1. この世界の片隅に
どこか牧歌的で、穏やかな表現・筆致なのに、そこに清濁併せ持った感情の全てが静かに込められている。 もっと大袈裟に、お涙頂戴的に、押し付けがましい教科書的な作品になってしまいそうな昭和戦時下の日常物語を、こうの史代の真骨頂ともいえる語り口で丁寧・丹念に描ききっている。 こうの史代漫画の神がかり的なバランス感覚は、もう見事としか言いようがない。 10点(2010-09-30 02:19:16) |
2. キラキラ!
十代から二十代にかけての、暗くもあり青くもあった私自身のバイブルといっていい作品。 暗く、青く、なんとなく不自由で、当然のように金も無く、テンションだけは高くて、背伸びして飲みに行ったり、手探りで女の子を口説いたり、深夜のファミレスで反省会したりの、アホみたいな日々。不自由ながらもでもどこか楽しく、あぁ、いつまでも永遠に、この楽しい時間が続けばいいのに、と、 この作品を読んでいた頃は思っていたような気がする。 本当に「キラキラ」していた。(照恥) 10点(2009-04-09 09:40:47) |
3. おやすみプンプン
この作品を読んで、改めて「漫画」という鉱脈の無限さを知る。浅野いにおは、今、一番凄いコトをしている漫画家なのかもしれない。 10点(2008-06-28 22:41:07) |
4. 惑星のさみだれ
小規模ではあるが、壮大。軽妙であるが、真摯。決して認知度は高くない作品だが、私的にはここ10年でピカイチの少年漫画だった。 勤務先からの帰宅途中の電車内で最終巻を読んで大いに感動し、衆目の中であやうくボロ泣きするところだった。めっさ奥歯を噛み締めて読む羽目に。 水上悟志、恐るべし&ありがとう。 10点(2008-06-07 01:32:14) |
5. 湯けむりスナイパー
ひじかた憂峰(恐らく土屋ガロン・狩舞麻礼と同一人物)の描く「ハードボイルド」は、恐らく日本の漫画界では一番でしょうね。 「子連れ狼・拝一刀」がハードボイルド漫画キャラクターの私的ランキングで長年の一位だったですが、「湯けむりスナイパー」の源さんの登場で、「子連れ狼」もそのトップの座を明け渡す結果に。 「絵が…」「オヤジ向け漫画は…」と敬遠している漫画読者は、損をしています!と断言してもいい位のお奨めです。 「タイトルのダサさがチョッとなぁ…」と敬遠…確かにタイトルはダサい!それは認めよう!この漫画は、タイトルで損をしています!(二度言う)断言。 10点(2008-06-05 23:20:33) |
6. ベルサイユのばら
遅ればせながら、36歳になって初めて(文庫版で一気に)読みました。迂闊。何たる迂闊。こんな名作を今まで「古典少女漫画」と見くびってスルーしていたとは。特にオスカルの格好良さを、今まで読まずに過ごしていたとは。オスカル!ああ、オスカル!美し過ぎるやろ!?貴様は、神か?(笑う所) 私の内に存在するはずがない「乙女心」が、かつてない位に稼動しました。 暴走ついでにアニメ版も制覇。アニメ版も、すげえ。オスカル。(志垣太郎風に)オスカァァァァァァァル……ッ!貴様は神か?(二度言う) 隅から隅まで堪能させていただきました。後は、かの浜村淳ですら立ち見というプラチナな「宝塚版」を残すのみ。全く、恐ろしいハマリようです。 蛇足ながら、作者の池田理代子、執筆当時は24歳だというのに改めて驚愕。神か?(しつこい) 10点(2008-05-17 00:28:58)(笑:4票) |
7. BANANA FISH
少女漫画を読まない人たちに、忠告したい。たかが少女漫画と侮っていると、名作を読み逃す。「BANANA FISH」は、その最たる作品。 中途半端な少年・青年向け漫画にも劣らないハード&クールさと、同時に少女漫画としての切なさや果敢なさも併せ持つ。 少年、少女問わずに、是非読んでほしい。 10点(2008-05-04 06:02:19) |
8. 谷仮面
柴田ヨクサル作品の中で、一番好き。最終回あたりでは何度も泣きそうになる。ギャグ作品なのに。笑。 10点(2008-05-04 01:51:40) |
9. 群青学舎
素敵な物語を、丁寧に、真正面から描く。てらわず、ひねらず。「学舎」をテーマに描き綴られた珠玉といえる作品群に、只々溜息。三巻に収録されている「薄明」が特に素晴らしく、ああ、この歳になっても漫画読むヒトでよかった、と、思わずにいられない。 10点(2008-05-04 01:18:01) |
10. アンダーカレント
