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まいかさんの口コミ一覧[この方をお気に入り登録する

プロフィール
コメント数 215
性別 女性
ホームページ http://plaza.rakuten.co.jp/maika888/
自己紹介 正直、生まれは平成じゃないです。かなり、昭和なムード。昔みた映画を思い出しながらレビューしますので、記憶がずいぶんあやふやかも。なにか変なところがあったら、http://plaza.rakuten.co.jp/maika888/のほうにツッコんでおいてください。

好きな女優
 「或る夜の殿様」の山田五十鈴、「近松物語」の香川京子
好きな男優
 「お茶漬けの味」の佐分利信
好きなキャラクター
 グレムリンちゃんとマシュマロマン

☆評価基準
10点:超絶。ほとんど奇跡。
9点:傑作。かつ大好きなんだもーんッ!
8点:傑作だし、好きデス。
7点:素晴らしいです。好みの映画です。
6点:まあ、悪くないと思います。
5点:なにか気になるものはあります(~~;

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【製作年 : 2010年代 抽出】 >> 製作年レビュー統計
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21.  コクリコ坂から 《ネタバレ》 
『風立ちぬ』の2年前に制作されていますが、時代設定でいえば『コクリコ坂』のほうが四半世紀ほど後の物語です。この2つの作品には、強い連続性が感じられます。実際、戦前の「航空マニア」の多くは、戦後の「船舶マニア」でもあったはずです。 物語の中心的なテーマは「親世代の過ち」です。主人公の少年と少女は「父の過ち」を疑うのですが、これはメタファーにすぎません。少年の父親は太平洋戦争で、少女の父親は朝鮮戦争で死んでいます。LSTによる朝鮮戦争への参加という歴史も、太平洋戦争という「過ち」の負債であるに違いありません。 しかし、主人公たちは、少年の出生の秘密を知ったときに、父(=太平洋戦争の戦友たち)の行為が「過ち」ではなかったと納得します。明治時代から横浜に残る"コクリコ荘"や"カルチェラタン"といった建築物の価値を肯定するのと同様に、親世代の歴史の意味を肯定していく物語なのです。オリンピックの狂乱を契機に変貌しようとする高度成長期の東京を横目に、あらためて「戦前」の価値を見つめ直そうとする若者たち。そこには、安直な方法で建て替えをはかろうとしていた「戦後」の日本への批判も見え隠れします。 この作品を、たんに「昭和30年代の日本を懐かしむ映画」だと理解するのは間違いであって、むしろ登場人物たちは、「戦後」の日本社会を批判しつつ、失われていく「戦前」の価値を守り抜こうとしている。これこそが『風立ちぬ』のテーマにも通じる、宮崎駿のもっとも危険かつ美しい思想ではないでしょうか。自分の子供に「陸・海・空」と名づける親の発想もだいぶ危険な気がしますが(笑)、宮崎駿自身も、こうした価値観を息子に託しているように見えます。 メタファーをどう読み解くかは観客に委ねられていると思いますが、『千と千尋』や『もののけ姫』のメタファーを読み解くことに積極的な人たちが、『コクリコ坂』や『風立ちぬ』に対して何らのメタファーも見て取ろうとしないのはおかしな話だと思うし、わたし自身は、それらの作品のメタファーがたがいに共通のテーマで結ばれていると思わずにはいられません。 なお、『風立ちぬ』がユーミンの「ひこうき雲」の世界だったとすれば、『コクリコ坂』はさしずめ「海を見ていた午後」の世界です。冒頭で手嶌葵が歌っていた曲は、ほとんど「チャイニーズスープ」のようです。武部聡志と谷山浩子は、たんに「昭和の横浜の音楽」を作っただけでなく、まるで次作のテーマ曲が「ひこうき雲」になることも見越していたように感じます。 宮崎父子の危険な思想の是非はともかく、作品そのものは申し分なく美しいと思ったので、その点を最大限に評価します。
[地上波(邦画)] 9点(2022-06-09 00:39:33)
22.  天気の子 《ネタバレ》 
