。
[映画館(字幕なし「原語」)] 9点(2019-03-04 02:20:59)
19.  移動都市 モータル・エンジン 《ネタバレ》 
まず率直な感想として、とてもつまらなかったことをお伝えする。  去年のクリスマスも例年通り、各スタジオが威信をかけた超大作が相次いで公開され、華々しい成績を残した。 「アクアマン」「スパイダーマン」「バンブルビー」「メリー・ポピンズ」などそうそうたる顔ぶれである。  しかし、ただ一つ、このレースを圧倒的にヤバ過ぎる成績で負け抜けた作品があった。 それがPJがプロデュースする本作「移動都市 モータル・エンジン」だ。 赤字は優に100億円越え。同年に同じくコケた「ロビン・フッド」「くるみ割り人形(とナントカナントカ)」等の失敗を凌ぐ、シャレにならない爆死大作である。  もちろん、興行面の成否と映画の面白さは別件である。僕は公開直後の映画館を訪ねてみた。  で、この映画、面白いかどうかと聞かれると、つまらなかったとしか言えないのが正直なところである。もっと言ってしまえば、この映画の内容について話すこともそんなにないというか、もうとにかく薄い印象の映画である。  映画自体は、少しトレンドから遅れ気味ではあるが、ヤングアダルト向けファンタジー映画のようである。 序盤こそマッドマックスとスチームパンクが合わさったような世界観でそれなりの見せ場を作れたが、しかしその後はからっきしである。 説明セリフはしっかりあったと思うが、世界観を観客側に納得させるまでには至らず、結局はファンタジーの世界に入っていけなかったというべきか。 何なんだ、この面白くないときのジブリを観ているような感覚は。  偽エディ・レッドメイン的主人公も大した個性や存在感を残せず、演出過多でキャラ自体が浮いてしまったアジア系女優も残念ながら魅力的とは言えないだろう。女の子にしても、この手のヤングアダルトものにありがちな複雑なバックボーンが逆にノイズになってしまったのではないか。設定を伝えることで力尽きたか、この辺りはうまく処理して欲しかったところである。  本作のみで一応の決着がつくのは良いところだが、いかんせん興味もわかないし面白くない。 内容面についても、満足いく作品とは言えなかった。  これでは、過去に壮大なファンタジーを手掛けたPJの功績を称え、エピック・フロップ(壮大な大コケ映画)と揶揄されるのも納得か。 原作では勿論この先の物語もあるわけだが、続編は残念ながら難しいだろうと思う。 しかしながら興行的に失敗して、続編が作られずに人知れずに消えていくファンタジー映画は実は少なくない。(ライラやらエラゴンやらエアベンダーやら)  先にも述べたが、本作公開と同時期には、批評家からの大絶賛で迎えられた「スパイダーマン」、口コミで粘り強い支持を受けた「バンブルビー」などの優良大作があった。  そんな中で「強者が弱者を喰らうディストピア」なるファンタジー世界を提示した本作だが、現実とてそこは同じ。「モータル・エンジン」は名実ともに秀でた超大作陣に喰い殺されるというシニカルな最後を迎えてしまった。
[映画館(字幕なし「原語」)] 3点(2019-01-24 14:53:52)
20.  アクアマン 《ネタバレ》 
マーベルのアベンジャーズに負けず劣らずの超大作シリーズながら、ザック・スナイダーのヴィジュアル作家性の影響で、どこか暗く地味な印象のまとわりつく「ジャスティス・リーグ」。  今回のスピンオフは「アクアマン」というこれまた地味目なヒーローをフィーチャー。 魚と話すだけの男に果たして映画一本務まるのか…?と疑問を抱いていたが、いざ鑑賞してみればサービス精神抜群のスーパー超大作に仕上がっている。  メガホンをとったジェームズ・ワンといえば「ソウ」で注目を浴びて以降、「インシディアス」「死霊館」など、ホラー映画を得意としてきたが、最近は超大作にも起用されているようだ。  そんなワン監督のスーパーヒーロー映画だが、監督が以前に車が出れば何をやっても良いよ的な「ワイルド・スピード」を手掛けたからか、本作はDCEUの中でも群を抜いて派手でハチャメチャ。凄まじい映像の物量で攻め立ててくる。  序盤こそキャラクターデザインの絶妙なダサさや(ブラックマンタなど原作に準拠しすぎだろう)、突然のBGMシガー・ロスなど、やりたい放題な感じに戸惑ってしまったが、アトランティスという名のネオン街で繰り広げられる潜水艦チェイスの辺りで、もうどうにも楽しくなってしまった。以降、トライデントの話はいいから変な映像をもっと見せてくれ!というスタンスで鑑賞したら、なかなか見所は多かった。  アクアマンだからと言って海中のシーンだけにこだわる必要はない。もちろん海中のハイスピードフワフワバトルも面白いが、唐突なインディ・ジョーンズ化、イタリアの明るい屋外の素晴らしいアクション・シークエンス、さらにはかわいいニコール・キッドマン、そしてキレイなウィレム・デフォーなどヤバい映像のオンパレード。 アーサーとアトランナの再会シーンに至っては、アトランナのプレデターみたいな衣装が気になって感動がブレそうではないか。ぶっ飛びすぎだろうよ、このビジュアル世界は。  ストーリー自体はアリガチで内容も薄いきらいはあるが、映像面に振り切ってくるアメコミ映画も個人的には嫌いではない。(シュマッカー版の悪趣味なバットマンとか僕は結構好きなのです) 次回のジャスティス・リーグではアクアマンのド派手な活躍を期待したくなる出来だ。
[映画館(字幕なし「原語」)] 7点(2019-01-20 19:50:39)(良:1票)
010.47%
131.42%
200.00%
3136.16%
483.79%
5157.11%
63717.54%
75224.64%
84320.38%
93215.17%
1073.32%

全部

■ ヘルプ
© 1997 JTNEWS