1. エイリアン:ロムルス
公開初日、仕事場から直行して鑑賞。 「ドント・ブリーズ」のフェデ・アルバレス監督らしく ちゃんとエイリアンが怖く、エンタメとしても完成度の高い映画でした。 時系列的には「エイリアン」と「エイリアン2」の間に起きた出来事で 必然的に、第1作「エイリアン」の内容を一部引き継ぐ物語。 まだ公開直後ないので、内容には触れない短い感想。 エレン・リプリーを主人公とした過去のエイリアン4作品と、プロメテウス、エイリアン:コヴェナントとは違う、フレッシュな新キャラクターたちの物語。 もちろん、シリーズの基本には忠実で(捉え方は人それぞれですが)過去・未来に起きる出来事と繋る要素で構成されている。 その為、監督の異なる既存の(VSシリーズは除く)作品群のどれにも繋がる《マスターキー》のように感じられた点が、私には好印象でした。 単体作品として十分に面白く、旧作からのファンにとってもサービス盛り沢山。 新作に対する期待は人によって違うので、やや贔屓目かも知れませんが面白かった。 リドリー・スコットの第1作が公開され、早45年。 見るだけで恐怖を感じてしまう《エイリアン》の姿を造形した鬼才 H.R.ギーガーに感謝です。 未だに彼の宇宙最悪生物に、ハラハラ、ドキドキしちゃうんだもの〜(笑) スタッフロールでも彼の名前だけ他より大きかった気が。リスペクトかな。 [映画館(字幕)] 7点(2024-09-08 08:21:10)(良:1票) |
2. ジュラシック・パーク
《ネタバレ》 既にレビューが出し尽くされた傑作なので、個人的な考察を1つだけ。 パークの創設者ジョン・ハモンドを演じるリチャード・アッテンボローは、1967年の映画『ドリトル先生不思議な旅』でサーカスの団長を演じている。ノミのサーカスじゃないが(笑) 動物と会話できるドリトル先生が連れてきた(架空の動物)双頭の珍獣 “ブッシュプル” をサーカスにスカウトした団長は、“こんなの見たことないぞ!”と歌って踊って喜び、サーカスは押すな押すなの大盛況になる。 私には、その嬉々とした姿がハモンドと重なって見えて、『ドリトル先生』のアッテンボロー知った上でのオマージュ配役じゃないかと思った。 皮肉なことに、サーカスが大成功する映画『ドリトル先生』は興行的に失敗している。その逆に、恐竜パークが崩壊し失敗に終わる『ジュラッシク・パーク』は世界的な大ヒット映画となった。 アッテンボローにとっては『ドリトル先生』の失敗を26年後の『ジュラシック・パーク』でリベンジした訳だ。 完成した映画を観て思ったでしょうね“こんなの見たことないそ!”と。 [映画館(字幕)] 9点(2023-04-13 11:20:01)(良:1票) |
3. NOPE/ノープ
《ネタバレ》 完全【ネタバレ】です、あしからず。 ホラーかと思ったら、モンスター映画だった。 しかも、モンスター退治じゃなく、モンスターで村おこし的な展開がユニークでモニーク。 中国系アメリカ人のリッキーは、空飛ぶモンスターをテーマパークの目玉イベントにして、スターになろうとし 黒人牧場主OJと彼の妹は、モンスターの映像を撮って一攫千金を狙おうとする。 だが、相手は宇宙から来た?人畜有害な未確認生物なので、思うようにいく筈かない。 リッキーは子役時代に経験した血の惨劇を、テーマパークで拡大再生産したあげく、自分もモンスターの餌食となってしまう。 OJは、高名なドキュメンタリー監督を雇い、ボランティア参加の電気技師と自由過ぎる妹の4人でスクープを狙うが・・・ そんなお話。不気味で謎に満ちたSFホラーミステリーかと思ったら、ド直球のモンスターパニック。ジョーダン・ピール的な裏テーマの有無は別として、考察が必要な映画かと言えば、必要はない。単純明快なストーリー。 ただ一箇所だけ、意味不明な演出がある。 テーマパークのオーナー、リッキーの回想シーン(ソープオペラ撮影中に起きたチンパンジーの暴走事件)そこで発生した超常現象。これは説明がないが観客の目を引くように強調されている。 具体的には、物理的な衝撃が無いのに割れる風船。スタジオ照明の異常な明滅。そして重力に反して直立している靴。 これには必ず理由があるはず。推理してみよう・・・ その場にいたのは凶暴化したチンパンジー、テーブルの下に隠れていたリッキー少年、襲われてピクリとも動かずに倒れている被害者たち。この映画がSFという形式をとっている以上、謎の考察は科学的ロジックで納得できるように解くべきである。 考えられるのは、リッキーに発現した《ESP能力》による超常現象。 