新海誠の作品において「人間」は脇役なので、あくまで主役は「自然」です。光や、風や、雲の動きを見なければならないし、天体の軌道と運行(たとえば隕石の衝突)、細菌による発酵や腐敗(たとえば口噛み酒)、そして人間をふくめた生き物たちの生理現象(たとえば意思に反して零れ落ちる涙)のほうを見なければならない。個々人が自分の意志でやっていることに、さほどの意味はありません。そもそも人間に出来ることはほとんど無いし、せいぜい自然の変化に波長を合わせて生きていくことしかできない。 そもそも人間が「異常気象」と呼んでいるものは、長い地球の歴史のなかでみれば微細な変化でしかありません。人間の力を使って局所的な天候を一時的に変えたとしても、それは「ガイアのホメオスタシス」によって引き戻されます。新海誠の作品は、過激なくらいに唯物主義的です。「彼岸/此岸」という言葉が出てきますが、これも精神論的な概念ではありません。死んだ人間は「魂」となって天に昇るのではなく、むしろ「物質」に戻って大気中に還元されるという発想です。 社会も狂っているし、自然も狂っている。暴力やブラック労働が社会にはびこり、自然が温暖化で異常気象になったりするのは、人間のせいかもしれないし、そうではないのかもしれない。でも、もはや誰のせいかを問うても仕方がないし、与えられた運命だと思って受け止めていくしかない。もともと世界は狂っているのだし、ピンチの先回りをしても効果はない。ピストルがあっても社会は変えられないし、天に祈っても自然を変えることはできない。人間に出来ることは限られている。主人公のふたりに出来ることは「狂った世界のなかでも自分たちが生きていけますように」と祈ることだけです。そこから先は、世界のためでも死者のためでもなく、ただ自分自身のために祈るしかありません。この物語が、いわゆる「セカイ系」とは真逆の構造になっているのが分かります。 自然現象の変異を描いたサイエンスフィクションは、おりしも酷暑や豪雨や新型ウィルスなどの話題がトップニュースになっている現状にもリンクして、とても同時代的なリアリティを感じさせます。とくに今回の作品は、前作の「君の名は」の世界観をさらに推し進めて、いっそう過激になっている。ここまで唯物主義的な表現に取り組んでいる作家は、世界的にもほとんど例がないだろうと思います。実写でやるのはほとんど不可能だし、だからこそアニメーションで表現することに意義がある。その非凡さを最大限に評価します。
[地上波(邦画)] 9点(2022-06-09 00:39:26)
23.  テリー・ギリアムのドン・キホーテ 《ネタバレ》 
GYAOの無料動画で視聴。現代的に解釈した「ドン・キホーテ」の設定を借りて、さながらフェリーニの「8 1/2」みたいなことをやろうとしたんでしょうか? 映画人としての贖罪と同時に、性懲りもない映画愛・映画賛歌をテーマにしているようです。 壮大に突き抜けたホラ話に期待したものの、じつは意外に真面目な内容だったので、やや窮屈に感じないでもありません。凝りに凝った緻密な作品なのは分かるけど、いまひとつ面白みに欠けるのは、きっとテリー・ギリアムのなかに本質的な意味での「ラテンの血」が流れていないからでしょうね。ラテンの作家が醸し出す「滑稽と哀愁」みたいなものが英国人のテリー・ギリアムからは滲み出てこないのです。やはり英国人の真骨頂は達観したブラックユーモアであって、いくらスペイン人の真似をしようと思っても超えられない壁があるのだと感じました。
[インターネット(字幕)] 7点(2022-05-14 02:44:58)
24.  エール! 《ネタバレ》 
GYAOの無料動画で視聴。とても良い映画! 社会的弱者を必要以上に美化することなく、安易なセンチメンタリズムや扇情的な演出にも溺れず、あえて露悪的なほど俗っぽく滑稽に描いていますが、それがかえって好感触。フランスらしさはあるけれど、フランス映画っぽい難解さや気取ったところはなく、気安い海外ドラマのような演出がむしろ功を奏しています。父親も母親も、まるで子供みたいに感情むき出しだったりしますが、そこにもオーバーアクションにならざるをえない聾唖者特有の必然性とリアリティを感じる。大袈裟なサクセスストーリーではなく、ささやかな巣立ちの物語になっているのも良い。 歌唱シーンで無音になる演出には、困惑するほど複雑な思いを呼び覚まされました。親自身は子供の能力を理解できないのですよね。実際のところ、障害があろうとなかろうと、世代間の価値観の違いから子供の能力を理解できない親は世間にありふれているわけだから、その意味ではとても普遍的な物語になっています。 主人公は16才の高校生なのですが、学校が自由な雰囲気だし子供たちも大人っぽいので、初潮の話が出てくるまではてっきり大学生かと思いました。家族や友人とあけすけにセックスの話をしたり、男女で抱き合って激しい内容のラブソングを歌ったり、幼い弟がセックスをはじめたりするのにも驚きます。日欧の文化の違いを痛感しました。