《ネタバレ》 人物像の配置や、静謐に展開する物語の丁寧さは、完璧。まったくと言ってもイイくらいに、隙がない。 10点(2007-11-30 21:56:48) |
11. not simple
《ネタバレ》 幸せになるための道や平凡に生きる道から半歩ズレてしまった老若男女が織り成す人間ドラマ。計算しつくされた展開といい鷹揚なく交わされる会話劇といい、まったくの稀有。実写化しても映画化にしても小説にしてもこの作品のすばらしさには到達しない。正しく「漫画」の持つ力量といっていい。間違いなくオノナツメの代表作。 10点(2007-11-14 04:42:14) |
12. 夕凪の街 桜の国
この作品を読んだ後に、「漫画の持つメッセージの力」について改めて驚かされる。 日本人全員が読めばいいのに!と、思う作品は数あれど、世界中の人間が読めばいいのに!と思わせる作品は、なかなか無い。そして、まさしく、この作品が、それ。 10点では足りない。個人的な点数でいうなら800点位の点数をこの作品に贈りたい。 10点(2007-11-14 01:42:58) |
13. プラネテス
SF作品だが、スポットされているのは「設定」でも「ビジュアル」でもなく、登場人物たちの「内面」であり、SF的な何かより彼らの成長譚がメインで描かれていると思う。傑作。 マイ・ベスト漫画十指として、もうすでに殿堂入り。 最終巻に出たタナベの遺書は、漫画史上最も不器用で雄弁な遺書。涙が止まらんかった。 10点(2007-11-05 09:29:59)(良:1票) |
14. G戦場ヘヴンズドア
ただ「読む」という以上に漫画を愛している私としては、「G戦場ヘヴンズドア」と「編集王」は、もうバイブルと言ってイイ。この作品を「漫画家の悲しい言い訳」と心無くみる事も出来るが、私は日本橋ナヲコの掛け値なしの意思表明と、みたい。日本橋ナヲコに一生ついて行くと、この作品で決めた。決めました。 10点(2007-11-05 01:00:28) |
15. えの素
《ネタバレ》 エロで下品な漫画が好き!という愛すべきマンガ読みに送る、下品の神が舞い降りて描かせたかのよーな超怒級作品。最近は漫画作品の「アニメ化」「実写化」がブームのようだが、この作品を手掛けるようなドン・キホーテは存在しないといっていいだろう。 ヒット・ミー・プリーズ! 10点(2007-11-01 01:35:20) |
16. 寄生獣
設定は至極単純であるにもかかわらず、テーマが深遠。難しさは、皆無。最終巻の盛り上がりと最終回の「主人公たち」の会話が素晴らしい。文句なしの10点満点。 10点(2007-10-18 04:51:04) |
17. あしたのジョー
主人公ジョーをはじめ、段平、力石、マンモス、カルロス、等々、名脇役の見事さが、際立つ。ボクシング漫画というより、人間ドラマ的な要素に惹かれた。 ホセ戦の前に葉子とジョーが語りあうシーンは、ボクシング漫画とは思えないほどのロマンティックさ。 このシーンは何度読んでもグッとくるトコロ。 10点(2007-10-11 04:57:14) |
18. 波よ聞いてくれ
《ネタバレ》 日常に疲弊しきっている時「そんなに言うなら琴欧州のブログでも読んで癒されてみるか」と思わせる作品。 去年、札幌で決して好みではないスープカレーなるご当地グルメを食してみたのは、この作品の功績。(口には合わなかったが) 9点(2018-04-15 02:27:20)(良:1票) |
19. 風子のいる店
《ネタバレ》 岩明均の異常な作家性がフンダンに盛り込まれているにもかかわらず、物語の持つ温度に特異な点がないとか、やっぱ異常だよなぁ岩明作品。個人的には大盛りピラフの回と、ホットコーヒーに氷を入れるクセのある客の回が、スキ。 9点(2014-09-17 05:18:38)(良:1票) |
20. シグルイ
《ネタバレ》 南条範夫のソリッドな文章描写と、山口貴由のエロティックな筋肉描写が、恐ろしいほど噛み合っている。 蛇足ですが、個人的には牛股権三郎の「にぱ!」とした笑顔が好きだ。超好きだ。 しかし「腸(わた)を撒くのをやめさせい!」と叱られるシーンは、壮絶すぎて不覚にも笑ってしまった。 「腸(わた)を撒くのをやめさせい!」って叱られる人間なんて、平野耕太のキャラか牛股権三郎くらいだ。 多分、この世にはいまい。 多分、死ぬまで言わないだろうし、言われないであろう名台詞。 9点(2012-08-13 02:09:47) |