ESPとは、Extrasensory Perception の略。 超心理学用語で、精神感応(テレパシー)・予知・透視などの総称。超感覚的知覚とも言う。その多くは少年期に発現し、触らずに物を動かすなど、ポルターガイストの原因としても多数の報告がされている。 撮影の重圧に加え、周囲の大人たちからのプレッシャー(年齢差と東洋人差別的な圧力)による過度のストレスを受けていたリッキー少年にESP能力が発現し、無自覚に風船を破裂させ、電気器具を狂わせ、靴を有り得ない直立状態にした。そして少年の深層心理に影響されたチンパンジーがストレスの原因である大人たちを襲ったとすれば辻褄が合う。 (OJの妹が唐突に見せるバイクでの『AKIRA』オマージュにも意味がでてくる) この時、人間以外の生き物と心が繋がる(自分の代わりに望みを叶えてくれた)という体験が、UFOモンスターとのコミュニケーションに繋がっているのは明らかで、リッキーが牧場での事件の元凶になったと推測できる。 (モンスターがテーマパークと牧場周辺をテリトリーにした理由) OJも劇中で「ジュープ(リッキー)は以前から《奴》と取引してたんだろう」と推測を語っている。牧場で事件が起きる前からリッキーとUFOモンスターの間にコミュニケーションが成立していたなら、まさに今回の事件とテレビスタジオの事件は同じことの繰り返しとなる。 これはつまり、上下関係、《使う者と使われる者の間に起きるストレス》の話。それは、リッキーとモンスター、リッキーとOJ、OJと妹、OJと電気屋、電気屋と監督、OJと馬、すべてに存在する問題で、その変化に注目して映画を観ると、パニック映画とは別の面白さがある。 完売で買えなかったが、パンフレットには映画に散りばめた裏テーマなどが監督のコメントや解説として掲載されているらしい。(私は読めていない、残念) 多くのレビューがそれに影響されて裏テーマの考察ばかりしているようだが、正直ここまでエンターテイメントに徹した作品だと(靴のシーン以外は)特に不条理には感じない訳で、そこにテーマを薄く表現したのなら、テーマの伝え方として今回のジョーダン・ピールは完全に失敗したと言える。 もっとストレートにテーマを表現するべきだったと思う。 [映画館(字幕)] 6点(2022-09-06 10:10:18)(良:3票) |
4. ブレット・トレイン
《ネタバレ》 観ました『ブラッピ・トレイン』 『NOPE ノープ』のオマケ程度に思って観たんですが、こっちを先にレビューしたくなった。 まず、【日本語吹替】で見ましょう! いますよね、オシャベリな殺し屋。 『パルプ・フィクション』とか『デッドプール』とか この映画も殺し屋だらけ。その半数がメチャしゃべる。 字幕じゃ、たぶん会話のニュアンスが伝わらない。 つぎ、日本の描写。 以下【ネタバレ】です。 東海道線の駅の順番は異世界化し 鉄ヲタなら発狂しそうな、何ひとつ正解のない新幹線。 そして武装ヤクザの天国。そう、ここはアナザー・ディメンションNIPPONなのです。 まあ、映画ですから印象コラージュ的なアレです。 それを笑って済ませられるかで、好き嫌い真っ二つに割れると思う。 あとは、ブラピも主役として良い味だしてるし、殺し屋たちも全員がマンガチックなほど個性的。 真田広之もお飾りではなく、きっちり剣劇アクションしてくれます。 そして、すべてがデタラメでトンデモ。 映画全体が冗談みたいだからこそ、日本を舞台にここまで、派手なバイオレンスアクションを展開しても笑って見れるんだと思った。 観てて『デッドプール2』みたいなだなぁ~と思ったら、同じデヴィッド・リーチ監督でした。 『デッドプール』『キル・ビル』『ウルヴァリン: SAMURAI』がOKな人には、超オススメです。 ※訂正、正しいタイトルは『ブレット・トレイン』です。意味は弾丸列車(笑) [映画館(吹替)] 7点(2022-09-06 01:44:31) |
5. 大怪獣のあとしまつ
大事故を起こした映画そのものより、事故の原因と、そこに至るまでの経緯に興味が湧く。 邦画で、評価・興行的に惨憺たる結果になった場合、製作側からは何の発信もなく沈黙する場合が多い。 傷に触れずに早く忘れたいのかも知れないが、失敗こそ原因を明確にして広く共有し、業界全体のレベルアップに役立てるのが大切だと思う。 かつて映画『マルサの女』の製作日記を詳細にまとめた「マルサの女日記」という本があり、映画製作を志す者のバイブルとなっている。 もし『大怪獣のあとしまつ』の製作経緯と何が失敗を招いたか詳細に検証・記録した『大怪獣のあとしまつ日記』出版されたら、優れた反面教師本となるに違いない。 まあ、当時者が映画の大失敗を実直に認め、保身を考えずそれを公にする気持ちがあればの話ですが・・・。 最後にひと言、予告編などの前宣伝。客を微妙にだまして集客するのは最低です!(ほとんどの客は怒っている) [映画館(邦画)] 3点(2022-08-19 18:59:05)(良:1票) |