[インターネット(字幕)] 8点(2022-05-11 16:12:01)
25.  希望のかなた 《ネタバレ》 
GYAOの無料動画で視聴。カウリスマキの映画は30年くらい前に何本か見たけど、今の彼がこんなアクチュアルなテーマに取り組んでいたとは知りませんでした。クールなユーモアは健在だけど、内容的にはかなり熱い。 世界的な監督が「自由」という普遍的正義をシンプルに信じていること自体に希望を感じますし、世界中のアーティストが怯むことなく、こういう姿勢に勇気づけられるべきだと思う。
[インターネット(字幕)] 8点(2022-04-30 00:57:49)
26.  寝ても覚めても 《ネタバレ》 
怖い。どちらが現実でどちらが夢なのか分からない。くっついたり離れたりする恋愛ドラマはテレビにありふれてるけど、こんなにリアルで怖い話は見たことがありません。この映画には「2人の東出昌大」が登場します。でも、ほんとうに重要なのは「2人の唐田えりか」。英語のタイトルは「Asako I & II」です。 はたして震災前と震災後の世界は、どちらが夢でどちらが現実なのか? 震災後のどんよりした世界は、まるで黒沢清の「回路」や「トウキョウソナタ」みたいに薄暗くて不気味であり、ほとんど悪い夢のように思えてしまうけれど、それが現実であるならその世界を生きるしかありません。子供のようにはしゃいでいた渡辺大知は寝たきりになっているし、汚い川は水かさを増してアパートを呑み込みそうになっている。「水かさが増してる。…汚い川やで」「でも、綺麗」…それが現実なのですよね。 唐田えりかは、この撮影の後、ほんとうに夢から抜け出せなくなってしまったのでしょう。どちらが現実でどちらが夢なのか分からなくなってしまったんだと思う。それを思うと、彼女の没入感もまた怖いのです。「オーロラ。あのCMの。ほんまに見たん?」「うん。見たよ」「空が海みたいやった?」「うん。そう。なんだか夢見てるみたいやった」「そっか。私は、まるでいま、夢を見てるような気がする。…違う。今までのほうが全部長い夢だったような気がする。すごく幸せな夢だった。成長したような気でいた。でも目が覚めて、私、何も変わってなかった」…でも、長い夢のように思えた世界こそが、ほんとうは現実だったのです。
[インターネット(邦画)] 8点(2022-04-16 05:27:04)
27.  リメンバー・ミー(2017) 《ネタバレ》 
非常に良くできている。往年のディズニー映画にも引けを取らない完成度。スペクタクルもサウンドもメキシコらしさをよく表現していて魅力的。その生と死が交錯する世界をユーモラスな想像力で美しく映像化しています。伏線の回収の仕方も緻密で隙がなく、脚本がしっかり立体的に構成されているのが分かるし、総じてクオリティが高い。ガイコツの擬人化はもちろん、民芸品のアレブリヘ(Alebrije)をキャラクタライズするなどの発想も目配りが効いている。 欲をいえば、物語の帰結があまりに王道的にすぎて、やや批評性に乏しいところでしょうか。中盤まではシンデレラやラプンツェルのように「毒親から解放される子供の物語」かと思っていたので、最終的にごく良識的な「家族主義」におさまってしまったのはかえって肩透かしでした。たしかに「家族で安心して楽しめるファンタジー娯楽作品」としては満点の出来ですが、引っかかる要素がなさすぎて、ジブリなどの日本のアニメに比べると、あまりに結論が良識的かなあという気もします。
[地上波(字幕)] 8点(2022-03-29 13:16:22)
28.  千年の愉楽 《ネタバレ》 
