1. この世界の片隅に
どこか牧歌的で、穏やかな表現・筆致なのに、そこに清濁併せ持った感情の全てが静かに込められている。 もっと大袈裟に、お涙頂戴的に、押し付けがましい教科書的な作品になってしまいそうな昭和戦時下の日常物語を、こうの史代の真骨頂ともいえる語り口で丁寧・丹念に描ききっている。 こうの史代漫画の神がかり的なバランス感覚は、もう見事としか言いようがない。 10点(2010-09-30 02:19:16) |
2. おやすみプンプン
この作品を読んで、改めて「漫画」という鉱脈の無限さを知る。浅野いにおは、今、一番凄いコトをしている漫画家なのかもしれない。 10点(2008-06-28 22:41:07) |
3. 惑星のさみだれ
小規模ではあるが、壮大。軽妙であるが、真摯。決して認知度は高くない作品だが、私的にはここ10年でピカイチの少年漫画だった。 勤務先からの帰宅途中の電車内で最終巻を読んで大いに感動し、衆目の中であやうくボロ泣きするところだった。めっさ奥歯を噛み締めて読む羽目に。 水上悟志、恐るべし&ありがとう。 10点(2008-06-07 01:32:14) |
4. 群青学舎
素敵な物語を、丁寧に、真正面から描く。てらわず、ひねらず。「学舎」をテーマに描き綴られた珠玉といえる作品群に、只々溜息。三巻に収録されている「薄明」が特に素晴らしく、ああ、この歳になっても漫画読むヒトでよかった、と、思わずにいられない。 10点(2008-05-04 01:18:01) |
5. アンダーカレント
《ネタバレ》 人物像の配置や、静謐に展開する物語の丁寧さは、完璧。まったくと言ってもイイくらいに、隙がない。 10点(2007-11-30 21:56:48) |
6. not simple
《ネタバレ》 幸せになるための道や平凡に生きる道から半歩ズレてしまった老若男女が織り成す人間ドラマ。計算しつくされた展開といい鷹揚なく交わされる会話劇といい、まったくの稀有。実写化しても映画化にしても小説にしてもこの作品のすばらしさには到達しない。正しく「漫画」の持つ力量といっていい。間違いなくオノナツメの代表作。 10点(2007-11-14 04:42:14) |
7. 夕凪の街 桜の国
この作品を読んだ後に、「漫画の持つメッセージの力」について改めて驚かされる。 日本人全員が読めばいいのに!と、思う作品は数あれど、世界中の人間が読めばいいのに!と思わせる作品は、なかなか無い。そして、まさしく、この作品が、それ。 10点では足りない。個人的な点数でいうなら800点位の点数をこの作品に贈りたい。 10点(2007-11-14 01:42:58) |
8. G戦場ヘヴンズドア
ただ「読む」という以上に漫画を愛している私としては、「G戦場ヘヴンズドア」と「編集王」は、もうバイブルと言ってイイ。この作品を「漫画家の悲しい言い訳」と心無くみる事も出来るが、私は日本橋ナヲコの掛け値なしの意思表明と、みたい。日本橋ナヲコに一生ついて行くと、この作品で決めた。決めました。 10点(2007-11-05 01:00:28) |
9. シグルイ
《ネタバレ》 南条範夫のソリッドな文章描写と、山口貴由のエロティックな筋肉描写が、恐ろしいほど噛み合っている。 蛇足ですが、個人的には牛股権三郎の「にぱ!」とした笑顔が好きだ。超好きだ。 しかし「腸(わた)を撒くのをやめさせい!」と叱られるシーンは、壮絶すぎて不覚にも笑ってしまった。 「腸(わた)を撒くのをやめさせい!」って叱られる人間なんて、平野耕太のキャラか牛股権三郎くらいだ。 多分、この世にはいまい。 多分、死ぬまで言わないだろうし、言われないであろう名台詞。 9点(2012-08-13 02:09:47) |
10. 自殺島
自殺未遂者の群像劇という「気を衒った」感のある設定と、孤島という舞台装置。一見悪趣味に写る漫画だが、内容は何とも堂々とした人間賛歌。目が離せない。 9点(2012-02-04 00:42:34) |
11. 乙嫁語り
19世紀のシルクロード、遊牧民の生活風景を、無理なく見事に「森薫ワールド」に取り込みつつ、美しく彩っている。森薫自身の「描く事への喜び」が、絵やコマから満ち溢れてきそうですね。 というか「森薫の作家性なんて、メイド(英)100%で構成されてるに違いない」と思っていた私が、ウルトラ・アサハカでした。 9点(2011-09-28 00:50:52) |
12. ソラニン
《ネタバレ》 痛く重い物語なのに、読後に残る確かな満足感と一握のせつなさ。やはり浅野いにおは只者ではない。変なペンネームだが。 蛇足ながら思ったのだが、浅野いにおって「キチンと定期的に前向きな物語を描くよしもとよしとも」みたい。超寡作なよしもとよしともが漫画を描かなくっても、浅野いにおがいれば、いいか、と、最近思うようになった。 9点(2008-10-18 01:50:21) |