6. ジュラシック・ワールド/新たなる支配者
《ネタバレ》 映画の終わり「イアン・マルコムは帰ってくる。」のテロップ 驚いて椅子から転げ落ちた・・・そんな自分を妄想。 フェイクのネタバレはさて置き、予告編も一切見ずに本編を鑑賞。 『ジュラシック・ワールド/新たなる支配者』初見のざっくりネタバレなし感想です。 セリフを正確に理解するため吹替版で。 今回は、これまでのシリーズと印象がちょっと違った。 極端に言うなら、ジュラシックパーク60%、それに30%の007とインディジョーンズを少し足した感じ。 好きな映画のミックス状態で、私は凄く楽しめました。 後半に集合写真みたいなカットが多いのはファイナル故のご愛嬌ですね。 事態が複雑になって、恐竜の存在感が薄くなるのも、長いシリーズの難しさかな・・・などと 理屈っぽく考えてしまう、映画ドランカーの自分を反省。 アトラクション映画は楽しんだ者勝ち、早々に童心モードにチェンジ! 理論シールドを解除、映画の流れに上手く乗るとマイナス要素なんてどーでもよく、料金以上にドキドキわくわく。 あ〜、この楽しさも今回でラスト。いよいよ最後!皆様さようなら!さようなら!🗼🦖 これまで魚を、いや恐竜をありがとう🐬🐬🐬 いやいや、イアン・マルコムは帰ってくるぞ!きっと(笑) [映画館(吹替)] 9点(2022-08-02 10:33:41) |
7. 最後の決闘裁判
配信で『最後の決闘裁判』を鑑賞。原題は“The Last Duel” リドリー・スコット作品で決闘と言えば、 監督デビュー作『デュエリスト 決闘者』(1977)がある。 今作は史実に基づき、騎士道精神における最後の決闘とされた事件を描いている。 現在のリドリー・スコットは、監督としての自分の原点を見直し 過去の作品を語り直すフェーズに入ってるように思える。 本作は、美化されて語られる「騎士道」の実態を、改めて問い直しているようだ。 そのベースに『デュエリスト 決闘者』があるのは間違いないだろう。 [インターネット(字幕)] 7点(2022-06-27 19:44:23) |
8. ハケンアニメ!
《ネタバレ》 水曜日に、トップガンとこれを見ました。「ハケンアニメ」 いろいろと噂は聞いていましたが、原作は知らなかった。 原作には関係なく、映画単体のレビュー(辛口)になります。 新人職業女子の自立ドラマとしては、サクセス・ストーリーとして伏線もよく効いているし面白く出来ていると思いました。 しかし、ここで描かれる覇権争いに至るアニメ製作現場と、二人のアニメ監督の葛藤に関しては、違和感がありました。 ここで描かれる覇権争いは、アニメ業界で働く個人(その代表としての二人の監督)を描くテーマとして、ポイントがズレていると思います。 映画を見た私の印象は《広告代理店によるペプシとコークの宣伝合戦》です。 プロデューサーは広告代理店の営業、アニメ監督は広告デザイナーに見えてしまった。つまりアニメの創作ではなく、戦略と根回しでアニメという製品を売る映画。 表面上は、アニメ監督の吉岡里帆が主役ですが、物語を俯瞰すると、明らかに柄本佑と尾野真千子の戦いがストーリーの主体。だから《覇権》という《売る》ことが映画のゴールになっている。 その証拠に、この映画でカッコイイところは、全部プロデューサーが持っていく。 ハッキリ言いますが、映画もアニメも「監督が売ることを考えたら終わり」です。 監督は、ひたすら視聴者の心を動かすフィルムを作る。コンテを直すシーンなら、どういう理由で、どんな表現かを具体的に見せないと共感できない。 意見の違うスタッフを動かす理由も“アニメを愛する同志”だから心が響き合う、そこをもっと見せて欲しかった。 創作を通して監督のアニメ愛、スタッフのアニメ愛が見れてこそ、観客も一緒に共感できると思う。 『ハメルンの笛吹き』という童話がありますよね。 私たち映画の観客や、アニメファンは「見る側」。アニメを作るクリアイターは「見せる側」です。 ハケンアニメは「見せる側」の映画で、私たち「見る側」の数を賭け、一喜一憂する。 