GYAOの無料動画で視聴。若松孝二の映画を見るのは初めてです。非常にオーソドックスな作りで、どこにも難しいところがなく分かりやすい映画でした。強いて難点があるといえば、佐野史郎の遺影が喋り出す演出が、どうにもコントっぽく見えてしまったことでしょうか。 なぜ三重県の物語に奄美大島の民謡を重ねたのか分からないけれど、とくに違和感はなかったし、わたしはもともと「日本でいちばん歌がうまいのは中村瑞希」だと以前から思ってたので、彼女の歌声を映画に記録した意義もあると思います。 中上健次の物語は、要するに「色男の血統」についての神話なのだけど、そこに日本社会の「貴賎」の構造を重ねて説得力を与えています。「高貴な血統だから色男なのだ」という理屈は、逆にから言うと「色男だから高貴になったのだ」とも言える。このような社会学的視点を、福田和也は「インチキ」だと言ってますが、意外に社会の支配階級なんてのは「色男だから」とか「喧嘩が強い」とかその程度の理由で決まったのかもしれませんよね。 客観的には8点ぐらいの評価でいいかもしれませんが、個人的に好みの内容じゃなかったので7点。
[インターネット(邦画)] 7点(2022-03-29 12:50:30)
29.  岸辺の旅 《ネタバレ》 
だいぶ前に録画したNHK放送をようやく視聴。面白かった。クロサワ映画はこれで4本目ですが、いちばん好みに合っていたし、ようやく自分の波長にも合ってきた感じ。 黒沢清、佐々木史朗、湯本香樹実、大友良英、浅野忠信…という面子なので、否が応にも相米慎二のことを意識させるし、原作には何か相通じるテーマがあるのかもしれない。でも、映画そのものは、ことさら観客に何かを訴えている風でもなく、端的に「エンターテインメント」としての味わいを楽しむべき作品かなと思う。 死んだ夫が幽霊になって戻ってくる設定はありふれてるものの、ほんの少しずつ予想を裏切っていく展開や、うっすらした不気味さとうっすらした美しさが同居する映像は、それだけで十分に魅力があります。一貫して穏やかな浅野忠信の演技も素晴らしかった。深津絵里は、なかなか能動的に生きられない日本女性のか弱さをよく体現しています。 白玉だんご、稲荷神社の祈願書、滝の背後に通路がある、終りが近づくと指が動かなくなる、死者との性的な接触はできない… などの物語上の「設定」がある一方で、夫の語る「宇宙物理学」の世界観があり、他方では三途の川を信じてきた日本人の「伝統的観念」がある(それが「岸辺」というタイトルの前提でしょう)。それらが渾然一体となって、一種独特な死生観を形づくっています。まあ、ただそれだけの映画だと言ってもいい。 このレビューサイトで、こういう作品を「エンターテインメント」と評したところで、ごく一部の人にしか理解されないと思いますが、けっして泣いたり笑ったりビビったりするだけが映画にとっての「エンターテインメント」じゃないだろう、とだけ言っておきます。 大友良英の音楽は、昭和の松竹映画風の曲からドイツロマン派様式の曲まで多彩でした。ちなみに子供がピアノを弾いている後ろでは、やはり井之脇海のときのようにカーテンが揺れていました。
[地上波(邦画)] 9点(2022-01-29 19:37:07)
30.  パラサイト 半地下の家族 《ネタバレ》 
凄かったです。前半は「まあ、B級コメディかなあ…」って感じで高を括って見てたけど、後半になって半地下よりもさらに深い地下空間が現れてからは、そのSFサスペンスホラー的な怒涛の展開に圧倒されて、ポカンと開いた口を塞ぐことができませんでした。 この映画には、もちろん貧富の格差を社会学的にとらえた「万引き家族」のような面もあるけれど、それ以上に凄いのは、一種の都市建築SFホラーになっている点です。たとえば「シャイニング」や「ポルターガイスト」などはまったくの荒唐無稽なホラーですけど、この映画で描かれるホラーには、笑うに笑えないような異様なリアリティがある。 いまなお地下世界には目に触れないゴキブリが住んでいる…、というオチで話が終わります。そういう地下の空間は、一体どこまで広がっていて、どれだけたくさんのゴキブリたちが住んでいるのだろう? そんな想像にもリアリティを与えてしまうような恐るべき物語です。 日本の大手映画会社の安易な企画からは絶対に生まれ得ないような作品だし、日本の実写映画に欠けているのは作家個人の徹底した構想力なのだということも痛感させられる。世界に通用する映画を作るには、もちろん面白さも必要だし、力強さも必要だし、分かりやすさも必要だと思うけれど、それに加えて、やはり突き詰めた構想力が必要なのだと思い知りました。
[地上波(字幕)] 9点(2021-04-04 17:19:28)