13. Gunslinger Girl
《ネタバレ》 「少女×ガンアクション」という取り合わせが、下品で大嫌いでした。しかもイタリア政府の殺し屋の少女。改造もされていて、洗脳までされている。相方は政府組織の男性職員。とほほほ。何でそんな悪趣味な設定にするのか。面白い訳、ねーな!と、高をくくっていた。 しかし、読み進めていく内にどんどん深みにハマっていった。設定は、相変わらず下品だと思っている。が、何と言うか、コッ恥ずかしいが、照れ臭いが、少女たちの長くない人生や幸せが、正しく「可憐」なんである。 ギリギリな所で「人形」ではなく「人間」として生きている少女たち。 何と言うか、今後の展開が気になります。 【ここまで9巻までの感想・以下、最終巻まで読んで】 一期生パートから二期生ペトルーシュカ登場というシフトチェンジで、物語の焦点が霞んだように思えたが、各々が迎えた終焉にグッと来た。 ラストに紡がれた「希望」が、眩い。 9点(2008-06-05 23:45:55) |
14. Jの総て
マリリン・モンローに憧れる(男)主人公「J」の波乱万丈な青春を、見事に描き上げた怪作。カテゴリとしては私のちょーニガテな同性愛モノか。しかし何て言うか、身も心もボロボロにしながらも幸せに近づこうとする「J」の生き様にハラハラし、ドキドキし、涙し、最終回には感動。全く、こういうジャンルにも楽しめる作品があろうとは。 主人公Jはトランスセクシャル(性同一性障害)なんで、イワユル「BLモノ」とはチョッと違うんですが、まぁ、試しに如何か?といった所。 9点(2008-05-17 00:41:34) |
15. エマ
《ネタバレ》 近年の「メイド・ブーム」のA級戦犯的な作品ではあるが、そんな一過性のブームとは無縁といってもいいくらい真っ当なラブロマンスの王道作品。作者の個人的嗜好が暴走しまくった漫画に名作は生まれ難いと思っていたが、考え直さなければ、と思った。森薫=メイドの図式同様、イタリア老紳士=オノナツメのように。笑。 最終回は、漫画史に残ってもおかしくない位のハッピーエンド。 森薫、次回作もメイドを描くのかなぁ。 9点(2008-05-04 01:01:50) |
16. ハチワンダイバー
「月下の棋士」を何度読んでも「将棋」の面白さはイマイチわからなく、「しおんの王」みたいにポップな絵柄ではどうか?と思い読んでみたものの、やっぱりイマイチわからない。いわゆる「将棋漫画」は水が合わないのだ、と思っていた。が、しかし。「ハチワンダイバー」は、面白かった。「受け」「中飛車」「雁木」などの将棋用語にはついていけない感があるものの、ヨクサル氏の独特な勢いとセンスや、馬鹿馬鹿しいくらいに説得力溢れるセリフに圧倒。あの手この手で登場するデタラメ感あふれる真剣師たちのキャラクター群も秀逸。これまでブレイクしそうでしなかったカリスマ・柴田ヨクサル。今後の活躍も期待大です。 9点(2008-04-20 14:42:35) |
17. リストランテ・パラディーゾ
老紳士・老眼鏡・イタリア好き!という作者・オノナツメの趣味(丸出し)の世界…という、どうにもとっつき難い特性を持つ作品ではあるが、かつてない絵の個性と、淡々とではあるが確実な語り口が、見事なまでのハイセンスでまとまっている。 センス重視の作品か?と問われれば、違うと言えるし、間口の狭さの無い突出した個性に、十二分のエンタテイメント性がある。 9点(2007-11-14 04:36:16) |
18. 少女ファイト
日本橋ナヲコファンとしては、何と言ってイイか分からん程に、スキ。スキ過ぎて、語れん!少女ファイトは!(それでイイのか?レビュワーとして!笑。)もぉ10点でいいじゃねぇのかな?とすら思うが。未完の作品に10点付けるのもどうかと思うので、限りなく満点に近い「9点」 9点(2007-11-05 00:52:37) |
19. アイアムアヒーロー
《ネタバレ》 洋邦各メディア問わず、かなりの高水準ゾンビ作品。 体を許した相手であろうが、足の臭いにイチイチ恥ずかしがるつぐみが可愛くて仕方なかった。ゴミ回収車のシーンは、本気で悲しかった。 8点(2016-01-01 03:06:58) |
20. 純潔のマリア
《ネタバレ》 「漫画のヒロインが処女かどうかを気にするなんて、『かん○ぎ』の単行本を引き千切るコアな病的童貞ヲタじゃあるまいし!」とか思ってますが、このマリアの純潔の行方は気になるところです。 しかし、主人公の使い魔のサキュバス・アルテミスの「これだから処女は面倒くさい」という意見には、激しく同意です。(下衆でスマン) 8点(2012-08-27 05:15:40) |