私たち「見る側」を「笛で操るネズミ」のように表現してないか?「笛吹き」は「見せる側」=アニメの製作会社。 両者には上下格差の壁ができている。違和感の正体はこれ。集めたネズミの数で勝負する映画にしたのは間違いだと思う。 誰に見せたくて、この映画を作ったのか? 一番見てくれるのは、アニメが好きで、アニメを仕事にしたい若い子たちじゃないかな。 そんな子たちに、会社が望む監督の理想像を見せるのもいいが、一番大事なことは「アニメが好きであることの大切さ」じゃないかな。「アニメが好き」なことにおいて「作る人」も「観る人」も同じ地平に立っている。 多くのアニメスタッフは、きびしい環境でも、一人のアニメファンとして「アニメが好きだから」仕事を続けてるし、監督はその中で「ほかの誰よりもアニメが好き」だから監督な訳ですから。 この映画の救いは、劇中のアニメが素晴らしい出来なこと。アニメ全話を見たくなるくらい凄い仕事をしてると思う。 アニメパートのスタッフには、文句なしに120点をあげたい。 ドラマの欠点をアニメの素晴らしさが上回り、映画全体を美談に感じさせてしまってるのは大きな問題ですが・・・。 [映画館(邦画)] 6点(2022-06-27 18:55:55) |
9. シン・ウルトラマン
《ネタバレ》 公開初日に鑑賞。 わたしは「帰ってきた」で小学生になった世代。でも駄菓子屋で初代とゼブンのブロマイドを買い、再放送をテレビにかじりついて(死語)見ていた子供。 庵野×樋口のドリームプロジェクト『シン・ウルトラマン』に関しては、ほぼ満点と評価します。 それはあくまで《テレビ番組としての初代ウルトラマン》を彼らなりの理想形として100%描いていると思うから。 不可思議なミステリーを追うチームがドラマを推進し、その先に怪獣が現れ、人の手に負えない状況を巨大な星人が格闘と光線技で始末する・・・そのシンプルな30分で見る者を満足させる。 SFミステリードラマと短い怪獣プロレスだけ。その黄金パターンのカタルシスを再現して積み重ねる113分。 リニューアルの要素は、ウルトラマン・怪獣・外星人の造形。オリジナルを尊重しつつ設定に準じた質感を与えた。 侵略テーマはセブン要素による補強。人類以外の原住地球人のことにも触れていた。 あまりに子供だましな設定は、ある程度是正して《オトナだまし》程度にアップデート。 とは言えテレビ準拠なので、ドラマ部分は深く掘り下げず、禍特対は狂言回しに徹した(設定されていても観客の想像に任せる)とこともウルトラマンのまま。2時間をワンテーマで描く『シン・ゴジラ』と同じフォーマットは使わなかった。出来たとしても、それでは原点回帰にならない。 『シン・ゴジラ』を基準に観てしまう人は、中途半端と感じるかも知れません。 それと長澤まさみのお尻パンパンは、和装の女性が気合を入れる仕草ですよね。 古いCMで、大原麗子がやってたと思います。あれをエロじゃない?と思うのはアンテナがエロに敏感過ぎる人じゃないかと。ただ、どアップで撮るより、引きの方が良いと思う。可愛く見せなきゃね。 風呂に入ってなくて臭い・・・の一連は、庵野さんがジブリの仕事で風呂にも入らず没頭して臭かったというエピソードの置き換え。庵野さんにしてみれば《仕事の出来る職人》の特徴。長澤演じる浅見をそういう生真面目なキャラとして表現しているのでしょう。 ハラスメントは許されませんが、何でもハラスメントだと安易に解釈して批判・封殺しようとする風潮に抵抗してるかも知れない。特撮芸術を衰退させかねない極端なホワイト化への異議申し立てかも。 ルーカスも禁欲的なジェダイが「人のあるべき道」とは、全然いってないですしねぇ。 『シン・ウルトラマン』に違うものを求めていた人、残念でしたね。 庵野、樋口コンビの特撮記憶細胞がベストだとして作ったこの作品。 私の特撮記憶細胞も両氏に酷似していたのでしょう、至福の113分を過ごさせて頂きました。 [映画館(邦画)] 8点(2022-05-15 01:57:25)(笑:1票) (良:4票) |
10. 夢みるように眠りたい