31.  ルパン三世 THE FIRST 《ネタバレ》 
まったく期待してなかったけれど、意外に楽しめました。CGアニメもさほどの違和感はなく、スペクタクルの迫力も堪能できました。「考古学」を題材にした物語もわたしの好みに近いし、ルパンとヒロインの「疑似親子的」な関係も温かみがあってよかったです。 キャラクターデザインは、わたしの理想とは違ってましたが、それはまあ本作に限ったことではありません。ほんとはモンキーパンチの原作のようなアダルトでスタイリッシュな画風が好きだし(宮崎駿の可愛すぎるルパンは嫌い)、できれば次元と五右衛門も、ルパンの後方支援をするだけの金魚の糞じゃなく、互いに反目しあうような緊張関係にあってほしいのですけど、それをアニメで実現してくれたのは、いまのところ小池健だけです。 とはいっても、原作のような虚無的な物語が好きというわけでもなく、アニメ版にありがちなSFっぽい話が好きなわけでもない。そんなワガママな「理想のルパン像」を満たしてくれる作品に出会うのは難しいですね。
[地上波(邦画)] 7点(2020-12-04 01:59:55)
32.  鬼滅の刃 兄妹の絆 《ネタバレ》 
世にいう「キメツノヤイバ」なるものにまったく無知でしたが、やっとその魅力の一端が分かった気がします。 物語の冒頭は、目を背けたくなるほど絶望的な場面から始まります。しかし、そこから先は、ほぼ無双状態でサバイバルしていく展開になっており、いわば不遇な子供の自己実現の物語のように見えます。 きっと現実の社会にも、絶望的な状況から人生を始めなければならない子供は存在すると思うので、そのような子供たちにとって、こうしたサバイバルなストーリーは夢があるのかもしれません。 ただ、絶望からスタートする人生というのは、たいていの場合、自分自身が「鬼」になって社会への復讐を目指すような生き方になるケースが多いと思うのですが、この物語の場合は、復讐すべき相手のほうがそもそも「鬼」なので、自分自身はけっして鬼にはなれないのですね。そこがユニークなところだと思います。 主人公は、文字通り「心を鬼にして」鬼を殺していくのですが、じつは鬼と同じ悲しみを共有しており、つねに敵が鬼になった境遇や背景を意識せざるをえません。ある意味では自分の境遇も鬼と同じなのであり、さらにいえば、唯一残されている肉親の妹もまた鬼だからです。 主人公は、情け容赦なく鬼を殺していくけれど、心の底から鬼を憎むことができません。したがって、これは「復讐の物語」ではあるけれど、けっして「憎しみの物語」にはなりえない。それが、この物語の秀でた点であり、同時に倫理的な希望にもなっていると思います。 これは「鬼とは何なのか」という社会学的な問いであり、日本古来の桃太郎伝承=勧善懲悪神話に対する痛烈な批判でもあるはずです。
[地上波(邦画)] 7点(2020-10-11 14:35:32)
33.  借りぐらしのアリエッティ 《ネタバレ》 
あの小人さんたちは、けっして人間に幸福をもたらしてくれる甘ったるい妖精さんではなく、現実的な生存競争のなかを生きている自然界の動物なのですね。かたや人間のほうは、この珍しい動物を利用して、何やらよからぬことを企もうとしている。したがって、人間と彼らの関係は、予定調和のファンタジーにはならず、むしろ『ジュラシックパーク』みたいな過酷なリアリズムになっています。 人間の心が豊かだった時代には、ああいう小さな生き物たちにも気前よく間借り(というより寄生)させていたのでしょうけど、社会が世知辛くなって樹木希林みたいな人間ばかりになったから、そのようなゆとりがなくなったのでしょうか。 大人の視点から見ると、この物語の着地点は、小人の一家がただ気の毒なだけで腑に落ちないし、樹木希林の言動がリアルすぎてドン引きでしたが、子供に見せるぶんには、ああいう小さな世界への感受性や想像力が養われて良い映画だろうと思います。たぶん大人よりもお子さんにお勧めの映画。
[地上波(邦画)] 7点(2020-09-21 06:07:14)(良:1票)
34.  マッドマックス 怒りのデス・ロード 《ネタバレ》 