祝・デジタルリマスター版Blu-ray発売! 昭和初期の東京。 私立探偵:魚塚甚(佐野史郎)は「誘拐された娘“桔梗”(佳村萠)を探し出して欲しい」と依頼される。 依頼者は月島桜という女性。調査を始めた魚塚は“Mパテー商会”なる怪しげな一団に行き当たる。 さらに、事件と深く繋がる無声時代劇『永遠の謎』とは一体何か? 魚塚は謎の向こうに何を見るのか? そして桔梗は何処に・・・・・・ - 初めて観たのは、三越劇場だったかな?ミニシアターでの上映でした。 不鮮明な白黒画面、無声映画に活弁という古風なスタイルを〝あえて〟とった、邦画には珍しいカルト作品と言えます。 その狙って作ったスタイルが見事に〝映画への愛〟を美しくピュアに描き切っていて素晴らしい。 原案・脚本・監督は、これがデビュー作の林海象。後の『帝都物語』の脚本や『探偵 濱マイク』シリーズなども素晴らしい仕事。 1986年製作なので30年以上前のインディーズ作品ですが、変則的な劇中劇は今で言う【メタ構造】で林監督の才能が感じられます。 あがた森魚の音楽も映像にぴたりと符合し、独特の世界観を構築しています。 今回、国内版Blu-rayと米国ARROW VIDEO版Blu-rayの両方を購入しましたので、好き過ぎで書けなかったレビューをやっと書きました。 ARROW VIDEO版で確認したデジタルリマスター映像の鮮明さは、DVDとは雲泥の差です。 ただ、劇中映画『永遠の謎』は元々あったグレイン(画面の粒子感)までパキッと鮮明になり、古い活動写真の表現として逆効果に感じました。まあ「見ようによっては」ですが。 総合的には素晴らしいリマスター。いや、劇場鑑賞の印象さえ遥かに越えて鮮烈で作品に惚れ直しました。 - 映像特典(ARROW VIDEO版) ・本編オーディオコメンタリー1:林海象監督と主演佐野史郎さん(※DVDのコメンタリーと同じ音源を使用) ・本編オーディオコメンタリー2:日本映画専門家トム・メスとジャスパー・シャープ(※字幕なし) ・佐野史郎さんインタビュー「卵はいくつ?」(28分49秒) ・活弁士 澤登翠さんインタビュー(18分13秒) ・澤登翠さんによる劇中映画「永遠の謎」の活弁パフォーマンス(6分47秒) ・「夢見るように眠りたい」修復メイキング(4分01秒) ・サイレント時代劇のシーン(2分40秒)※京都おもちゃ博物館アーカイブより ・オリジナル劇場予告編(2分38秒) ・英語版予告編(2分38秒) ・静止画ギャラリー 映像特典(国内:ドリームキッド版) ・本編オーディオコメンタリー:林海象監督と主演佐野史郎さん ・予告編(2分39秒) ・英語版予告編(2分39秒) ・修復メイキング(4分17秒) ・林海象監督メッセージ(43秒) ・対談映像:林海象監督と主演佐野史郎さん(4分23秒) 舞台活動から映画へと脱皮する林監督の、気恥ずかしい程の“その時”がフィルムに焼き着いて、同じく“その時”の私に共鳴したのだと思います。 [ブルーレイ(邦画)] 8点(2022-04-08 19:15:24) |
11. THE BATMAN-ザ・バットマン-
《ネタバレ》 『ザ・バットマン』いきものクイズ! 鳥は、高い所から俯瞰し、弱い獣を喰イモノにする。 利口な獣は鳥を監視し、密かに鳥を襲う。 それは、生きるため? 優劣の逆転を狙って? それとも、ただの戯れ? コウモリは鳥? それとも獣? 答えは、映画館で。 【レビュー】 不穏な空気が漂う大都市ゴッサムは、現代とも1950-60年代とも感じられる。 スマホを使う場面があるのに雰囲気は完璧なノワール映画。あははっもうたまらん! 若き資産家ながら、心に秘めた憎しみを黒いマスクで覆い 犯罪への「復讐者」バットマンとして夜な夜な徘徊する青年ブルース・ウェイン。 一方、権力者たちの「嘘」を憎み、猟奇殺人を犯す謎の男リドラー。 追う側も追われる側も闇を背負っている。 マトモデナイ世界・・・ 乱歩マニアな私には、短くかんじる176分だった。 この映画は、バットマンが挑むサイコミステリー仕立て。 デビッド・フィンチャー『セブン』を彷彿させる半端ない緊迫感がある。 同時に、若きブルース・ウェインの苦悩と運命の物語。 ただし、最終盤はいかにもヒーロー映画らしくバットマンが派手に活躍する。 そこだけが、この映画の個性に反しているようで(私には)蛇足に思えた。 ここは好き嫌いある所かも知れない。 (何度目かの)バットマン映画のリブートだが、過去のどれとも違っていて楽しめ 1本の映画作品としても優れている。 どのキャラクターにも、それぞれの「生き様」を感じる。 生まれた環境や普遍的な社会の矛盾。そこから何とか脱して懸命に生き続けようとする一人一人の姿 それは、私たちのリアルな人生そのものである。 混沌を力ある者がルールで縛って秩序を築く。 縛られる側にとって秩序は窮屈なものだ。 縛る側の悦楽、縛られる側の窮屈さを指摘し、自由と正義を求めて闇に隠れて闘う革命者が2人。 2人のサイコパスによってルールの檻は、遂に破壊される。 では、その先に待っているのは何か・・・? 自由の楽園か? 無秩序を愛するサイコパス達が踊り狂う、狂乱のパーティーか? そこで笑うのは誰か? ジョークだよジョーク!フヒヒヒヒヒヒヒヒッ!! [映画館(吹替)] 8点(2022-03-18 14:38:17) |
12. ナイル殺人事件(2020)
《ネタバレ》 原作は未読。ユスティノフ版も記憶の彼方なので初見に近い状態だったのですが、第一の殺人で犯人・動機・トリックは推測がつきました。まあ古典なので当然だと思います。逆にロジック的に納得できるので、原作通りならそれは良かったと思います。 最も良かったのは、ポワロ自身にもスポットを当てた話になっていたことです。ポワロに固定イメージを持っていないので受け入れ易い展開でした。ただ、今回で完結?みたいな終わり方なのが・・・ブラナーでのポワロ続編はもう無いかも知れませんね。 そして他の方も書かれている通り、CGとわかる風景が多用されていてエジプトの歴史や雄大なナイルの雰囲気が感じられなかった点。それがこの評価点になった理由です。 原作の時代をロケで再現できないほど観光地として現代化されていたのか、予算やスケジュールの都合かは分かりませんがミステリー作品にとって背景が作りだすムードはとても重要だと思います、特にこの作品においては。 [映画館(吹替)] 6点(2022-03-04 19:07:36)(良:1票) |
13. キングスマン: ファースト・エージェント
気づけば上映劇場も僅か。 映画館泣かせ、スエード表紙のパンフレットを買って、いざ鑑賞。 ■007シリーズ俺にも撮らせろ!と言ったけどバーバラに断られたので、俺の007作ってみた。 そんなマシュー・ボーンの英国秘密エージェント映画、第3弾。 今回は第一次世界大戦の時代。 国家を操る闇の組織とキングスマンの原点が描かれる。 毎度の通り、どこかで見た名シーンの《俺流リブート》オンパレードが楽しかった。 特に「ユア・アイズ・オンリー」メテオラの冷や汗アクションのバージョンアップは、マスクの中で息を呑んだ。 レイフ・ファインズは御歳59歳。ユア・アイズ・オンリー当時のロジャー・ムーアは54歳。ファインズもなかなかやるね~(人間にしては。byビショップ) マシュー・ボーンの出世作「キック・アス」でタイトルロールを演じた、アローン・テイラー=ジョンソンの出演も嬉しい。 今回、日本配給をウォルト・ディズニー・ジャパンが担当。(旧作もディズニープラスで配信されている) その影響か、印象としてエログロ要素が後退し、エモーショナルな演出を強化したように思う。DSNの検閲対応? 前作、前々作の配信にピーとかモザイクとか入ってない?(笑) ■評価 1作目のアナーキーさが薄れたのは少々寂しいが、アクション&アドベンチャー作品として安定感が感じられ、シリーズ継続もあるだろうと思う。 ディレクターズ・カット(アンレイテッド版)Blu-rayとか出ないかなぁ~ [映画館(字幕)] 7点(2022-02-01 22:50:17) |
14. エターナルズ
《ネタバレ》 原作の知識はありませんので、映画オンリーの感想です。 仕事終わりに時間があったので、初日に観ることができました。 既存のMCU人気キャラに頼らず、新キャラだけでここまで濃い内容を見せられると感服します。 さらに、最終的に勝った者が正義というMCUのパターンから、一皮むけた感じも非常に良かった。 以下【ネタバレ】を含む。 わたしが個人的にエターナルズに感じたことを書くと、「これって『サイボーグ009』だよね」です。 戦うために造られた、多人種の超人たち。テレキネシス、飛行、超高速移動、変身、怪力など個々別々の能力を持ち人類を脅威から守るチーム。 だが、戦う機械であるが故に、普通の人間との差に苦しみ、兵器を進化させ殺し合いを繰り返す人類そのものにも思い悩む。しかしそれでも戦い続ける・・・誰がために。 そして、石ノ森章太郎の死で未完に終わった009の最終章。創造主と対峙する《神々との闘い》編。 断片しか語られなかったその世界とエターナルズの世界が、私の中でピッタリ重なって、サイボーグ戦士と神々の闘いの続きが、形を変えてマーベルによって語られている。そんな気がしたのです。 もちろんそれは妄想ですが、エターナルズの10人が遠くを見ているポスターまで 石ノ森っぽいな~と思って映画館を出ました。 終わりに。 009(1979のTVアニメ)のサウンドトラックを担当した、すぎやまこういち先生のご冥福を祈ります・・・ん?エターナルズどこいった(笑) [映画館(吹替)] 8点(2021-11-18 00:23:02)(良:2票) |