わたし自身、地球上でいちばん最低な生き物は「人間のオス」じゃないかと本気で思うことがありますが、それを具現化したような映画です。狂った親分を崇拝してるだけの雑魚野郎たちに向かって、いくら水と緑と女がなければ文明社会は成立しないのだと言い聞かせても、話は通じませんよね。そういう獣みたいな連中って、実社会のなかにも存在しますけど、いつになったら彼らは生物として進化できるんでしょうか? 巨大な歯車を人力で回したりしてるシタデル砦は、なんだか『千と千尋』に出てくる湯屋みたいなところ。出てくる人間は、全員畜生以下。イモータン・ジョーという仮面男は、支配者のくせにずいぶん無防備で、みずから前線に出ていって殺される。原始人以下の支配体制です。 いちばんの見どころは、シャーリーズ・セロンが「緑の地」が消えたことを知って泣き崩れる場面だけど、その前後の大半の時間は、スピルバーグの『激突!』みたいな内容で、わたし的には早送り再生でも差支えありませんでした。もちろん文明批評的なテーマを汲み取ることはできるけど、どちらかというと狂人同士のプロレスを楽しむ作品なのだろうと思います。 アカデミー賞6部門とはいっても、作品賞でも監督賞でもないですが、国際批評家賞やキネ旬で1位を取っているのは驚きです。地上波のカット版を見ただけの評価ではありますが、そこまでの傑作とは思えませんでした。ちなみに、これ以前のシリーズ作品は見ていません。
[地上波(字幕)] 6点(2020-09-16 18:06:24)(良:1票)
35.  君の膵臓をたべたい(2017) 《ネタバレ》 
こんな俗受け狙いの陳腐な物語を、わざわざ高く評価するのもどうかとは思うのですが、脚本や演出の技術面では意外なほどしっかりしているし、主演2人の魅力も存分に引き出せているし、映画的にみれば大きな欠点はありません。 強いて欠点をいえば、あまりにも丁寧に作られすぎていて、上映時間がやや長いことでしょうか。正直、長すぎてちょっと疲れました。たかだか少年少女向けの娯楽映画なのだから、サラッと100分以内にまとめてもよかったんじゃないかと思う。とくに「元カレ」のエピソードは省いてもよかった気がします。 この物語の裏テーマは『星の王子さま』なのですが、せっかく主人公がその本を読んでいるのなら、王子さまと薔薇のエピソードなどを2人の会話のなかに取り入れてもよかったかなと思いますし(薔薇とサクラじゃヤヤコシイけれど)、冒頭に出てくる「肝心なものは目に見えない」の一節も、もっと物語全体に活かして響かせていれば、陳腐な物語なりにもテーマ性が深まったかもしれません。 ちなみに、少年の名前が志賀直哉と村上春樹を足したっぽいのは、ちょっとダサい気がしました。どうせなら『星の王子さま』にちなんで「航士くん」とかのほうが可愛いと思うのですが。 いずれにせよ、これが美波にとっての代表作にもなったし、『セカチュー』以来の青春ヒット作にもなったし、それなりの技術的な水準にも仕上がっていますから、大衆映画としては十分に成功といえるでしょう。ためしに木下惠介や澤井信一郎あたりの作品に比較しても悪くないかと思います。
[地上波(邦画)] 7点(2020-09-05 17:53:20)(良:1票)
36.  ヱヴァンゲリヲン新劇場版:Q 《ネタバレ》 
予想をはるかに超えた内容で、まったく理解できませんでした。使徒が「神の側」で人間が「悪魔の側」だとかいう話はネットで仕入れたニワカ知識だったのですが、その解釈がほんとうに正しいのかどうかすら自信がなくなりました(笑)。あらためて調べてみると、どうやら人間の始祖たるリリスも使徒であることに変わりなく、いわば使徒どうしの闘いなのだという背景が分かってきましたが、それにしても謎だらけです。 14年のあいだに、かつての仲間たちが何故ネルフと敵対したのか。シンジくんの肉体と精神はどう変容したのか。なぜアスカが生きてて綾波レイが死んでるっぽいのか。鈴原トウジくんはどうなったのか。シンジくんの母と綾波レイの関係とは何なのか。ゼーレとは何者で「人類補完計画」とは何なのか。渚カヲルくんとは誰なのか。2本の槍の意味は何なのか。シンジくんがずっと聴いていたカセットテープは何なのか。なぜ「急」ではなくて「Q」なのか。等々。 もともと「福音」というのはイエスの死と復活による救いのことだと思いますが、この物語におけるイエスの位置づけはまったく不明で、至るところに登場する十字架のモチーフも、イエス以上に根源的な意味がありそうなのですが、それも分かりません。 いろいろ分からないことだらけだったので、今回はレビューというより疑問点をメモしただけです(これから勉強します)。ちなみに、この作品が「理解不能なのに最後まで観れてしまう」のは、上記のような疑問の数々をシンジくんと観客が共有しているからですね。実際、置いてけぼりのシンジくんの姿は、わたしたち観客そのものです。「きっとシンジくんの目を通して謎が解けていくはずだ」と期待して、ついつい最後まで観てしまう…。これは端的にストーリーテリングの手法として優れていると思います。そのことと映像的な面を加味して評価しますが、『破』と同様に点数は暫定値です。  追記:あくまで個人的な推測ですが、使徒の個体性(自我境界=結界?)を守っているのが「A.T.フィールド」だとすると、それを破壊的に破るのが「槍」のような兵器であり、融和的に破るのが「シンクロ」のような現象じゃないかと思います。乗員とエヴァの「シンクロ」は双方を変容させるようだし、何らかの形で使徒との「シンクロ」も起こってる気がします。エヴァの変容のことを「擬似シン化」と呼ぶ場合があるようですが、この「シン」とは(シンゴジラのそれと同じように)「神」の意味を含むのでしょう。ただし、こうした自我境界の消失は、いわば核融合みたいに「インパクト」のトリガーにもなるのかもしれません。 この物語は、突きつめると、人間や使徒が「自我を守るために戦うこと」と「自我を超えて融和/融合すること」との両面によって展開してるように見えます。
[地上波(邦画)] 7点(2020-08-30 14:27:32)
37.  今夜、ロマンス劇場で 《ネタバレ》 
死ぬまで二次元の女性しか愛せなかった映画オタクの男と、リアルの世界に憧れ続けたスクリーンの妖精との切ない恋物語。さしずめ「鶴女房」と「人魚姫」と「さびしんぼう」と「ニューシネマパラダイス」をぜんぶ足してから4か5で割ったぐらいの感じです。マキノ省三が、久我美子とガラス越しにキスしたり、オードリー・ヘプバーンとローマの休日したりしてるっぽい小ネタも散りばめられています。 なかなかコンセプトとしては面白いし、キャスティングも悪くないと思うけど、いかんせん脚本が不器用すぎるのでは?ディテールの積み重ね方が下手くそだから、感情の流れがぎこちないし、ファンタジーの設定も理解しにくいので、なかなか話に入り込めない。結果として、コンセプト止まりの映画になってしまっている。もうちょっとシナリオを作り直せば、そこそこの佳作にはなると思います。
[地上波(邦画)] 6点(2020-08-11 13:16:58)(良:1票)
38.  この世界の片隅に(2016) 《ネタバレ》 
去年の放送のときも見たのですが、今回の放送の機会にレビューしておきます。2度目ということもあったので、淡々と進んでいく細やかな描写が、いっそうすんなり入ってきました。 戦争がけっして「非日常の世界」ではなく、むしろ「日常の世界」の地続きであることを、アニメの映像で表現した作品です。きっと一昔前ならば、そうした「日常」は実写で描くところでしょうが、むしろ近年ではアニメの(二次元世界の)ほうが「日常性」を帯びているし、そういう時代だからこそ評価された作品だと思います。 いちばん重要なことは、この物語の主人公が、とてつもなく無力だということです。いつのまにか見知らぬ土地の見知らぬ男性のもとへ嫁いできて、その運命のすべてを受け入れながら生きている。彼女が、自分の意志で何も決められないのは、性格の問題だけでなく、そういう時代であり、そういう国家であり、そういう社会であり、当時の女性がそういう立場だったからです。その結果、彼女は、なすすべもなく時代の運命と国家の運命に翻弄されるしかありません。 こうした生き方は、しかしながら、現代のわたしたちにも通じる普遍性をもっています。現代社会がたとえどんなに自由になったとしても、わたしたちはあらゆる物事を自己決定して生きているわけではないし、むしろ理由の分からないことに翻弄されることのほうが多い。そのことは何も変わっていません。この主人公のような女性は、今もなお身近に存在しているし、もっといえば、わたしたち自身だといえます。 はるか昔に起こった戦争や原爆という出来事も、じつはとても身近にあるのだし、同じことが起こったとしてもおかしくはない。「悲しくてやりきれない」という言葉は、その真実を物語っています。わたしがもっとも心を動かされたのは、コトリンゴがこのフォークルの曲を歌ったことですが、それについては初見のときに自分のブログに書いたので、ここでは繰り返さないことにします。