15. DUNE デューン/砂の惑星(2021)
《ネタバレ》 遅ればせながら鑑賞。 だいたい思ったことはレビューされてますので、短かめに感想を。 新生デューン、SF映画として観て最高でした。 架空の世界をどれだけリアルに描けるか・・・ その点において、複数の惑星の環境、民族性、政治、文化が見事に具現化されて、その情景は名画のように美しい。 映画芸術の極みとも思えるほどでした。ただ・・・ 描き出される世界は、緻密で壮大で深遠。しかし、その芸術性と引き換えに登場人物の演技をはじめ、総てに衝撃が無い。 あえて、感動を押しつけないヴィルヌーヴ監督の演出は「ブレードランナー2049」で評価されたけれど、ブレードランナーという傑作SF映画のビジュアルインパクトが前にあって、それとの対比で評価された側面もある筈。 果たして「デューン」という砂の惑星に、大衆を引きつける引力がどれほどあるだろうか・・・ 特にMCU(マーベル映画)の密度・スピード・過剰サービスで育った若い層が、どうヴィルヌーヴ演出を見るか?そこが運命の分かれ道かも知れない。 当然、続編も同じクオリティで、よりスケールアップした形で観たい!だからコケて欲しくはない。 そこで、我は声(ボイス)で命じる!“若者ヨ、投票シロ!”もとい“デューンヲ、見ロ!” おおっ!早速パート2の製作が決まったようだ・・・まぁ、若者にウケたかは知らんけどね(笑) [映画館(吹替)] 7点(2021-10-31 19:14:55)(笑:1票) (良:1票) |
16. 竜とそばかすの姫
《ネタバレ》 水曜日。平日1200円の映画館で観て来ました。 ニュース映像でカンヌの観客が言った「これまでの細田作品で一番完成度が高かった。」その感想は本当か?確かめに・・・ テレビの所さんの番組でやってた密着取材を事前に見たためか、バーチャル空間の凄いCGも想像の範囲内で驚きには至らず。やぱり事前に情報入れちゃいかん!と反省。 さて、「これまでの細田作品で一番完成度が高い」に関しては、残念!“否”でした。 理由は、物語りを複雑に(=幾つかのテーマを並列に)描いたため、共感するポイントが分散していること。 主人公すずや、彼女を取り巻く人たちの人格、相互のつながり方が過去の細田作品の焼き直しに見えたこと。 一番の問題は、物語の展開に無理を感じたことでしょう。 以下は【ネタバレ】を含みます。 家族の不幸で自閉的になる → 親友が実は名家の電脳少女! → たまたま作ったアバターが電脳世界一の歌姫になった! → 誰も見つけられない破壊者の隠れ家へ潜入! → その正体を突き止めた! → その結果、現実世界でDV親から子供を救った!しかもたった一人で! それと同時に、現実では自分自身と学園のマドンナの恋を成就させている。 悩み多きJKヒロインなのに、いくら何でもスーパー大活躍過ぎるでしょうよ(笑) 周囲の助けを借りて、がんばって電脳世界で歌姫になり、現実の苦しみに希望を与えるコンサートをする。 現実では「のど自慢」に出て鐘2つ。それで充分感動できるのに・・・ DVから子供を救う展開も、現代的なテーマを入れたのでしょうが無理やりな感じ。 警察に保護させなさい!証拠映像あるし、警察の方が現着も速い、下手すりゃ刺されちゃうぞ。 トラウマを打ち破るイニシエーションとして、クレヨンしんちゃん「おとな帝国の逆襲」の階段登りと同じ演出なのでしょうが、電脳歌姫になった時点で、彼女はトップ・ユーチューバー以上の「世界を変える力」を得ている訳だから、そこは「歌の力」で暴力を打ち破らないと一貫性がなくなる。ベルが歌うシーンには感動させられたから、すずの歌こそ映画の中心にするべき。 《電脳世界の歌の力》で現実を救う話だったら、「サマーウォーズ」のAIの暴走を《現実の家族の力》で止める話と対(つい)を成して『細田守電脳二部作!』になったんじゃない!?て思ってしまう。 映像のクオリティは高いし、電脳世界で歌うシーンには感動する。嫌いじゃないけど、物語が散漫だったという感想です。 ※作る側の視点でしか映画を語れない、理屈っぽい嫌なオトナの感想(笑)このアニメが大好きな人ゴメンなさいね。 [映画館(邦画)] 6点(2021-10-31 18:39:06)(良:2票) |
17. 007/ノー・タイム・トゥ・ダイ