[地上波(邦画)] 7点(2020-08-09 21:38:23)(良:1票)
39.  打ち上げ花火、下から見るか? 横から見るか?(2017) 《ネタバレ》 
岩井俊二の作品は観ていません。 誰が誰だか見分けのつかない同じ顔のキャラクター。過去の映画やアニメを剽窃したようなテーマ性の乏しさ。卑猥で低次元なロリコン趣味。さらには、離婚したシングルマザーが豪邸に住んでたり、一両編成のローカル列車が乗客をホームに置き去りにして出発したりするリアリティのなさ。if をもじった「茂下」とかいうダサい地名とか、平たい花火に見立てたような風力発電とかも、たんに幼稚な思いつきを散りばめてるだけに見える。 ただ、(これもきっと幼稚な思いつきに違いないのだけど!)広瀬すずの「瑠璃色の地球」の歌声には、はからずも胸がキュンとしてしまいました(笑)。 大根仁のコンセプトはよく知りませんが、これはきっと「花火」の映画じゃなくて「灯台」の映画なんじゃないですか? つまり、フレネルレンズの向きによって、一つの光源から別々の世界が映し出されるように、あるいはプリズムが乱反射するように、現実に絶望した少年少女の目の前に無数のパラレル世界が映し出されたのだろうと思います。最後に現れたのは、まるで『銀河鉄道の夜』みたいな幻想世界(あるいは死後の世界)だったわけでしょう。「瑠璃色の地球」が切なく感じられたのも、それが現世には決してありえないパラレル世界に思えたからです。もともと広瀬すずの声には、どこかしら《少年性》があって、それがカムパネルラ的なのです。 …他のみなさんが十分なほどボロクソに書いてくれていたので、わたしは出来るだけ好意的に書いてみましたが、映画の出来としては、前半が3~4点、後半だけを最大限に評価して6~7点ぐらいです。この物語が抱える本質的な落ち度として、祐介の位置づけ(ザネリなのかジョバンニなのかカムパネルラなのか)が不明瞭だという点もあるかと思います。
[地上波(邦画)] 6点(2020-08-09 12:59:03)
40.  MEG ザ・モンスター 《ネタバレ》 
ちょっと高めの7点。前半は「5点くらい」と思って観てましたが、後半の展開がけっこう興味深かったです。 前半は、コスチュームがダサいし、セットやマシンは安っぽいし、美魔女みたいな中国人女優は老け顔だし、なんだか半世紀前のSFテレビシリーズを見てるみたいで、ついついアジア資本映画の"後進性"ばかりが鼻につきました。 でも、2匹目のサメが現れてからは、そういう問題は一気に吹き飛びました。物語のなかでも、欧米とアジアの優劣やら差異といったものが意味を失っていきます。それまで英語で喋っていた中国人は勝手に中国語で喋りはじめるし、白人も、黒人も、アジア人も、なりふり構わずにわめき出します。中国人だけでなく、あらゆる人種が見すぼらしく惨めになって、ハリウッド映画にありがちな人種ごとの類型的な役割分担もなくなってしまう。つまりは、圧倒的な脅威の前で、すべての人間がまるごとコケにされてしまうのです。その感じが面白かった。制作者がそういうことも計算ずくで作っているのを感じました。 もちろん巨大ザメの描き方こそがいちばん大事なはずですが、わたしとしては「多様な人種のキャラクターをどう描いてるか」という点に最大の見どころを感じました。アジア側にかなり配慮してる面はあるけど、この作品が商業的に成功したということは、欧米をふくむ映画市場もけっこう懐が深かったのだなあと思います。いまやスクリーンのサメに食われるのは欧米人だけではない、という時代の変化が、意外に新しいスタイルを作っていくのかなと思う。 …以下は蛇足ですが、サメが、巨大な躰のくせに浅瀬にまで侵入してきたり、グルメなくせに固くて不味い潜水艇に何度も食いついたり、音と臭いに釣られる深海魚のくせに弱点が「目」だったりするのは、たぶんツッコミどころなのだろうと思う。さらに、わたしが変だなと思ったのは、プラスチックが頑丈なくせに金網がもろいこと、それからイカのくせに足がタコっぽいことでした。
[地上波(字幕)] 7点(2020-08-09 12:36:15)(良:2票)
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