本日初日、観てきました。 まだ何も書けない(すべてネタバレになる😆) ダニエル・クレイグは、この5作で独自のボンド世界を見事に完結させました。 この終焉に、ただただ拍手!そして、さらば・・・ JAMES BOND WILL RETURN [映画館(字幕)] 8点(2021-10-02 08:34:48)(良:1票) |
18. ミスト
《ネタバレ》 観終わって、どう解釈していいのやら? でしたが(笑) 結局。救われたのはエゴの無い者だけなのかと。 主人公の行動は英雄的に見えても、冷静に見れば無謀な賭けでしかなく、それも一種のエゴイズム。 彼の最後の判断ミスはそれを象徴してるんでしょう。 エンタメ映画の単純な夢《現実には無いヒロイズム》を現実的な悲劇に導き、観客を夢から悪夢に引きずり込んだ。 タラボンのニヤニヤ笑いが目に浮かぶ。そんな映画でした。 [DVD(字幕)] 6点(2021-07-19 18:19:31) |
19. ランゴ(2011)
2011年公開って、10年前の作品ですか。 観よう観ようと思いなから・・・やっと観ました(笑) これは、なかなか曲者なCGアニメですね。 カメレオンが主人公ながら、けっこう本気のマカロニ・ウエスタン・パロディ。もちろん、ランゴ (Rango)は『続・荒野の用心棒』の主人公 ジャンゴ (Django)のパロディ。マカロニ・ウエスタンって何が面白いの?って人には、たぶんウケない。 時の流れを描きつつも笑いの癖が強くて、シュールと言うか、モンティ・パイソン的な《知性と馬鹿のスープ》のような色があり、唐突なおふざけ、演出のしつこさ、薄汚いキャラデザイン、さらに、精神世界描写、メタ視点を含んだセリフ等々、それを笑えるか否かで評価が分かれるかと。 わたしは「大傑作だ!」と思いました(笑) アニメーション制作は、なんとILM!それっぽい○○戦シーンまであってサービス満点。 脚本のジョン・ローガンは、アカデミー賞に3度ノミネートされた人(グラディエーター、アビエイター、ヒューゴの不思議な発明) 音楽は、ご存知 ハンス・ジマー メイン・キャラの声の出演は ランゴ:ジョニー・デップ(日本語吹替:平田広明) 牧場主ビーンズ:アイラ・フィッシャー(マメータ:東條加那子) 少女プリシラ:アビゲイル・ブレスリン(宇山玲加) 町長:ネッド・ビーティ(玄田哲章) ロードキル(ビー・キルド?):アルフレッド・モリーナ(山路和弘) 死神ジェイク:ビル・ナイ(多田野曜平) 西部の精霊:ティモシー・オリファント(多田野曜平) ↑ ここツボですね。 これはやはり、ストーリーよりもノスタルジー映画と見るべきでしょう。 マカロニに限らず色んな映画のオマージュだらけなので、映画通ならきっと楽しんで観れるはず。 あと、大した事じゃないけど、米アカデミー長編アニメ賞受賞作品でしたね。 [DVD(吹替)] 8点(2021-05-12 23:34:00) |
20. エクスカリバー(1981)
《ネタバレ》 非常にシンプルかつ、誠実に作られたイングランドのアーサー王伝説の映画化。 公開は1981年。おそらく1977年の「スター・ウォーズ」の大ヒットの影響で、この有名な《剣と魔法の壮大な物語》の企画が通ったものと考えられます。 しかし、渋い歴史ファンタジーに仕上がったこの映画は、娯楽ファンタジーを期待した多くの観客の失望をかったでしょうね。でも、目の肥えた評論家や映画ファンには高く評価されて、本作に影響を受けたクリエイターは少なからず存在している。ザック・スナイダーの「バットマンvsスーパーマン」、スピルバーグの「レディ・プレイヤー1」では本作をリスペクトした描写がある。 この物語で描かれている《女性の裏切り》や《親の因果が息子の運命を狂わせる》悲劇性は、同時期に製作された「スター・ウォーズ/帝国の逆襲」と重なっていて(ある意味で必然か?)興味深い。 出演者では、ブレイク前のリーアム・ニーソン、パトリック・スチュワート、ガブリエル・バーンなどが話題になるが、個人的にはマーリンを演じたニコル・ウィリアムソンの硬軟自在な演技が素晴らしいと思う。(「シャーロック・ホームスの素敵な挑戦」のホームズ役もユニークだった) VFXは今見ると決してレベルが高いとは言えない。反面、光り輝く甲冑など独特の衣装、戦場となる実物大の城などは映画のスケールアップに貢献いていると思う。 映画全体としてはオペラに近い大人向けの演出で、観客を選ぶ作品だと思う。私は大学生になって再見して以来、好きな映画の上位に入れました。 いま一番、4Kリマスター化して欲しい映画です。 [DVD(字幕)] 8点(2021-04-17 16:10:29)(良:1票) |